教育講演

「救命救急検査室24時!!」“熱き技師たちの闘い”

大阪府立泉州救命救急センター検査室  福田 篤久


「おい誰か、心マ(胸骨庄迫式心臓マッサージ)続けろ!!輸液全開!!」と、緊迫感で張りつめた。救急搬入口に担当医の声が響きわたる。
そう、ここは救命救急センターの初療室(救急車で搬送された患者が最初に治療や処置を受ける所)である。今回、我々は救命救急センターの検査体制や患者情報収集の有用性などを、現場と密着させ話を進めることにする。現在あるいは今後、緊急検査に取り組む方々にとって、いつか何かの参考になればと願うのである。
 そもそも原始の時代から人類の多くの命を奪ってきたのは、外傷や急性感染症などの急性病態である。人類は、突然襲いかかってくる急性病態に絶えず脅え続けてきた。この人類最大の課題である急性病態を扱うのが救急医療であり、昭和52年に重症例を中心に専門的に治療する三次救急医療機関、即ち救命救急センターの発想が生まれ、救急病院の二に対して三次医療機関として救急医療体制に組み込まれるようになった。
 大阪府立泉州救命救急センター(大阪府南部の救急医療の中核として1994年関西空港の開港と同時に開設、病床数はICU8床・HCU2床・一般病床20床の計30床)は、重症患者の急性期医療を専門に行う三次救急医療施設として機能しているため、一般患者の外来診療はない。現在救命救急センターは全国に約170箇所
設けられているが、中でも当救命救急センターは、本邦でも数少ない独立型救命救急センターであり、救急医療に必要な設備・人員はすべて自施設で賄っている。医師は救急指導医や認定医を中心に各診療科の専門医で構成され、看護部門はもちろん、24時間体制で緊急検査や画像診断が行える設備と人員が整っている。
重症患者を救命するには医師の技量や看護体制はもちろんであるが、各種検査が優先順位や緊急度を軸に遂行されることが最も重要であり、職域を越えたチーム医療の展開、患者の病態を理解した上での諸検査、傷病の種類に応じた可変的な検査体制など救命救急センター専属検査室では他施設にない特殊な対応が必要と
なる。
 近年、臨床検査の進歩には目を見張るものがあり医療に多大な変革をもたらしたことは衆知の事実である。しかし、臨床検査はあくまでも正しい診断と治療に導くための補助手段であることは、救命救急センターも一般病院と同じであるが、相違点をひとつだけあげるとしたら一般病院が確定診断を中心に行う検査であるのに対し、救命救急センターで行われる臨床検査は一般病院のそれに加え、今現在の患者における病態把握の要素が強い検査であるといえる。例えば高所から落ちた外傷患者が搬送されるとすると、まず一般検血(CBC)
は必須であるが、受傷直後のCBCは出血量の指標にならないことを知っておく必要がある。これは急激な循環血液量の減少に組織液の血管内移行が追いつかないからである。したがってCBCの結果が良いからといって安心せずに、緊急輸血に備えて血液型検査も迅速に実施できるようにしておかねばならない。さらに、臓器揖傷の有無を知るためには、各臓器の特異酵素の測定、自損が疑われる場合では薬物検査や血中アルコール測定など…。このように救命救急センターにおける臨床検査(緊急検査)では、現在の患者病態把握と次の展開を見越した流動的な対応が必要である。
 最後に、瀕死の重症患者を救うことが出来るのは医師だけかもしれない。しかし、“助けたい”と闘志を剥きだしにするのは医師だけでなく、看護師も放射線技師も薬剤師も工学技士も、勿論我々検査技師も同じである…。