過誤腫のような腫瘍 hamartomatous neuronal glial tumor

何が過誤腫だと言われると困ることもありますが以下のようなものです

  • 視床下部過誤腫がもっとも有名な腫瘍です
  • 神経節膠腫グレード1も過誤腫に近いものです
  • 神経節膠腫は,mixed neuronal glial tumorとも言われます
  • angiocentric glioma アンジオセントリック・グリオーマ(日本語訳ありません)
  • 第4脳室床過誤腫
  • 他のもろもろの神経膠細胞腫瘍 neuronal glial tumorsあるいは過誤腫様神経膠細胞腫瘍hamartomatous glial neuronal tumorsと呼ばれるものはたくさんあります
  • 病理組織をみても確定診断名がつかないようなものも多いです

大まかなこと

  • 腫瘍ではなくて脳組織の形成異常に近いものです
  • 脳の細胞(神経細胞とグリア細胞・神経膠細胞)がまちがって増えすぎてしまった病変です
  • 真の腫瘍(新生物 neoplasm)ではないので大きくなりません
  • 偶然発見されることが多いです
  • 症状のないものは画像診断だけで、何もしないでほっておきます
  • 症状を出すとすれば,ほとんどがてんかん発作です
  • 大脳表面(灰白質)に近い所にできます
  • 摘出するとてんかん発作が減ったり無くなったりすることもあります

視床下部過誤腫(ここをクリックするとみれます)


神経節膠腫グレード1(ここをクリックするとみれます)


angiocentric glioma アンジオセントリック・グリオーマ WHO grade 1

臨床所見

  • 血管中心性膠腫とでも訳すのですが,日本語は使われません
  • 症候性てんかん(けいれん発作)を生じます
  • 何年にもわたって部分発作を生じて慢性化あるいは難治化するてんかん発作が多いです
  • 小児期と若年成人で発症します
  • 年齢中央値で17才くらいです
  • 無症状で偶然発見されるものが多いです
  • 前頭頭頂葉,側頭葉、海馬と海馬傍回,頭頂葉の順に多いです
  • 画像初見は,神経膠腫グレード1やDNTに似ています
  • 大脳表在性の腫瘍で,灰白質を侵す病変です
  • 境界は明瞭ですが,周囲がごく一部にじむような所もあります
  • T2/FLAIR画像で高信号となります
  • 脳質壁に向かって柄(茎 stalk)のような病変が続く stalk-like extension のが特徴とされていますが,それが見られないものも多いですし,皮質異形成でもこの所見を持つものがあります
  • 画像診断でangiocentric gliomaを疑ったらMRIで経過観察します
  • 大きくならないので手術摘出などの治療の必要はありません
  • てんかんが重くなって薬でコントロールが難しい時には開頭手術での摘出を考えます

病理

  • 構成細胞は,腫瘍化した浸潤性の星細胞と上衣細胞分化です
  • 皮質血管の周囲に両極性の腫瘍細胞 monomorphous bipolar cells が配列します
  • 毛様細胞性星細胞腫のように,angiocentric patternをとることから名付けられました
  • 血管周囲に腫瘍細胞が配列して peudorosettes,上衣腫の構造に類似しますが上衣腫ではありません
  • GFAP, EMAが陽性となります
  • 壊死や核分裂像はなく,MIB-1染色率は1%以下です
  • MYB-QKI gene fusionsが原因で発生します

第4脳室床過誤腫 hamartoma of the floor of the fourth ventricle

脳の過誤腫には視床下部にできるものと橋延髄背側にできるものがあります。以下に症状の対比を並べておきます。両者ともに発作がコントロールできなくて激しくなると,症状は重症化して行くので,可能であれば外科治療をした方がよいものです。でも難しい。

第3脳室床過誤腫 (視床下部過誤腫)hypothalamic hamartoma

笑い発作,思春期早発,多動・易興奮性,行動異常,難治性てんかん,意識減損,認知機能障害

第4脳室床過誤腫 (脳幹部過誤腫)brainstem hamartoma

顔面筋異常運動,眼球運動障害・眼振,自律神経障害,発作性嘔吐,不規則呼吸,片麻痺,意識減損,遷延性意識障害

第4室床過誤腫の典型例です

新生児期より動作停止と右眼瞼のちく搦,4ヶ月で右眼の閉眼と口角の引きつれ(顔面けいれん)が目立つようになりました。2歳時には数十秒ごとに発作を繰り返していました。

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MRIでは橋の背側(第4脳室床)にT1/T2で等信号の隆起(腫瘤)がみられました。

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手術中の顔面筋電放電をモニターしたものです。過誤腫の摘出によって沈静化消失しています。

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結果的に過誤腫をほぼ全摘出してしまったのですが,脳幹背側なので神経核損傷のリスクを伴います。亜全摘出でも発作は止まるとされています。手術中のモニターで放電が無くなればそこで過誤腫の摘出を中止して良いのでしょう。

皮質形成異常(皮質異形成),異所性灰白質との区別(詳しくはここをクリック)

  • 過誤腫は先天的な過形成,皮質異形成は先天的な形成異常とされるのですが,両者の区別は必ずしも境界があるわけではありません
  • 「異所性灰白質」と「灰白質を組織像とする過誤腫」は同じようなものです
  • 最近,てんかんを診ることが好きなお医者さんが,皮質異形成 cortical dysplasia type IIIb に,DNTや神経節膠腫などもひっくるめることに決めました,それはちょっと乱暴です
  • 典型的な皮質異形成 classical cortical dysplasia 以外は,なにもかも皮質異形成と呼ばない方がいいでしょう


左はフレア,右はT2冠状断,がドリニウム増強されない境界明瞭なのう胞性病変です

4歳時に意識現存を伴う発作が1日3回くらいあるという難治性部分てんかんで発症しました。手術中の頭蓋内脳波で,下側頭回に激しい棘波と棘律動を認め,扁桃体への刺入電極でも棘波がありました。周辺脳にも棘波はありましたが,病変(腫瘍)と扁桃体を切除するのみの手術を行いました (lesionectomy and amygdalectomy)。手術後9年が経過しますが発作は全くありません。病理では,神経節細胞はなく,皮質異形成 cortical dysplasiaという診断でした。1p/19qに欠失はありませんでしたが,乏突起膠腫も否定できない周囲灰白質に浸潤性の腫瘍でした。この例もlow-grade gliomaかcortical dysplasiaかの区別ができないものです。どちらであっても,基本的にグレード1ですから,手術後再発はしません。


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