テモゾロマイド(テモゾロミド)temozolomide

テモダールのジェネリックが2017年末に発売されます
テモゾロミドという商品名で,薬価は半額になりますo (^-^o)
300mg/日の使用で,月の薬剤費が5万円から2万5,000円まで下がります,3割負担で7,500円です (^o^)ノ
商品名 テモダール Temodal,テモゾロミド Temozolomide
  • 口から飲む経口剤という制がん剤でカプセルに入っています,飲めない患者さんには注射でも投与できるようになりました
  • 適応症は悪性神経膠腫悪性グリオーマ)です
  • 悪性神経膠腫の定義は広いですし,膠芽腫,退形成性星細胞腫,退形成性乏突起膠腫などに加えて,髄芽腫,上衣腫,PNET,脳幹部神経膠腫なども含まれます
  • 欧米では膠芽腫と退形成性星細胞腫だけに認可されていて,それらの腫瘍には標準的治療薬とされています
  • 例えば膠芽腫には2とおりの方法で使われます
  • 一つ目は主に入院で,放射線治療期間中に照射の前の日に毎日飲む方法で,1日に体表面積あたり75mg (75mg/m2)使います
  • 2つ目は主に外来で,維持療法といって28日(4週間)に5日間だけ飲む方法で,1日に体表面積あたり100から200mg (100-200mg/m2)使います
  • 代表的な使用法で,これをStupp regimen スツップレジメンと呼びます
  • 空腹時に飲むのが原則なので,お腹いっぱいの時には飲まないようにしましょう
  • 患者さんが元気であれば働きながら飲んで行くこともできます
  • 維持療法はだいたい月に1回で6ヶ月とか2年間とか続ける方法です
  • 有効性は後ろの方に書いてありますので読んで下さい
  • 副作用(有害事象)は全般的にとても軽いと評価していいでしょう
  • 軽い骨髄抑制(白血球や血小板の減少),吐き気と嘔吐,便秘,頭痛,体のだるさや頭痛などです
  • 吐き気はテモゾロマイドを飲む前に吐き気止め(ナゼア,カイトリル,ゾフランなど)を飲んでおくと抑えられます
  • 白血球(好中球)の減少は血液検査で見て行きますが,あまり強くでると感染症や出血の危険があるものです
  • リンパ球減少というのに特に注意した方がいいです
  • 骨髄抑制の強いときには間質性肺炎ニューモシスティス・ジロヴェチ肺炎(カリニ肺炎とはいいません)という重篤な感染症が生じることがありますから,予防的に抗菌剤(バクタ,ST合剤)を飲むか,ベナンバックスの吸入を定期的にします,それでもだめならサムチレール(アトバコン 1500mg)を服用します
  • この肺炎はステロイド投与をたくさん受けている時,リンパ球の数や機能が低下した時に最も注意です
  • B型肝炎が悪化(再活性化)して重症化することがありますから,肝炎ウィルスを保有しているかどうかを検査してからテモダールの投与を受けます
  • テモダールの使用が長期間になると副作用は強くなってきますから飲む量の調整が必要になります

テモダールの飲みかた

テモダールはpH 7.4以上のアルカリ性になると効果が無くなってしまう薬です。空腹時は胃の中は強い産生ですが,胃の中に食物が入っている状態でこの薬を飲むと薬の効果が落ちます。ですから,空腹時に飲まなければならない薬剤です。夜寝る前だと飲みやすいと思います。
カプセルを飲めない小児には,脱カプセルといってカプセルをはずして薬を取り出して飲ませる方法があります。でもこれは抗がん剤に触れることになるので当然お医者さんと相談してどうするか決めます。でもそれしか方法の無い小さな子どもでは工夫して脱カプセルをしなければなりません。カプセルから取り出した薬はリンゴジュース(酸性)か何かに溶かして飲ませます。ポカリスエットなどでもいいですが,アルカリ性の飲料は避けなければなりません。

飲めない場合には,テモダールの点滴静注薬 100mgがあります

投与量などは経口薬と同じですが,90分間かけて点滴します。薬剤費は経口薬の3倍くらいになりますから高額です。

テモゾロマイドの効果を明確にした歴史的な論文

ローザンヌの研究者からの発表です。New England Journal of Medicineというとても権威の高い雑誌に膠芽腫へのテモダールの効果が発表されました。

Stupp R, et al. : Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005, 352: 987-996,
Hegi M, et al.: MGMT gene silencing and benefit from temozolomide in glioblastoma. N Engl J Med. 2005, 352: 997-1003

ヨーロッパとカナダで行われた臨床試験の結果です。573人の患者さんは放射線治療(60グレイ)のみと放射線治療(60グレイ)とテモゾロマイドを併用する群に振り分けられて治療されました。テモゾロマイドはまず75mg/m2の量を放射線治療中に毎日飲むという方法で投与されています。それから150-200mg/m2(5日間服用,28日周期)を1コースとして6コースまで追加します。
追跡期間中央値28ヶ月の時点での全生存期間中央値は,放射線治療単独群が12.1ヶ月であったのに対して,テモゾロマイドを併用した群では14.6ヶ月でした。ちょっと寂しいのですが,テモゾロマイドを併用すると2.5ヶ月の生存期間の延長が得られています。放射線とテモゾロマイドの併用群での2年生存割合は26.5%で,放射線治療単独群では10.4%でした。
副作用としては7%の患者さんにグレード3-4の血液毒性が見られていますが,これはとても軽いものと評価できます。
膠芽腫の腫瘍細胞の中にMGMTという遺伝子があります。この遺伝子は化学療法の効果を消してしまう働きをするということで知られていました。MGMTという遺伝子のプロモーターの部分にメチル化がある膠芽腫をもつ患者さんの方が生命予後がよいことが判りました。プロモーターのメチル化がある膠芽腫に,放射線治療とテモゾロマイドを使った治療をすると,全生存期間の中央値は21.7ヶ月であったとのことです。ところがメチル化がないとテモゾロマイドを追加してもはっきりした効果がないようであるとも書かれています。この事実は,メチル化を調べることによってテモゾロマイドを投与した方が良いかどうかがあらかじめ判るということを示しています。
この2つの論文は,グレード3と4の星細胞系腫瘍(退形成性星細胞腫と膠芽腫)に対して,放射線治療とテモゾロマイドの併用が世界的な標準的治療として用いられるようになるというインパクトを与えました。もちろんテモゾロマイドの服用で得られる効果は大きなものではなくて,この2つの腫瘍型の死亡率がとても高いという事実を覆すものではありません。しかし,この30年くらいの間にほとんど何の進歩もなかった悪性星細胞腫の化学療法に大きな転機をもたらした臨床研究には違いありません。メチル化があるかないかを調べる方法は難しいので,一般化されるのはまだ将来のことになります。

テモダールで生じるスードプログレッション(詳細はここをクリック)

放射線治療とテモダールを一緒に使うとスードプログレッションという現象が生じます。MRI検査で一見,腫瘍が大きくなってしまった様にみえるのですが,実は腫瘍再発(早期再燃)ではないのです。逆にテモダールが有効な例に認められるものです。

小児の悪性グリオーマへの効果について

第1染色体短腕に欠失がある退形成性乏突起膠腫(grade 3)と退形成性乏突起星細胞腫(grade 3)に対するPCV(プロカルバジン,ロムスチン,ビンクリスチン)化学療法はとても有名な治療方法ですが,星細胞腫には効きません。小児の星細胞系腫瘍には有効な制がん剤はないといっても言い過ぎではない時代が続きました。

テモゾロマイドは第2世代の経口アルキル化剤で,成人の退形成性星細胞腫と膠芽腫に対して有効性が認められていますから,小児の悪性神経膠腫の治療にも期待が持たれています。小児の星細胞系腫瘍では成人と同様に放射線治療期間中に75mg/m2を42日間連続投与して用いる方法が検討されていますが,現時点では明らかな有効性を示唆する報告はいまだ見られません。

小児の治療抵抗性悪性神経膠腫と脳幹部神経膠腫に対する第2相試験が欧州で行われました。200mg/m2を5日間連続投与したものですが,残念ながら登録された55例においての客観的な奏効率は極めて低く有効性は認められないと結論されました。さらに初発例のびまん性脳幹部膠腫29例(年齢中央値6歳)に対し放射線治療後に同様なテモゾロマイドの投与を行った報告では,生存期間中央値12ヶ月で全例が死亡して,テモゾロマイドが脳幹部神経膠腫の予後を改善することはないとされました。

ちなみに,成人例では第1染色体短腕欠失を認める乏突起膠腫と乏突起星細胞腫(grade 2)にテモゾロマイドの非常に高い有効性が報告され,PCV化学療法に代用し得る薬剤であるとされています。小児においても乏突起膠腫系腫瘍はテモゾロマイドに反応する神経膠腫であるのかもしれません。

おそらく,毛様細胞性星細胞腫の第2あるいは第3選択肢として,再発胚細胞腫瘍の維持化学療法として,髄芽腫やPNETの維持化学療法としてなどで使用できるのではないかと考えています。しかし,科学的な根拠はまだありませんし,どのような小児のグリオーマに有効なのかはこれからの臨床研究を待たなければなりません。

テモダールと感染症

テモゾロマイドで生じる有害事象の最も有名なのがニューモシスティス・イロヴェチ肺炎で,この肺炎の死亡率が高いので予防的に抗菌剤(バクタ)を服用します。
これとは別にテモゾロマイドは,リンパ球の数を減らしたりリンパ球の活性(機能)を抑えたりします。リンパ球はウィルスから体を守る働きをしていますから,テモダールはウィルス性疾患を悪化させることがあります。例えばB型肝炎ウィルスをもっている人(不顕性感染者とB型肝炎の後で治った人)では,B型肝炎が悪化(再燃)して重症化することがあります。ですからテモダールを飲む前にB型肝炎ウィルスをもっているかどうかの血液検査 (HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体) をして,感染者ではこれを予防するためにバラクルード(核酸系逆転写酵素阻害薬エンテカビル)を飲んだほうがいいです。
Grewal J et al: Fatal reactivation of hepatitis B with temozolomide. N Engl J Med 356:1591-1592, 2007

テモダールの晩期有害事象

テモゾロマイドはアルキル化剤と呼ばれる仲間の制がん剤です。遺伝子に作用する薬ですからそれ自体で発がん性をもっています。そのためにテモゾロマイドを服用して数ヶ月から数年後に急性白血病 treatment-related acute leukemiaになったという報告があります。ほんとの白血病になる前には骨髄異形成 myelodysplasiaという状態になります,これは血液検査をすると異常値が出るので発見できます。とても稀ですし,テモダールを服用しないと治らない神経膠腫グリオーマがあるのですから,この確率が低い将来の心配をしない方がいいです。

治る可能性のある小児の脳腫瘍では,長期投与は避けて下さい

 

テモダールの値段

  • 20mgが1カプセルで3,345円,100mgが1カプセルで16,746円します
  • 体表面積が1.5m2の成人で維持療法に使えば,1日あたり300mgになりますから5万円くらい,月に5日間飲むとして25万円です
  • 医療費が3割負担の患者さんでは,テモダールの薬剤費だけで月に7万5千円の自己負担がかかることになります
  • その他に受診費用とか検査料金とか他の薬代が加算されてきます
  • 高額医療制度というのがあって月にある程度額以上の医療費の自己負担が生じた場合には患者さんの自己負担が軽減されますから,手術や放射線治療を受ける入院中は高額医療になってしまうのでこの値段はあまり気にしなくていいでしょう
  • 問題は退院してから外来で維持療法を受けることを勧められたときの毎月の自己負担額です

ヨーロッパでの長期成績

Stupp R, et al.: Effects of radiotherapy with concomitant and adjuvant temozolomide versus radiotherapy alone on survival in glioblastoma in a randomised phase III study: 5-year analysis of the EORTC-NCIC trial. Lancet Oncol. 10:459-466, 2009
先のヨーロッパでの大規模研究の最終報告です。573人の膠芽腫の患者さんが85施設で治療を受けました。放射線単独治療では5年全生存割合は1.9%でしたが,テモゾロマイドを併用すると9.8% でした。統計学的に差が明らかとなっています。

テモゾロマイドは制がん剤なので使用するとつらいことになるのか?

Taphoorn MJ, et al.: Health-related quality of life in patients with glioblastoma: a randomised controlled trial. Lancet Oncol 6:937-944, 2005
572人の患者さんの追跡調査です。テモゾロマイドを飲んだ患者さんと,飲まないで放射線治療だけ受けた患者さんの生存の質 HR-QOL が,違うかどうかの調査がなされました。結論はテモゾロマイドの副作用のためにQOLが著しく低下することはなかったとのことです。この意味でも副作用(有害事象)の軽い制がん剤と言えます。

ここから下は難しいです

グレードII グリオーマで,テモゾロマイドと放射線治療のどちらを選択するか

Baumert BG: Temozolomide chemotherapy versus radiotherapy in high-risk low-grade glioma (EORTC 22033-26033): a randomised, open-label, phase 3 intergroup study. Lancet Oncol, 2016
477人のグレードIIグリオーマ (astrocytoma, oligoastrocytoma, or oligodendroglioma)の患者さんを対象とした臨床第3相試験です。治療を行った基準は予後が悪そうに思える例で,40歳以上,進行性病巣,腫瘍サイズが5cm以上,正中を超える病変,神経症状があったという基準です。無作為に,放射線治療 (conformal radiotherapy; up to 50·4 Gy; 28 doses of 1.8 Gy once daily) あるいはテモゾロマイド化学療法 (75 mg/m2 for 21 days, every 28 days, maximum of 12 cycles)がなされました。
PFS 無増悪生存割合に差はありませんでした。また,生存の質 health-related quality of life (HRQOL)にも差はありませんでした。

テモゾロマイドの増量で効果はあがるか

Gilbert MR, et al.: Dose-dense temozolomide for newly diagnosed glioblastoma: a randomized phase III clinical trial. J Clin Oncol 31: 4085-4091, 2013
Armstrong TS, et al.: Net clinical benefit analysis of radiation therapy oncology group 0525: a phase III trial comparing conventional adjuvant temozolomide with dose-intensive temozolomide in patients with newly diagnosed glioblastoma. J Clin Oncol31:4076-4084, 2013
テモダールを量的に多く使用すること dose-dense (dose-intensive) temozolomideで,OSあるいはPFSという生存割合が改善するかどうかを,膠芽腫の833人の患者さんで確かめられました。結果,効果はありませんでした。また,症状の改善などを見た NCB net clinical benefitは低下して,逆に症状,健康状態,日常生活の質が低下してしまいました。テモダールの投与量を増やしても利益はありません。

テモゾロマイド 21日間投与法の評価

Brada M, et al.: Temozolomide versus procarbazine, lomustine, and vincristine in recurrent high-grade glioma. J Clin Oncol 28: 4601-4608, 2010
再発の悪性神経膠腫の患者さん447人に行なわれた大規模試験です。PCV (porcarbazine, lomustine, vincristine)が224人の患者さんに投与され,TMZ (temozolomide) 200 mg/m2を5日間投与が112人の患者さんに,TMZ 100 mg/m2を 21日間連続投与が111人の患者さんに投与されました。いずれの群でも生存割合に有意な差がありませんでした。従来のテモゾロマイド5日間投与を受けた患者さんで生存期間中のQOLが良かったとのことです。この結果は当たり前で,テモゾロマイド5日間が副作用(有害事象)が最も軽いということは容易に予想がつくことです。

テモダールを増量する試み

Wick W, et al.: New (alternative) temozolomide regimens for the treatment of glioma. Neuro-Oncol 11: 69-78, 2008

  • 5/28 days regimen : 200mg/m2/day, dose intensity 1,000mg/m2/28 days
  • 28 days daily regimen : 75mg/m2/day, dose intensity 1,575mg/m2/28 days
  • 10/28 days regimen : 150mg/m2/day, dose intensity 1,500mg/m2/28 days
  • 21/28 days regimen : 75mg/m2/day, dose intensity 1,875mg/m2/28 days
  • 14/28 days regimen : 150mg/m2/day, dose intensity 2,100mg/m2/28 days
  • 21/28 days regimen : 100mg/m2/day, dose intensity 2,100mg/m2/28 days

テモゾロマイドの使用量を増やす投与法が試みられました。少量分割投与で,総投与量を増加させるという方向です。これは腫瘍細胞の中のMGMTという酵素を減少させるためにはテモゾロマイドを続けて投与した方がいいし,そうすればテモゾロマイドの抗腫瘍効果が上がるという推論に基づいたものです。


感染症を生じないための大切なこと
  • 白血球のなかに好中球 neutrophilという細胞があります
  • 好中球数 (ANC absolute neutrophil count) の数が1,500/ml以上であれば,テモダールを200mg/m2で服用できます
  • それ以下だと50mg減量します
  • 徐々に減らしていって100mg/2以下に減量しなければならないようなANCの値になれば中止します
  • ANCが下がりすぎると重症感染症をまねくことがあるからです
  • もっとも重症となるニューモシスチス肺炎は,発熱,悪寒,呼吸困難などの症状をだします,重い風邪のような症状がある場合には疑います
  • ニューモシスチス肺炎を予防するためには,テモダールの服用中にバクタ(スルファメトキサゾール・トリメトプリム 400mg,ST合剤)を1日1錠毎日服用します
  • バクタがアレルギーなどで飲めない時には,ベナンバックス(ペンタミジン)の吸入をします
  • ベナンバックスにもアレルギーがある場合には,サムチレール(アトバコン 1500mg)を1日1回服用します
吐き気のコントロール
  • 患者さんがテモダールを飲んでいてもっともつらいのは吐き気です
  • 催吐性リスク分類では中等度とされます
  • 外来投与では,テモダールを服用する前に5-HT3受容体拮抗剤,ナゼアOD錠0.1mg(ラモセトロン),カイトリル錠2mg(グラニセトロン),ゾフラン錠4mg(オンダンセトロン)などを飲んでおくとだいたいの吐き気は抑えられます
  • それでもどうしても吐き気が強い時には,デキサメタゾン8mgを併用することがあります
  • しかし,デキサメタゾンはステロイドなので感染のリスクの特別高い患者さんには避けます
  • アロキシ0.75mg(パロノセトロン)静注とデキサメタゾン8mgを1日目に使用するという方法もあります

 

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