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フローレンス・ナイチンゲール記章を受章して



 私は、看護師にとって最高の栄誉である第44回フローレンス・ナイチンゲール記章を受章いたしました。授与式が8月7日、日本赤十字社主催にて日本赤十字社名誉総裁皇后陛下、名誉副総裁秋篠宮妃殿下、名誉副総裁常陸宮妃殿下、名誉副総裁高円宮妃殿下のご臨席を賜り、来賓に田村憲久厚生労働大臣、ペーター・マウラー・赤十字国際委員会総裁、坂本すが日本看護協会会長の参列を得て東京プリンスホテルで開催されました。

もう一人の受章者である国際医療福祉大学大学院副大学院長の久常節子様と共に、日本赤十字社名誉総裁皇后陛下より章記を拝受し、記章は皇后様の御手で胸に付けて頂きました。これにまさる名誉なことはなく、終生忘れることのできない感動的な体験をいたしました。

 式典はフローレンス・ナイチンゲール女史の遺沢をしのび、石巻赤十字看護専門学校と成田赤十字看護専門学校の看護学生による幻想的なキャンドルサービスで始まりました。看護学生が掲げるろうそくの明かりにより会場内が優しく包まれ、私の緊張は和らぎ、石巻赤十字病院職員をはじめ出席頂いた関係各位の皆様に見守られているという安堵感に浸りながら、滞りなく終了することができました。

 

 私が、このような身に余る栄誉に浴することができたのは、東日本大震災における災害救護活動に貢献できたことにありますが、それはいうまでもなく私個人の功績ではなく、献身的な病院職員が一丸となり、全国から多くの赤十字救護班や医療チームのご支援を頂きながら、石巻赤十字病院が災害拠点病院としての使命を全うできたお蔭です。病院職員は自らも被災者で有りながら不眠不休で一人でも多くの「命を救いたい」という一心で全力を尽くしました。その活動には多くの賞賛を頂きましたがあの場に居る者なら当然のことなのです。記章には私の氏名が刻まれておりますが、看護職員を代表として受章できたことに多方面の皆様に祝福を頂きました。
 今回の受章が、東日本大震災時に被災地の医療施設で懸命に救護活動を行った皆様、今現在、復興の途上にある中で日夜看護業務に従事している皆様方の励みになって頂くこと。そして、東日本大震災で被災された方、未だ行方不明の方々のために、多くの皆様にこの震災を忘れないという機会にして頂けることを願います。

 式典後、受章記念講演の機会を与えられ、「フローレンス・ナイチンゲール記章を受賞して~私の歩んだ看護の道程(みち)~」と題して東日本大震災にて経験した災害救護について講演をしました。私は看護師を志し、以来37年間石巻赤十字病院ともに歩み、任命された役割を誠心誠意努めてきました。災害救護は赤十字病院の使命です。免震構造と内陸部という立地条件から大津波の被害を免れ、発災後1時間でトリアージエリアを設置し、すべて傷病者を受け入れるという方針で救護活動を行いました。全国各地から参集した救護チームを、宮城県災害医療コーディネーターである当院の医師が統括し、「石巻圏合同救護チーム」を立ち上げ被災地での救援活動が展開されました。地域での医療救援活動と院内救護活動、入院患者の医療活動に分担がされ長期間に渡り支援を頂きました。看護部門は発災直後から入院患者や職員の安全を確保しながら、この窮地を乗り切るために、50床増床し、救急、分娩、HOT患者、要介護者の対応、後方搬送など、いのちと生活を護るためにできることはすべて行いました。病院職員は全員無事でしたが、津波で家族を亡くしたり、自宅が全壊したりと職員の半数以上が何らかの被害を受けていました。被災者でもある職員に対しメンタルケアをはじめ、ホテルの手配や住居の斡旋、ガソリンの手配などの生活支援を行いました。

 震災から2年半が経過し石巻地域には復興のための槌音が響きいております。当院も石巻医療圏の医療提供体制の再建に向け、「救急医療及び重症治療の強化のための増築」、「看護専門学校の再建」、「災害医療研修センター」の建設が進んでいます。

 大災害から得た教訓は災害への備えです。担当部門を中心に実践的な災害対策マニュアルを作成し、それに基づく訓練や研修を院内だけでなく、行政や関係機関を交え検討してきたことが活かされました。その中で培われてきた職員の災害に対する意識は高く一人一人がその役割を発揮できたのだと考えます。

 赤十字の創始者であるアンリー・デュナンは、クリミア戦争でのフローレンス・ナイチンゲールの活躍に敬意を表し、それを模範にして赤十字運動を始めました。今年は赤十字国際委員会が創設されて150周年に当たります。この記念すべき年に受章できたことに赤十字の一員として繋がりを感じるとともに、看護の道を歩む私に託されたことに精進し、微力ながら後進の良き理解者として貢献していかなければならないと思っておりますので今後ともよろしくお願い申し上げします。