2018年度(平成30年度)の新年度にあたり本学会の理事・運営委員も新体制でスタートいたしましたので、御挨拶申し上げます。
崎山武志・前代表理事(会長)の御尽力により本学会は2014年(平成26年)4月に一般社団法人化しました。資料によりますと、それまでの研究会から学会として運営組織が整備され、正式に学会として発足したのが2003年(平成15年)4月で、これは飯倉洋治・初代理事長のお力によるものでした。然しながら飯倉先生の突然の御逝去で同年4月の本学会の記念すべき第22回学術集会は急遽、故飯倉洋治理事長追悼講演会となりました。その後、本学会の理事長・会長は伊藤克己先生、和田恵美子先生、崎山武志先生が引き継がれ今日に至っております。
漢方薬の特徴を本学会の理事・運営委員の著書・文献を基に述べたいと思います。
「漢方薬は効き目が穏やかだから効果がすぐには表れにくい」とまだまだ一般社会では思われがちですが、急性疾患に対しても漢方薬は西洋薬を時に上回る即効性や高い効果を示します。漢方薬はいうまでもなく、複数の薬効をもった生薬の組み合わせです。従って、西洋薬は基本的に単一成分であるのに対して漢方薬は多成分であることから、小児の急性疾患の多くを占める感染症に対しても細菌やウイルスを直接にたたくのでなく、生体側の反応機能を利用し生体の免疫反応を調節することで効力を発揮します。
さらに漢方薬が最も得意とするのは、生体の適応、防御反応の亢進ないし変調をきたしやすい、いわゆる「過敏性体質」の小児によくみられる自律神経のアンバランスによる反復性腹痛、過敏性腸症候群、起立性調節障害などの機能性疾患、西洋医学的検査では明らかな異常は見当たらず、西洋薬では改善しにくい不定愁訴や心因によると思われる疾患などです。これらに対しては漢方薬の情緒安定作用、消化機能調節作用、水分調節作用などの生体反応調節作用が働くものと思われます。
日本の医療は、幸いなことに西洋薬と漢方薬を同時に保険診療で処方可能ですので、このメリットを最大限活用するために、要素還元論に基づく西洋医学的視点と、生体を一つのシステムとしてとらえる東洋医学的視点の双方を持ち合わせ、お互いに補完しあうことによって、小児医療にも新たな道が開けることを期待しております。
本学会の一般社団法人化と同時に、本学会編「小児の漢方治療の手引き」が2014年に刊行されました。諸先輩の先生方の業績を踏まえ、漢方・東洋医学の小児科領域における更なる普及、発展に御支援、御指導よろしくお願い申し上げます。

 

一般社団法人・日本小児東洋医学会 代表理事 野上哲夫