■救急救命士による特定行為の再検討に関する研究班
病院(手術室)実習ガイドライン(案)
平成14年度厚生労働科学研究『救急救命士による特定行為の再検討に関する研究班』
ウェブ担当者:県立新居浜病院麻酔科 越智元郎
(本資料の著作権などに関する責任はすべてウェブ担当者が負います。)
□関連資料:「気管挿管に必要な講習追加カリキュ
ラム」
1.研修:気管挿管の手術室内実習
(1)方法・内容-
実習受講資格
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救急救命士の資格を有し、基礎研修(座学)を受け、所定の試験に合格し、受講終了認定書
を有し、地域メディカルコントロール(以下MC)協議会と調整の上、施設長が実習を認めた者。
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受け入れ施設基準
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CPA症例を受け入れた経験のある二次以上の救急医療を行っていること。
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地域MC協議会が選定した施設。
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あらかじめ当該施設長,並びに麻酔科の長が実習受け入れを了承している。
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日本麻酔科学会認定専門医(旧指導医)が麻酔科の長として勤務している。
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実習生の受け入れの目安
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年間500全身麻酔症例につき1名程度の救急救命士を受け入れることを目安とする。
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実習指導の責任者
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日本麻酔科学会認定専門医(旧指導医)の責任の下に行うこと。
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対象症例
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当該病院手術部(室)において行われる成人のASAクラス分類1、2の全身麻酔症例で
患者から同意が得られた症例。
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実習内容
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救急救命士が行う実習は麻酔導入時マスクによる自発呼吸下酸素吸入、導入後のマスクに
よる人工呼吸から喉頭展開、気管挿管、管の固定、人工呼吸再開までを原則とする。
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薬剤投与などは全てを担当する麻酔科医が行う。
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実際の行為は担当する麻酔科医の指導による。
(2)実習受け入れ方法
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病院実習受講資格要件を満たし、病院実習を希望する救急救命士を有する消防組織が地域M
C協議会に対し文書で推薦をする。その際、講習修了証のコピーを添付する。
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地域MC協議会、実習受講の対象者を承認する。
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あらかじめ院長名で救急救命士実習受け入れ病院であることを院内に明示しておくことが望
ましい。
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受け入れ病院は救急救命士が実習生であることが患者に明確になるよう、名札等を付けさせ
ることが望ましい(見学生、研修生等)。
(3)インフォームドコンセントの取り方
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実習前日までに、直接指導する麻酔科医は実習希望救急救命士を伴い、麻酔科医の指導と責
任の下に、患者に実習内容について十分な説明を行った上で、文書による同意を得る。同意書は複写
式(コピーでも可)とする。その際、少なくとも、次の各点が説明されなければならない。
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麻酔科専門医の厳重な指導と責任のもとに行われ、患者の安全が確保されていること
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実習者は、救急救命士資格取得者であること
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実習者の気管挿管施行は、1回に限ること
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患者本人が実習を拒否しても、その後の処置に何ら不利益も生じないこと
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インフォームドコンセントを得た同意書の原簿をカルテに貼り保管する。なお、写しを患者
に渡すことが望ましい。
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同意書とは別に医師診療録に説明の内容、患者側の諾否につき簡単に記録し、麻酔科医、救
急救命士が連名で署名する。
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麻酔終了後、適切な時期に記録内容を提示しながら患者御本人への挿管時の状況について説
明する(麻酔科医のみで良い)。
(4)実習の記録
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麻酔記録に挿管担当○○救急救命士と明記するとともに、挿管時の経過を記載する。
(5)事故発生時の責任
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指導内容および指導態度等に起因する注意義務違反については指導医の責任とする。
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実施に伴う事故の責任は実施者にあるものとする。
(6)修了証書
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病院修了証書施設長は次の条件がそろった場合に施設長名で修了証書を発行する。
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30症例以上の成功症例を経験した者
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註:成功とは、患者に有害結果を与えることなく、1回で気管挿管をできたことをいう。
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当該施設の実習指導責任者が実習態度、挿管技術、倫理観、他の職種との協調性など総合的
に判断し、実習を終了して現場で医師の具体的な指示のもとに気管挿管を行っても良いと判断し、施
設長に対しその旨申告した者。
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実習の中断、中止
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実習を開始した後も、当該救急救命士に気管挿管を行わせることは不適切であると麻酔科責
任者、病院長が判断した場合は実習を中断または中止することができる。
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この場合、消防組織の推薦者による再度の検討がなされ、再度推薦が適当と判断された場
合、他に受け入れ施設があれば実習を再開することができる。その際、新規開始として取り扱う。
(7)再教育
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3年ごとに再教育を行う。
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3年間に実際に気管挿管症例が6例とその他の器具による気道確保の症例が6例以上ある救
急救命士は免除とする。
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上記に該当しない救急救命士は病院において気管挿管の再実習を行わなければならない。期
間は3ヶ月に3例以上とする。
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免除された及び再実習を受けた救急救命士はいずれもその証明書を所属長に提出する。所属
長はとりまとめてMCS長に提出する。
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再教育が適切に行われない場合等については、地域メディカルコントロール協議会は当該救
急救命士の気管挿管施行の中止等についても検討する。
以上については、今後の病院実習の進捗状況を観察しつつ、実情に合わせた教育体制となるよう、
適宜調整すること。
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