シンポジウムーV

     『信頼される感染症検査へ』
1法のみによる梅毒検査スクリ−ニングの可能性

大津赤十字病院  谷口  昇

 

1.梅毒検査の推移と現状
     小寺宏尚(京都市立病院)

2.TP抗体1法による梅毒スクリーニング検査の評価
     河野  久(天理よろづ相談所病院)

3.梅毒検査用試薬(STS・TP抗体)の評価と問題点
     川井 和久(大阪府藤井寺保健所)


 平成16年10月16日・17日の両日、奈良県橿原市において第44回近畿医学検査学会が開催され、免疫検査分野ではシンポジウムV 「信頼される感染症検査へ」 −1法のみによる梅毒検査スクリーニングの可能性一が開催された。
 梅毒血清検査は、主に術前あるいは入院時の感染症検査として多くの施設で実施されており、その内容はSTS法とTP抗体法の2法の実施が従来より行なわれてきた。しかし最近、コストや保険点数の包括化、迅速性などの問題から“どちらか1法だけでもよいのでば”という意見を耳にする。事実、全国で7〜8県において梅毒検査を2法行なっても、1法しか保険が認められていない。このような状況の中3名のシンポジストが各々「梅毒検査の推移と現状」「TP抗体一法による梅毒スクリーニング検査の評価」「梅毒検査用試薬の評価と問題点」と題して発表された。小寺氏は、梅毒検査の歴史や日臨技サーペイの結果より現状などを報告された。河野氏は、一法だけで実施するにあたり約6万件の検体を調査し、また、ウサギを使った実験によりLPIA法によるTP抗体はRPRとほぼ同じ感度で、変更後約4年経過したが、梅毒症例を見逃すことなく適切な選択であったと報告された。川井氏は、STS・TP抗体法の2法実施が望ましいが、どちらか1法の場合はSTS法が望ましいく、臨床と一致するのはTP抗体より脂質抗体であると報告された。
 STS法・TP抗体法ともそれぞれ長所・短所があり、シンポジウムにおいて統一した意見にはまとまらなかった。とくにTP抗体では、自動化試薬やICA法は従来のTPHAに比べ概ね高感度なため、治療後を含めた既往抗体を不必要に引っかける結果となり、新たな問題にもなりかねない。フロアーからはカットオフ値を上げるべきという意見も出された。それぞれの方法・試薬の特徴をよく理解し、将来、梅毒スクリーニング検査を1法で行なわなければならなくなった時、今回のシンポジウムが方法選択時の参考になればよいと感じた。