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12回家庭医の生涯教育のためのワークショップ

内容の紹介

(1日目 : 全員)
素早く、効果的な身体診察 : 身体診察の考え方と使い方

   東京慈恵会医科大学総合診療部・医学教育研究室  古谷 伸之 先生

 診療の中で身体診察をどのように考えれば良いのでしょうか。初診時や入院時には常に全身診察を完全にとることが、背中からのしかかっていないでしょうか。どんな診察をどれくらい詳しくやればいいのでしょうか。なぜ、その診察が必要なのでしょうか。このような疑問を日々追いやりながらの苦悩の診療を、身体診察の考え方と使い方を理解することで少し肩の荷を下ろしてみましょう。
 第1部では診療の中での身体診察の考え方、スクリーニング診察と重点診察の考え方、陥りやすいピットフォールなどについてまとめます。さらに、代表的な診察法について、その科学的な捉え方、実施方法について一緒に考えてみたいと思います。
 第2部では実際の診療における身体診察の組み立て方や評価方法を考えます。私が経験した症例を提示し、さらに参加者の皆さんが経験し疑問に思っていることをもとに、解決案を探ってゆきます。


(2日目:選択1, 3)
よくある頭痛のお話
「わからない 治らない でも、あきらめない」─ 家庭医的な頭痛診療 ─

   札幌医大医学部地域医療総合医学講座(附属病院総合診療科)  木村 眞司 先生

 頭痛診療は難しいとしばしばいわれます。その頭痛診療をできるだけ端的にとらえてわかりやすく御説明し、対処法を御一緒に勉強します!
 よくある頭痛(緊張型頭痛、片頭痛、混合型頭痛)を中心に鑑別のポイントや特徴的な症状を学びます。また、神経学的所見の取り方が苦手な方のために、5分で神経所見がとれる方法をお教えし、実習します。さらに、危険な頭痛や、知っておきたい頭痛について要点を勉強します。新しい国際頭痛分類(2004)についても時間があれば触れたいと思います。


(2日目:選択1, 3)
緩和ケア

   筑波大学臨床医学系  木澤 義之 先生

 近年ホスピス・緩和ケア病棟が増加し、全国に100施設を超える緩和ケア病棟が設置され、国民の緩和ケアのニードも高まっています。しかしながら、全がん死亡のわずか3%、総死亡のわずか1%が緩和ケア病棟でおきているにすぎず、多くの死は一般病棟や在宅で起こっています。
 しかしながら、われわれ臨床家は一般的に積極的に治療を行うことは学生時代や卒後に教育されますが、緩和ケアについて、つまり積極的治療が難しくなった患者・家族にどのようにアプローチするかについては教育を受ける機会が少ないのが現状です。
 今回は、積極的治療を行うことが難しくなった、がん患者、脳血管障害患者の症例を検討することを通して、患者・家族の評価の基本、コミュニケーション、プライマリ・ケア医に必要な緩和ケアの技術や知識を一緒に学習できたらと考えています。


(2日目:選択1, 2)
循環器疾患の診断へのアプローチ

   伊賀内科・循環器科  伊賀 幹二 先生

 循環器疾患に対する、PC医の到達目標は、卒後2年目の研修医のそれと同じであると考えています。つまり、病歴、診察、胸部レ線、心電図、検血から診断の方向付けをある程度できることです。それに加えて、心エコーやカテーテル検査・治療により2004年現在ではどのような患者がその恩恵にこうむれるかという知識が必要です。
 今回は、胸痛や息切れを主訴とする患者さんに対して双方向性の Clinical Problem-Solving 形式で症例を呈示することにより、どのように診断していくかを理解していただきたいと思います。
 そして、時系列に病歴をきいていくこと、系統的な診察を習慣づけていること、正常の所見を熟知していくことが診断の基本となっていることを認識できるかと思います。
 また、できれば、高価な医療機器も用いるのではなく病歴と診察所見から診断をしていくということを楽しいと思えることも目標の一つにしたいと考えています。


(2日目:選択1, 2)
ワークショップ 排尿ケア

   横須賀市立うわまち病院  奥井 伸雄 先生

 このワークショップでは、家庭医療の現場で遭遇する排泄問題の中でも、排尿をテーマとします。排尿の問題となると、「泌尿器科」と思いがちですが、実際にはかなり統合的な知識を必要とします。例えば次に例をあげます。
(Q) 82歳女性。家族からの相談内容は、夜間頻尿と転倒。15年前から内科通院。高血圧で通院しているが、血圧は投薬で安定。10年前から泌尿器科を受診。軽度残尿があるが、エブランチルを朝1T処方されて経過観察中。自己導尿の必要はないとのこと。8年前に子宮脱にて経膣的子宮摘出。そのころからこの排尿の異常がある。陰部は湿っている感じがある。便秘がある。
(A) この患者では、排尿日誌を作成すると、夜間は4回排尿しており合計1750ml、日中は8回排尿しており合計1450mlでした。つまり、夜間の方が尿量が多いのです。昼夜逆転しているのかもしれませんし、このために夜間の抗利尿ホルモンの減少もありえます。高血圧ですから、塩分のコントロールがわるく夜間に尿量が増えているかもしれません。また、子宮脱になったのですから、骨盤底が弛緩していて、現在膀胱瘤がある可能性があります。膀胱瘤では軽度の残尿があり、泌尿器科では残尿の量のみ見ることが多いので、大きな問題とされていない可能性があります。陰部の湿りは膀胱瘤もしくは軽度の失禁であることがありえます。また便秘であることも骨盤底の弛緩に一致して、直腸瘤の可能性が示唆されます。
 このような、内科&泌尿器科&婦人科&消化器科 の統合した問題をとりくみたいと思います。


(2日目:選択2, 3)
小児科外来での抗菌剤の使い方 どんな時に、何を、いつ止める

   森川こどもクリニック  森川 嘉郎 先生

 小児科外来で診る患者さんの8〜9割は感染症ですが、抗菌剤を必要とする患者さんは、おそらくその内の1割以下だろうと思います。それではどのような患者さんに抗菌剤が必要か、だれも適格な解答は出せないでしょうが、当らずとも遠からずの答えは必要です。分からないから発熱があれば全例に抗菌剤を投与するのはあまりにも乱暴です。
 今回のワークショップでは既往歴、理学的所見から抗菌剤投与が必要な症例の見い出し方、起炎菌の動向からの抗菌剤選択方法、抗菌剤投与期間、何種類の抗菌剤を手もとに準備すればいいかなどを話し合いたいと思っています。
 初めに話題提供として溶連菌感染症、中耳炎、カンピロバクター腸炎について短く話し、その後は参加された先生方の質問を中心にすすめたいと考えています。


(2日目:選択2, 3)
耳鼻咽喉科の身体検診
各部位の所見の取り方と実際の写真による記載方法について

   かみで耳鼻咽喉科クリニック  上出 洋介 先生

 耳鼻咽喉科領域の検診は額帯鏡を用いて所見をとることが多いため技術的に鍛練された者でないと難しいと言う条件がある。一定の技術を修得しその中で的確に患者の情報を得るには相当の時間が必要であった。しかし光学系機器や専用機器の発達により、一般臨床医でも充分対応することができるようになってきた。
 今回のWSでは耳、鼻、のどの領域の診察時のポイントと実際の所見を画像で示しながら進めていきたい。
 耳領域 (特に鼓膜所見)については器材(ウェルチアレン鼓膜鏡)を用いて基本的鼓膜所見のとり方を実践しさらにカルテ記載のポイントを実際の写真画像を用いてトレーニングする。(急性中耳炎、慢性中耳炎、中耳真珠腫など)特に急性中耳炎については診断と治療方針の概要について。
 鼻領域 (特に鼻内所見)については器材(鼻鏡、ライトガイド)を用いて基本的鼻内所見のとり方を実践しさらにカルテ記載のポイントを実際の写真画像を用いてトレーニングする。(正常、急性鼻炎、アレルギー鼻炎、副鼻腔炎、レントゲン所見の見方など)可能であれば細径の軟性内視鏡にて観察したい。
 口腔・中咽頭領域 (舌、歯牙、歯齦部、口腔底、顎下腺、頬部粘膜、硬口蓋、軟口蓋、扁桃、中咽頭後壁)器材 : 舌圧子、吸引觜管、触診
 下咽頭、喉頭領域 (舌根扁桃、喉頭蓋、披裂部、下咽頭後壁、梨状陥凹) (可能であれば器材 : 細径軟性喉頭内視鏡)
 注意すべき所見 : 見逃しもしくは放置することで短時間に事態が悪化する場合。(急性中耳炎から急性乳突洞炎、扁桃炎から扁桃周囲膿瘍、喉頭炎、下咽頭炎から急性喉頭浮腫下咽頭浮腫)



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