研究の概要
J-HOPE5研究の概要
【目的】 1)遺族から見た患者が受けた緩和ケアの質の評価および遺族の悲嘆や抑うつの実態について明らかにする。 2)個々の研究参加施設に緩和ケアの質の評価および遺族の悲嘆や抑うつの結果をフィードバックすることにより施設の質保証・質改善の情報を提供する。 3)付帯研究を実施し、我が国の緩和ケアが直面している臨床的学術的課題に対して科学的な調査を行う。
【対象】 対象施設は、2022年12月現在において、各都道府県厚生局で公開されている緩和ケア病棟のうち、本研究への参加に同意した施設とする。 各施設にて2024年1月31日以前に死亡した患者のうち、選択基準を満たす死亡者数が80名(または100名)を連続的に後ろ向きに同定し対象とする。ただし、2022年1月31日以前の死亡者は含めない。期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名以下または100名以下の場合は、全例を対象とする。
【方法】 自記式質問紙による郵送調査・施設背景調査
【調査内容】 1)ケアの構造・プロセス・アウトカムの評価 2)遺族の抑うつ、複雑性悲嘆の実態とその関連要因 3)付帯研究
【予定対象者数】 緩和ケア病棟で15,000人(調査票発送数)
【調査期間】 2024年5月~2024年7月 (調査票の送付・回収期間)
【主たる解析】 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの評価尺度の施設ごとの平均値を算出し、全体および各施設における分布を算出する。それらを目的変数、遺族背景・施設背景を説明変数とした単変量解析、および、多変量解析を行う。 GDI、CES、全般満足度、PHQ-9、BGQの分布とそれに関連する要因に関して明らかにする。
【予想される結果】
- 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの全国平均値が算出され、わが国の一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの実態が明らかになる。
- 参加施設が施設得点を全国平均値と共に知ることで、各施設の改善点を得るための基礎データが得られ、一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの質の向上につながる。
- 付帯研究により、我が国のホスピス・緩和ケアが直面している臨床的・学術的問題とその解決策が明らかになる。
【倫理的配慮】 本研究は調査票によるアンケート調査であるので、明らかな遺族への不利益は生じないと考えられる。 調査票によるアンケート調査は2007年、2009年、2013年、2018年に行われた「遺族によるホスピス・緩和ケアの質評価に関する研究」で本研究と同様の対象者に対して使用したものと同じページ数であり、過去4回の研究では心理的な苦痛や調査による負担などの訴えは調査施設に対しても、事務局に対しても殆どなかったため、本調査でも特に大きな問題は生じないと予想される。 受けたケアを評価することに対する精神的葛藤や、つらい体験に関する心理的苦痛を生じることが予測される。そのため、調査は、(1)調査票は各施設から直接送付していること(2)調査は各施設から独立して事務局で行うこと(3)調査への参加は自由意志に基づくこと、(4)調査に参加しない場合にも診療上の不利益はないこと(5)調査結果は個人が特定される形では公表しないことを明示した趣意書を同封し、対象者に対する十分な説明を行い、返送をもって研究参加の同意を得たとみなす。 以上より、対象となる遺族への不利益は生じないと想定されるため、今研究に参加することによる補償金は発生しない。
【研究助成】 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
| 略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
|---|---|---|
| 付帯研究1 | 日本のがん遺族の「愛着スタイル・故人との絆の継続」と「死別関連うつ病・遷延性悲嘆症」との関連 | 利重裕子名古屋市立大学 |
| 付帯研究2 | 終末期がん患者の家族の心残りに関する研究 | 森雅紀聖隷三方原病院 |
| 付帯研究3 | 逝去時のケアとしての見送りについての家族の評価に関する研究 | 小林孝一郎黒部市民病院 |
| 付帯研究4 | 献眼(臓器提供)に対する遺族の体験と考えに関する調査 | 大竹健人飯塚病院 |
| 付帯研究5 | オンライン面会のメリット, デメリットや改善されるべき点 | 江藤美和子大阪大学 |
| 付帯研究6 | がん患者の遺族が落ち込んだ時に励ましてくれた音楽に関する調査 | 三浦智史国立がん研究センター東病院 |
| 付帯研究7 | がん患者の家族が必要とする支援と、その提供に活用できる医療リソースに関する調査 | 砥石政幸戸田中央総合病院 |
| 付帯研究8 | 緩和ケア病棟において患者を看取った家族のunfinished business | 青木美和大阪大学 |
| 付帯研究9 | 希死念慮を表出された家族に対する望ましいケアに関する研究 | 前田紗耶架京都大学 |
| 付帯研究10 | 腹水を抜くと弱るという認識に関する遺族調査 | 横道直佑聖隷三方原病院 |
| 付帯研究11 | 終末期がん患者に対する病院での季節の行事・イベントに関する遺族の体験 | 林ゑり子横浜市立大学 |
| 付帯研究12 | 死亡直前期における呼吸の徴候に対する遺族の認識:死の過程は受け入れられるか | 山本瀬奈大阪大学 |
| 付帯研究13 | 介護肯定感に関連する家族関係、家族葛藤に関する研究 | 浜野淳筑波大学 |
| 付帯研究14 | がん患者の家族の死別に対する心の準備に関する研究 | 青山真帆山形県立保健医療大学 |
| 付帯研究15 | 病院からの電話連絡における家族の精神的負担 | 三條真紀子国際医療福祉大学 |
| 付帯研究16 | 死亡直前期に患者と家族が思いを伝え合う際の橋渡しについて望ましいケアと家族の体験 | 大谷弘行聖マリア病院 |
| 付帯研究17 | がん患者の介護を経験した遺族のヘルスリテラシーと緩和ケアの質及び遺族の精神状態との関連 | 大沢恭子京都大学 |
| 付帯研究18 | がん患者の遺族を対象とした精神心理的サポートに関する現状とそのニードに関する研究 | 内田恵名古屋市立大学 |
| 付帯研究19 | がん患者の遺族のピアサポート利用に関する研究 | 小杉和博国立がん研究センター東病院 |
| 付帯研究20 | 抗がん治療終了後に余命告知を行う時期に関する研究 | 池田昌弘がん研究会有明病院 |
| 付帯研究21 | がん患者との死別を体験した遺族の孤独感に関する研究 | 高尾鮎美大阪公立大学 |
| 付帯研究22 | 予後予測および機能的予後予測についての議論の有無とQuality of death の関連について | 平塚裕介竹田綜合病院 |
| 付帯研究23 | 入院環境が終末期がん患者の苦痛に与える影響に関する研究 | 佐藤香市立伊勢総合病院 |
| 付帯研究24 | 緩和ケア病棟の入院待機をしている間の家族に対する望ましいケアに関する研究 | 大屋清文ピースホームケアクリニック |
| 付帯研究25 | 緩和ケア病棟入棟面談に対する遺族の評価についての研究 | 小池輪太郎東北大学病院 |
| 付帯研究26 | 遺族からみたがん患者のセルフスティグマについての研究 | 五十嵐江美国立がん研究センター東病院 |

