まず北海道大学医学部総合診療部の黒川健氏の司会で、アイスブレイクを始めました。自己紹介に簡単なコメントを付けて全員にお話しいただきました。毎年楽しみに参加されている先生、病院で総合診療を担当され、今後の方向性を模索しておられる先生、診療所ベースで孤軍奮闘し、疑問と安らぎを求めておられる先生、将来の進路について考えている学生など参加者の思いは様々なものがありました。
お互いを少し分かり合えた後は、早速北海道大学医学部総合診療部の北守氏によるワークショップを始めました。第1回目のお話は、ストレスがいかに健康に障害を与えているかを液晶プロジェクターを使って示し、自律神経訓練法の実際を解説されました。ストレスと病気の関わりは実際の臨床の場でよく遭遇する課題でよく理解できましたが、これに対する自律神経訓練法の有効性については、いまひとつ実感できませんでした。
第2回目のセッションでは、応用編として実際の訓練前後の体の変化についての説明がありました。最初にビデオで実際の訓練を視覚的に学習し、その後でこの訓練で体に起こる変化(手の温度の変化、食道内圧や動きなど食道機能の変化など)が提示されました。そして実際に現在の西洋医学で対処しきれなかった症状に対して自律神経訓練法が有効であった症例が示され、具体的な効果の説明がありました。1日に数回自律神経訓練法でリラックスすることによって、体全体の機能が整えられ、いろいろな機能障害、心身症的な疾病が良くなるのだと言う説明を聞いても、十分納得できないという方もおられましたが、臨床の場で治療に難渋している症例に対する一つの選択肢として自律訓練法を考えてもよいのではないかとの結論が得られました。
夕飯の後に、いよいよ実習に入りました。医学生で非常にうまくいった訓練が、集まったメンバーが個性的すぎるのか指標の測定方法が十分でないのか、自律神経訓練によって自分の体の変化をはっきりと捕らえることは難しかったようです。グループ毎に討論された意見も、積極的にこの方法を取り入れるというよりも治療の選択肢が増えるという意味で取られたところが多かったように思います。ワークショップを通して、ストレス関連疾患が外来で非常に多い中、新しいアプローチを系統的に学べたことはよかったと思います。北守先生、ご苦労様でした。
夜の時間は飲み物とつまみを用意し、ざっくばらんな話し合いの時が持てました。今回は二つの場所を用意したのですが、狭いところでひしめき合いながら話すのが良いようで、いつものように8畳6畳の部屋に25〜30名が集まって、楽しい夜のひとときを過ごしました。
翌朝、8時半からきっちりプログラムが始まりました。茅ヶ崎徳洲会病院の木村眞司氏がめまいの理学療法についてお話しくださいました。朝の何となくボーとする時間ですが、話の中にクイズを取り入れ、めまいの理学療法のビデオが景品として当たるというアイデアで聴衆の集中力を高め、楽しい学びの時間を作っていただきました。短い時間にめまいの臨床の場におけるポイントと、良性頭位性めまいの診断、理学療法を中心とした治療をまとめ、本では理解しずらい実際の手技を体験することができました。
二つ目のセッションは、こどもの事故防止へのアプローチについて緑園こどもクリニックの山中龍宏氏から教えていただきました。こどもの死因のトップに上がる事故について、どうして医療現場では取り上げられることが少ないのか、防止できる事故が放置されているために毎年繰り返している現実や、日本のそれらに対する対応の遅れについて私たちが日ごろあまり積極的に関わっていないことを情熱的に語っていただきました。事故に遭遇したこどもが医療現場にも運ばれてくる現実の中で、医師としてもっともっと関わるべきことを学びました。
昼食をはさんで午後の最後のセッションでは、こどもを長年診てこられた先生の経験からこどもを外来で診察し扱うときのポイントを話してくださいました。先生が今年大会長をされる日本外来小児科学会の働きの説明もあり、診療所レベルでいろいろな調査が進行しており、まだまだ身近な事柄に対する十分なエビデンスが少ない中で、プライマリ・ケアを担当する医師が集まって研究をしている報告には刺激を受けました。
春の集会は実践に役立つようなテーマをワークショップ形式で開催するもので、年々参加人数が増えてきています。ワークショップということで50名程度が限界と考えており、今回も参加人数を50名までと考えました。申込人数が途中で50名を越え、少し窮屈になるかと思いましたが、キャンセルされた方もおられ、最終的にはちょうど良い人数であったと思います。来年、また新しいテーマで開催したいと思います。 |