会  長  挨  拶

(社)奈良県臨床衛生検査技師会
   会長  増 谷 喬 之

 20世紀末、世界は西暦2000年間題による情報システム等への影響が取り上げられ、不安の中で新世紀を迎えたことはまだ皆様の記憶に新しいと思います。そして意外にも静かなうちに新世紀を迎えることができました。今になって見ますと激動の新世紀を予言するものであったように思われます。
 21世紀スタートから早5年経過、この間、世界情勢は大さく変化を遂げ2001年9月11日の米国同時多発テロにはじまり、アメリカのアフガン、イラク攻撃など各国の利権が絡んだ抗争のニュースが、連日のように放映されております。またデンマークでは花火工場が大爆発、丸1日爆発・燃え続けた映像が飛び込んできたとき、花火に含まれる重金属の土壌汚染が、私としては深刻に思われました。国内では豪雨、相継ぐ台風被害、新潟県中越地方の地震災害など、今年の日本ほど多くの自然災害に見舞われた年は無かったように思います。地球規模で進行している自然破壊に対する地球からのメッセージであるような気がするのは私だけでしょうか。
 世界的な経済不況が、回復の兆しの見えない長引く医療経済不況となって私達の職場環境を益々厳しいものとして現れてきております。その一方で医療技術は高度に進歩しながら医療の質・量の向上を追求し続け、また医療費抑制施策である包括医療(DPC)促進と病院経営における検査室改革に対応しなければならない非常に厳しい時代であります。このような状況のなかで病院検査室の多角的運営に努力されていると思いますが、これらの対応策において検査室の生き残りを主眼としたチーム医療、業務拡大、経済性の追求であつてはならないと思います。なぜならば医療の基本理念である県民、市民の公益性に立脚した考え方を見失わないで頂き、検査室運営と意識改革を行っていただきたい。臨床検査は、会員皆様の努力と技師会組織活動を通じて一般社会に認知されてくると共に会員相互の認識の共有化が重要となり、その責任は益々大きいものとなってきております。このような状況の中で、第44回近畿医学検査学会は奈臨技会員皆様の協力により“診療と健康の一翼を担う臨床検査”を学会テーマに掲げ開催させていただきました。学会テーマにありますように臨床検査は診療と国民の為にあることを、今一度それぞれの立場でご検討いただき、社会的にも、医療現場においても、チーム医療の一員である確固とした地位を得るため努力することが重要と考えます。
 今後、病院経営においてブランチ、FMSなど委託化促進が予想されます。このような状況においてこそ臨床検査は人類が生存し生命を維持している限り臨床検査は無くならないという前提に立ち、診療にチーム医療の一員として何に貢献するか、またどの様な医療情報を提供するのかを各施設で議論していただき、病院検査室を自ら運営することの意義をアピールしていただきたい。
 平成16年度・奈臨技の大きな事業として開催されました第44回近畿医学検査学会は、秋の好天にも恵まれ1333名の参加者を得て成功のうちに終了させていただきました。本学会は、近畿医学検査学会あり方検討委員会ならびに近臨技理事会の決定を受け、従来の展示会を中止し学会のオープン化を前提としたモデル学会としての開催でありました。今後、我々臨床検査技師がチーム医療の一員として、今以上の認知を得るためにも他職種・他団体との学術交流を念頭においた活動を広げて行くことが重要であります。現在、近畿
医学検査学会と日本臨床検査医学会近畿支部との同時開催が企画検討されております。昨年末に奈臨技会員の皆様に同時開催の趣旨等についてご案内させていただいたところでありますが、開催趣旨をご理解いただき会の発展にご協力いただきますようお願い申し上げます。
 最後になりましたが、第44回近畿医学検査学会開催におきましては奈臨技・実行委員会実務委員の皆様ならびに会員施設皆様のご協力に対し、会を代表しましてお礼申し上げます。有り難うございました。