アナフィラキシーショックの対応

(救急医療メーリングリストemlより)

資料作成:2003年 1月12日、四国がんセンター麻酔科 越智元郎


Date: Sun, 12 Jan 2003 06:07:00 +0900
Subject: [eml-nc3: 0114] アナフィラキシーショックの対応
From: "Tetsu Okumura, M.D., Ph.D."


順天堂の奥村です。
知ってる人には、当たり前の事かも知れませんが、、、

アナフィラキシーショックの対応は、救急医であれば、
だれでも対応したことのある、基本的な疾患ですが、
結構、救急医、特に若い先生方には知られていないのでは、
と思う情報があります。

1)ベータブロッカー服用者は、造影剤アレルギーのハイリスク群である。

これは、今では、Washington Manualにも書かれているので、皆さま、御存知
だと思いますが、日本の病院では、放射線科の先生方が御存じない場合もあり、
造影剤のインフォームドコンセント、承諾書、予診票などに、
ベータブロッカー服用者であるかを確認するプロセスが抜けていることが
気になります。ちなみに、ベータブロッカー服用者の
アナフィラキシーショックでは、エピネフリンを使わずに、グルカゴン
を治療に使います。

Lang DM, Alpern MB, Visintainer PF, Smith ST.
Increased risk for anaphylactoid reaction from contrast media in patients on
beta-adrenergic blockers or with asthma.
Ann Intern Med. 1991 Aug 15;115(4):270-6.

2)アナフィラキシーショックの治療に使うエピネフリンは、筋注する。

通常は上腕(三角筋)で可であるが、より重症時には、大腿外側
(外側広筋)に筋注する。

未だにHarrisonやUpToDateやWashington Manualでも、エピネフリンは、皮下注、
若しくは、筋注となっていますが、2001年のAAAAI(米国のアレルギー学会)
で、論議になり、皮下注では、血中濃度が上がるのに時間がかかるため、筋注が
推奨されることになった様です。また、上腕よりも大腿外側の方が、血中濃度
の上がりが早いというエビデンスがあり、より重症時には、大腿外側に筋注
することになりました。静注は、不整脈を来しやすいので、first choiceには
ならないようです。まずは、アナフィラキシーでは、5分毎に筋注を繰り返し、
それでも血圧と呼吸症状がコントロール出来なければ、静注(0.1mgずつ数分かけて)
するということになっています。

J Allergy Clin Immunol は、AAAAIの学会誌ですが、この雑誌にReviewが載って
います。これが、AAAAIの公式見解といえるでしょう。
(J Allergy Clin Immunol 2002;110:341-8.)

「ILCORのガイドラインズ2000にも、これと同じ記載がみられ、
上記文献も、ILCORのガイドラインズ2000を引用しています」

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