肺がん内視鏡で区域切除 山形大チーム新手術法開発

山形大医学部は12日、大泉弘幸第2外科准教授らの研究チームが、 「区域切除」と呼ばれる難度の高い肺がんの手術を、内視鏡を使って実施する方法を開発したと発表した。

肺血管をコンピューター断層撮影(CT)した3次元画像を駆使するのが特徴。 内視鏡手術は傷が小さく、痛みが少ないなどのメリットがある。

 肺は右肺が三つ、左肺が二つの「肺葉」という部分に分かれ、 さらに左右合わせて18の「区域」と呼ばれる部分に分けることができる。

 大泉准教授によると、肺がんの手術には、肺の表面にある腫瘍(しゅよう)を切除する部分切除、 肺葉を丸ごと取る葉切除、区域を切り取る区域切除がある。区域切除は血管が複雑に交錯して危険が大きく、 より手間がかからない葉切除が最も普及している。

 大泉准教授らは、肺血管のCTをコンピューター処理して立体のシミュレーション画像を作成。 「カーナビのように」(大泉准教授)リアルタイムで状況を把握しながら、 より安全に区域切除の手術を行うことを可能にした。2004年秋から現在まで53例の区域切除を実施した。

 この手術法は昨年6月、スウェーデンで開催されたヨーロッパ内視鏡外科学会で発表され、 内視鏡部門最優秀賞を受賞。今月、ヨーロッパ胸部外科学会が発行する雑誌にも論文が掲載される。

 「日本人は肺がんの死亡率が高く、新しい手術法を開発した意義は大きい」と山形大の嘉山孝正医学部長。 大泉准教授は「内視鏡による区域切除の論文報告はほかにもあるが、簡単な区域の切除に限られていた。複雑な区域の切除の報告は初」と意義を語る。


2009年08月13日木曜日