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白馬村における長野県神城断層地震災害支援活動報告

 

はじめに

 2014年11月22日22時8分に発生した長野県神城断層地震(震度5強~6弱、マグニチュード6.7)は、長野県北部の地域に土砂崩れ、路面陥没、路肩崩落、建物被害(住宅を含む)をおよぼした。しかし、重症、軽傷という人的被害はみられたものの、人命は守られている。被害を最小限に抑える(内閣府、2015)という防災・減災の考えから、長野県神城断層地震災害において、人命が守られたことの意味は大きい。
 今回、長野県神城断層地震被災地の一つである白馬村を2015年3月20から3月22日まで訪問し、被災者への支援活動を行うとともに、発災時の避難状況や対応について白馬村役場災害対策支援室担当者にインタビューを行い、現状を把握した。

 

Ⅰ.災害支援活動

 今回の災害支援活動は、3月22日(日)に白馬村が企画した震災から4か月目の「復興イベント」の一部に参加するという形をとり実施した。

ハンドマッサージ,血圧測定
ハンドマッサージ,血圧測定

イベントでは姉妹都市からの炊き出しや交流のある他県の高校生によるダンス、そして日本赤十字看護学会災害看護活動委員会による健康や看護に関わる支援活動が行われた(表1)。イベントを周知するチラシには、本委員会の支援活動も加えていただき、「お茶を飲みながら現在の生活について気軽にお話しましょう」という暖かな呼びかけが添えられていた(資料1)。

1.災害支援活動の準備

 今回の災害支援活動について、被災地における消費は災害支援の一部と考え、支援活動に必要な物品は、全て現地で準備した。会場近くには、スーパーマーケット、ドラックストアーもあり、備品の調達に困難をきたすことはなく、短時間に準備することができた。

2.災害支援活動の概要

 災害看護活動委員会による支援活動は午前に計画されており、9時30分から12時30分まで,白馬村多目的研修集会施設ホールにおいて茶話会、ハンドマッサージ、血圧測定、健康相談を実施した。当日は、午前に被災した一地区の自治会長会議があり、また春休みということから、本委員会の支援活動には、主婦や子どもが多いのではと予想された。しかし、参加者は主に高齢の方(中には90歳の参加者も)男女20名であった。仮設住宅、一部損壊の自宅や自宅から参加されている。参加にあたっては、世帯主が会議に出席する車で、一緒に来たという方、また「家族は出かけてしまい、今日はここに来ると決めていた」、「(片付けをしていて)血圧が上がってしまったようだ、測ってほしい」、「片づけをしていて、ストレスで飛んできた」などの言葉から、復興イベント、本委員会活動に目をとめていただいた様子が察せられた。

ハンドマッサージ,血圧測定を持って
ハンドマッサージ,血圧測定を持って

 支援活動は、まずお茶を飲み、話を聞き、それからハンドマッサージ,血圧測定、健康相談を行った。お茶を飲みながら話をするだけの方もいた。またケアをしながら震災や震災後の生活の話しを聞いたが、被災した住民の方の話は、なかなか途切れることなく続いた。前田委員、村木委員によるハンドマッサージ,血圧測定は、ゆっくり15分ほどかけて行われており、心地よさと共に住民の方が安心して話をしている様子が見られた。

Ⅱ.防災・減災への取り組みと実際

 白馬村の長野県神城断層地震災害への対応と平常時の災害対策等について、白馬村役場災害対策支援室主査、太田和也氏に伺った。

1.被害状況

 白馬村の被害は、神城断層に近接(上盤側)した堀之内、田頭、三日市場に建物被害が集中した(災害・復興科学研究所,2014)。実際に、堀之内、三日市場地区を回ってみると、被害建物には、「要注意」「危険」と判定された表示が玄関先に張られている。堀之内地区では一次避難所として指定された公民館が倒壊し、避難してきた住民者は、役場に隣接する「社会福祉ふれあいセンター」に再び避難した。地震の発生は、22時8分である。就寝していた住民も多く、被災者は「パジャマのまま飛び出した。何か持って出ることはできなかった。そんな時間はない。寒がっている家族に、着せてやるものもないので、雨具を着せた」と述べている。また、一部を除きライフライン、通信手段、道路状況は保たれ、救援活動や避難生活に支障をきたすことはなかった。

倒壊した公民館
倒壊した公民館

 現在、一次、二次避難所共に閉鎖され、被災者は県営住宅、雇用促進住宅等に入居し、28世帯80人が仮設住宅(飯森グラウンド)で生活をされている。被害のあった堀之内、三日市場地区は、まだ1mの残雪があり、雪が解ける5月頃までは身動きができない状況である。

2.避難状況と発災後の白馬村の対応

1) 役場:

 22時8分に発災し、22時20分に白馬村災害対策本部が設置された。災害マニュアルに従って職員全員が役場に参集することになるが、当日は約6割の職員が参集した。救援物資の配布や救護所の設置にあたり、設備や移動時間を考慮し、役場隣の「社会福祉ふれあいセンター」一か所を一次避難所に決定した。被災した一次避難所の住民や孤立した地域の住民等を村のマイクロバスで避難させた。「社会福祉ふれあいセンター」は、健康診査を行う設備や備品があり、また役場に備蓄品を保管していることから、被災住民の一次避難所として、最適であった。一次避難所は11月23日から12月1日まで9日間開設し、最大避難者数は186人である。その後、冬季観光シーズン前のホテルやペンション、大学セミナーハウス等から申し出を受け、そのうち8か所に4~100名の住民が二次避難所として移動した。いずれも、2~3週間後に、住民は二次避難所から仮設住宅、県営住宅、雇用促進住宅等に入居している。

仮設住宅外観
仮設住宅外観

 災害対策本部が設置された役場には、被災者の避難支援、救援やボランティア、物資の送付など外部からの問い合わせへの対応、救援物資の仕分け・配布など、住民や非被災地から被災地の行政に対する役割期待がある。一方、役場職員も被災者でありながら支援者の役割を担う場合もある。その場合、役割との葛藤を抱えながら災害対応をすることになる。

2) 自治防災組織:

 地区の自治会長により組織される自主防災組織は、今回の震災直後、活動を開始している。白馬村では、冬季暖房用に各家庭に灯油タンクを常設し、またガスボンベ(プロパンガス)を用いている。震災直後は、この灯油タンクがのきなみ倒れ、灯油臭がしていた。自主防災組織会長は、避難後の地区を巡回し「これ以上灯油を漏らさない」ために、①タンクを起こす、②起きなければ蓋を閉める、③ガスボンベの栓を占める、④家庭のブレーカーを落とす(通電の際,発火の恐れ)ことを指示し実施していた。また、暖房に豆炭炬燵を使用する地域であることから消防団は、各家庭の火の気を確認し、可能性がある箇所に局所的に放水を行っていった。このような、自治防災組織、消防団の活動から、火災が発生することはなく、取り残され火災による人的被害を防ぐことができたと考えられている。 

 

3) 医療救護活動

 震災直後は、県内の医療救護班が活動し、その後大北医師会が救護活動を行い、一次避難所の閉鎖とともに通常診療に移行している。一次避難所では、「なにも持ってでることはできなかった」というように常備薬を持ち出せなかった住民に保健福祉事務所を介して大北薬剤師会から必要な薬剤を入手している。また、一次避難所開設の期間、県から保健師が派遣され白馬村の保健師と避難所の運営を行っている。

3.白馬村における防災・減災への取り組み

1) 防災・減災への取り組み

(1) 「白馬村避難支援プラン全体計画」
 2004年(平成16年)新潟中越地震を契機に、長野県下で「避難支援プラン全体計画」の推進がはかられた。白馬村も2009年(平成21年)に「白馬村避難支援プラン全体計画」を策定し、ホームページ上に公開している。
(2) 「住民支え合いマップ」の推進
 長野県下全県的な事業として「住民支え合いマップ」、災害の避難時に支援が必要な要配慮者、支援者、社会資源等を表記した地図(長野県,2015)の作成を推進している。しかし,白馬村では、29自治会内の策定率は55%(16自治体)に留まっている。毎年1回社会福祉協議会主催で講演会と「住民支え合いマップ」の作成演習を実施し、その後各自治区で取り組むことになるが、1度作成した後、毎年の更新はなかなかすすんでいない。そのなかでも、今回被災した堀之内地区は、毎年更新しており整備されていた。
(3) 防災訓練
 常備消防(北アルプス広域北部消防署)の管轄が同一である小谷村と白馬村は「地震総合防災訓練」と「秋季火災予防訓練」を交互に実施している。参加者は、宿泊施設、自治会長、消防団、地震体験者等である。地震体験車もあるので、親子連れの参加もある。
 また、避難行動要支援者が実際に避難行動を体験するという取り組みは、自主防災組織担当者が行い、役場は実施にあたっての講師派遣等の取り次ぎをしている。

2) 文 化

 今回被災した地区は、年配者も子供のころからの付き合いがあり、日頃から地域とのつながりをもっている。「悪いけど面倒みてね」という付き合い方をしており、自治会自体が大家族のようである。このような関わりから「住民支え合いマップ」作成講習会では、地区の独居、障害者、要援護者、子どもなども把握されている。このように今回被災した地区には、既に地域の環境をよくしようとする活動が先にあり、その中の一つに災害もある。したがって、特に災害対策に焦点をあてた活動のみを捉えているわけではない。

Ⅲ.まとめと災害看護への課題

 長野県神城断層地震による白馬村の被害は、住宅被害232棟(全壊42棟、大規模半壊12棟、半壊21棟一部損壊157棟)、非住宅被害279棟、人的被害23名(重症者3名、軽傷者20名)、その他道路等の土砂崩落などである(2015年3月22日現在)。しかし、夜間に家屋が倒壊したにも関わらず、火災の発生もなく、人命が守られている。それはなぜか、明確に述べることはできない。なぜなら、被害の大きさは災害因や災害の規模、発生時間帯、防災・減災準備状況により異なるであろう。今回、災害の現状について災害対策支援室の太田氏や支援活動に参加していただいた住民の方々からの話から、白馬村の①地域文化、②自治体組織の活動(自助、共助)、③行政の素早い対応が大きく貢献したものと考えられた。特に地域の「地域の環境をよくする」ことに向かい、「支え合い」つまり共助が存在し育まれる環境を①地域文化、②自治体組織の活動が、共に促進していることがうかがえた。
 一方、被災後の住民の生活は、住居の確保や被災家屋の片付けなど短時間に解決するものではない。また、今年は例年にない大雪のため、積雪の中に被害建物があり、住民の一人は「かまくらの中に家があるようだ」と言う。災害と大雪とその中で被災後の生活を送る住民に今回の震災から4か月目の「復興イベント」は、顔を合わせ語り、支援を感じ、支援があることを実感する機会になったのではないかと思う。災害復興の過程で、このようなイベントは、被災住民にとって、生活を立て直していく大きな力になると思われる。
 災害看護は、災害サイクルに応じて、地域の特性を把握し被災者に寄り添う看護を提供する。被災後、生活を立て直していく過程で、体験する様々なストレス、健康への影響を考え、非被災地にあっても被災地、住民を気にかけ続けること、ニーズをアセスメントした支援を考えることが重要である。そのためにも、災害支援に関わる部署、組織、機関との連携をはかり、看護の専門性を活かした防災・減災に継続的に取り組んでいくことが必要である。

 

表1.活動日程

日時 活動内容 場所 備考
3/21(土) 午前 ・支援活動の打ち合わせ
・役場災害対策支援室担当者にインタビュー
白馬村役場  
午後 ・仮設住宅訪問
・被災地区訪問
・支援活動備品等の準備
飯森グラウンド
堀之内、三日市場地区
 
3/22(日) 午前 ・支援活動
 茶話会、ハンドマッサージ
 血圧測定、健康相談
白馬村多目的研修集会
施設ホール
 
午後 ・支援活動(同上)
・「復興イベント」セレモニー参加
・撤収
白馬村多目的研修集会
施設ホール
 

出典:
内閣府(2015-03-24)政府広報オンライン.http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/bousai/.
災害・復興科学研究所(2015-3-27)2014年11月22日に発生した長野県白馬村を震源とする地震災害.http://www.nhdr.niigata-u.ac.jp/survry/3282/.
長野県(2015-6-25)災害時住民支え合いマップ.http://www.pref.nagano.lg.jp/chiiki-fukushi/kenko/fukushi/fukushi/sasaeai.html