食品処理のステップ o-157を考える

産業医科大学 産業生態科学研究所 作業病態学研究室
八幡 勝也(4/05/1997、mcmq 2217)


Date: Sat, 5 Apr 1997 00:00:55 +0900
From: yahata@med.uoeh-u.ac.jp (Katsuya Yahata)
Subject: [mcmq 2217] 食品処理のステップo-157を考える(長文)

産業医大の八幡です。
先日からの0-157の予防のために現在のお弁当や給食の製造の実態について少し長い
ですが、まとめてみました。
実は私はあるお弁当の企業の産業医をしていますので、どうしてもそこでの作業の流
れを基本にしているところがあります。ただ、できるだけ共通のステップを検討して
みました。ただし、各段階において人の手や機械が関与し、その衛生管理が重要であ
りますが、割愛させていただきました。

1、素材の製造
 野菜果物の場合は種から出庫するまでの管理。
  水の管理、栽培に利用するスポンジなどの管理、排水の管理、病害の管理。有機
栽培の場合、肥料の安全性の確認。
 魚では採取してから港で出庫するまで。
  船の上での衛生管理、保存用の箱の衛生管理。

2、食材加工
 今の大部分のお弁当や給食では現場での調理はかなり減りまして、ほとんどは業務
用の食材を用います。この食材の管理が重要です。
 処理は加熱するものばかりではありません。できるだけ生の状態から即冷凍保存す
るものも多いのです。

3、保存
 さらに調理後の保存方法ですが、冷凍、冷蔵、常温、乾燥があります。常温保存の
場合保存料を使用しますが、pH調整が適正でなければ、殺菌処理ですので菌の発生が
多くなります。
 温度管理、湿度管理、保存期間の管理などがあります。

 この食材加工と保存が十分でないと今回のo-157に見られるような広範囲の集団食
中毒が見られます。これは最終の調理者がいくら気をつけても避けられない可能性が
高いのです。

4、調理
 調理は主に前処理、加熱調理と非加熱処理調理に分かれます。
 前処理は野菜などを切りそろえたり、冷凍食品の解凍をしたりします。
 加熱調理は焼く、揚げる、茹でる、炒めるなどです。通常火を通せば安心と思われ
ていますが、いくら火を通しても内部の温度は以外と上昇しないために、十分な殺菌
効果はあげられません。特に冷凍食材の調理の場合には温度の上昇は十分ではありま
せん。
 非加熱調理はサラダ、おにぎり、サンドイッチなどを作るときのように、火を使わ
ない調理があります。この場合想像できるように、ほとんどの食材が生のままで使わ
れます。ですからいくら調理員が衛生管理に気をつけても防ぎようのない汚染が生じ
やすくなります。

給食の場合では4の調理後に出すことになります。

5、セッティング
 お弁当の場合、幾つかの料理を一つの箱の中に詰め込む作業があります。単純作業
のためにどうしても忙しくなると短期アルバイトなどをこの作業に当てますが、この
場合衛生教育が十分でないことが起きやすくなります。夏に食中毒が多い一因ではな
いかと考えています。

6、低温保存
 お弁当の場合、以上セッティングした後一定時間低温で保存しなければなりません
。これは菌の繁殖を抑えるためです。これもくせ者です。0-157を初めとする通常の
最近は低温では、繁殖はしないものの殺菌はされません。

以上が済んだ後お弁当の場合ご飯を詰めて、出荷することになります。

7、販売
 6までは保健所などの管理があり十分に指導されていますが、この後いざ販売所に
行けばどうなるかというと、詰まれたままの状態になります。しかも夏場にはあの高
温の中で詰まれっぱなしになります。保管状態として最低です。

8、流通・保管
 以上のどの段階でも流通保管が関わってきます。食品の保管方法は一応の基準はあ
るものの結構業者によってまちまちのことがあります。ここで手を抜く業者がいると
各段階でいくら管理をしても台無しです。私はこの流通保管段階で昨年の関西地区の
集団食中毒が発生したのではないかと推測しています。

以上、お弁当や給食の製作過程の汚染の可能性について検討してみました。
この各段階において衛生管理が十分に行われて初めて私たちは安心して食べられるわ
けです。そして、この各段階は食品の数だけ発生します。つまり一つのお弁当の中に
以上のような段階が合わせて数十は発生しているはずです。
いかに日常的に関係者は注意をしているかわかると同時に、だれか手を抜けばとんで
もない事になるのは容易なことです。

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