草の根型の救急災害医療情報ネットワークについて

―臨床と研究・投稿原稿―

越智元郎1)、大友康裕2)、水野義之3)、田中健次4)、漢那朝雄5)、戸田年総6)、 中川和之7)

1)愛媛大学医学部救急医学、2)国立病院東京災害医療センター、3)京都女子大学現代社会学部
4)電気通信大学大学院情報システム学研究科情報システム運用学
5)九州大学大学院医学系研究科災害救急医学、6)財団法人東京都老人総合研究所
7)時事通信社神戸総局

(臨床と研究 77: 1503-1507, 2000)


 目 次

I.救急災害医療情報システム:公的ネットワークと草の根のネットワーク

II. コンピュ−タ通信による草の根のネットワーク
 1.救急災害医療と関連メーリングリスト
 2.救急医療メーリングリスト(eml)について

III. 広域災害・救急医療情報システムに対するバックアップ
 1.未導入都道府県の問題
 2.首都圏被災の場合
 3.wdsへの情報提供(2000年春、有珠山噴火での活動例)

IV. まとめ

文献


I.救急災害医療情報システム:公的ネットワークと草の根のネットワーク

 救急災害医療に関する通信システムには、行政主導で構築された公的ネットワークと、研究・ 教育機関やボランティアなどが提供し、様々な職種の関係者が参加する草の根のネットワークと がある。前者は阪神・淡路大震災の反省をもとに全国ネットワークとして構築中の広域・災害救 急医療情報システム1)であり、日本医科大 山本教授によって前章で詳説されている2)。本システム はおよそ半分の都道府県に導入されたところであり、実際の災害時に実効ある情報システムとし て活用できるかどうか、まだ未知数の部分がある。

 さて、筆者の教室ではホームページを通じた救急災害医療に関する情報提供を行う一方、救急 医療メーリングリスト(eml)を通じた関係者の間のネットワークを築いてきた。 eml はコン ピュ−タ通信を用いて様々な立場の救急災害医療関係者を、非災害時において効果的に結びつけ ることを可能にしており、災害時にも情報共有のための有用な手段として機能しうるものであ る3)。本稿ではわれわれのボランタリーなネットワークがどのようにして公的なネットワークと関 わり、サポートすることができるか、幾つかの観点から論じたい。


II. コンピュ−タ通信による草の根のネットワーク

1.救急災害医療と関連メーリングリスト表1

 メーリングリスト(以下、ML)は電子メールの同報機能を用いた一種のフォーラムであり、 掲示板的な広報手段であるウェブとともに、インターネットという車の両輪に例えられる。ML のメンバーは所定のアドレスに電子メールを送ることによって、登録されたメンバー全員に自動 的にメールを送ることができる。あるメンバーからの情報や意見、問い合わせなどは多くのメン バーに配付されるが、これに対して返信をするには同じアドレスにメールを送るだけでよく、こ れもメンバー全員に共有される。

 このような情報交換が国外を含め空間的な距離を問わずに達成される。さらに情報の送り手と 受け手が同時に端末の傍らに居る必要はなく、時間的な制約の少ない通信手段となる。また電子 メールは、職種や年齢、肩書きといった壁を超えた自由な交流を可能にすると言われている。わ が国にはすでに医療をテ−マとしたMLが多数あるが、救急災害医療あるいは集中治療に関する ものとして、集中治療ML(CCN)、中毒情報ネットワーク(poison-ml)ならびに筆者らの救 急医療メーリングリスト(eml)の3つが挙げられる。これらは互いに異なったメンバー層を有 し、同時に複数のMLに重複して参加したメンバーを通じて、より幅広い情報共有を可能にして いる。

 集中治療メーリングリスト(Critical Care Network mailing list, CCN-ML)は BBS(パソコン通信 の掲示板)を用いた VITALNETという活動を引き継ぐ形で、1995年10月ML形式の情報交換の場として スタートした4)。集中治療を中心テーマとしており、京都府立医大集中治療部でサポートされている。 CCN-MLは1996年のわが国におけるO-157の大流行に際して、わが国の多数の既存MLやニュースグ ループを結びつけ、O-157に関する緊急医療情報ネットワークの中心となった5)。本MLには日本集 中治療医学会会員が多数登録しており、O-157感染症の診療に関する、同学会の緊急情報交換の場 としても活用された。

 poison-MLは救急医や法医学者などを中心とした「中毒談話室」を前身として、1995年春、薬学、理 学、獣医学、科学捜査研究所などの研究者をも含めた形でスタートした6)。中毒起因物質分析に関する 独自の協力体制を持ち、ML上の情報は起因物質ごとにデータベースとしてまとめられている。1995 年の東京地下鉄サリン事件のような大規模な化学災害においては、原因物質が明かでなかったり化学 災害であることすら判然としない場合も含め、緊急に照会すべき第一のネットワークと考えられる。

 poison-mlと筆者らの emlとの間に、興味深い接点もあった。その一つは、1997年に WHO緊急人 道局(西太平洋支部)から、洪水後にヘビ咬傷の多発が予想されるカンボジアで使用できる抗毒 素血清の種類やその入手先についての問い合わせがあった。この時、poison-mlへメールが転送され、 その数日後にはメンバーからインドにある蛇毒研究所が紹介され、100人分の蛇毒多価血清の発注に至 ったものである7)

表1.救急・集中治療・災害医療関連メーリングリスト


名 称:集中治療メーリングリスト
Critical Care Network mailing list(CCN-ML)

 URL: http://www.kpu-m.ac.jp/vitalnet2.html

 連絡先:京都府立医大集中治療部 橋本 悟
    satoru@koto.kpu-m.ac.jp


名 称:中毒情報ネットワーク
    poison-ML

 URL: http://maple-www2.med.hiroshima-u.ac.jp/index.html

 連絡先:広島大学医学部法医学教室 屋敷幹雄
    yashiki@mcai.med.hiroshima-u.ac.jp


名 称:救急医療メーリングリスト
    Emergency Mailing List(eml)

 URL: http://ghd.uic.net/jp/ML/

連絡先:愛媛大学医学部救急医学 越智元郎
     gochi@m.ehime-u.ac.jp


2.救急医療メーリングリスト(eml)について

 emlは1996年2月末、救急災害医療に関する情報交換を目的として、愛媛大学医学部機器センター にサーバを置いてスタートした。開始当初のML・プログラムには CML を用いた。その後、eml には800人を超えるメンバーが参加するに至った(2000年4月現在)が、その大部分が救急隊員、 救急医療機関で働く医師、看護職員、検査技師などのわが国の救急医療を直接支える草の根 の人々である。一方、国際保健、物理学、システム管理学など救急医学以外の分野の研究者、行 政官、防災関係者、NGO関係者、法律家などが積極的なメンバーとして参加している8)。以下、 emlにおける論議の幾つかを紹介したい。

 eml 災害通信訓練(1996年8月):

 北海道で発生した大地震を想定し、インターネットを用い てどのような情報交換が可能か、 eml メンバーがどのような行動を起こすことができるかをシ ミュレートした。この際、災害時などに投稿が集中する場合にはメール配信にかなりの時間がか かることが判明し、ML・プログラムを majordomoに切り替えるきっかけとなった。 emlメンバ ーの一部は1997年の静岡県での災害通信訓練にも参加した。

 また筆者の教室では1999年1月17日、 WIDE計画による災害通信訓練(IAA: I Am Alive計画)9)に参加し、衛星電話を用いたバルク登録 (テキスト入力によって、多人数の安否情報を一括入力する方法)による(仮想)入院患者情報 の発信を行い、同時に Pittsburgh大学のサーバから仮想被災情報を発信した。災害時に入院患者全員の安否を被災地外へ報告することによって、医療機関に掛けられる安否確認の 電話を減少させ、輻輳の問題や対応に要する職員の手間を緩和することが可能となる。この通信訓練の経過は eml でも詳細に報告された。

 ML間の災害時バックアップ(皿ケ嶺)計画(1999年1月):

 インターネットは災害に強い通信手段と言われているが、大地震などに直 接被災した場合は少なくとも被災直後は、通信が途絶する可能性が高い。 例えば阪神・淡路大震災直後の神戸大学でも、インターネット回線は無事だ ったが大学施設の電源自動遮断のため、その後の安全確認を含めて電源再投入 までに丸1日を要している。無停電電源装置は通常、長時間の補助電源には 使えず、この間は当然ながら、通信は途絶する。来世紀前半に予想されている南海大地震 (マグニチュード8クラス)を待つまでもなく、eml のサーバを置く愛媛大学が通信途絶に陥る ことも考えられる。そのような事態においても、災害時のためのネットワークである eml の機能 を何らかの方法で維持する必要がある。この事情は災害時の情報通信を念頭においた他のML等 においても同様である。

 以上のことから、被災地において運用が困難となったあるMLなどの依頼により、あるいは事 前協定に基づき自主的に、被災したMLの機能を代行するようなシステムが必要である。そこで この構想に同意した他地区の2つのML(国際保健ML、災害情報ML)との間で協定を結ぶこ ととし、この計画を東京発の官製のものでなく地方からの情報支援という期待を込めて、愛媛大 学を囲む自然から「皿ケ嶺計画」と名付けた。 emlでは他MLのバックアップのために2つの バックアップ用ML(SARAおよび MINE)を設け、非災害時には別目的の論議のために用いてい る。

 臨界事故周辺住民の健康状態推測と対策のための緊急提言10):

 1999年 9月30日に発生した東海村ウラン加工工場臨界事故は我が国初の経験であり、事故後の医療 活動を判断する上でも、まず起こりつつある物理現象を正しく把握する緊急の必要性が痛感された。 そして放射線の種類と量、今後の医療対策などについて、緊急の判断に迫られた。しかし当初のデー タ不足は明白であった。このためわれわれは、多分野の専門家を擁する emlを活用し、種々の議論を 経た後、10月 5日、「臨界事故周辺住民の健康状態推測と対策のための緊急提言」を行った。その骨 子は、提言1:放射線モニターの測定結果に関する詳しいデータ公開とその解釈の公開、提言2:事 故後の住民家屋内での中性子線量の緊急調査(その方法の具体的提案)、の2点である。また今回の 事故はその意味が特に分かりにくかったため、提言1では専門家向けのデータ公開による広い視点で の検討と、市民のための「解釈」の公開の、両者を重視した。また提言2の中性子測定では、サンプ ル数を多くして推定精度を上げるための測定方法を具体的に指摘した。またこの提言は公開され、関 係者に送付された。


III. 広域災害・救急医療情報システムに対するバックアップ

1.未導入都道府県の問題

 広域災害・救急医療システムの導入都道府県は平成11年度末で31に過ぎず、現状では大災害時 に未導入県からの情報発信は期待できない。例えば、2000年4月に四国の南部を襲う大地震や津 波によって高知県が甚大な被害を受けた場合、高知県から被災情報、応援要請情報が 出ないばかりか、徳島県、愛媛県といった隣接県、また鳥取県、島根県、大阪府、京都府、福岡 県などの近傍の非被災府県からの受入可能患者情報や医療ボランティア提供の情報も、本システ ムからは汲み上げることはできないのである。

 未導入県が存在する現段階で、システム未導入地域からの情報発信およびそれらの地域への情 報提供をどのように確立し、広域救急災害医療システムと効率良く並立させてゆくかという問題 への解決策には次のようなものがある。

 一つは未導入県の主要機関にインターネットを介して本システムの非公開ホームページにアク セスする権限を与え、他の施設などの情報も含めて入力させることである。これによって、非公 開ホームページを通じて他の地区の被災情報を取り出すことができる。

 もう一つは未導入県からの被災情報、あるいは応援都道府県としての情報を、被災地外のいずれ かの担当者が受け取り、システムへ代行入力する形である。この場合、未導入県には共通の入力 項目をデータベース入力できるようなソフトウエアをあらかじめ配付しておき、テキストデータ の形でバックアップセンターなどに送信して貰う。これは前章で述べた、WIDE計画による IAA計 画のバルク登録と同様の方法であり、衛星電話や無線のパケット通信を通じて最低限のデータ通 信が可能となっておれば、多数の施設からの情報を短い時間間隔で広域救急災害医療システムへ 送信することは可能であろう。

 上記の2案のうち、前者はシステム未導入県の災害医療担当者における公的な対応というべき ものである。また後者も自治体間の災害協定や関連省庁などによって公的対応として実施することは 不可能ではない。しかし実際にはコンピュ−タ通信や災害医療、地域の実情などに十分な予備知 識を持つ人材はそう多くはないだろう、関連省庁などの依頼・調整を受けてわれわれのネットワ ークとして適切な担当者やチームを決め、非導入県からの情報を広域災害・救急医療システムに 流し込むためのバックアップをはかることには大きな貢献になると考えられる。

 また公共的性格が強い救急災害医療等の支援活動といえども、その全てを行政に 依存することが本来望ましいかどうか、という観点も重要であろう。すなわち、 第1に危険分散の観点から、産学民を含めた複数の支援活動が補完しあうことは、 個々のシステムで予測されざる欠落を相補い合い、社会システム全体の効率向上に 寄与できること、第2に生存率の観点から重要な発災72時間内の救急災害医療 活動は大災害ほどその必要性が高まるにもかかわらず、行政等既存組織の 指揮命令系統の混乱は大災害ほど増大し、従ってこれと相補的な分散的情報支援 ネットワーク(草の根型ネットワーク)の重要性が繰り返し実証されていること12)、第3に公的対応を補う活動を大学等を主体とする研究活動と 相関させることにより、自主性を基礎とした市民参加型組織としてこれを運営し、 それが市民自身を支援するという新しい形の社会貢献の機会を提供すること、 またこれは現代社会において市民に開かれた活力ある大学等の在り方を示唆 するものとしても重要と考えられること、などである。

 これらの観点から、草の根型ネットワ ークとしても、関連省庁などの依頼・調整を受け相互に連携を取りながら、適切な担当者やチームを決め、未導入県からの 情報を広域災害・救急医療システムに 流し込むためのバックアップをはかる 等の活動が出来れば、一つの大きな貢献になるとも考えられる。

2.首都圏被災の場合

 首都圏が被災した場合、広域災害・救急医療システムが厚生省など関連省庁の調整機能なしに 稼働せざるを得ない場合がある。全国からの蓄積情報は千葉県にあるバックアップ・センタ ーによって維持されると予想されるが、発災後における未入力地区への情報入力の督促、代行入 力の斡旋、システム未導入地区からの情報収集などの、災害情報管理に関する調整を関連省庁の 責任者に代わって実施する者が必要となって来る。厚生省ではその位置づけの者を第一段階と て東京の西部(多摩地区)に位置する国立病院東京災害医療センターの災害情報担当者、第2段 階として愛媛大学など遠隔の施設の災害情報研究者を想定している。厚生省、国立病院東京災害 医療センター、愛媛大学の担当者はそれぞれ広域災害・救急医療システムのメーリングリスト(wds) や、 emlなどを通じて日常的に意見調整をはかっている。

3.広域災害・救急医療システムのメーリングリスト(wds)への情報提供
(2000年春、有珠山噴火での活動例)

 平成11年度から運用が開始された wdsは電子メールをベースとした災害時の情報経路として考 えられているが、非災害時に関係者の情報交換や相互啓発、人的交流などに活用することによっ て初めて、災害時の円滑な活用が可能になると考えられる。しかし、単にメーリングリストとい う容器を作っただけで満足する訳にはゆかない。交流の核となるメンバーを積極的に育てること や日常的に有用な情報が流れるような基礎づくりが必要である。 emlのメンバーは災害救急医療 に関する情報交換、特にメーリングリスト上での情報共有においてすでにノウハウの蓄積がある。 有珠山噴火を契機に活発化した広域災害・救急医療システムのメーリングリスト(wds)において も、 emlメンバーの活発な発言、また emlからの有用な情報の転送が目立ったのである。

 北海道有珠山噴火に伴う災害準備態勢において emlが災害情報の伝達に貢献できた例を2つ紹介し たい。平成12年 3月31日午後1時頃、有珠山が噴火し、派遣された救護班や市民に緊張が走った。 地元の役場などが発信するウェブには全国からのアクセスが殺到し、発信情報の更新すらままな らない状態となった。 emlの有志は他のボランティアグループなどと共同で被災地からの情報ペ −ジのミラーサイトを作成し、アクセスの分散に努めた。

 一方、同日午後11時、 emlのメンバーが「郵政省が有珠山噴火被災地への救援物資の送料を免 除」という情報を紹介した。これはテレビや新聞社のウェブで流されていたもので、救援物資の 仕訳などに現地の自治体職員やボランティアが多大な労力を費すという、最近の災害における 過ちを繰り返すかにみえた。すでに夜半を過ぎていたが、有珠山噴火の情勢推移を見守っていた emlメンバーにより、北海道自治体組織関係者ならびに wdsの受信者を宛先として「提案:有珠 山噴火による被災者救援物資の受けいれについて(表2)」をまとめ、公開ホームページ上に収載すると ともに wdsへ転送し、被災地の自治体から小口の救援物資を受け取らないむねの意志表示をして いただくよう提案をした。これらの論議を読んだ厚生省の担当官(eml, wdsのメンバー)からは、 郵政省との協議の場でもわれわれの提案を紹介していただいた。これらのことがどの程度奏功し たかは明かではないが、4月初めの現地新聞では「物資、大口に限定」という見出しで「伊 達市社会福祉課では個人からの荷物は仕訳に時間がかかるため送らないように呼びかけている」 と報道されるなど、援助物資については大きな問題となることを回避できた。

 以上のように公的な災害医療情報ネットワークとして整備中の広域・災害救急医療情報システ ムにおいて、救急医療メーリングリスト(eml)などの草の根のネットワークの協力は、現実の 災害において同システムの手薄な部分を補強する上で心強いものになると予想される。


表4.提案:有珠山噴火による被災者救援物資の受けいれについて
http://ghd.uic.net/00/k4usu.htm

北海道自治体組織関係者 各位殿
広域災害・救急医療システム メーリングリスト(wds)受信者 各位殿


 このたびの有珠山噴火におきましては関係者の皆様に御尽力をいただいておりますことを、深謝申し上げます。

 さて3月31日、郵政省が有珠山噴火による被災地に対する救援用の物品の郵便料金を免除(伊達市災害対策本部宛のみ)することを決定したとの報道がありました。北海道南西沖地震(奥尻島)や阪神・淡路大震災の際、無秩序に送られた救援物資によって様々な問題が生じたことは災害関係者のなかでは周知の事実であります(交通渋滞への影響、開梱・整理・分類に要する過大な労力や不要な物資の処理といった非効率的な支援活動につながるため)。支援の大原則は、被災地の迷惑とならないことです。大局的にみれば、善意が仇となる場合もあることを考慮する必要があると考えます。

 私共は、救援物資送付を勧奨する行為は

  • 被災地において本当に必要とされる物資の種類と数量を確認
  • 被災地での受け入れ体制確立
  • 被災地への輸送ルート確立
  • といった条件が満たされるまで、厳に慎まれるべきと考えます。そして、以上の条件が満たされてない現在、北海道自治体組織関係者の皆様から、郵政省に対し、救援小包の無料配送を凍結するようお願いされるのが得策であると進言致します。

    (以下、省略)

 


IV. まとめ

 救急災害医療に関する通信ネットワークとして、愛媛大学でサポートしている草の根の救急災害 医療ネットワークについて紹介し、続いて公的なネットワークである広域救急災害医療情報シス テムとの関連性について説明した。草の根のネットワークはコンピュ−タ通信を用 いて様々な立場の救急災害医療関係者を、非災害時において効果的に結びつけることを可能にし ており、災害時にも情報共有のための有用な手段として機能しうると思われる。また公的ネットワーク を補完しうる貴重な情報経路になると考えられ、非災害時や実際の災害運用時にその協力体制について 意見交換をしておく価値が認められる。


文献

  1. 大友康裕:災害医療情報ネットワークについて.救急医療ジャーナル, 6: (1) 通巻29号, 12-16, 1998.

  2. 山本保博:広域災害・救急医療システム.臨床と研究, 77: (8), 掲載予定, 2000.

  3. Ochi G, Shirakawa Y, Tanaka M, Nitta, et al: An Introduction to the Global Health Disaster Network (GHDNet). J J Disast Med, 2: 18-22, 1997.

  4. 越智元郎, 冨岡譲二,伊藤成治ほか:インターネットによる救急災害医療情報の伝達.ICUとCCU, 24: 91-96, 2000.

  5. 橋本 悟:ネットワークを利用した症例検討.ICUとCCU, 24: 97-102, 2000.

  6. 氏家良人:O157の流行とインターネットを用いた緊急医療情報ネットワークの作成.救急医療ジャーナル, 6: (1) 通巻29号, 24-28, 1998

  7. 屋敷幹雄,権守邦夫,田中栄之介:インターネットによる中毒情報ネットワーク.中毒研究, 9: 203-204, 1996.

  8. Ochi G, Shirakawa Y, Asahi S, et al. Information transmission through the internet for the Preparedness against Venomous Snakes in the Aftermath of Cambodian Flood in 1997. J J Disast Med, 4: 47-50, 1999.

  9. IAA Project: インターネット災害訓練(http://www.wide.ad.jp/index-j.html

  10. 水野義之,越智元郎,田中健次:臨界事故周辺住民の健康状態推測と対策のための緊急提言.治療 82: 91-98, 2000.

  11. 越智元郎:災害救急医療と通信ネットワーク.日臨麻会誌 20: 83-90, 2000.

  12. 大月一弘、水野義之、干川剛史、石山文彦:情報ボランティア、 NECクリエイティブ、1998.


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