卵黄のう腫 yolk sac tumor AFP産生腫瘍

卵黄嚢腫

yolk sac tumorは,胎生初期の卵黄嚢(embryonic yolk sac)を囲む胎生内胚葉(embryonic endoderm)由来の腫瘍であると考えられている。embryonal carcinomaより更に稀な腫瘍であり,視床下部よりも松果体に好発する傾向がある。純粋型は少ないが,APFが極めて高値を示す腫瘍ではどこかにyolk sac tumorの組織像が部分的に混在することを念頭に入れて治療する必要がある。組織学的には,円柱様ないし楕円形の上皮様細胞の網状配列構造を示す腫瘍であり,一部にSchiller-Dubal bodyと呼ばれる血管周囲に集族する特徴的な細胞配列が見られる。これは,一層あるいは多層の上皮様細胞が,中心となる血管をやや離れて取り囲むように並ぶ構造を言う。また,PAS陽性の好酸性球状体が見られAFPが強陽性となる。

血液中あるいは髄液中のAFPが1000ng/mlを越え,時には数万の値をとることもある。しかし,mixed germ cell tumorやembryonal carcinomaでも,AFPは1000ng/mlを越える値を示すことがあることがあるので腫瘍マーカーのみでは確定診断に至らない。高率に髄液播種を来すため,MRIのT1強調ガドリニウム増強画像にて,全脳脊髄を検索する必要がある。

発症1年以内の死亡率が高い極めて悪性度が高い腫瘍型であり,放射線治療と化学療法が欠かせない。手術による確定診断をまず考慮し,松果体原発のyolk sac tumorであれば全摘出を目指す。治療方針は概してembryonal carcinomaと同様であるが,治療効果は血中のAFPを測定することで的確に判断される。AFPの値が正常化しても,MRIで腫瘍サイズの縮小が見られないときには,teratomaとの混合腫瘍を疑うべきである。術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy)や術前照射を行って腫瘍サイズを縮小させてから,腫瘍の全摘出を行うという手段も有効である。現在,AFP産生腫瘍細胞は,HCG産生性のchoriocarcinomaやembryonal carcinomaと比べて,比較的高い放射線化学療法感受性を有すると考えられている。日本脳腫瘍統計による5年生存率は,3割程度と総じて予後は不良なものの,絨毛癌よりは治癒例の報告は多い。ただし,髄液播種で発症した例や播種が制御できなかった例では,患児は高率に死の転帰をたどる。

 

Copyright (C) 2006-2017 澤村 豊 All Rights Reserved.