北海道深川市立総合病院内科松崎道幸です。 WHOのHPに今年の世界禁煙デーのメッセージが載っていました。相当意訳してい ますが、御利用御自由に。 なお今年のテーマは [Tobacco Free Sports-play it clean]です。「タバコのな いスポーツ-きれいにやろう」では何の事かわからないので「スポーツはタバコ と絶煙しよう-ウソを許すな」にしました。 ******************** http://tobacco.who.int/page.cfm?pid=63 World No Tobacco Day 2002 Tobacco Free Sports--Play it clean Global deception 2002年世界禁煙デー スポーツはタバコと絶煙しよう−ウソを許すな! タバコ産業は世界中をだましている  消費者の二人にひとりを殺す商品があります。これを売り込むにはどうすれば よいでしょうか?できるだけ早く、時には9才くらいまでにこの商品に病みつき になって、やめられないようにするには、どのような誘惑作戦が必要でしょう か?この商品がもたらす死と病苦と強烈な依存性を、生命・健康・自由の味わ い・明るい人生というニセの衣でうまく隠すにはどうすればよいでしょうか?  近くの競技場をご覧なさい。好きな選手の身につけているシャツや靴、バッ グ、ジャケットをご覧なさい。疑うことを知らないこども達にスポーツの場を通 じてタバコを売り込むことをもくろむタバコ産業の内部文書をご覧なさい。この 内部文書をタバコ産業の公式発言と比べてみて下さい。彼らの言う事と実際にや っている事はとても違います。  このようなタバコ産業の迂回作戦にはウソが隠されています。このウソは、病 苦と二人にひとりが必ずタバコによって殺されることを覆い隠しています。タバ コは人殺しなのです。死んだ消費者を補充するために、タバコ産業は、世界中か けまわって、喫煙者を新たに作り出さなければなりません。そのために彼らは、 あらゆるところに手を出します。こども達が集まるなら、どんなさびれた競技場 も例外ではありません。  世界保健機関(WHO)は、タバコを、宣伝とスポンサー活動によって広がる 伝染病と表現しています。最も有害なタバコの売り込み作戦が行われているの は、世界中のスタジアムとスポーツアリーナでしょう。  タバコ産業は、毎年巨額の資金をスポーツイベントのスポンサー活動にそそぎ 込んでいます。連邦通商委員会によれば、1999年に米国で、国内の主なタバ コ産業がスポーツイベントに支出した金額は、1億1360万ドルにのぼりまし た。タバコの直接宣伝が法律で禁止されている国々では、スポーツのスポンサー 活動費が増えて、宣伝禁止法が空洞化するという皮肉な事が起きています。米国 の連邦法ではテレビでのタバコ広告が禁止されていますが、タバコ産業はモータ ースポーツのスポンサー活動を行う事で、毎年1億5千万ドル以上のテレビ広告 に匹敵する宣伝効果を上げていると試算されています。  タバコ産業は、スポーツのスポンサー活動を慈善活動の見地から行っていると 言い張りますが、彼らの内部文書は、そのようには書かれていません。  RJ・レイノルズ社(現在JTが所有)の1989年のある内部メモはこう述 べています:「われわれの商売はスポーツでなくタバコを売る事だ。われわれ は、スポーツを利用して、わが社の商品を宣伝するのだ。スポーツイベントの宣 伝をすれば、新しい顧客層に入り込む事ができ、イベント中もイベント後も売上 を増やし、増収が期待できる」。これは、根拠のないカラ威張りではありませ ん。BAT(British American Tobacco)グループがインドに作った合弁会社 が、1996年のインド・クリケットワールドカップのスポンサーとなったと き、インドの10代のこどもの喫煙率が5倍になり、スポーツのすばらしさとタ バコを結び付ける誤った考えを持つこどもも激増したという事実があるのです。  一般市民をだまし、タバコ会社は大もうけ。死と病苦の重荷は、多くの国々に ふりかかります。タバコ会社はスポーツ競技場でいくら宣伝費を使えば、何人を 喫煙者として獲得できるかを、正確につかんでいます。BATの役員ゴードン・ ワトソン氏は、1984年サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙にこう語っ た:「われわれは無駄な金の使い方はしない。われわれはこれについて徹底的に 研究し、自動車レースが、若者の目にこそ、スピーディでエキサイティングでト レンディなスポーツと映るように宣伝を行った。若者こそが、スポーツという市 場におけるわれわれのターゲットだった。そして、まもなくこのねらいが正しか った事が証明された」。  タバコ産業のねらいは当たりました。そして不幸なことですが、タバコ病死が 増えるという予想も当たりました。こどもの時からタバコ依存が始まっておよそ 20年経った今、現在30才未満の中国の男性の3分の1は、タバコ関連疾患で 死亡するだろうという研究結果が発表されました。2020年には全世界で毎年 840万人がタバコ病死し、その7割は発展途上国で発生すると推定されていま す。 全世界の皆様!  スポーツは人生のよろこびです。近くの公園で行う即席のゲームであろうと、 学校・地域のスポーツ大会、国内選手権、ワールドカップあるいはオリンピック であろうと、スポーツは健康な生活、健康な競争と楽しみを私たちに与えてくれ ます。  それに対して、タバコは人生によろこびを与えるどころか、病苦と死をもたら します。タバコは世界で現在毎年400万人以上の命を奪っています。2020 年には毎年840万人がタバコによって殺されると推定されています。  プロスポーツ選手がタバコを吸えば、競技能力が落ち、引退が早まるおそれが あります。アマチュア選手やレクリエーションでスポーツをやる一般人がタバコ を吸うと、ゲームをする能力が落ちます。スポーツイベントを観戦する人がタバ コを吸ったり、受動喫煙すると、病気にかかりやすくなったり、ゲームを楽しむ 事が妨げられます。スポーツチームやスポーツ施設が、タバコの広告費やタバコ 会社の後援金を受け取る事は、スポーツの命である健康とフェアプレーの精神を 台無しにする行為となります。タバコ会社と一緒にスポーツイベントのスポンサ ーとなっている企業の製品には、「有害企業」の烙印が押されます。つまり、タ バコとスポーツは両立しないのです。  運動選手、スポーツファン、観客の多くは若者です。最近の調査では、未成年 喫煙者の3分の1は、10才にならないうちに喫煙を始めています。未成年者の 喫煙率は世界の多くのところで増えています。喫煙開始が早ければ早いほど、重 いニコチン依存症となります。禁煙する事ができないため、ヘビースモーカーと なり、生きている間中タバコ使用が続きます。このような若者から幾百千万もの タバコ関連疾患死亡者が発生します。  タバコ会社は、若者をターゲットにしてはいないと言い張りますが、実際は、 若者がたくさん見に来る若者に人気の高いスポーツイベントを後援してタバコの 広告が会場にあふれるように行動してきました。タバコブランドロゴ入りのジャ ージ・帽子・スポーツバッグ・Tシャツ・グラウンド・観客席・自動車を見るた びに、タバコとスポーツの持つ強さ・スピード・優雅さ・成功・よろこび・興奮 が結びついて印象づけられます。 全世界的対策  世界中のスポーツ団体とスポーツ選手は、タバコがスポーツの持つ価値や健康 と両立しない事を知っています。スポーツ選手は、彼らの持つ強さ、技、献身 性、社会全体の手本となるロールモデルとして振る舞う能力がある事に誇りを持 っており、タバコがスポーツの理念をネジ曲げている現状を改めたいと思ってい ます。  世界の多くの国々は、国民の健康を守る権利をその手に取り戻したいと思って います。WHOに加盟する191カ国は、タバコによって死ぬ者を減らすための 国際保健条約を作るために話し合いを行っています。科学と経済がタバコ規制の ための法律・規則、場合によっては司法的措置とうまく噛み合うよう、タバコ規 制に関する国際枠組み条約(FCTC)を締結する予定です。この条約は、国 境・文化・世代・社会経済階層などの違いを越えて存在する全地球的な問題、つ まりタバコの宣伝活動や密輸などの問題を解決する事をめざしています。事実、 FCTCは、国際市場で自由に入手できる商品ならば常識である精査と責任の履 行の要求にほかなりません。  ウソの宣伝とタバコ病死をなくせという国際的な圧力の高まりの前に、タバコ 産業は、自分達の企業活動にマイナスになる実効性のある規制をやめさせよう と、新たな策動を始めています。使い古された言い訳として、今回、BAT、フ ィリップ・モリス、JTなどは、「国際タバコ販売促進活動基準International Tobacco Marketing Standards」の施行を約束しています。かれらは、この基準 を自主的に実行することとタバコの宣伝を大人の喫煙者に限ることを言明してい ます  WHOは、タバコの宣伝を喫煙成人だけに限定したことによって、こどもたち をタバココマーシャルの洗礼から守る自主規制が成功した試しはないと断言して います。自主規制は、決して成功しません。なぜなら、絶対成功しないように作 られているからです。このことはタバコ産業はもちろん、現在では世界中だれで も知っています。 スポーツはタバコと絶縁しよう−ウソを許すな!  全世界的な行動の呼びかけに応えて、WHOとその共同組織はスポーツからあ らゆる形のタバコすなわちタバコ消費、受動喫煙曝露、タバコの宣伝と販売促進 活動をなくすためのキャンペーンを始めています。  米国の疾病予防センター(CDC)、国際オリンピック委員会(IOC)、国 際フットボール連盟(FIFA)、国際自動車連盟(FIA)、オリンピックエ イドおよび各地のスポーツ組織は、WHOとともに、この「Tobacco Free Sports」キャンペーンに参加することになっています。タバコのないスポーツイ ベントは、2002年のソルトレークシティ冬季オリンピック、日本と韓国で行 われる2002年ワールドカップサッカー大会を始めとして、世界中で開催され ます。  運動選手、スポーツ団体、国立・地方のスポーツ担当官庁、学園・大学のスポ ーツチーム、スポーツマスメディアならびにスポーツに関心のある者ならだれで も、このTobacco Free Sports キャンペーンに参加しましょう。WHOはすべて の人々に呼びかけます。私たちの健康と健康な生活をおくる権利と、こども達を タバコによる死亡や傷害という人災から守る権利を取り返しましょう!