天理よろづ相談所病院 長坂 陽子
第54回日本医学検査学会が、平成17年5月13日から14日にわたり京都で開催され、私は微生物検査分野で一般演題を発表するために参加しました、学会会場は、2年前の秋に近畿検査医学会が開催された国立京都国際会館でしたが、今回は、五月晴れのもと会館内にある回遊庭園ではつつじが咲さ誇っていました。
今回の学会は、メインテーマ「知恵と創造の未来をめざす」に沿って企画され、話題性に富んだ講演が数多くありました。なかでも、当日まで詳細不明であった特別企画はノーベル化学賞受賞者の田中耕一氏の講演であり、メインホールに多くの聴講者で立ち見の列が何列もでき、前列の立ち見の者はしゃがんで聴講するほどでした。私もメインホールに入ったときには、しゃがんで聞くようにと学会スタッフから指示されましたが、その姿勢に耐えられず、田中さんを間近で拝見できて、生声が聞けたので良いとし、途中で退出してしまいました。少ししか講演を聞くことができませんでしたが、テレビ等で拝見していた通り田中さんは控えめにお話される方でした。また田中さんはノーベル賞受賞の際に大勢のマスコミに写真を撮られた事が原因で、カメラ恐怖症になってしまわれ、今回の講演の前に学会側と記録用に撮影する以外は撮影をしないとういう約束を交わしていたようです、そのため、講演前にはその旨の注意が何度も流れており、肖像権の保護は重要なことだなと感じました。
一般演題の発表は578題ありましたが、微生物分野ではその内41演題で、耐性菌の分離状況、症例報告、遺伝子検査、院内感染対策と多彩でした。しかし、3ヶ月前の2月に第16回日本臨床微生物学会が同じ会場で開催されたため、近畿地方からは私の演題を含め6演題のみのエントリーでした。私は、1985年から2004年までの19年間に当院でレジオネラ症と診断された9症例の患者背景および検査成績について調査した結果と2000年から2004年に実施した市中肺炎におけるレジオネラ症の発生頻度について調査した内容をまとめ発表しました。約20年間にわたる内容のため6分間の発表時間では物足りない感じでした。
微生物分野関連のシンポジウムは二題ありました。シンポジウムUの「これからどうする感染症検査室」では、抗菌薬耐性菌の増加や新興・再興感染症など多様化する感染症に村する感染症検査室のあり方についておよび技師の専門性を活かした感染管理、創傷管理および栄養管理の活動状況を中心にチーム医療への参画について5名の先生からの講演がありました。DPC導入を間近に控えた今、検査室の方向性を考えていくうえで重要な内容のシンポジウムとなりました。もうひとつのシンポジウムWは、「検査室からの抗菌薬療法支援」をテーマに、微生物検査室と臨床医とのコミュニケーションを蜜にとり、治療を行った事例の紹介、日本の微生物検査室の99%が導入している米国のCLSIガイドラインの適応の限界について、そして当院の小松が感染症治療に貢献するためにPK/PD理論に基づいた抗菌薬の選択と最適な用法用量の提示について講演しました。現在、一番ホットな話題のため多くの聴講者と活発な質疑応答がありました。
その他の学会の企画として、明治鍼灸大学の御協力によるリラクゼーションコーナーと同大学の茶道部によるお茶席が庭園内にある松下幸之助ゆかりのお茶室「宝松庵」で催されました。私は、国際会館の茶室に入れることは滅多に出来ないことと思い、お茶券を購入し、爽やかな風を受けながら一服頂きました。また、宝ヶ池プリンスホテルで催された懇親会では祇園甲部の舞妓さん芸子さんによる井上流の舞が披露され、さらに通常なら到底できない舞妓さん芸子さんとの記念撮影や歓談もすることもでき、大変盛り上がりました、また、学会の翌日は京都三大祭りの一つである「葵祭」が催されたため、廷泊され見物に行かれた参加者の方もいらっしゃいました。
私は、今まで主に微生物関連の学会への参加が中心であったため、今回がはじめての日本検査医学会の参加でした。また学会会場も4回目の国立京都国際会館でしたが、企画が盛りだくさんで2日間の学会を満喫することができました。