東海村と各地の放射線量調査について

―東海村の農産物 私達からの安全宣言―

皆様からのご意見をご紹介します。
(ご意見の送付先は gochi@m.ehime-u.ac.jp です。)


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目 次


Aさん(子供たちのご両親のお一人)
Date: Fri, 8 Nov 2002 23:50:53 +0900
Subject: [ibarakiems.2621] 臨界事故から3周年住民の立場から


越智元郎@四国がんセンター麻酔科さん、皆さんこんばんは。
Aです。(キーワード:小学生6年生のPTSD)
長文で申し訳ありません。興味のあるかただけお読みください。

>「ウラン加工施設臨界事故関連緊急時医療活動・健康影響調査等報告書」
 (平成12年3月1日茨城県保健福祉部保健予防課)

この調査に該当する方々については存じませんが、
私の自宅は事故現場から500メートル以内にあり、
家族全員、事故の時は屋外にいたため、事故後に、
希望者は血液検査を受けられることになり、
行動調査を含め調査と検査を受けました。

> (引用部分省略)

事故1年後に村が主体となって原子力災害訓練が行われました。
私は・・・・赤十字ボランティアの立場から訓練に参加
しました。訓練中に、バスで避難した住民が避難所に次々と
降りてくる光景を見た瞬間に、涙が止まらず心の中に閉ざされていた
物を感じました。

災害対策本部設置、屋内退避。しかし、在宅福祉が当時のメインの仕事
でしたので、このようなときにこそ訪問し、障害者に情報を伝え、ケアー
しなければなりませんでした。住まいが事故現場のすぐ近くの寝たきりの
方もいましたし、1人では外に出ることも出来ない方、難聴で情報が
全く入らない方もいました。ライフラインを守っている使命感と、
見えない恐怖から来る不安感。そして、幼い子供達への親としての
思い。

> (引用部分省略)

「事故による放射線は、健康に影響を与えるものではなかった」確かに
そうかもしれません。

今年の夏に、小学6年生になる娘とその友達4人で、
「東海村の放射線量と各地の放射線量」という調査をしました。
どうしてこの調査をしたかというと、子供達には
「東海村は臨界事故があったし、原子力関連施設が多いから、
他の地域より放射線量が高いはず。だから、東海村で
採れた野菜も危険だから食べたくない。」
という想像があったからです。

親として、この子供達の心に抱える不安を何とかして
解消してあげないといけないと思いました。
仕事の無い日に5人の子供達を連れて、子供達が
やる事に足となってついていきました。

5人の子供達は皆事故現場の近くに住み、事故後はそれぞれ
自宅を離れました。自宅に帰ってきたときには、涙を流して
不安を訴えた子供もいました。血液検査も親は安心する為に
受けたのですが、子供は「こんなことまでしなければいけない
重大な事」と受け止めたのです。

調査をし、原子力の専門家から話をききました。「安全宣言」が国から
出され、農作物の安全が確認されたいきさつを村の担当者に
直接聴き、徐々に子供達から不安な気持ちが消えていってゆくのが
わかりました。

最終的には子供達自ら「私達からの安全宣言」という言葉が
まとめの言葉に表現されていました。

表面的には楽しく気楽に生活しているように見えていた
子供達ですが、本当は大きな不安を心の中にしまいこんで、
不安なまま3年が過ぎていたのだと言う事に気がつきました。
自分達で自分達の不安がどこから来る物なのか、話し合い、
原因を追求して、自分達の手で不安を解消した子供達の
表情はとても良いものでした。

「東海村は危険な所?」と他の地域の方に問われても
たぶんこの子供達は自信を持って、その問いに答える
ことができることでしょう。

村では住民の心のケアーを臨床心理士の先生にお願いし、
住民の心の訴えに対応しました。

自分の子供をみていて、家庭でのケアーも大切であったことに
気がつきました。

まとまりの無い話をしましたが、健康被害という
観点からすれば、心の健康も大切なことかと思いまして
書きました。

水野義之さん(京都女子大学 現代社会学部)
Date: Wed, 20 Nov 2002 08:09:54 +0900
Subject: [eml-nc2: 4223] Re: 4112 臨界事故から3周年住民の立場から
(子供たちの報告書をウェブに)


水野義之@京都女子大です。

At 10:45 PM +0900 02.11.19, Genro Ochi wrote:
> 東海村の小学生が書かれた報告書
>「東海村と各地の放射線量調査について ー東海村の農産物 私達から
>の安全宣言―」を以下のウェブに収載させていただきました。

貴重な記録を読ませていただき、感謝いたします。

通読して、どうしても(あんな形に、定型化された報告のように
見えるだけに。見かけが、です。)批判的に、ここはこうすべきだ、
とか、ここはもっとこうまとめるべきだ、とか、学生レポートを
採点する目で、見てしまって、最後まできましたが、そのすべての
数字も、社会科的なまとめも、子どもたちの心の成長と社会への、
自然への理解にかけがいのない知識となって、そのすべてが、
最後の安全宣言に必要だったんだろう、と思うと、涙が出てきます。

私も、子どもに、おとなが伝えたいことを伝えることの難しさを
いつも感じているだけに、これを指導、というか、ここまでの形にされた
関係者の皆様、きっと多くの方々が協力をされたのだと思います、
に感謝、といいますか、敬意を表します。

学生たちにも、Web掲示板で、このレポートの紹介をしましたので、
何かあれば、ご紹介をすることもあるかもしれません。この学生達は、
大学の1回生で、現在、原子核素粒子物理の基礎、放射線物理の基礎、
放射線の影響とその計測学、放射線測定の実習、データ収集、
データの統計分析を(4回の講義で)学んでいる途中です。

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     Yoshiyuki MIZUNO  水野義之  京都女子大学 現代社会学部
     http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~mizuno/


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