日臨技表彰を受賞して

日臨技表彰「功労賞」を受賞して

奈良県臨床検査技師会 前会長 山名 正夫


さる平成17年5月、日臨技・功労者表彰を安けました。この受賞は奈良県臨床衛生検査技師会ならびに奈臨技会員の皆様の多年にわたるご指導とご協力のおかげと感謝しております。
 私は日ごろから、「団体の活動は、それぞれが自分のおかれている立場、すなわち職場での業務や技師会会員としての、今やるべきことの責任を積み重ねることが基本で、理事等はその総括をする役目に過ぎない」との持論でした。
 その意味からも今回の受賞は、奈臨技会員のそれぞれの活動と活躍の集大成とご協力の結果、時たま私が代表する位置に居たに過ぎないと思っております。
 私は今、会務も業務もすべてリタイアした状態にあり、過去のことをあれこれ語ってもそれは単なる思い出話になりかねませんが少し過去のことと感想を述べたいと思います。
 振り返ってみますと、奈臨技役員として19年間、引き続き日臨技役員として12年間会務を担当させていただきました。この間の会務は会議等への出席、電話の応対等やむをえない用件以外は業務終了後、家に持ち帰って処理するよう心がけてはおりましたが、かっての職場の同僚には多大のご迷惑をおかけし、またご協力をいただき再度感謝申し上げます。
 奈臨技役員就任当時の事務処理は、ガリ版印刷に始まって、活字タイプ、ワープロ、コピー機の出現、そしてパソコンの時代と臨床検査業務の変遷と同じく驚異的な変遷を遂げました。
 この間、奈臨技にあっては法人化、会報やニュースの創発行、近畿学会の担当、また日臨技にあっては会館設立と会員管理システムの構築、第50回学会の開催、アジア医学検査技師会の設立等多くの業務処理に携わって参りましたが、今改めて思うことは、会務であれ業務であれ仕事をするということは遊びも含めて、前述のような便利さだけに便り処理しないで「知的、肉体的労力を惜しまないこと」に尽きるような気がします。
 会員各位の今後ますますのご活躍とご健康をお祈りし、受賞に際しての御礼といたします。


日臨技表彰「会長賞」を受賞して

天理よろづ相談所医学研究所 宮西 節子

 長年技師会の学術活動をしてきたおかげで、全国ネットで友人がいる。
 「会長賞」受賞が公式に決定すると、早速メ←ルなどからお祝いのメッセージが何人も届いた。極めつけは大きな段ボール箱に入った胡蝶蘭の贈り物だった。感激してありがたくいただいた。
 そもそもこの論文の全くの始まりは、10数年前PCR法により免疫グロプリン重鎖遺伝子CDRV領域の遺伝子再構成の検出系を作ったことにある。サザンハイブリダイゼーション法の手間のかかる方法をPCR法に代えたことで、この高感度、少量DNAのメリットを生かして形態学に依存していたリンパ系腫瘍の骨髄浸潤を判定しようと思い、前日の残りの骨髄液の極少量のサンプルでDNA抽出を行い50〜60件くらいを検討してみた。しかし腫瘍性の証明である再構成が検出できたサンプルは1件もなかった。
 今から思えば、DNA抽出にグアニジウム塩を使ったことが、良質なDNAを得られず増幅しなかった最大要因であった。
 それから時が流れ、PCR法はルーチンで完全に受け入れられ、抗原受容体遺伝子再構成に対する方法もレパートリーを広げ多くの経験も積んできた。
 そんな時、学生の研究実習を安け入れた。学生に向くテーマを考えたとき、昔の検討が思い浮かんできた。今度は骨髄液の残りではなく、何年も保存した染色塗抹標本でやってみようと考えた。そしてゴールにRNAが抽出できれば最高だなと。
 最近はデータも集積されているので、塗抹標本はデータから適当と思われるものを選択した。この選択には手間がかかったが、幸運なことに血液室でatypical lymphocyteか腫瘍細胞か鑑別困難な症例にでくわした。この症例はpre−B急性リンパ性白血病で二重遺伝子再構成(T細胞レセプター、B細胞レセプター遺伝子両方の再構成)も有していた。
 早速塗抹標本からDNAを抽出し、やってみるとT細胞レセプターにもB細胞レセプターにもはっきりした遺伝子再構成バンドが認められた。つまり、モノクローナルな腫瘍細胞の増殖による再発であることが証明された。さらに、その症例の保存標本をさかのぼって検索し、一通りのデータが得られた。
 では、RNA抽出はどうかと文献もいろいろ探しやってみた。しかし、どれもこれも書いてある方法ではできない。結局RNAを抽出しているのにもかかわらずとれたのはDNAであった。in situ hybridization法ぐらいしか、固定した保存標本でRNAは検索できないとこの時思った。
 学生の検討も終わって、折角なので学会に出そうと思った。しかし、いろいろな標本で臨床応用できるかどうかの見当をつけてきたけど、肝心の基礎データが整っていなかった。それで、それらの実験をすべて追加検討した。
 埼玉の学会では座長がえらく評価してくれた。論文にしておこうと思って書きかけると、何となく気合いが入っているのが自分でも感じられた。というのが事のいきさつであるだけで、あとは知らない間に「会長賞」を頂いていた。この背景には推薦して下さった方々の力が大変大きいことは言うまでもない。
 表彰式前夜、全国の遺伝子研究班時代の友、近畿の血清研究班関係の友人などが集まって下さり、友人の学位取得と共にお祝いの席を設けて下さった。夜遅くにもかかわらず、16人の方々が一言づつお祝いの言葉を下さったのが感無量であった。
 さらに、翌日国際会議場という大舞台で表彰を受けた。たくさんの方々が見守って下さっていたので、京都でよかったと心底思った。
 ちょっとだけ残念としたら、岩田前会長から表彰を受けたかったということであろう。私たちは20年来血清研究班の同士でもあったから。
 ともあれ、思いがけない「会長賞」に、まつわるあれこれにありがたい思いをさせてもらえたことが、喜びである。

論文題名
 染色骨髄液塗抹標本を用いたDNA抽出の基礎
 的検討と微小残存病変検索への臨床応用

共同研究者
 竹岡加陽1)、津田勝代2)、福谷和也3)
1)天理よろづ相談所医学研究所
 2)同病院
 3)天理医学技術学校
  (現潟Vオノギバイオメディカルラボラトリーズ)