除細動器の内部放電について

ACLS関連メーリングリストより(2003年11月)

ウェブ担当者:県立新居浜病院麻酔科 越智元郎
(本資料の、著作権などに関する責任はすべてウェブ担当者が負います。)


 目 次
               (発信者の敬称は省略させていただきます) 
安藤 [acls-osaka:5341] 内部放電について
傘谷 [acls-osaka:5342] Re: 内部放電について
松村 [acls-osaka:5350] Re: 内部放電について
松尾 [acls-osaka:5353] Re: 内部放電について
松村 [acls-osaka:5354] Re: 内部放電について
真弓 [ACLS:3790] Re:「除細動器の内部放電について」
吉田 [ACLS:3791] Re:「除細動器の内部放電について」
松村 [acls-osaka:5392] Re: 内部放電について
吉田 [ACLS:3794] Re:「除細動器の内部放電について」


From: "安藤 正人" 
Subject: [acls-osaka:5341] 内部放電について
Date: Thu, 6 Nov 2003 20:59:43 +0900

皆さんどうも!
安藤@堺市高石市消防組合(大阪府)です。(^o^)丿

先日、阪大で開催されたACLS大阪の勉強会にて、

「充電完了してから、内部放電のボタンを一度押してしまうと、いくら
除細動ボタンを押しても押しても、決して放電出来ない状態になる。」
ということを教えて頂きました。


そこで先日、講習会の前に実際に何回も、

充電 → 充電完了 → 内部放電 → 内部放電が完了しない間に除細動!

を繰り返しやってみましたが、一度も放電することはありませんでした。

清恵会病院ACLSの直前に皆で確認をしました。しかし、テストをした機種は、
日本光電の2タイプのみであり、どの企業の、どのタイプも同じようになるの
かどうかは、確認出来ないことから、その日の講習では、内部放電に関して、
「内部放電のボタンを押してしまえばもう確実に安全」、とは、指導せずに、
内部放電時の行動パターンとして、

1) 胸壁の上にパドルを置いたまま、内部放電
2) 胸壁からパドルを少し浮かして、患者からパドルを確実に離して内部放電
3) パドルをモニター付除細動器の上に戻してから内部放電

の、主に3つのパターンがあり、どれを実施しても良い。
但し、胸壁にパドルを当てたままの状態では、絶対にパルスチェックを
しないよう強調することとして、指導を行いました。

今後のコンセンサスのこともあり、報告させて頂きました。



From: "Seiichi_Kasatani"
Subject: [acls-osaka:5342] Re: 内部放電について
Date: Sat, 8 Nov 2003 21:53:57 +0900

安藤さん、こんばんは、そして、初めまして。
傘谷@箕面消防です。

内部放電の話が前回の千里コースで出て、そのときのモニター(いつもの
よくモニター付除細動器じゃなくて、メーカーは忘れましたが。)は、メーカーの方
によると表示されているジュールは機械の中だけの話で、パドル(ケーブル)への
電気の流れは遮断されているので、危険はないと言っておられました。

絶え間ない心マと換気は大事ですもんね。
チェックパルスは早いに越したことないですよね。
ただ、この前提には、自分が使用するモニター付除細動器について熟知しておく
必要がありますね。


From: satoshi.matsumura
Subject: [acls-osaka:5350] Re:  内部放電について
Date: Fri, 7 Nov 2003 08:05:25 +0900

安藤様、傘谷様、大阪ACLSメンバーの皆様、フィリップスの松村でございます。
内部放電につき、数ヶ月前にもおなじような議論があり、コメントさせていただきまして、同じような話
で恐縮ですが、再度メーカとしてコメントさせていただきます。

日本光電様の機器は良く知りませんが、弊社の機器には内部放電をいうボタンはありません。
弊社の機器の内部放電は、以下の条件時のみに自動実施されます。

「パドル間の抵抗値(インピーダンス)がある一定値以上、叉は以下 」
「充電後、ある一定時間(弊社は30秒から1分で機種により違います)何も実施されない場合 」

です。これは、高抵抗ということは体内に通電されるエネルギーが少なくなり除細動の効率が悪く
なるだけでなく、胸部に大きな火傷を残すからです。

また、低抵抗時はパドルが接触していることを意味し、(実際に接触しいなくとも、水分の影響でパドル
間表層部で絶縁が不良となっている場合も含みます。)大部分の電流が表層を流れてるためです。

さて、

>1) 胸壁の上にパドルを置いたまま、内部放電
>2) 胸壁からパドルを少し浮かして、患者からパドルを確実に離して内部放電
>3) パドルをモニター付除細動器の上に戻してから内部放電

ですが、日本光電様の機器に内部放電というボタンがあるという仮定での話ですが、

  1)は機種によって違いますので、これは危険です。
  2)はご自分を含めた周囲の安全が確実に担保されるのであれば可能です。
  3)が一番安全です。

また、内部放電は、回路が切り替わり、全て内部へエネルギーが吸収されますので、パドルには
一切エネルギーは出力されません。

そこで、まとめですが、メーカにより規格が異なりますので、使用前に機器の特性を熟知される事を
お勧めいたします。メドトロニックの松尾様、如何でしょうか?

フィリップスメディカルシステムズ(株) 松村 智


Subject: [acls-osaka:5353] Re: 内部放電について
Date: Fri, 7 Nov 2003 12:50:06 +0900
From: "Matsuo, Hideki [MPC]" 

安藤さん、皆様、

こんにちは、日本メドトロニックの松尾です。

フィリップスの松村さんもご説明されていたように、内部放電の
仕組みは各メーカー毎に少しずつ異なりますが、どの除細動器も
内部放電の仕組みは持っています。これは規格でそれが求めら
れているからです。
内部放電:蓄積エネルギーを除細動電極部を介さないで除細動
       器の内部で放電し、消費すること。(JIS T−1355)
と定義されています。

内部放電には、
1)ある条件下で自動的に内部放電が行われるもの
  これは主に患者、操作者並びに装置自身の安全確保の為に
  行われます
2)一度充電したエネルギを使わないことにしたので、積極的に
  内部放電するもの
が有り、いずれも内部放電のエネルギが外部に現れることが有っ
てはいけません。これは規格です。

さて、前述の第2項が今回の話題と思われますが、この方法は
メーカーによって様々です。 エネルギーセレクタに特別な設定
(例えば0 Joule)を持つ物、エネルギー設定を変更すれば内部
放電する物(当社の製品です)が代表的な例です。最近市販さ
れている製品で、独立した内部放電ボタンを持っている物は少な
い(無い?)だろうと思います。

と言うことで、市販されている製品では、内部放電中にエネルギ
がパドルに現れ無いことを規格で保証(そうしないと出荷できない)
していますので、テクニカルにはパドルを患者の胸郭に押し当て
ていても、或いは離していても(離す距離にかかわらず)OKとなり
ます。しかし、わざわざ内部放電するだけの理由が有ってそうして
いるわけですから、もし絶対安全な方法を採りたいので有れば、パ
ドルをパドルホルダーに戻してから内部放電する、と言うことになる
かと思います。

一方、AEDの機能を使わなくても、貼付電極による除細動を行う
事は有りますので、この場合はパドルが常に患者の胸郭に“貼り
付いて”いることになります。 これはこれで、十分安全であると
云えます。

ところで、フィリップス松村さんに質問です。
> -----Original Message-----
> From: satoshi.matsumura
> Subject: [acls-osaka:5350] Re: 内部放電について
> 
(中略)
> 弊社の機器の内部放電は、以下の条件時のみに自動実施されます。
> 
> 「 パドル間の抵抗値(インピーダンス)がある一定値以上、叉は以下 」
> 「 充電後、ある一定時間(弊社は30秒から1分で機種により違います)何
> も実施されない場合 」

と言うことは、
1)除細動エネルギーを充電する際には、必ずあり得る接触抵抗の範囲内で
  パドルは常に生体に接触していなければならない?
  (例えばパドルがオープンになっていると、いつまで経っても充電できない?)
2)一旦充電したが、心電図も復帰、脈も出てきたので除細動を注視したい場合
  電源を切るか、自動内部放電するまで待っていなければいけない?

のでしょうか?

////////////////////////////////////////
日本メドトロニック株式会社
フィジオコントロール事業部
松尾 英樹
/////////////////////////////////////////


From: satoshi.matsumura
Subject: [acls-osaka:5354] Re: 内部放電について
Date: Fri, 7 Nov 2003 13:02:32 +0900


松尾様、大阪ACLSの皆様、フィリップスの松村でございます。
まずは松尾様、いつもながら懇切丁寧な解説、感服いたします。
さて、ご質問の件ですが、以下に返答させていただきます。

(ご質問) 1)除細動エネルギーを充電する際には、必ずあり得る接触抵抗の範囲内で
        パドルは常に生体に接触していなければならない?
        (例えばパドルがオープンになっていると、いつまで経っても充電できない?)

(回答)  説明が下手で申し訳ありません。そのようなことはありません。パドルがオープンでも
      充電は実行されます。放電時に、総抵抗(インピーダンス)により内部放電される仕組みです。

(ご質問) 2)一旦充電したが、心電図も復帰、脈も出てきたので除細動を注視したい場合
        電源を切るか、自動内部放電するまで待っていなければいけない?

(回答)  以下の方法で解除できます。

      1)空中放電(内部放電されます)
      2)パドルをもとの位置にもどして放電(内部放電されます)
      3)一定時間後の自動放電
      4)AEDの場合には、充電中も解析続行しております。適用外になれば、
       その時点で自動解除されます。(つまりショックは不要のアナウンスとともに
       エネルギー充電は解除、内部放電されます。再度必要になれば、自動充電されます)

松尾様、これで答えになっておりますか?

フィリップスメディカルシステムズ(株) 松村 智


Date: Mon, 10 Nov 2003 13:39:37 +0900
From: 真弓俊彦
Subject: [ACLS:3790] Re:「除細動器の内部放電について」

越智先生、皆様

内部放電の有益な情報有り難うございます。

しかし、一つ気になることがあります。
AHAなどでも、充電したパドルが誤って誰かに接して放電する危険性があり、 
必ず、パドルを胸壁に当ててから充電するように教えていました。
しかし、この内部放電の際に、充電したパドルを患者から除細動器に戻した後 
に内部放電するのは理に合わないと思います。
パドルを胸壁に当てたまま、内部放電ボタンがあれば内部放電ボタンを押す 
か、除細動器のジュール数の設定を変えたりしてから除細同期に戻すべきで、 
充電したバドルをそのまま除細同期に戻すのは極力避けるべきと思います
が、如何でしょうか?


Date: Mon, 10 Nov 2003 14:05:36 +0900
From: Motofumi Yoshida
Subject: [ACLS:3791] Re:「除細動器の内部放電について」

真弓俊彦先生、越智元郎先生

たいへんご無沙汰しております。お元気でしょうか。
東京医科歯科大学の吉田素文です。

> しかし、この内部放電の際に、充電したパドルを患者から除細動器に戻した後 
> に内部放電するのは理に合わないと思います。
> パドルを胸壁に当てたまま、内部放電ボタンがあれば内部放電ボタンを押す 
> か、除細動器のジュール数の設定を変えたりしてから除細同期に戻すべきで、 
> 充電したバドルをそのまま除細同期に戻すのは極力避けるべきと思いますす 
> が、如何でしょうか?

越智元郎先生がまとめられた(いつもありがとうございます)のACLS大
阪メーリングリストにおけるディスカッションによれば、内部放電の機
能は規格なのでどの除細動器にもついているけれども、内部放電の方法
については各社、各様のようですね。
とくに真弓先生の仰る2つの方法(内部放電のボタン、ジュール数の設
定変更)だけでは内部放電ができない機種もあるように思いましたがい
かがでしょうか。

講習会で内部放電に関する知識や技能の学習目標を設定する場合、これ
らのことも考慮して、「これはかならず(必須)」とするのか「できれ
ばこれも」とするのか、知識のみとするのか技能も含めるのかなどを決
める必要があるように思いました。

現場を知らないもので恐縮ですが、この内部放電に関する知識や技能
は「なければ絶対に困る」というものなのでしょうか?教えていただけ
れば幸いです。

必ずしも幹の部分ではないけれども、現場ではこの知識がないと困ると
いうようなものであれば、パウチ化するということも考えられると思い
ましたがいかがでしょうか。

また、「なければ絶対に困る」ものであれば、やり方が除細動器によっ
て異なるのは、紛らわしい薬剤名などと同様、医療者にとって危険かも
しれません。

その場合は、各機種のやり方を講習会で苦労して指導するよりも、作っ
ていただいている会社に統一をお願いするという方法もあると思います。
(こういうのはそれこそ学会の仕事なのかもしれませんね)

いろいろ考えてしまいました。それではまた。

-- 
平成15年11月10日月曜日 13:46

吉田 素文 Motofumi YOSHIDA, MD, PhD(Medical Science)
〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学内
全国共同利用施設 医歯学教育システム研究センター(MDセンター)


From: satoshi.matsumura
Subject: [acls-osaka:5392] Re: 内部放電について
Date: Mon, 10 Nov 2003 17:20:52 +0900

大阪ACLSメーリングメンバーの皆様、フィリップスの松村でございます。実は、先日アップいたしま
した表記の件ですが、自社製品でありながらすっかり忘れていたことがありましたので、再度情報を
サマリさせて下さい。誠に申し訳ございません。

<一度充電された除細動器の内部放電機能について>

フィリップス社製除細動器に内部放電機能には、以下の種類があります。

 1)空中放電(内部放電されます)

 2)パドルをもとの位置にもどして放電(内部放電されます)

 3)一定時間後の自動内部放電

 4)両パドル間(両パッド間)の総抵抗値が一定値以上、叉は一定値以下の場合には、
  患者に付けて放電ボタンを押されても、内部放電に変更されます。

 5)エネルギー設定ボタン(回転式設定ダイヤル)を零に戻した場合には、全て内部放電されます。
  (一度充電された後も、エネルギー設定を変更すると、直ちに新しい設定値に充電変更されます。
   よって、エネルギーが少なくなった場合には、その分だけ内部放電されます。)

 6)一部新機種には、ソフトキーで内部放電ボタンが出現。これにより、内部放電可能です。

 7)AEDの場合には、充電中も解析続行しております。適用外になれば、
  その時点で自動解除されます。(つまりショックは不要のアナウンスとともに
  エネルギー充電は解除、内部放電されます。再度必要になれば、自動充電されます)

大変申し訳ありませんでした。

フィリップスメディカルシステムズ(株)
松村 智


Date: Mon, 10 Nov 2003 18:41:36 +0900
From: Motofumi Yoshida
Subject: [ACLS:3794] Re:「除細動器の内部放電について」

吉田です。訂正します。

吉田:
> とくに真弓先生の仰る2つの方法(内部放電のボタン、ジュール数の設
> 定変更)だけでは内部放電ができない機種もあるように思いましたがい
> かがでしょうか。

越智先生ご紹介の公開ウェブの投稿を見たときに、ジュール数の設定を
変えるだけでは内部放電できない機種があるように見えたので、そのよ
うに書いたのですが、その後ACLS大阪のML上で同じ方より訂正(追加)
があり、当該機種において「エネルギー設定ボタン(回転式設定ダイヤ
ル)を零に戻した場合には、全て内部放電される」とのことでした。よ
って、上記の発言は訂正します。

それはともかく、真弓先生のご提案は、「内部放電は除細動器にパドル
を戻してからではなく、胸壁に当てたまま行うべきではないか」という
ことを仰っているので、これについて私見を述べます。(他の皆様もご
意見をお願いします。)

前のメールにも書きましたように、私は現場を知りませんが、全ての機
種で胸壁にパドルを当てたまま内部放電ができるなら、真弓先生のご意
見に賛成です。

逆に、機種によっては胸壁にパドルを当てたまま内部放電ができないの
であれば、臨床現場では自施設の機種にあったやり方で内部放電するこ
とになるのだと思います。
また、この場合の指導は一応講習会で使用した機材に応じて内部放電を
解説または実習したあとに「機種によって異なるので自施設の取扱説明
書を確認してください」となるでしょう。

ここから先の議論は、前のメールに書いたとおりです。臨床現場でどう
するのか、さらに講習会でどのように指導するのかという、二つの議論
がありえると思います。

吉田はどちらかというと後者の議論をしたいですが、それはいずれまた
別メールで。




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