目次
(2)確実性・安全性を高める工夫 〜使用者側の問題〜
1.AEDの操作手順
2.除細動効率に影響する因子
3.電極パッド装着における具体的注意点
4.AED使用時に特別な注意を要する状況
5.AED使用時の安全確認〜二次災害防止〜
□参考文献
1997年:AHA小委員会
AEDの安全性と有効性に関する勧告発表2)
*不整脈解析精度では、VF,rapid VTを通電の必要ありと高感度に判断す
ること、除細動が有害な調律に対して通電不要と判断する高い特異度が求
められている。
現時点でAEDのハード面の安全性・確実性はほぼ確立。AEDの確実性・安
全性に関しては、実際に使用する側の問題つまり人為的要因の影響の方が重
要。以下は傷病者の元にAEDが準備されて以降の注意点。
AEDには音声ガイドによる操作手順の説明やトラブル解決のための忠告、
あるいは手順の簡素化などの工夫がなされているが、できるだけ早期の除細
動を施行するためには接続方法を含め4つの基本的操作手順4)-8) を理解して
おく必要がある(表2)。
AEDによる通電のためには、以下の接続が完成した状態で解析が行われるこ
とが必要。
AEDが解析を行わない場合は、上記の各接続を再確認。
除細動は、ある短時間に心臓に適切な大きさの電流が流れることにより、
一旦心筋細胞を脱分極させることでVF, VTを停止させる。体外式除細動で
は、心臓を流れる電流は選択されたエネルギー(J)と抵抗つまり経胸腔イン
ピーダンス(ohm)により決定される。
*通常、人の経胸腔インピーダンスは15-150 ohm、平均的成人で平均70-80
ohm 4)。経胸腔インピーダンスが非常に大きい場合、除細動に必要な電流
が心臓に流れない可能性がある。経胸腔インピーダンスは、電極の大きさ、
電極と皮膚間に用いられる導電物質、除細動回数、前の除細動との間隔、
電極間の距離(胸郭のサイズ)、電極-胸部間の接触圧などに左右される4)。
AEDの使用で操作者側の行為の影響が大きいのは、電極パッド装着に関連
するものと考えられる。
AEDの電極はシール式であり、ハンズフリーである。
なお、マニュアル式除細動に比べ、経胸腔インピーダンスに影響する電極と皮膚
間に用いられる導電物質、電極-胸部間の接触圧に関連する通電量低下の可
能性は少ないと考えられるが、以下に示すような注意は必要。
1)装着部位
装着部位のずれがどの程度除細動効率に影響するかは不明だが、有名なカ
ジノでのAED使用実録ビデオあるいは漢那個人のAED啓蒙経験から、特に非
医療従事者の場合、装着部位を教えたとしても意外に正しい所に装着しない
印象がある。また医師に関しても、"Apex"パッドを乳頭外側ではなく、乳頭
付近としている場合が多いような印象あり。
2)皮膚への密着度
BLS, ACLSのテキスト類では、AED 使用の際、以下のような特別な状況が
ないかを確認しなければならないとしている4)-8)(表3)。 1)8歳以下(体重25kg未満)の小児
2)濡れている傷病者
ただし、除細動が1分以上遅れないように注意5)。
3)経皮吸収型薬剤パッチ貼付中の傷病者
4)植込み型ペースメーカーまたは除細動器挿入中の傷病者
1)感電防止のための安全確認
「1.放電します。離れてください。」
「2.皆さん、離れてください。」
*気道管理担当者は、電極あるいはパドル周辺に酸素が流し放しになってい
ないことを確認する。
「3.皆さん、離れてますね。」
操作者は、上記の文言を一字一句違わず警告を発しなくても構わないが、
通電時には必ず、周囲の者が確実に患者に直接あるいは間接的に接触してい
ないことを確認する。
2)除細動器使用時における失火防止
失火は、(1)着火点、(2)着火点付近の酸素濃度が高いこと、(3)可燃性物
質の存在という3つの条件が揃った場合に生じる。除細動による失火の予防
は比較的簡単なものであり、基本的には、除細動器の取り扱いに関わる過失
予防と酸素供給の過失の予防に大別される。詳細についてはCurrents2002
年秋号(http://216.185.112.41/currents_issues.html
からダウンロード可)を参照。
参考文献
■国内のAED 関連状況
■「AEDの確実性と安全性」
(2)確実性・安全性を高める工夫 〜使用者側の問題〜
(機器を使用する個人あるいはその社会的監視体制などソフト面の問題)
AED 本体−ケーブル−電極パッド−傷病者
"Apex":電極の中心が左乳頭外側の中腋窩線上(写真1)。
まず操作者自らが、患者自身またはストレッチャーなどから離れる。