(社)奈良県臨床衛生検査技師
会 長 山 名 正 夫
衆議院議員選挙が10月25日告示されました。今回の政策争点のひとつには、構造改革といわれる規制緩和、民間委譲や地方分権が話題となっております。
「政治は国民のためにある」とは、言い古された言葉です。今、構造改革が叫ばれているのは、この基本理念が忘れ去られ長期間にわたり社会の変化に対応できる仕組みが構築されなかったこと、すなわち国の機構が自らの手で自らの機構を改革出来ないという事態に至ったとも思われます。結果として、国民に痛みと我慢を強いる改革が進み、社会保障や医療の分野までもが厳しい状態にあることは先刻ご承知のとおりであります。
ひるがえって、「医療は、国民のためにある」のが基本理念です。われわれの医療現等の職場状況を考えるとき、臨床検査50年の歴史の中で前述と同じような状況、すなわち基本理念の喪失、検査部という機構の硬直化は無かったでしょうか?。
高度成長に支えられた無制限の膨張は、崩壊の時季が来るのは当然の帰結ですし、またかって福祉と医療は国民の安心と幸せをもたらすとの観点から拡大は妥当との共通理念がありましたが、やはりこの分野も経済性を無視しては成り立たないとの原則がいまさらながらですが叫ばれ始め、今日その主張が極点に達しているものと思われます。
この時季にあって、奈良県下での会員のリストラの事態の報告は受けておりませんが、外注問題等これに近い状況や、欠員補充がなされにくいとの事態が多く発生しております。
今、我々にとって必要なことは、医療現場等にあって「臨床検査(室)が必要不可欠」なものであることの認知を得ること以外生き延びる道はない厳しい状況にあることはご存知のとおりです。
今一度、国民が臨床が求めているニーズは何か?、このニーズにあった検査室か?、機構の硬直はないか?、等の問題点をつぶさに検討されるとともに、会員がそれぞれの立場で、今出来ること、将来を見据えてしなければならないことの確認をされ努力されること切望します。
ただ、現在進みつつあるこれらの対応は、施設の生き残りを主眼に、あまりにも経済性偏重の雰囲気の中で進行しつつあり、「医療は国民のためにある」との基本理念に立脚した発想が忘れられ、置き去りにされるという危険性を伴っております。この経済性と基本理念の二つの観点の整合性を保ちつつ検査部を運営することは大変な努力を必要とすることではありますが、基本理念を置き忘れた対応はいずれ破綻することは明らかでありこの点を管理者にも理解を得ながらの努力を傾注されることを希望します。
会誌名の「まほろば=まほろ」は、物事の中心、また中心となる場所の意味であります。当時の上田繁潔奈良県知事に揮毫をお願いしたものです。 奈臨技ならびに会員の活動が臨床検査分野における中心的存在であることを祈って名づけられました。厳しい状況の中でありますが、厳しい状況の中でこそ新しいもの、新しい力が生まれるものと信じております会員の皆様の努力に期待します。
最後に、施設代表者会議を年明けに開催します。共通の立場で色々の問題の情報交換等を行いたいと企画しました。多くの参加をお願いします。