院内受託検査室勤務技師の現状と業務意識を探る

潟rー・工ム・工ル 近畿大学医学部奈良病院臨床検査部 近藤 正巳

【はじめに】
 さまざまな医療改革が進められる中、病院検査室のあり方にもさまざまな議論が行われていることは周知の通りである。検体検査外部委託という形態において、院内受託検査室に勤務する検査センターの技師という立場から現状を紹介し、自らの業務に対する意識について考えてみたい。

【社内組織の概要】
 潟rー・エム・エルは、東京都渋谷区に本社をおき、埼玉県川越市の総合研究所をはじめとする約40ヵ所の地域ラボと約80ヵ所の営業所を有する。全従業員数は、2,000人を超える。社内組織は検査本部、管理本部、システム本部、先端技術開発本部、営業本部、戦略事業部など多部門で構成され、全国の院内委託検査室は戦略事業部に属している。

【院内受託検査室実績および内容】
 潟rー・エム・エルでは、大学病院、公立病院、民間病院等、約100施設の院内検査室を受託している。病床数別受託施設数の割合(図1)と受託施設数の推移(図2)はグラフに示す通りである。また、通常検査以外に、当直体制やオンコール体制によって、時間外緊急検査に対応をしている施設も多い。院内検査実施項目については、それぞれの病院のニーズに最大限応えられるような選定をこころがけている。また、全国に展開する地域ラボと総合研究所の連携により、院内にて検査を実施しない項目も迅速に対応できる体制を構築している。

【近畿大学医学部奈良病院における受託内容】
 近畿大学医学部奈良病院においては、病理検査、細菌検査を除く検体検査を院内受託している。さらに時間外・夜間休日等の緊急時に限り、一部の細菌検査と血液製剤管理および発注業務を加えている。検査を担当する(株)ビー・エム・エルの検査技師は、現在10名で当直体制により24時間365日の緊急検査に対応している。また、病理検査、細菌検査については、FMS方式を採用し、病院検査技師が業務を行っている。

【近畿大学医学部奈良病院・院内受託検査室の機能】
 近畿大学医学部奈良病院の病院情報システムと院内受託検査室の検査システムを連携させることにより、外来患者の検体は、一部の項目を除き30分での結果報告を実現させている。また、早朝採血される入院患者の検体約150件は、毎朝6時から分析を開始し、8時までに検査を完了させる迅速報告を行っている。外注検査に対する問い合わせ及び資料請求などは、潟rー・エム・エル総合研究所・情報センターとの連携により迅速な対応を行っている。近畿大学医学部奈良病院の院内受託検査室は、病院の一組織であり、患者サービスおよび医療への貢献という理念を病院スタッフと共有し、業務を遂行している。

【院内受託検査室への評価】
 院内受託検査室に対する評価の指標として、潟rー・エム・エルが受託をしている施設の病院検査技師を対象にアンケートを実施した。6施設100名に依頼をし、68名の回答を得た。アンケートの概要は次のとおりである。
1.検査センターの技師が行った検査に対する信頼度
2.問い合わせ等の対応に関する満足度
3.報告時間に対する満足度
4.検査センター技師の知識レベルの評価
5.院内に検査センターの技師が存在することについての考え方
6.院内受託検査室のチーム医療参加への可否

<集計結果>
1.検査センターの技師が行った検査は、信頼性に欠けていると思いますか?

  信頼性に欠けている 0%
  少し欠けている   0%
  欠けていない   95.6%
  どちらともいえない 4.4%

2.問い合わせ等の対応には、満足できるものがありますか?

 大変満足できる。   33.8%
 満足できる      47.1%
 満足できない     1.5%
 どちらともいえない  17.6%

3.検査結果の報告時間には満足できるものがありますか?

 大変満足できる     33.8%
 満足できる       45.6%
 満足できない        0%
 どちらともいえない   33.8%

4.検査センターの検査技師は、病院の検査技師に比べて知識レベルが低いと思いますか?

  知識レベルが低いと思う 0%
  少し低いと思う     0%
  低いとは思わない   77.9%
  どちらともいえない  22.1%

5.病院に検査センターの技師がいることは、好ましくないと思いますか?

  好ましくないと思う    0%
  少し好ましくないと思う 11.8%
  問題ではないと思う   72.1%
  どちらともいえない   16.1%

6.チーム医療という現場に、検査センターの検査技師では不適当だと思いますか?

 不適当だと思う      0%
 少し不適当だと思う   10.3%
 問題ではないと思う   79.4%
 どちらともいえない   10.3%
 
【院内受託検査担当技師の意識】
 数年来の検査実施料改定にともない、臨床検査のコスト削減が命題となっている。しかし、コスト削減のみを目的とした院内検査の委託は、大さな問題を生じる。「いかにして、良質な医療が適正に提供しうるか」ということが課題であり、所属・組織を問わず個々の果たさなければならない役割を見出すことが重要である。今後は、病院と検査センターがともに、院内受託検査室を導入する効果と問題点を慎重に分析しなければならない。
 また、患者サービスと質の向上、リスクマネージメントおよびチーム医療への貢献等、よりよい病院づくりをお互いの協力によって進めていくという意識が必要であると考える。