高円宮殿下急逝の経過について

救急医療メーリングリスト(eml-nc)より

2002年12月12日、資料作成 越智元郎(国立病院四国がんセンター麻酔科)


 高円宮殿下急逝の経過について、日本ファーストエイドソサセテイ
岡野谷純氏よりお送りいただいた情報を転載させていただきます
(岡野谷氏の投稿に続く越智の投稿も収載させていただきました)。

           ☆ ☆ 

Date: Tue, 10 Dec 2002 11:10:05 EST
Subject: [eml-nc2: 4483] Re:循環器学会がPAD提言

みなさん 岡野谷@JFASです。

「医師以外も除細動器の使用容認を、厚労省に要請」
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20021210AT1G1002110122002.html

この提言って循環器学会だけでなく、蘇生学会、麻酔学会、救急医学会、
その他の支持学会や消防庁、私たちのような民間指導団体などがこぞって
提出すると、より効果があるのではないでしょうか。

現在、一般市民の「AED講座への興味」は広まっています。如何に
操作自体が「簡単」か、一度覗いてみて下さい。

さて、本日 高円宮家よりお電話をいただきました。私たちの活動を
妃殿下が知ってくださり、お声をかけてくださったのです。

殿下の倒れられた時のことをお話いただきました。皆様にもお伝えしてよい
とのご許可を戴きました。

当日、殿下が倒れられたのはスカッシュのトレーニングの最中だったことは
皆様ご存知の通りです。
倒れられた時には周囲の方々は一瞬何が起こったのかわからず、殿下に
声をかけられたそうですが、呼吸がないことがわかり、30秒以内には
バイスタンダーCPRを開始されたとのことです。

カナダ大使ご本人、スカッシュのトレーナー、皇宮警察の警察官が3名で
交代しつつCPRを施し、救急通報をされました。
カナダ大使館にはAEDは配備されておらず、5分もすれば救急隊が到着
するとのことで、それまでCPRを続けていらしたそうです。

救急隊が到着し、現行のAED(侍女長のお話では「とても大きな機械」という
表現でした)を持っていらして装備したとのことでした。

その後、慶応病院への搬送に至ったことは新聞にもあるとおりです。
病院選定の方法は宮内庁としては「通常ルーチン」だそうです。どなたかの
ご質問にありました宮内庁病院は救急の際の病院ではなく、内科、外科、
産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、泌尿器科、歯科、放射線科の8科目の
診察を行なう国立病院です。皇族が倒れた場合は、やはり地域の最も近い
救命センターに搬送されるとのことでした。

以上、皆様がご心配された、当時の状況についてお答えをいただきました。
また、救命法の普及という尊い活動をなさっている皆様にくれぐれも宜しく
お伝え下さいとのことでした。

では。 岡野谷@JFAS 拝


Date: Wed, 11 Dec 2002 20:29:05 +0900 Subject: [eml-nc2: 4493] Re: 4483 循環器学会がPAD提言(高円宮殿下急逝の経過から)  岡野谷さん、皆様、四国がんセンターの越智です。高円宮殿下の急逝 の御事情について、貴重な情報をいただき有難うございました。  これまで報道などに、一次救命処置が行われたということが全く出て こなかったので、あえて伏せておられるのではないかという類推も致し ておりました。今回いただいた情報により、 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・目撃された心肺停止であったこと ・迅速な119番通報とバイスタンダーCPRが実施されたこと ・遅延なく救急隊が到着し、医師の指示による電気的除細動が実施され  たこと ・以上にもかかわらず最終的に不幸な転帰をとられたこと 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 が明確になりました。  これらのことから、もし殿下と同様の状況の人々を救命するためには、 *市民による除細動(Public Access Defibrillation)の推進  (欧米では蘇生関連学会などから強く推奨されています) *早急に、救急救命士に医師の包括的指示による除細動を許可すること  (現状では除細動を行うにあたり、医師の指示を得る必要があります) が重要であると痛感しました。


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