県立新居浜病院における救急救命士の気管挿管実習実施要領について

(2004年11月、院内倫理委員会了承済み)


 目次

(1)実習方法及び実習内容等
 1.実習資格 2.受け入れの実習生数の目安
 3.対象症例 4.実習内容
(2)実習受入れ方法
(3)インフォームドコンセントの取り方
(4)実習の記録及び保管
(5)事故発生時の責任
(6)実習の中断、中止
(7)修了証書及び登録
(8)再教育
(9)その他

関連資料:患者様への御協力御願い書挿管実習の説明・承諾書
県立新居浜病院における救急救命士の気管挿管実習に関する資料


県立新居浜病院における救急救命士の 気管挿管実習実施要領について


(1)実習方法及び実習内容等

  1. 実習資格

     県消防学校における事前講習を終了した救急救命士で、消防本部から推薦されたもの

  2. 受け入れの実習生数の目安

    当院における麻酔科管理の年間症例数は 700例程度(伝達麻酔、マスク麻酔を含む)であり、救急 救命士の気管挿管実習の年間受入数は2〜3人程度が適当と思われる。 実習の進行状況に応じて受 け入れを決定する。

  3. 対象症例

     ASAクラス分類1,2の全身麻酔症例(成人)で、かつ、患者から事前に同意が 得られたもののうち、実施が適当と麻酔科医が判断し、かつ、主治医の了解が得られたものとする。当院麻酔科では以下の条件を予定している。


    ■県立新居浜病院麻酔科における救急救命士気管挿管実習の対象症例
    (以下のすべての条件を満た す場合)

     イ)気管挿管による全身麻酔手術が予定されているもの

     ロ)インフォームド・コンセントを得ることのできる成人患者

     ハ)担当診療科ならびに担当医の了承を得られるもの

     ニ)全身状態が良好であるもの(ASAクラス分類1,2)

     ホ)以下の条件に該当しないもの

    • 中枢神経系に対する手術を要するもの(胸髄以下の脊髄病変・損傷に対する手術はこの限り でない)
    • 心大血管に対する手術を要するもの(骨盤より末梢の血管病変・損傷に 対する手術はこの限りでない)
    • 気管挿管困難が予想されるもの
    • 頚髄の病変・損傷を伴うもの
    • 上部消化管からの逆流、誤嚥の恐れがあるもの
    • 分離肺換気など特殊な気道確保法が必要なもの
    • 顔面、口腔、喉頭などの病変・損傷を伴うもの
    • 高齢者(80歳以上)
    • その他、様々な理由から細心の麻酔管理が必要と考えられるもの

    注)ASAクラス分類=アメリカ麻酔学会(ASA)が麻酔を受ける患者の全身機能を表すために定め た基準で、日本でも広く用いられています。Physical Status(PS)1〜5の5段階に評価し、 さらに緊急手術では様々な悪条件が加わるためEを付けます(例:PS 3E)。

     PS1 (手術となる原因以外は)健康な患者
     PS2 軽度の全身疾患をもつ患者
     PS3 重度の全身疾患をもつ患者
     PS4 生命を脅かすような重度の全身疾患をもつ患者
     PS5 手術なしでは生存不可能な瀕死状態の患者

  4. 実習内容
    • 救急救命士1名につき30例(成功症例)以上。
    • 実習時の気管挿管の試行は、2回まで。
    • 救急救命士には麻酔導入時マスクによる自発呼吸下酸素吸入、導人後のマ スクによる人工呼吸から喉頭展開、気管挿管、管の固定、人工呼吸再開までを実施させる。
    • 薬剤投与などは全て担当する麻酔科医が実施。
    • 実習における行為は、実習指導医の指導による。


(2)実習受入れ方法

  1. 病院実習資格要件を満たし病院実習を希望する救急救命士を有する消防本部は、当院の実習受 入取扱規程又は契約等に基づき、実習予定者を明記した病院実習申請書(様式1)を提出する。

  2. 実習予定者が実習生として適当であると認められる場合、病院長は実習生名を明記して、実習受 入許可書(様式2)を該当の消防本部へ通知する。

  3. 救急救命士の気管挿管実習を受け入れている病院であることを病院長名で院内に明示するとともに、救急救命士 が実習生であることが患者に明確になるよう、その旨明記した名札等を付けさせる。


(3)インフォームドコンセントの取り方

  1. 実習指導医は実習前日までに、実習生を伴い患者と面談し、患者に実習内容 等について十分な説明を行った上で、文書による気管挿管への同意を得る。その際、必ず以下の3 点を説明する。


     ■患者に説明する3要件

    • 実習は実習指導医の厳重な指導と責任の下に行われ、患者の安全が確保されていること

    • 実習生は、救急救命士資格取得者で、県消防学校における事前講習を修了していること

    • 患者本人が実習を拒否しても、その後の治療等に何らの不利益も生じないこと

  2. インフォームドコンセントを得た同意書の原簿をカルテに貼り保管し、その写しを患者に渡す。

  3. 同意書とは別に医師診療録に説明の内容、患者側の諾否につき簡単に記録し、実習指導医、実習 生が連名で署名する。

  4. 実習終了後、適切な時期に記録内容を提示しながら患者本人へ挿管時の状況について説明する(実習 指導医のみで良い)。


(4)実習の記録及び保管

 実習生は、実習内容について自ら所定の様式に記録し、その内容については実習指導医の確認を 得る。実習指導医は、医師診療録及び麻酔記録に「挿管担当○○救急救命士」と明記するととも に、挿管時の経過及び実習の内容等について記録する。実習生又は実習生が所属する消防本部は、 実習の記録を5年以上保管。


(5)事故発生時の責任

  1. 指導内容及び指導態度等に起因する注意義務違反による事故の責任については、実習指導医の責 任とする(麻酔科指導医師に帰せられる事故責任は最終的には病院長にかかる)。

  2. 1の場合を除く、挿管実施に伴う事故の責任については、実施者である実習生及び所属市町村長 等にある。


(6)実習の中断、中止


(7)修了証書及び登録

  1. 実習先医療機関の長は次の条件を満たした実習生に対して、病院長名で実習修了証明書を発行する。

    • 30例以上の成功症例を経験した者
      (注:成功とは患者に有害結果を与えることなく2回以内の試行で気管挿管を完了したことをい う)

    • 実習指導医が、実習生について実習態度、挿管技術、倫理観、他の職種と の協調性などを総合的に判断し、実習を終了後、救急現場で医師の具体的な指示のもとに気管挿管 を行っても良いと判断し、医療機関の長に対しその旨申告した者

  2. 病院長から修了証明書の交付を受けた実習生の所属する消防本部は、その旨を県委員会へ報告 (講習及び病院実習修了証明書の写しを提出)するものとし、県委員会はそれに基づいて認定証を 交付するとともに、認定を受けた救急救命士の名簿を作成・管理する。


(8)再教育


(9)その他

 地域および愛媛県立新居浜病院の事情によりこれによることが難しくなった場合に は、必要に応じて実施要領の変更についてメディカルコントロール統括委員等と協議する。