第44回近畿医学検査学会のシンポジウム・一般演題について

シンポジウム・一般演題担当  川越 徹

【1・はじめに】

  第44回近畿医学検査学会がここ橿原市(奈良県担当)で行われた。学会を振り返って、今回シンポジウムと一般演題の印象を述べる。今回の学会参加者1333名と多くの方が来県された。昨年に引き続きパソコンによる発表となった。さらに近臨技当局は学会発表による非会員(正会員以外)の発表を承認し、賛助会員(企業)、学生の参加でたいへん新鮮で新しい時代の風を感じた。学会の目的はひとつ、つまり発展には多くのかたの情報交換と人の行き来が大切であると実感した。

【2・学会のテーマについて】


 今回のテーマを診療と健康の一翼を担う臨床検査に決めたいという話が学術部でまとまった。テーマの標語は医療の中より構築された技師の心の原点が表現されており、このテーマが前面に出ていた非常に実りある学会ではなかったかと思う次第ある。

【3・シンポジウム内容とその評価】

 各部門、分野の方々に知恵を絞っていただき企画、実行まで多くの困難にご努力をいただきご苦労様でした。学会が成功裡になったことで皆の苦労の甲斐が報われたと実感する。シンポジウムTでは社会問題となっている食生活と生活習慣病および検査技師業務の健康管理について検討された。このテーマは各地臨技での地方自治体や府県民に対する地域保健事業として推進している会、保健事業所など、病院以外における検査技師の活躍の場で、今後どんどん学会発表の参加を期待したい。シンポジウムVは医療への貢献に視点をおいたチーム医療を取り上げた。内容は感染症コントロール、栄養サポート、不妊治療など、短い時間内に提言できた。しかし、おおきな会場は意外と閑散としていたが活発な意見がでた。チーム医療の問題は会員の中でもこれからの問題と捉えている見方と、実際行っている施設ではもっと積極的に行動しょうとする二つの間には考えのギャップがあるようだ。おそらく、今後厳しい医療業界の環境下ではこの問題が学会の中心テーマになることは必至であると感じる。この問題については近畿理事会が学会後チーム医療推進委員会の発足を決定している。その他の専門分野によるシンポジウムおよび細胞診のスライドカンファレンスについては例年どおり順調であった。それぞれの分野では会員が聞きたいテーマは何か?新しい話題や素材はなにか?今何が問題なのか?を考え、大規模な病院,小規模病院検査室の興味を探りつつテーマを練った結果、多くの方の参加者が期待できたと感じた。しかし例年の如くマンネリ化は否めない状況のようであった。

【4・一般演題について】

 一般演題は生活習慣病による血管の硬さの程度わかる生理機能のPWV(脈波伝播速度)に関する検討が新しく、血管拡張薬による治療効果が判定でき、今後の検討を期待したい。血液検査ではフローサイトメトリによる病気の診断についての演題が目立った。迅速簡易検査のいわゆるPOCTの検討も最近では出題が多くなった。つまり、簡便な迅速診断キットは特別な器械もいらず、短時間で判定でき、的確で早期診断を実現し無駄な投薬・検査を減らすことができる。今後は目視による判定のあいまいさが課題のようである。微生物分野の遺伝子検査での同定、腫瘍マーカー、その他、卒後教育、変わった演題では最近の医療界を反映してか医師の目、客の目、機講の目を見極めて病院の3次元評価つまり日本医療機能評価機構受審後の結果の演題等、あらゆる分野の発表で会場はにぎわった。企業のプレゼンテーションが登場して、検査技師が試薬の検討だけを問題にする時代はおそらく終わったのではないだろうかと感ずる次第である。最後にシンポジウム・一般演題に携わっていただいた奈臨技会員の諸兄貴に感謝する次第である。