ランチョンセミナー

「超音波診断装置の最新技術」

東芝メディカルシステムズ株式会社
 関西支社 営業技術部 松田 幸男


 近年、ティッシュハーモニツクイメージング(THI)の発達によりアーチフアクトの少ない画像が得られるようになった。基本波が生体内に伝播中に、歪み(非線形)が発生することにより高調波成分が発生する。その歪んだ成分を映像化するティッシュハーモニツクイメージングにて、超音波診断装置の画質は格段と改善されている。
 今回我々はさらなる画質改善を可能としたデイファレンシャルティッシュハーモニツクイメージング「差音映像法(Diff-THI:Differential THI)」を開発し、弊社Aplioに搭載可能とした。
 従来のティッシュハーモニツクイメージングでは、発生した2次高調波成分(基本波の倍の周波数)を利用し、その成分をデジタルフィルターやキャンセレーション法を応用したPulseSubtraction法により抽出することで映像化を実現している。2次高調波はビームの中心軸で発生するためビームがシャープになり、サイドロープなどのアーチファクトが低減し、コントラスト分解能の向上がなされた画像描出が可能となった。このためプローブが持つ周波数特性は従来のものより広帯域化されている。
 一方、新しい映像法であるデイファレンシヤルティッシュハーモニツクイメージング「差音映像法」は、2つの周波数を生体内へ送信することにより、受信する高調波数成分には2つの周波数帯が発生する。一つは従来の基本波より発生する2次高調波周波成分。もう1つは送信した2つの周波数の差の周波数(差音周波数)帯である。この2次高調波数帯と差音周波数帯を合わせた周波数帯域を利用することにより、従来のティッシュハーモニツクイメージングより優れた画質を得ることが可能となった。
 プローブが持つ周波数帯域は従来型ティッシュハーモニツクイメージング可能プローブよりさらに広帯域、高性能化されている。
 差音映像法で得られる効果として、浅部から深部まで細かな均一性が保たれたスペックルで観察でき感度も向上しているため、肥満体でも深部の観察が可能で見落としが防げる。分解能の向上により、視認性の良い画像が得られ小さな病変を発見しやすくなり、病変の組織性状の描出力が向上し、判読しやすい画像となることなどが期待される。
 今回は詳細内容を割愛するが、非線形現象を利用する技術として超音波造影剤を使用し、バブルからの反射信号を映像化する心筋超音波造影(MCE)や新しい造影剤を利用し低・中音圧による映像法が可能となる技術やティッシュドプラによる局所壁運動の定量評価機能など様々な応用技術がAplioには搭載可能となった。
日進月歩、最新技術の開発が積み重ねられてゆくが、これにより確実な診断を支援できることを期待すると共に、皆様からの声を開発にフイードバックできるよう努力を続けたいと思っております。
 この度は歴史ドラマの地、かしはら万葉ホールにてランチョンセミナーに参加させて頂き、誠にありがとうございました。また、セミナー開催、実行にあたり手際良く、そつなく進行・運営・フォローを賜りましたスタッフの皆様と、ご清聴くださいました皆様に感謝いたします。