この本は，私が約20年間コツコツと積み重ねた手術戦略やテクニックを，だれもが理解できるように詳細に解説した，渾身の一冊です。文章を最小限にして，イラストを多用し，少しでも手技が理解しやすいように工夫しています。しかし，手術書ですから，脳外科医以外にはお役に立ちません。経蝶形骨手術をこれからマスターしようとする若い脳外科医や，この手術に関してお悩みの先生方のお役に立つのではないかと思っています。
　基本から応用まで，未公開のテクニックを含めてすべてを網羅し，実践的なものに仕上がったと自負しています。第一印象は，イラストの多い手術書と思われるかもしれませんが，読み進むにつれて，必ず内容の充実度に驚かれると思います。特に術野拡大の実際に関しては，類似書は皆無ですので，本当に「やっとわかった！」と納得していただけるように，工夫したつもりです。巷に数多くのHardy手術書がありますが，この本ほど，実践的で，内容が濃いものは，和洋を問わず，存在しないと自負しています。
　残念ながら，医学書を置いてある大きな書店以外では，実物をご覧いただけません。この本を読まれて，少しでも多くの方が，拡大経蝶形骨手術を理解していただければ幸いです．