タバコ広告緊急事態宣言     第61回日本公衆衛生学会 10月24日13:00−14:15演題番号M11-2 セッション名 喫煙率半減への課題 第4会場(401・402) スライド1 みなさん、Global Youth Tobacco Survey による最新のデータによれ ば、いくつかの国々では13歳から15歳の子供たちの60%がタバコ を吸っていることが明らかになりました。13歳から15歳の喫煙する 子供たちの4人に1人が10歳未満でタバコを吸い始めています。こ れらの子供たちの大部分が禁煙を試みたことがあり、喫煙する子供 たちの大部分が禁煙を願っていると言われています。 スライド2 日本では、平成12年 乳幼児身体発育調査報告書によると、妊婦 の喫煙率は過去十年間で約2倍に増加しており、特に未成年妊婦の 喫煙率が高いことが明らかになりました。そこで、この原因を調べる ことに致しました。 調査および方法 JTのタバコ販売戦略を探るため、JTのHPに掲載されている文書を はじめ、公文書、医学誌等に掲載されたタバコ広告・プロモーション 活動等に関する記事を収集し検討しました。 あきらかになったこと スライド3 JTニュースにより、JTは若年層に狙いを定めてタバコを宣伝販売し ている事が明らかになりました。 スライド4 JTニュースにより、タバコのパッケージには若者を魅了するデザイン が採用されていることが明らかにされました。 スライド5 JTの未成年喫煙防止キャンペーンは、二十歳になったらタバコを吸 って良いというメッセージのみを伝え、タバコの有害性や依存性に関 する情報提供は全く無く、成人の喫煙を正当化するものばかりでし た。 スライド6 また、JTの未成年喫煙防止キャンペーンは、未成年者の喫煙は、 『家庭のしつけ』に問題があるという主張を行っています。果たしてそ うでしょうか? 未成年者の心理は複雑で、はやく大人、一人前になりたいという心 理から「子供はタバコを吸うな」と注意することが、皮肉にも子供達の 喫煙に対する興味をそそることになります。家庭で「タバコを吸うな」 と注意すれば子供達はタバコを吸いたくなり、逆に注意しなければ子 供はタバコ公告に魅了されてタバコを吸ってしまいます。このジレン マに子供を持つ親は悩まされるのです。 スライド7 事実、JTの未成年喫煙キャンペーンは効果が無く、未成年者の喫煙 率増加を反映して、「未成年」妊婦の喫煙率は著しく高くなりました。 スライド8 若者が集まるイベントを企画してタバコを宣伝しています。 スライド9 妊婦が1日1本でもタバコを吸うと胎児の発育に影響を与えます。JT はこの事実を知っていますがパッケージに明記しません。タバコには 「あなたの健康をそこなうおそれがあります。」と書かれていますが、 本人のみならず胎児にも影響が及ぶという事実はこの表示が適切で ないという証拠です。 スライド10 JTは巨費を投じ、若年者が好むスポーツや文化活動を利用して広告 宣伝・販売促進活動を行っています。1999年、2000年及び2001年 3月期にて費用計上された広告宣伝・販売促進費は、それぞれ1414億 円、1715億円及び2100億円でした。これは大手企業の資本金に匹敵 する金額です。ちなみに1964年度は2億円でした。40年間で宣伝 広告費がなんと1050倍にもなってます。一方、葉タバコ買い付け価格 は14年間も据え置かれており、減反政策が続けられています。 スライド11 JTはRoger Scruton を雇って“子供達にタバコを吸わせるための記事” を書かせ、子供たちに対するプロモーション活動を行っていたことも 明らかになりました。これは未成年喫煙問題が決して『家庭のしつけ の問題』ではないという決定的証拠です。JTが雇ったRoger Scrutonは JTのことを「悪徳弁護士や詐欺師が経営する商売」と表現しています。 この「悪徳弁護士や詐欺師」とは一体誰であるのか聞いてみましたが 回答はありませんでした。 スライド12 事実、家庭のしつけや未成年喫煙防止の運動は奏効せず、中学生 での喫煙経験は過去20年で約2倍に増加しました。 スライド13 ニコチンには依存性があり禁煙は困難です。未成年の喫煙もまたニ コチンの依存性によるものであり「家庭のしつけ」の問題ではありま せん。 タバコには「吸いすぎに注意しましょう」と書かれていますが 「吸いすぎ」はニコチンの依存性が原因であり、自由意志に基づく選 択ではありません。このような表示は自業自得論を主張するもので あり、依存性がある商品に対する警告表示としては、明らかに不適 切です。事実、タバコ病訴訟においては、JT、はタバコを吸って肺癌 になった患者に対し、自業自得論を主張しています。 スライド14 2002年4月JTは「Plan2004」の中で、メンソールタバコ、低タール たばこ、低副流煙タバコ、たばこ自動販売機を積極的・効果的に利 用する経営計画を打ち出しました。 スライド15 メンソールタバコは若年者、喫煙初心者のための製品です。 スライド16 例えば、マイルドセブン・スリム・ライト・メンソールというタバコが ありますが、マイルド、スリム、ライトと表記されており、軽いタバコ のような印象を受けますが、実際には、メンソールが強められており、 マイルド・スリム・ライトという表現は不適切であることがわかりまし た。 スライド17 たばこにメンソールを添加すると、清涼感と麻酔作用により、喉が弱 い女性や子供でもタバコが吸えるようになります。メンソールの効果 として次のことが知られています。 メンソールは健康に良いというイメージがある。 メンソールの麻酔作用により、喉の神経が麻痺し、喫煙しやすくなる。 メンソールには清涼感があるため煙を深く吸い、長く息を止める。 メンソールたばこ常用者は有害成分の吸入量が多い。 メンソールタバコは依存性になりやすいなどです。 スライド18 事実、新製品の開発、広告、プロモーション活動、そして、スポンサー 活動により、若い女性が次々と喫煙を始めています。 スライド19 そして東京23区での低体重児出生は7年間で22%増加しました。 タバコには「あなたの健康をそこなうおそれがあります。」と書かれて いますが、本人のみならず胎児にも影響が及ぶという事実はこの表 示が適切でないことを示しています。 スライド20 JTニュースによると、JTは自動販売機をタバコの広告塔として利用し ています。 スライド21 警察庁の調査により、未成年喫煙者の7割は自動販売機でタバコを 購入していることが明らかにされました。 スライド22 近年、煙が少ないタバコの開発に力を注いでいますが、煙が少ない タバコでも決して安全とは言えません。JTニュースにより、全てのタバ コには燃焼すると発癌物質アクロレインを生じるグリセリンが添加さ れていることが明らかになりました。 スライド23 「喫煙者が自分が吸っているものの中に何が含まれているか知りた いと考えることは当然のことと思います。我々は喫煙者にシガレット に含まれている添加物についてお知らせしなければならないと考えて います。」これは日本たばこ産業が、2000年8月29日にWHOに提 出した「WHOたばこ対策枠組み条約に対するコメント」という文書の 一部です。しかし、この文書提出から2年になりますが、日本たばこ 産業はいまだに添加物を公開していません。むしろ、タバコ病訴訟を 通じてクマリンなどの発癌性物質をタバコに添加している事実が明ら かにされています。 スライド24 国民栄養の現状(平成12年国民栄養調査結果)によると長寿の老 人には喫煙者が少ないことが明らかになりました。特に、50歳以降 では男性喫煙者が急激に減少しています。つまり、タバコの害は50 歳以降に出現することがわかります。 スライド25 しかしながら、日本たばこ産業は、柴田二郎など医師を利用してタバ コの有害性を曖昧にする広告活動を展開しています。 スライド26 そして、1998年、WHOとIARCが「受動喫煙は肺癌の原因である」と 発表したとき、財務省のタバコ事業等審議会では宮崎医科大学の 常敏義三により「受動喫煙の影響は見られない」という、全く逆の報 告が行われました。そして、JTは、「受動喫煙の影響は見られない」 という意見書をWHOに提出し、世界中から非難を浴びています。 スライド27 果たして、喫煙者は次の事実を理解した上で喫煙を選択しているの でしょうか? JTのタバコには発癌性物質クマリンや燃焼により発癌性物質を生じ るグリセリンなどが添加されています。JTはタバコの依存性・発癌 性・妊婦・胎児への危険性を知っていますが、警告表示を拒否してい ます。メンソールには麻酔作用があるため、喉や気管が弱く、タバコ の煙が苦手な女性・子供でも、容易に喫煙できますが健康に対する メリットは全くなく、メンソールたばこの喫煙者は有害成分をより多く 吸い込んでおり、より有害です。JTのタバコは若者を狙って開発さ れ、宣伝されています。そして、若者を魅了するスポーツやイベントを 利用して宣伝されています。 その上、未成年喫煙問題を『家庭のしつけの問題』にすりかえていま す。悪質なことに、医師を利用してタバコの害を否定する活動まで行 われています。 スライド28 タバコ農家の葉たばこ耕作面積は昭和63年には6万2,000(ha)あっ たものが平成13年現在では約2万4,000(ha)へと減反されており、減 反政策は現在も継続されています。葉たばこの買入れ価格について は平成14年現在で14年連続の据え置きとなっています。しかし、一 方、葉タバコ輸入量は増加しており、現在、JTの収益はうなぎのぼり に伸び続けています。そして、このうなぎ昇りの、膨大な、タバコ消費 量を支えているのが、まさに我々の子供たちです。タバコ産業は我々 の子供たちに焦点を当てて重点的に狙っています。   スライド29 まとめ ・未成年を避けて成人のみにタバコを宣伝することは不可能です。 ・JTの未成年喫煙防止キャンペーンには、喫煙を防ぐ効果はありま せん。 ・喫煙率増加は明らかに利益を優先したタバコ広告が原因です。 ・平成13年度のJTの広告宣伝・販売促進費は約2100億円であり、 効果的なタバコ対策のためにはタバコ広告を廃止するか、または最 低でも年間2100億円規模のアンチ・タバコ・キャンペーンの継続が 不可欠です。 ・JTはタバコの危険性を指摘する報告を否定するため、喫煙科学研 究財団を通じて年間3億5千万円の研究費を助成し、タバコの有害 性に関する事実を捻じ曲げる広報活動の根拠にしています。JTに対 抗して正しいタバコ情報を提供するには喫煙科学研究財団を廃止す るか、独立したタバコ研究を促すために年間3億5千万円の財源が 必要です。 ・そして、タバコ病訴訟のために、喫煙科学研究財団の医師は、ニコ チンの依存性を否定する論文までも、書いていました。 ・医師を利用してタバコの害を否定する活動と、タバコ広告は早急に 禁止させるべきです。 ・JTから資金をもらってタバコの有害性を否定している医師は、速や かに名前を公開される必要があります。 ・喫煙者の大半が禁煙を望んでいることから、喫煙すると止められな くなることを明記すべきです。 ・タバコの添加物を情報公開しパッケージに明記すべきです。 ・未成年喫煙問題は「家庭のしつけ」が原因ではなく、ニコチンの依 存性と、JTのタバコ宣伝が原因であり、タバコの宣伝広告と販売促 進活動は即座に全面禁止すべきです。 現在、世界では6秒毎に1人、誰かがタバコにより死亡しています。 1年間では490万人が死亡しています。未成年妊婦の喫煙率が急 増し、低体重児出生が増加している事実はタバコが我々の子供や 孫、子孫にも障害を与えることを意味しています。しかし、今、ご紹介 したように、JTは子供に焦点を当ててタバコのプロモーション活動を 行っています。 みなさんJTのタバコ広告から、若者や子供そして我々の孫を守るた め、日本国内での有効なタバコ広告規制およびWHOのタバコ枠組み 条約を成功させましょう。 ご清聴ありがとうございました。