DISASTER MEDICINE

Application for the Immediate Management and Triage of Civilian and Military Disaster Victims

Burcle FM Jr, Sanner PH and Wolcott BW

翻訳・青野 允、谷 壮吉、森 秀麿、中村紘一郎

(情報開発研究所、東京、1985)


5、被災者に対する評価

―Barry W.Wolcott,M.D.


はじめに

 本稿では、読者の方々が医師として働く揚合を想定していくつかの場面を考えてみた。

  1. 災害の性質はわかっている。
  2. 「4、トリアージ」の稿で述べたような第1,2段階のトリアージが行われている。
  3. プレホスピタルケアには種々の程度がある。
  4. あなたの目的は、患者の状態を安定させて次のケアに生存させて引き継ぐことである。この初期評価に際しては、したがって、患者の生命にかかわる大きな外傷はもちろん、小さな点も見逃してはならない。

 このような場面での業務は肉体的にも精神的にもストレスが多い。このストレスに耐えて思考や技術に誤りを起こさないためには、初期評価の基本的事項を確認することである。

  1. これは患者にとって最初の完全な診療である。明らかな外傷は簡単に判明するし、小さな外傷も見つけだせるが、医療品が少ないので治療できないところまで探し出すのは無駄である。

  2. 一連の初期評価の基本は、外傷の種類とは無関係にすべて同一でなければならない。災害の混乱状態のなかでは、一連の単純な評価をしっかりと守るべきである。すべての評価を習慣的に行うと、無作為の過ちや故意のまちがいを起こすことになりかねない。

  3. 生命にかかわる外傷を見つけても、最小限度の処置を行う。次のケア段階に到着するまでの間、患者の状態が安定する程度の処置を行う。たとえ、あなたの個人的な技術がすぐれており、現地の医療資材が十分にあったとしても、この原則を守ることがたいせつである。災害現場では、最小限度の処置を超えたケアを1人だけに行うということは、ケアを待っている次の患者を犠牲にすることを意味する。

A、初期評価

 上記の想定と原理を頭にいれ、患者の初期評価を下記のように行う (
図I−17)。

1)評価の開始

 患者の触診をしながら、確認し、教示し、安心感を与えて患者と疎通 を保つ。

“私は担当医の○○です。あなたはいま○○病院にいます。あなたは○○です(たとえば、ひどいやけどをしています。非常に重症です)。しかし、われわれのすることに協力してください。動くように言われない限り、静かにしていてください。ちょっと痛いことをするかもしれませんが、そうするときは必ずそのように言いますから”などである。

 備考:以上のことをするには、ほんの10秒ほどあれば十分である。それによって、患者は静かになり、処置を妨げることは少なくなり、ひいては時間の節約になる。明らかにうそと思われるような安心感を与えてはいけない。たとえば“まったく悪いところはありません”、“心配しないでください”など。そのような説明をすると、馬鹿にされるか、うそつきと思われる。さらに、患者の不安は減少するどころか、かえって強くな る。

図I−17 ABC順による質問形式

初期評価

AIRWAY(気道)
 話せるか?
 呼吸しようとしているか?
 呼気を感じるか?
  開放可能か?

BREATHlNG(呼吸)
 換気量は十分か?
  回復可能か?


CIRCULATl0N(循環)
 心拍出量は適切か?
 出血は?
 心タンポナーデは?
 心機能は?
 末梢血管抵抗は適切か?

DELIVERY 0F 02(酸素運搬)
 適切か?
 直せるか?

MとNが中間にくる

MINIMUM DATA BASE(最小限度の情報)
 患者が言うには?
 財布は?
 身分証明は?
 救急隊員は?

NAKED(裸にして診察)
 反対側に悪いところは?
災害に“Z”はない
―ただ患者がもっと多数いるだけ―
RECTAL-VAGINAL EXAM (直腸・膣診察)
 裂傷は?
 出血は?
 括約筋は?

STABILIZE C-SPINE(頸椎固定)

TEETH(歯)
 欠損は?
 顎はぐらぐらしないか?
 大出血は?

URETHRA(尿道)
 男性尿道は大丈夫?
 尿道口に出血は?


VISION(視野)
 視力は?
 異物は?

WRAP UP QUESTI0NS
(質問の包括)
 何が起きたの?
 どこが悪いの?
 どのくらい悪いの?

XTREMITIES(四肢)
 対称的か?
 変形はないか?
 運動範囲は?

YOUR DECISI0N(さて、どうするか)
 帰宅させてよいか?
 治療か?
 搬送か?

はい、次の患者さん !!

2)気道の評価

  1. 質間:“名前は?”

    備考:患者が返事すれば、気道は確保されていると考えてよい。

  2. もし、患者が答えられず、呼吸の努力をしているが、呼気が感じられなければ、気道閉塞を起こす一般的な、しかも簡単に治せる原因について調べる。

    a) 顎を持ち上げる
    b) 顎関節を持ち上げる
    c) 指で閉塞物を取り除く

    備考:“一般的’’とは頻度が高いことである。“簡単”とはすぐ治せることである。

  3. 気道がなおも閉塞しているならば、次の事項を行うことを考慮する。

    a) 胸部ないし腹部圧迫(異物を吐き出させるための方法)

    b) 気管内挿管(頸椎骨折時に注意)

    c) 食道閉塞型エアウエイの挿入(ただし、意識のある患者、口腔中血液、汚物のある場合には禁忌)

    d) 輪状甲状膜切開術

    e) 輪状甲状膜部に針を刺入し、そこからジェット式人工呼吸を行う

    備考:以上に掲げた方法が災害時の気道の確保のすべてであるが、それぞれに特別の禁忌があり、各人がこれからさきで学ばなければならない。それぞれの方法を考えてその患者にいちばん害のない方法、通常用いているというよりも気道を確実に確保できる方法を選択する。

  • 以上の方法で閉塞が解除されなければ、陽圧呼吸を考慮しなければならない。

    備考:2, 3の試みでも気道が確保されない場合は喉頭下部の閉塞が考えられ、陽圧呼吸を行うと閉塞物が一方の気管支内に追いやられて、片肺となるが、災害時にはこうしなければ死亡する。

  • できるだけ早期にカフ付き気管内チュープの挿管を考慮する症例は、

    a) 顔の熱傷
    b) 化学物質吸入時
    c) 直達性の前頸部損傷(鈍的または貫通性)

    備考:上記の疾患では気道浮腫が生じやすい。災害時には蘇生法後の観察は不十分となりやすく、搬出に長時間を要する。したがって、気管内挿管には危険を伴うが、気道管理が不十分なことを考慮すれば、早期に行っておいたほうが安心である。

    3)呼吸の評価

    1. 患者を観察しつつ、呼吸するごとに十分空気を吸うことができるかどうか患者に質問する。

      備考:正確な換気量の判定よりは適切な量であるかどうか判定する必要があるが、通常容易にできる。胸郭の動きに注意して、呼吸回数、努力性呼吸の有無をみる。手掌を水をすくうときのようにすぼめて、鼻、口の上に当て、呼吸を感ずるとよい。災害時には正確な計測をする必要はない。もし換気量が不足であれば、すでに述べた方法で気道を確保したうえ、患者管理を行う。通常、部分的気道閉塞が換気量不足を生ずることが多いからである。閉塞を解除すると換気量不足は解消する。

    2. もし気道が十分に確保されても低換気が改善されない場合には、気管内挿管を行い、呼吸を調節する。

      a) 手動式バック人工呼吸器(たとえばアンピューバッグ)

      b) 酸素駆動式人工呼吸器(たとえばMarion valve venti1ator)

      c) 従量式または従圧式人工呼吸器(たとえばMA−1)

      d) 酸素ボンベまたは壁の酸素取り出し口から直接、高圧酸素を利用する方法:これは患者の胸の動きを注視してパイプラインの出口、または側孔を呼気、吸気に合わせて開閉する

      備考:このような災害環境にあってはバッグマスク法は未経験者が有効に使用することはできず、むしろ口対口(mouth to mouth)人工呼吸のほうがじょうずに行える。補助呼吸などの他の方法は気管内挿管を必要とするし、他の種々の換気方法は生理的に絶対必要というよりは、そこにいる人に利用できる道具いかんによる。

    3. 低換気がいったん機械的に改善されたら、再度、低換気になりうる原因を調べる。

      a) 気胸(単純、緊張性)
      b) 動揺胸壁(フレイルチェスト)
      c) 有痛性肋骨骨折
      d) 血胸

      備考:以上の四つの状態は臨床的には明らかな場合が多い。その他の場合にはほとんど症状はでない。災害時には、気胸および血胸の治療は上気道閉塞によらない低換気のあるときに行うべきで、単に“できる”からという理由で行ってはならない。確定診断のためにX線検査で処置が遅れるのはよくない。動揺胸壁や肋骨骨折による疹痛を緩和するための副子固定によって前後または側壁が圧迫されて激痛が生じたり、胸壁の変形が発見されたりする。胸壁固定または肋間神経ブロックで疼痛が減じ、呼吸が改善される。このような事態では頭部、脊髄損傷による低換気は改善されない。しかし、脊髄損傷を疑ったら、頸椎固定や牽引を行ってそれ以上の神経性傷害を予防する。

    4)循環の評価

    1. とう骨、大腿、頸動脈を触診してだいたいの心拍出量を推定する。患者の爪床部で毛細管充満時間を自分のそれと比較する。

      備考:動脈を触知できるならば、おおかたの血圧は、頸動脈で60mmHg以上、大腿動脈で70mmHg以上、とう骨動脈で80mmHg以上あると考えてよい。毛細管充満時間は末梢循環をよく表す。したがって、低心拍出量状態は、すぐによくわかる。

    2. もし心拍出量が不十分であれば、以下の原因について考える。

      a) 出血(外出血または内出血)

      備考:体表面積によるが、大部分の外出血は患者全体のチェックがすむまで放置しておいてもよい。幸いなことに、通常、外出血は直接圧迫することにより、時には緊縛法でコントロール可能である。内出血は注意して診ないと見逃しやすい。外傷患者で外出血が認められないで心拍出量が低下している場合には、胸腔内、腹腔、後腹膜腔、骨盤内腔または大腿部などへの内出血の可能性を考慮する。胸腔内内ドレナージは肺の拡張を助け、出血を制御する。空気圧を利用したターニケット(駆血液帯、military antishock trousers; MAST)を着用すれば、腹腔、後腹膜腔、骨盤、大腿部の出血量は減少するであろう。

      b) 心タンポナ−デ

      備考:止血や輸液に抵抗する低血圧が起きたときは、心タンポナ−デの存在を疑う。特に胸部や腹部の貫通性外傷、腹部での強い直接の鈍的外傷には特に注意する。低容量性ショック(hypovolemic)の患者では頸部静脈の怒張、脈拍の狭小化は必ずしも起きない。経胸的心嚢穿刺によりタンポナ−デを解除し、心拍出量を増加させる。

      c) 心筋不全

      備考:直接の胸壁の外傷によって二次的に心筋挫傷が生じて心拍出量の減少をきたすことがある。これが心筋梗塞に進展したり、直接に心筋抑制を引き起こす。この診断は重要である。それは輸液や MAST を使用することにより、さらに悪化するからである。

      d) 末梢血管抵抗の減少

      備考:毒性物質の吸入、嚥下、組織の破壊性産物、感染物質は、すべて末梢血管抵抗の減少を引き起こす。効果的な治療は血管収縮薬、血漿増量材、または MAST を使用することである。

      e) 不整脈:不整脈を呈する患者も脈拍の触診で診断する。不整脈は心拍出量が減少する程度でなければ重要ではない。

      備考:徐脈性、頻脈性不整脈は心拍出量を有意に減少させる。すでに心拍出量減少や心房細動、心房粗動などがあって心房収縮が悪い患者は臨床的に重大な心拍出量低下を起こす。災害においても、不整脈の検出は、バッテリー内蔵のポ−タブル心電計を利用すれば、比較的容易であり、同様に不整脈の治療も二次心臓救命処置に従って、救急カートのなかにはいっている薬剤で治療は可能である。

       以上のごとく、患者の状態の把握と、発見した異常を治療すれば、患者は次の救護所に達するまでは何とか生き延びることができる。

       しかし、次のレベルの評価なしでは患者は生存できないかもしれない。次の段階ではより細かい異常のチェックを行い、もし治療ができなければ搬送の途中または本格的治療を待っている間に死亡するかもしれない。

    5)酸素化の評価

     組織への酸素運搬がうまくいっているかどうかを観察する。チアノーゼ、理由不明の錯乱や激昂がもしあれば、次の原因を考える。

    1. 呼吸不全(本稿「A−3)呼吸の評価」参照)

    2. 酸素運搬を障害する毒物の吸入(たとえば一酸化炭素、フレオンガス<ヘモグロビンに結合している酸素を置換する>、シアン化含物<ミトコンドリアの機能を障害>など)

    3. もとから存在していた肺疾患

      備考:以上の診断が特別つかない場合には、唯一の手段である酸素を投与するしかない。

    6)第二次全身検査

    1. まず、患者を完全に裸にして調べる。

      備考:これが見落としをなくするいちばん早い方法である(逆に裸にしなければ見落とす確率がいちばん高い)。内気な患者には検査の必要なことを十分に説明するか、検査がすんだらただちに着物をつけさせると、納得してもらえる(患者は検査中は、はずかしがらなし)が、終了するとすぐはずかしがる)。

    2. 患者自身の訴え、同行してきた人、救急隊員から聴いたこと、識別票(IDタッグ)、そして患者の財布の中身、すべてを収集して記録し、患者自身に貼りつける。これらは次のことを含む。

      a) 氏名、性別、年齢、人種
      b) 普段服用している薬物
      c) 慢性疾患:特に治療中のもの
      d) 外科手術の既往歴
      e) 薬剤アレルギー
      f) 最終飲食時間
      g) その他、特別に患者の申し立てたこと

      備考:このような情報は、災害の種類が何であれ、患者が災害にあう以前の状態を知るために非常にたいせつであり、これが災害による傷害に影響を与えたり、また、逆に災害による傷害によって本来の疾病が影響を受けたりするからである。

    7)第二次局所検索

    1. 次の検索は通常見逃しやすく、それでいて致命的となるものの発見である。これも災害の性質をのみこんでおいて、かつ一定の形式のもとに行う必要がある。

      備考:災害はそれぞれ異なった性質を有しており、一つの災害でよくみられる疾患がほかの災害ではめったに起きないということがある。たとえば竜巻では気道熱傷は起きにくいし、伝染病的災害では大きな外傷は通常生じない。しかし、災害医療に参加している間は、被災者の種類を問わず種々の疾病が合併することの多いことに注意する。たとえば、竜巻の恐怖で心臓発作が起きる、化学物質をいれたタンクが地震で崩壊して化学性物質を吸入する、核燃料プラント事故から逃げる途中で交通事故を起こす、などである。

    2. 頭からつま先まで順序正しく、通常は忘れがちな部分にも注意し、また患者の外傷に目をとられて忘れられている部分をも注意してみる。

      a) 視力の検査

      備考:視力を減ずるような外傷は四肢の喪失に匹敵する。

      b) 意識のない患者はコンタクトレンズ、異物の有無を注意してみる

      備考:これらの異物は24時間以内でも眼球を損傷する。

      c) 顔の中央部分の骨折

      備考:これらの骨折はしばしば篩板の骨折を伴い、これは経鼻胃管、経鼻挿管の禁忌である。

      d) 頸椎損傷を増悪しそうな所見や傾向がみられる患者では、頸椎の固定を行う

      1. 顔面、頭部外傷
      2. 加速時、減速時損傷
      3. 上肢、下肢、肛門に神経学的異常所見があり、同時に頸部痛のある患者

      備考:この固定法はX線検査を必要とするが、災害時にはX線検査が忙しいため、しばしば長時間を要する。

      e) 直腸診(女性では骨盤診断)を行う

      備考:これは微妙な検査だが、致命的な、尿道、直腸と下部脊髄損傷を診断できる。

      f) 骨盤の安定性をみる

      備考:これによって骨盤骨折が判明し、骨折による後腹膜腔出血を発見できる。

      g) 上下肢の運動範囲と神経血管系のチェック

      備考:転移した骨折を整復(X線なしで)すると神経血管系の症状が改善されるが、改善されないときには切断も考慮しなければならない。

      h) 腹腔洗浄は、腹腔内出血または腸管損傷を調べたり、除外診断が治療方針や移送計画を変更する可能性があるときのみ行う。

      備考:災害時には外科的能力や急速な搬送手段がない限り、腹腔洗浄によって得られる情報で処置の方針がかわることは少なく、ただ、人手と時間と資材とが必要なだけである。

      i) 男性の患者に前立腺のチェックを行わずに、フォーリーカテーテルをいきなりいれないこと。外尿道口の出血に注意する

      備考:前立腺部尿道の損傷や尿道壁損傷のある場合にカテーテルをいれることは、新たな損傷をつくることになる。直腸診で前立腺部尿道の損傷を調べる。外尿道口の出血は尿道壁への損傷を意味する。

      j) G1asgow Coma Sca1e(図I−18)で神経学的機能検査を行う。

      備考:この検査は簡単で、再現性があり、次の段階でまた行うと、患者の状態の変化が“混乱している”などというような形容詞だけを用いる場合よりもはるかに容易に判明する(「25、神経学的外傷」参照)。

      k) 皮膚の検索、熱傷、皮膚剥離

      備考:その部分の内部の疾患をしばしば暗示する。

      l) 歯列、上・下顎の検索

      備考:折れた歯が気道にはいることがある。また、口腔外傷は血腫やのちに腫脹を生じて気道閉塞の原因となる。顎(上下)骨骨折はあとになって腫脹したり、舌根の沈下をきたして気道のトラブルを生じる。

      図I−18、G1asgow Coma Scale

      眼症状    開眼     自発的          4
                    口頭命令で        3
                    痛みで          2
             反応しない               1
      運動性反応  口頭命令に従う             6
             痛み刺激*で 手を胸骨までもってくる  5
                    身をよじって逃げる    4
                    異常屈曲         3
                    異常伸展         2
                    反応せず         1
      質間に対して**      見当識あり、会話可能   5
                    失見当識、会話可能    4
                    不適当言語        3
                    意味不明音声       2
                    反応せず         1
      合計                       3〜15

       *胸骨をこぶしでこすり、腕の反応を見る。
      * *必要に応じて痛み刺激を与え、患者を起こして行う。

    8)初期検索の総括

    1. ここで患者に次のような質間を試みる。

      a) “何が起こったのか話してみてください”
      b) “何が悪いのですか”
      c) “どのくらい悪いのですか”、“どうしてそう思うのですか”

      備考:Oslerはかつて正しいことを言った。患者は何度も何度も自分のどこが悪いのですかと質間する。彼らがもし知らなければそれ以上の処置はできない。しかし、もし患者自らがどこが悪いかを言えれば、それに対して十分な印象を与えるように説明する。

    2. この時点で次のような疑間に答えることができる。

      a) 退院させてもよいか
      b) 観察が必要か。必要とすれば何を観察すべきか
      c) 今、処置が必要か。次の処置のできる場所まで搬送可能か

       以上の質間に答えて初期評価を完了する。

    おわりに

     災害救助に従事したならば、生命、四肢喪失の大小の危険を見出し、大量の被災者をすばやく処理する。医学のほかの分野におけると同様に、このような事態に対してどのような行動をとるかあらかじめ対策を立ててあれば、より多くの患者を救助できる。本稿でも述べたように組織的な検索を行うと、ほとんど見落としはない。同時に無駄な努力はせず、あなたの手当てを必要とするほかの患者も遅滞なく処置を受けられるであろう。一度練習しておけば、簡単に行うことができる。しかし練習しておかなければ、必要なときに患者ばかりでなく、あなた自身をも助けることができないであろう。

    参考文献

    Committee on Trauma,American Co1lege of Surgeons:Advanced Trauma Life Support Course,1981.

    United States Department of Defense:Emergency War Surgery. Washington, D. C., U.S.Government Printing Office,1975

    ―訳 青野允


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