報告書では愛媛県に大きな被害をあたえる恐れのある地震として 5つの想定地震について、被害のシミュレーションをしています。 このうち4つは愛媛県にある活断層が活動して発生するもので、残 る1つは高知県沖の南海トラフが動いて発生する、いわゆる「南海 大地震」です。前者については発生時期を予測することは困難と言 われています。一方、南海大地震はこ れまで100〜150年という短い周期で繰り返されてきたもので、次回 は2040年前後に発生することが予想されています。
今回試算された震度としては、活断層の活動による4つの想定地震で は震度5強から6強の地震が広い範囲で発生し、南海大地震では震 度5強から6弱の地震が予測されています。またこの地震では西海 町、吉田町など広い地域で4〜5mを超える津波の発生が予測され ています。地震による人的被害としては、想定地震ごとに全県で7,000人から47,000人に及ぶ死傷者が発生すると考えられています。
1)建物の被害
5つの想定地震で、揺れまたは液状化によって建物が全壊または
半壊となる率は愛媛県全体で21〜39%であり、南海大地震による全
壊率(10%)、半壊率(29%)が最も高いと予測されています。
2)地震火災による被害
冬の18時に地震が発生した場合の各想定地震における出火件数は
110〜310件、焼失棟数は30棟〜11000棟と計算されました。冬の2時に地
震が発生した場合の焼失棟数は10〜15棟程度までと予測されていま
す。
3)交通施設
4)ライフラインと通信
イ.電気: 5つの想定地震で停電となる戸数は全体の7〜13%程度と考えられますが、伊方原発の原子炉の一部が震度5程度の揺れを感知して停止することも予想され、その場合はもっと広い範囲で停電になると考えられます。
ロ.上水道: 予想される断水率は想定地震によって22〜58%と計算されています。その復旧に要する期間は26〜38日と予測されています。
ハ.ガス: 都市ガス、LPガスの機能支障率は想定地震によって1〜7%程度と予測されています。
ニ.通信: 一般電話、携帯電話とも発災後数日間は著しい輻輳により利用が困難になると予想されています。インターネットも、専用線自体は地震に強いと言われていますが、電力施設、電話施設に依存するシステムの場合、甚大な被害が発生している地域では発災直後から2〜3日間は利用は困難になると予想されています。
はじめに述べましたように、想定地震1および5では全県で4万人を超え
る死傷者が発生することが予測されています。この中でも重要なのは
集中管理を要する重傷患者(即死ではなく集中管理の後に死亡する患
者も含みます)の数、そして入院治療を要する中等傷患者の数です。一方
で県内の病院の重傷患者受け入れ能力は、ICU病床数と重症加算病
床数の和に、病院の損壊予想、非災害時の空床数率などを加味して試
算しています。そして想定患者数と受け入れ可能数の比(受け入れ率)
が1を越える場合は、受け入れ能力を超えた患者を収容せざるを得な
いことを意味しています。
試算の結果として、想定地震1および5(南海大地震)では、予想される受け入れ能力の18倍以上、実数として県内総数で 800人以上の重傷患者を余分に受け入れる必要があります。中等傷患者についても 1,700人以上の過剰となっており、収容能力を超えた重傷患者(搬送に耐えられる患者さん)については、ヘリコプタ−搬送などで被災地外の救命救急センターなどに積極的に搬出する必要があります。
医療機関の損壊などのために日常的な医療対応を受けることができな
くなる患者は、入院対応で6,000〜12,000人、外来対応としては23,000〜45,000人と予測されました。
3)住宅機能支障
避難所生活を余儀なくされる人は、発災翌日で17万〜34万人、1ヶ月
後で12万〜23万人と予測されます。
4)飲食機能支障
イ.飲料水: 被災地を中心に市町村などの災害時用確保水量を超えた給水需要が生じますが、全県的には需要を満たすことができると予測されています。
ロ.食料: 発災後2日間の食事提供必要量の不足分(市町村などの備蓄を越える量)は全県で120万〜240万食に達します。
1)大地震への備え
非常食や水、懐中電灯、携帯ラジオ、乾電池、消化器などの準備
については以前から言われていますが、今回の試算でも断水や食料
の不足、電話の輻輳、火災などが高い確率で起こることが指摘され
ています。家庭や職場でも、防災の日に非常備品を確認したり新し
いものと交換したりすることが有意義だと思います。
また、自宅や職場の塀を生垣に変えたり、家具の固定化、家の改築・増築などの際に耐震用の補強をするなど、家屋の強化も可能であれば進めていただきたいと思います。
消防本部や赤十字で心肺蘇生法・止血法などの応急処置を習って
おくことも重要です。津波が来るおそれがある地域では家族全員で
「着衣泳」(着衣で靴を履いたまま背浮きをすると、かなりの潮流
があっても浮いて呼吸を維持することができます)を習っておくと
役に立つかも知れません。一方、ほうぼうで沢山の人が家屋の下敷きになったり、大
けがしますので、地震の直後に救急車に来て貰えないことが少なく
ないことをご理解下さい。
2)再確認! ぐらりと揺れたら
わたしたち自身が地震発生時に取るべき行動について再確認する
とともに、子供達にも教えましょう。
3)家族が家屋などの下敷きになったり、大けがをしたとき
4)傷病者を救急病院などに運ぶのは?
イ.救急車が来ない場合に、自動車・担架などで傷病者を病院に運ぶ必要があるのは以下のようなときです。
(*運ぶときに脊髄の損傷をきたすことがあります。身体をねじらないよう静かに傷病者を移動させましょう。)
ロ.以下の場合、まずは安全な場所に待機し、地域の被災状況や救
護所設置などの状況をみてから判断することが勧められます。
5)被災地の病院で(知っていて下さい!)
6)津波への特別な配慮
2.予想される被害(人的被害を除く)
3.予想される人的被害
想定
地震死亡 重傷 中等傷 軽傷 予測患者数
(合計)受入率
(重傷)過剰患者数
(重傷)1 2,453 606 2,959 39,242 42,806 18.4 800 2 1,477 456 2,234 30,447 33,137 12.0 550 3 1,149 416 2,051 27,850 30,417 10.0 480 4 773 402 1,978 26,664 29,044 8.8 420 5 2,556 648 3,174 43,189 47,011 19.3 860
2)日常受療困難者数4.市民の「防災力」を高めよう
5.まとめ