指名教育セミナー:蘇生医学の教育 Update

わが国における心肺蘇生法の普及を願って

―日本蘇生学会ビデオの紹介―

国立病院四国がんセンター麻酔科 越智元郎

日本蘇生学会第21回大会、2002/11/15)


 私からは「わが国における心肺蘇生法の普及を願って」と題し、この春 刊行された日本蘇生学会ビデオの紹介をさせていただきます。


 ビデオのタイトルは「教職員と保護者のための心肺蘇生法」で、スライ ドのシンボルマークは日本蘇生学会監修のテキスト「教職員のための心肺 蘇生法」のそれを使わせていただきました。


 スライド右はビデオパッケージの表表紙で、左は裏表紙のイラストです。 ビデオは「導入:救命の連携」「第1部:成人と8歳以上の小児の心肺蘇 生法」、「第2部:8歳未満の小児(乳児を含む)のための心肺蘇生法」、 「参考:溺水への対応と着衣泳の意義」の4部からなり、45分のビデオと なっています。


 本ビデオ制作のきっかけですが、2001年5月、日本蘇生協議会(JRC)が 新しいCPR指針を刊行し、同年11月、日本蘇生学会は教書職員向けCPRテキ ストを改訂しました。さらに昨年の日本蘇生学会総会で、数年前に学会が 監修した、教職員向けCPRビデオも改訂することが決まりました。その後、 学会事務局や心肺蘇生法普及委員長から私にビデオ改訂の仕事を委託され ましたのは、私が大学病院医療情報ネットワークの衛星遠隔講義などを通 じ、CPRビデオ制作にたずさわっていたためであったと思います。


 本ビデオ制作の方針としてはまず、2002年度早々に何としても全国配布し たいと考えました。これは同年4月から各団体が開始する新しいCPR指導 に様々な混乱が予想されたためです。また、教職員へのCPR普及には日本 体育・学校健康センターとのタイアップが重要であり、6月から同センタ ーが開始する教職員向け講習会に間に合わせたいと考えました。さらに、 学校現場が情報を欲しがっている着衣泳に関する情報も入れ、水泳シーズ ンまでにビデオを配布したいと考えました。


 次に、安価で多数の人に利用されるビデオにしたいと考えました。前回 の蘇生学会監修ビデオはVHS、約25分のものですが、1本 29,000円以上の 価格設定となっていました。このビデオは数年間で、教材としてはベスト セラーとされる 1,000本を販売されたとお聞きしています。しかし、CPR 普及の観点からは、できるだけ安価なものとして、多数の人に利用される ことが優先されます。私は価格を抑えるために撮影、ナレーション、編集 などをCPR普及にたずさわるボランティアに依頼し、なおかつ高品質のビ デオを作りたいと考えました。さらに、ビデオを著者割引を利用して頒布 すること、雑誌やインターネットを通じて積極的に広報することなどを計 画しました。


 第3に、このビデオを教職員に限らず幅広い層の市民をターゲットにし たいと考えました。このビデオはわが国では、ガイドライン2000に基づく 新しいCPRを伝える、初めての市民向けビデオとなります。このビデオを 教職員に限らず、保護者を通じて家庭・地域でのCPR普及のきっかけとし ていただきたいと考えました。また、乳児を含む小児へのCPRの情報も入 れ、保育関係者へのCPR普及の一助とすること。また、消防関係者や、医 療関係者にも参考にしていただけるビデオをめざしました。


 第4に、マルチメデイアを用いた双方向性の情報提供をめざしたいと 思います。そのためにはまず、CDR、DVDなどのデジタル版刊行も視野に 入れる必要があります。デジタル版には学校での事故事例の情報、各団 体が制作したCPR普及のためのアマチュアビデオなど、多彩な関連情報を 収載したいと思います。また、ウェブを通じてビデオ内容の更新に関す る情報を提供、さらに学会心肺蘇生法普及委員会などが受け皿となり、 ウェブやメーリングリストを通じて市民やCPR普及関係者との双方向性 の交流をはかりたいと思います。


 今後の目標ですが、

 1)全国で多数利用していただけるよう、学校関係者を中心に広報を はかりたいと思います。蘇生学会会員の紹介であれば著者割引価格での 配布が可能ですし、ボランティアによる「母校に贈ろうキャンペーン」 ではさらに安価に学校関係への寄贈が可能となります。

 2)来年度にはCDR版またはDVDによるデジタル版の刊行をめざしたい と思います。

 3)ビデオ利用者や会員への情報提供を目的とした日本蘇生学会ウェ ブの運用を提案したいと思います。


 以上、会員の皆様におかれましては今後とも、心肺蘇生法普及委員会 の活動にご協力を宜しくお願いいたします。


 最後に、日本蘇生学会ビデオの5分間のダイジェスト版をご覧いただ きたいと思います。



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