(情報開発研究所、東京、1985)
Patricia H. Sanner, M.D.
1)順応
個体は順応とよばれる過程によってより高熱に耐えられるようになる.
これは四つの生理的な反応の結果として生じる.最初の熱の曝露に始ま
ってから,1週間で十分身につく,完全な順応,すなわち暑い環境で激し
い仕事を最大限に行なえるようになるには,個体の熱に対する感受性に
もよるが,2〜4週間かかる.完全な順応は,1日に2回,酸素を50分間
吸いながら仕事をすることによってより短かい期間で達成できる.四つ
の生理的過程は次のとおりである.
順応による生理的反応の効果は,好気的代謝が亢進し,汗の量が増え,
皮膚の血液循環が増えることである.したがって,順応するということ
は熱に耐えうるようになることであって,熱の放出が増え,熱産生が減
ることである.
2)臨床症状
基本的に熱の平衡障害を表すには三つの熱症候があるが,それらは,
熱痙攣,熱疲労,熱射病である.
(2)原因
(3)治療
(4)予防
b)熱疲労
(a)中枢神経系
(b)体液量減少
(c)消化器系
(d)身体系
(2)原因
(a)水喪失型
(b)ナトリウム喪失型
(3)治療
(4)予防
c)熱射病
(1)徴候と症状
(a)古典的な熱射病
(b)労働性熱射病
この熱射病の二つの型は,不整脈,伝導障害,心室性不整脈,頻脈性
不整脈などを伴う.
(2)管理
b.氷水のマッサージと,蒸発をよくするために循環する空気にさらす(たとえば扇風機など)
(b)病院
(3)予防
(b)労働性熱射病
注1)湿球温度は環境熱強度のよい指標となる.
注2)乾球温度は通常の温度計の大気温である.
3)熱障害に対する一般的予防法
おわりに−−熱障害に対する野外および臨時の管理
熱障害の診断および入院前の治療について述べてきた.本項では特定
の臨時の看護,特に個人の保護,野外での方法および熱障害のトリアー
ジについて要約する.
b)必要な野外での対策
(2)冷たい物の補給
(3)補給水
c)トリアージ
(2)熱疲労
(3)熱痙攣
1)冷凍によらない傷害
氷点より高い冷温や湿気,靴や衣類による締め付けなどの相互作用に
よって,血管収縮や血栓などの組織傷害を起こす.冷凍によらない傷害
には三つの型がある.すなわち,しもやけ(chilblains),塹壕足
(trench foot),浸漬足(immersion foot)である.
a)しもやけ(chilblains)
(2)治療
b)塹壕足(trench foot)
(2)治療
c)浸浸足(immersion foot)
2)冷凍による傷害
局所の凍傷による組織傷害は血管収縮と血栓と細胞外液の氷結の結果
として起こる.三つの型に区別されるが,はっきり区分されているわけ
ではなくて,むしろ凍結による障害の程度による.これらは凍傷痛
(frostnip),表層凍傷,深層凍傷である.
a)凍傷痛(frostnip)
(2)治療
b)表層凍傷
c)深層凍傷
(2)治療(表層凍傷も同じ)
b)必要ならば,ゆるく包帯を巻く.しかし患者を動かすときだけに
する.凍傷部を空気にさらすことが望ましい
c)水疱は内容物が混濁してくるまでそのままにする
d)凍傷部位には,いかなる軟膏もつけてはいけない
e)必要ならば破傷風の予防をする
f)いかなる外科的処置や切断も分離が完全になるまで延ばす
1)素 因
2)臨床症状
低体温の患者は30℃に温めてからのち,蘇生に反応しなくなるまでは
死亡の宣告をしてはならない.
3)合併症
低体温には予後に関係する種々の合併症がある.
4)治 療
a)入院前
b)病院
(1)受動的体表面法
(2)能動的体表面法
(3)能動的体内法
種々の研究により,軽度低体温の患者(32.2℃かそれ以上)では受動的体
表面法で安全に再加温できる.体内温度が32.2℃以下でも,心血管機能
が安定している場合には,受動的体表面法や加温酸素,加温輸液のよう
な単純な能動的体内法で再加温できる.体内温度が32.2℃以下で心血管
系が不安定である場合には,能動的体内法,加温水による腹膜潅流や血
液透析などの組み合わせが通常は必要である.
再加温には二つの問題がある.
(a)アフタードロップ
(b)再加温ショック
c)注意深いモニタ
d)強力な補助手段
e)合併症の治療と基礎疾愚
おわりに−−凍傷の野外および当座の看護
局所的な凍傷および低体温の診断,入院前の治療について述べてきた.
次に当座の特殊な看護,看護にあたる人自身の保護,野外での処置や患
者のトリアージについて概要を述べる.
a)看護にあたる人自身の保護
b)野外での処置や携帯品
c)トリアージ
参考文献
−−熱による障害
--凍傷,低体温
――訳 森 秀魔12.環境による障害
A.熱による障害
体温は正常か,少し上昇し発汗がある.B. 凍傷
C 低体温