AED による院内初の救命例

救急関連メーリングリストより(2003年10月)

ウェブ担当者:県立新居浜病院麻酔科 越智元郎
(本資料の著作権などに関する責任はすべてウェブ担当者が負います。)


 目 次
               (発信者の敬称は省略させていただきます) 

林 [eml-nc3: 2593] AED による院内初の救命例!!
氏家[eml-nc3: 2603] Re: AED による院内初の救命例!!
林 [eml-nc3: 2604] Re: AED による院内初の救命例!!


From: Hoei Hayashi
Subject: [eml-nc3: 2593] AED による院内初の救命例!!
Date: Wed, 1 Oct 2003 01:03:37 +0900

 みなさん、こんにちは。岡大救急部の林 峰栄です。

岡山大学附属病院は6月から新しい病棟が建ち、その各階の詰め所の横にAEDを設置
しています。このAEDによる院内初の救命例が出ましたので報告させていただきます。

昨日の朝、入院中の中年男性から調子が悪くなったと詰所にナースコールあり。看
護師が行ってみたところ、心肺停止状態。すぐに医師を呼び、スタッフに救急カート
とAEDを持ってきてもらった。看護師がパッドを貼り、ボタンを押したところ、「シ
ョックが必要です。」とのことで除細動施行。1回のショックで脈拍は再開。意識も
徐々に回復。ここまで5分以内だったようです。

夜、患者さんのところへ行った時には、すっかり元気でベッドサイドにも立てる状態
でした。もちろん意識は清明で四肢の麻痺もありません。

もともとDCM(拡張型心筋症)とSSS(洞不全症候群)がありペースメーカーは植え込
まれている人でしたが、今回のようなエピソードは初めてで、今後はICD(植え込み
型除細動器)の適応となります。

AEDには記録カードが入っていて、さっそく見てみましたが、スイッチが入れられて
34秒後にはショックが施されていました。

この看護師さんは、8月に院内で開いたprimary ABCDの講習会に参加されてい
たとのことで、そうでなければ、AEDは現場に来なかっただろうし、看護師さんもボ
タンを押していなかったでしょうから、院内における啓蒙活動が実を結んだ結果とい
えると思います。

さらに院内の医師・看護師へ啓蒙していかなければいけないなと思いを新たにさせら
れました。本当に嬉しい症例でした。


Date: Wed, 1 Oct 2003 17:23:18 +0900
From: Yoshihito Ujike
Subject: [eml-nc3: 2603] Re: AED による院内初の救命例!!

氏家@岡山大学救急医学です。

医局の林峰栄が報告しましたように、この6月設置した院内AEDによる蘇生が非常に
良い形で成功しました。
この件に関して、看護師による除細動に関して実施を迷われている施設もあるようで
すが、岡山大学では6月に新病棟の各フロアーにAEDを設置し、7月の医学部付属病院
病院運営委員会(診療科長会議)で看護師による包括支持下の除細動の許可の了解を
取りました。
それを受けて、8月11日に主に看護師対象のAED講習会を開催しました。
看護部も反対はなく積極的でした。

実は、本日から岡山大学は医学部・歯学部付属病院に統合されたのですが、30分前に
終わりました第一回病院運営委員会で、歯学部も含めて看護師の包括支持下の除細動
はOKであるとの了解を確認しました。
病院長はじめ各科教授も、非常によいことだとの認識で反対は一人もなく、歯学部や
外来にも配置して欲しいとの声が寄せられています。

各医療機関でも早急に救命できる命を一人でも多く救える体制を整えて頂きたいと思
います。

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氏家良人 Yoshihito Ujike, M.D., Ph.D.
勤務先:岡山大学大学院医歯学総合研究科
    生体制御学専攻・機能制御学講座・救急医学
勤務先住所:〒700-8558 岡山市鹿田町2-5-1
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From: Hoei Hayashi
Subject: [eml-nc3: 2604] Re: AED による院内初の救命例!!
Date: Wed, 1 Oct 2003 18:35:26 +0900

みなさま、こんにちは。岡山大学救急部の林 峰栄です。

今朝流した『AED による院内初の救命例』
のメールに非常にたくさんの方々から転載許可のメールをいただいており、
反響の大きさに戸惑うと同時に、皆さんと一緒にこのGOOD NEWSを共有できることを
嬉しく思っています。

日本全国で、多くの人が心肺蘇生法の啓蒙のためにがんばっていますが、今回のエピ
ソードは、その全ての人の努力が報われる話だと思います。

8月に大学病院の院内でおこなったPrimary ABCDの講習会は、AEDに対する意識の壁を
取り除くことを主たる目的としていました。
この講習会に出席していなければ、おそらくAEDは現場に来なかったでしょうし、
あったとしても使われていなかったでしょう。また、もし、講習会には参加していた
としても、病棟にAEDがなければ、この患者さんは後遺症なしには助からなかったか
もしれません。

今回は、看護師がAEDを使って助けたということがすごいと思っています。
6月30日に厚生労働省から出た『包括的指示の下で看護師もAEDを使ってよい。』とい
う回答が生かされたと思います。
さらに広めていかなければいけないと想いを新たにしているところです。

もちろん記事は自由に転載していただいて結構です。
今回のエピソードが少しでもAED普及の手助けになればと思います。


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