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家庭医療学研究会会報 第36

発行所 事務局(川崎医大総合臨床医学)
編集人 東町ファミリークリニック
発行日 1999.5.1.  武田 伸二

第7回家庭医療学研究会ワークショップ開催される

 さる3月13・14日、名古屋の邦和セミナープラザにおいて、第7回のワークショップが開催されました。
 今回は「外来で見られる精神神経疾患の診察と考え方」「日常見られる神経内科疾患の考え方、神経所見の取り方」をテーマに掲げ、私たちが日常よく見る精神科、神経内科領域の診察手技、考え方について学びました。
 講師は佐賀医科大学精神神経科の佐藤武先生と三井物産健康管理室の大生定義先生のお二人で、どちらの先生も家庭医の働きをよく御理解されており、専門医の立場から私たちに必要な、実践に即したお話を楽しく伺うことができました。
 参加者は講師2名を含めて42人、会員が30名、非会員が10名の集まりでした。昨年と同じくらいの規模の集まりでしたが、非会員の方の中に毎回楽しみにして参加してくださっている方や、来年も是非参加したいという声が多く聞かれ、これからの広がりを感じました。


プログラム

【3月13日(土)】
  13:30〜14:00 受付
  14:00〜14:30 アイスブレイク
  14:30〜16:00 神経症(特に身体表現性障害)  −佐藤武先生−
  16:00〜16:30 休憩
  16:30〜18:00 うつ病(Depression)  −佐藤武先生−
  18:00〜19:00 夕食
  19:00〜20:30 痴呆(精神科医の立場から)  −佐藤武先生−
  20:30〜 語り合いの時

【3月14日(日)】
  7:30〜 8:30 朝食
  8:30〜10:00 神経診察のコツと実践の要点T  −大生定義先生−
  10:00〜10:30 休憩
  10:30〜12:00 神経診察のコツと実践の要点U  −大生定義先生−
  12:00〜13:00 昼食
  13:00〜13:30 次年度のワークショップについて
  13:30〜15:00 神経診察のコツと実践の要点V  −大生定義先生−
  15:00 解散

 アイスブレークの時間は、北海道大学総合診療部の大滝氏の司会で和気あいあいとした雰囲気の中でスタートしました。毎年のように見られる顔、初めての顔、若い人、年輩の人、べてらん医師や研修医と集まった顔ぶれは様々ですが、ワークショップにはすぐにでも実践で生かせる学びを期待しての参加が多く見られました。
 第1日目の3回にわたる講義は、佐賀医科大学精神科の佐藤先生に担当していただきました。佐賀医科大学総合診療部との共同研究で一般外来での精神科領域疾患がどの程度関わっているのか調査されたこともあって、家庭医の働きに対してはご理解が深く、ギャップを感じずにすんなりとお話を伺うことができました。
 まず最初に私たちが外来で遭遇する機会の多い神経症(身体表現性障害)を取り上げ、患者の抱えるストレスや患者自身の性格の問題、そこから出てくる様々な症状、ドクターショッピングなどの受療行動など、多岐にわたったお話でした。解りにくい問題を先生のご経験された症例を提示しながら説明してくださいしました。
 説明の中で、「皆さんは患者さんが肩が凝っていたいと訴えてこられたとき、診察を進めながら肩を揉んであげたことがありますか」と問いかけ、先生が研修で台湾に行かれたときはそのようにする医師がいたこと、佐賀医大で肩揉みをすると、看護婦に白い目で見られたことなどを話され、温かい先生の診療の姿勢を感じることができました。
また、先生は毎朝朝刊のお悔やみ欄を見て、自分の患者が自殺していないか不安を感じながら確認することを話され、たとえ専門医であっても自殺を防ぐことは困難で、うつ病で自殺企図は十分注意すべきで専門医に紹介するサインと見るべきことを強調されました。所見と合わず治療になかなか反応しない慢性疼痛に対して、抗うつ剤が著効を示すことをよく経験しているので、そのような患者さんを受け持っているなら試してみてはいかがでしょうかとアドバイスをくださいました。外来で苦慮している患者さんの顔が浮かび、違った方向からアプローチしてみようと考えさせられました。
 痴呆については、その症状を詳しく説明された後、脳血管性痴呆は情動失禁があって涙もろくなったりするのに対して、アルツハイマー型ではぼけがほんわかしていて見ていてかわいい感じがすると、先生特有の表現でお話しされ、なんとなくイメージがわいたように思います。老人のせん妄については薬の使い方をいろいろ教えていただきましたが、精神科の専門の先生でも症状のコントロールに試行錯誤で苦労されていることがわかりました。患者にぶつかったら、メジャートランキライザー使用を頭において悪戦苦闘しようというチャレンジが与えられました。
 3回にわたるお話を聞きながら、ふだん私たちが接している精神科の先生と違ったイメージを参加者の皆さん持たれたようです。佐藤先生のような精神科の医師が気軽に相談したり、紹介できる職場であればいいなあと思いました。
 夜の懇親会は例年通り狭い畳の部屋に飲み物とつまみを持ち込んでわいわいと語り合いました。講義を聴くだけでなく、自分の診療で困ったこと、近況など、ふだんの学会や医師会の集まりでは語り合えないようなことを話せる貴重な時間でした。別の集まりで同じ施設を利用していた元世話人の中木先生も飛び入りで懇親会に参加され、私たちに付き合ってくださいました。懇親会のために買い出しにご協力くださった先生方、有り難うございました。
 二日目は三井物産健康管理室の大生先生に神経診察のコツと実践の要点についてのワークショップを8時半からスタートしました。
 大生先生は神経内科領域の診療で、検査や診察技法に目が向いてしまう私たちに、神経内科領域でも問診が診療のポイントで、問診で疾患を予想し、診察や検査で確認するという基本を最初に話されました。これをわかりやすくするために、先生自ら模擬患者となって会場の先生方に問診をしていただき、病気の予想と問診のポイント、進め方をわかりやすく説明してくださいました。華麗な所見の取り方もさることながら、問診の大切さを再確認しました。
 そして診察手技については、患者が診察室に入るところから髄膜刺激症状や腱反射、異常反射、麻痺の診察のポイントをそのコツを押さえながらわかりやすく解説されました。そして実際には二人ペアーになって打腱器の使い方を実習し、会場からは腱反射が出にくい場合の対処の仕方の質問やそれに対するアドバイスなど、聞く私たちと一緒になってワークショップらしい学びの一時となりました。会場からの質問も実際診療の場で出くわす生の声ばかりで、診療の場で使ってみようと思うことが多く、集まった参加者が求めていた学びができたものと思います。
 神経内科の教科書を見ていると、腱反射や筋力検査には細かな記載があり、異常反射もややこやしい人の名前の付いた数多くの診察技法があげられています。腱反射や筋力検査では左右差をきちんと見ること、異常反射はバビンスキーがきちんと見れればよいなど、実際忙しい診療の場で押さえるべきポイントを語っていただき、肩の力みが消えたように思います。
 最後に実際に診察をしていてふと沸き起こる疑問をどのように解決して行くか、その解決方法について触れられました。臨床の場で感じた疑問がどの程度答えとして確立されているか、エビデンスに照らし合わせて文献を引きながら学んで行くことの大切さを強調されました。インターネットやCD-ROMを使った知識の修得を時間を作ってやってみようと言う思いに駆り立てられました。また一般外来の場ではまだ十分なエビデンスの蓄積が少なく、これから私たちが一つの方向性を出すような研究を作り上げて行く必要性を強く感じさられました。
 大生先生の3回のお話を伺っていて、問診を大切にするこや自分の診療が正しいのかどうかをエビデンスに照らし合わせて評価して行くことなど、誠実な診療の姿勢を感じました。不必要な検査をして患者を不安に陥れたり、余分な薬を処方しないようにと襟を正されたように思います。




家庭医療学研究会夏期セミナーへのお誘い

と き / 8月6日(金)・7日(土)・8日(日)
ところ / 川崎医科大学(岡山県倉敷市)
主 催 / 家庭医療学研究会

<プログラム>
◆8月6日(金) 開始 13:30
● 家庭医療とは
● 地域包括医療の実際
◆8月7日(土) コース選択
● Aコース : 家庭医療実践のためのベイシックコース
  (1)家族指向のケア, (2)医療面接法, (3)身体診察法, (4)外来小外科(豚足で実習), (5)医療倫理
● Bコース : 地域に根ざした家庭医療の見学コース
  診療所, 老人保健施設, デイケア, 在宅ケアなどを見学
◆8月8日(日)
● Evidence-Based Medicineによる診断・治療についての問題指向型学習
● 家庭医養成教育機関の紹介
終了 14:00
<申込み締切> 7月10日
<参 加 費> 18,000円(宿泊費・懇親会費・資料代含む)
<参加申込み方法>
(1)郵便番号 (2)住所 (3)氏名 (4)性 (5)所属名(大学又は病院) (6)学年 (7)電話番号 (8)希望のコース
はがき又はE-mailにて
  〒701-0192 岡山県倉敷市松島577
  川崎医科大学総合臨床医学教室内
  第11回家庭医療学夏期セミナー係(担当小笠原・徳田)
  TEL. 086-462-1111(代) 内線 3707
  FAX. 086-462-1199
  E-mail. jafm@med.kawasaki-m.ac.jp
  Web site. http://www.kawasaki-m.ac.jp/family/fax.htm



第14回家庭医療学研究会・総会へのお誘い

と  き : 1999年11月6日(土) 〜 7日(日)
場  所 : 三菱総合研究所
テ ー マ : 家庭医養成の現状と未来
ひとこと : 一般演題のほかに、家庭医養成を目指す卒後研修プログラムに関するワークショップやポスターセッションを組む予定です。



♪♪♪ お知らせ ♪♪♪

<<会費納入のお願い>>

会員の皆様の中で会費の納入をお忘れになっていらっしゃる方はいませんか。
ご確認の上、未納入の方は同封の振込用紙を利用して早急に納入をお願い致します。
2年間滞納されますと、自動的に退会扱いとなりますのでご注意ください。
ご自分の納入状況を確認したい場合は、事務局までお問い合わせください。

<<入会手続きについて>>

当研究会では会員を募集中です。学生会員も大歓迎です。
入会手続きについては、事務局までお問い合わせください。
会誌にも手続き用紙が入っています。

<<「家庭医療」誌編集委員会より>>

「家庭医療」誌への投稿が少なく、発行に至りません。
みんなで良い機関誌を作って行きたく思いますので、研究などふるってご投稿ください。
投稿の規定については会誌「家庭医療」の2巻1号81頁を御参照ください。

<<会報への投稿のお願い>>

会報への投稿をお願い致します。家庭医療学に関する様々な情報をお待ちしています。
宛先は事務局あるいは担当武田まで

● 事 務 局 : 〒701-0192 岡山県倉敷市松島577
川崎医科大学総合臨床医学教室内 家庭医療学研究会事務局
TEL ; 086-462-1111(3707) FAX ; 086-462-1199
Email ; jafm@med.kawasaki-m.ac.jp
ホームページ : http://www.kawasaki-m.ac.jp/family  (注)現在とは異なります
● 広報(武田) : 〒168-0015 岩見沢市東町1条8丁目932-74
東町ファミリークリニック
TEL ; 0126-24-5771 FAX ; 0126-24-3835
Email ; VZE03666@niftyserve.or.jp  (注)現在とは異なります

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