公衆衛生学の使命は一貫して疾病予防にあります。アメリカ合衆国では、医学部以外に公衆衛生学部(School of Public Health)があります。公衆衛生学部ができた目的は、疾病を予防する方法を網羅的に研究することでした。ですから、その規模は、日本の国立大学の医学部とほぼ同等かそれ以上です。研究組織は、生物統計学、環境保健学、疫学、労働衛生学、遺伝子学、健康政策学、免疫と感染症学、栄養学、国際保健学等の専門家から構成されています。それに対して、日本の医学部は、疾病の診断・治療を目的に編成された組織であり、衛生学、公衆衛生学は基礎部門の一部組織であるため、予防医学を目的とするにはパワー不足であることは否めません。しかしながら、国民の要求は、確実に診断・治療から予防へと移行しつつあります。そこで、如何に疾病予防の旗を掲げるかが課題となります。さらに、疫学解析による集団リスク、ゲノム解析による個人のリスク評価が可能となってきましたが、多くの集団は利益を享受できるようなシステムではありません。そこで今後、より多くの人々が恩恵をうける有効な予防医学研究が望まれるわけであります。

本講座は、伝統的に環境保健、産業保健、酸化ストレス研究を行ってきました。今後、学部教育は、国家試験に必要なコアカリキュラムを重要視し、大学院教育は、基礎実験から疫学応用の修得を目標にしております。研究に関しては、私は、これまで、12年間金沢大学大学院医学系研究科において抗酸化、抗窒素化による疾病予防の研究を行ってきました。今後、環境の面からアレルギー性疾患を予防する方策を打ち出せるような研究を行いつつ、厚生労働省の健康日本21の目標疾病であるメタボリック症候群や生活習慣病を予防のためのプロテオーム解析による超早期診断により新しいバイオマーカーや予防法を開発する予定であります。

超高齢化社会の到来により、予防医学に立脚した公衆衛生学の役割は、益々、重要となります。21世紀に向け、教室員一同、日々、質の高い研究、充実した教育、社会的な貢献に邁進していく所存です。

荻野教授業績 Professor Ogino’s Publications