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家庭医療学研究会会報 第35

発行所 事務局(川崎医大総合臨床医学)
編集人 東町ファミリークリニック
発行日 1999.1.18.  武田 伸二

第13回家庭医療学研究会開催される

 去る11月14・15日、ここ数回ご厚意により毎年会場を提供していただいている東京三菱総合研究所において、第13回家庭医療学研究会が開催された。
 今回は内山富士雄大会長の下、「家庭医の開業を考える」をテーマに活発な発表と講演、シンポジウムが催された。参加者は100名を越える盛会となった。今回は一般演題の数も例年になく多く、内容のある活発な意見の交換がなされた。
 医療の方向性を示す講演、大会長の開業経験からの話し、開業のポイントと新しい開業形態模索のシンポジウムと一般演題以外にも盛りだくさんの研究会であった。
 新しい試みとしては、「早起きは三文の得」と大会長が紹介されたモーニングレクチャーにも朝早くから多くの参加者があった。以下、簡単なプログラムと会の雰囲気を紹介する。


プログラム

11月14日(土)
◆ 開会セレモニー
◆ 一般演題(T)
  座長 葛西龍樹(北海道家庭医療学センター)
  ・ 受療経験による医師・医療に対するイメージの変化     長谷川万希子(東京都老人総合研究所政策科部門)
  ・ 今、医療者に求められること −患者さんへのアンケート調査より−     猪熊明子(山口大学医学部4年)
  ・ 市中病院における総合診療部門新設の試み     前野哲博(筑波メディカルセンター病院救急総合診療部)
  ・ "Be true to the principles of family medicine"     葛西龍樹(北海道家庭医療学センター)
◆ 特別講演  司会 津田司(川崎医科大学総合臨床医学教室)
  「21世紀における家庭医のあり方について」     三原行弘(医療コンサルタント・日本アドウェル有限会社)
◆ ワーキンググループ報告  司会 伴信太郎(名古屋大学付属病院総合診療部)
  ・ 外来診療教育ワーキンググループ     藤沼康樹(生協浮間診療所)
  ・ 在宅診療研修ワーキンググループ     白浜雅司(三瀬村国民健康保険診療所)
  ・ 外来におけるEBMの実践ワーキンググループ     山本和利(京都大学総合診療部)
◆ 一般演題(U)  座長 下正宗(東京勤医会東葛病院)
  ・ 地域病院における医学生、社会福祉系学生の合同セミナーの試み     高屋敷明由美(健和会臨床疫学研究所)
  ・ 医療面接教育におけるフィードバックのあり方     下 正宗(東京勤医会東葛病院)
  ・ 地域病院における医療面接実習の試み     錦織信幸(小豆沢病院内科)
  ・ 延命治療に対する医学生の見解(第2報)     矢部正浩(川崎医科大学総合臨床医学教室)
◆ 懇親会

11月15日(日)
◆モーニングレクチャー
  司会 内山富士雄(内山クリニック)
  「このめまい、なおりますー良性頭位性めまいに対するEplay法」     木村眞司(茅ヶ崎徳州会総合病院内科)
◆一般演題(V)  座長 山田健志(東京北部医療生活協同組合・北病院内科)
  ・ 痙攣発作を主訴に救急外来を受診したアルコール離脱症候群の一例     山田健志(東京北部医療生活協同組合・北病院内科)
  ・ 在宅ターミナルケアにおける家庭医の役割     白戸あゆみ(北海道家庭医療学センター)
◆一般演題(W)  座長 吉村学(揖斐郡北部地域医療センター)
  ・ 家族へのアプローチの現状に対する調査     竹中裕昭(川崎医科大学総合臨床医学教室)
  ・ 総合診療部外来より精神科への紹介患者における家族問題の検討     竹中裕昭(川崎医科大学総合臨床医学教室)
  ・ 診療所の外来診療で発生する臨床上の疑問     吉村 学(揖斐郡北部地域医療センター)
  ・ Evidence-Based Guidelineによる骨粗鬆症診療に向けて     古賀義規(藤橋村国保診療所)
◆ 総会
◆ 一般演題(X)

  ・ ニコチンガムを併用した禁煙指導     水口文香(北海道家庭医療学センター)
  ・ 医療情報の開示は開業医から     桜井隆(さくらいクリニック)
  ・ 我々の診診連携の現状     安田英己(安田内科医院)
◆ 大会長講演  司会 大滝純司(北海道大学総合診療部)
  「開業してかわったこと、わかったこと」     内山富士雄(うちやまクリニック)
◆ シンポジウム「家庭医の開業を考える」
  コーディネーター 武田伸二(東町ファミリークリニック)
    1. 家庭医開業に何が必要か(1)     田坂佳千(田坂内科医院)
    2. 家庭医開業に何が必要か(2)     楢戸健次郎(栗沢町美流渡診療所)
    3. 家庭医とネットワーク     森 博彦(森内科医院)
    4. グループ診療とグループ開業について     寺崎 仁(日本大学医学部医療管理学)


【一日目】
 この会の代表世話人、川崎医科大学総合臨床医学教室の津田氏の挨拶で、開会となった。
 一般演題Tは北海道家庭医療学センターの葛西氏の司会で、外来診療に対するアンケート調査や市中病院での総合診療部門新設の報告、世界の家庭医からのメッセージと多彩な演題であった。
 医療機関利用状況や年齢によって、患者の医療に対するイメージが変化すると言う東京都老人総合研究所政策科部門の長谷川氏の報告や、山口大学4年の猪熊氏の医療者に対して患者が期待する内容の調査など、私たち医療者が外来でいかに患者に接するべきか考えさせるものであった。また、筑波メディカルセンターという市中病院での新しい総合診療部門の前野氏の活気ある報告も、私たちに元気を与えるものであった。葛西氏はインターネットを使った世界の家庭医のトップクラスの「座談会」の報告で、これからの方向性について示唆を示された。
 特別講演は、21世紀の日本の医療制度の未来を厚生省がどのように考えているのか、医療コンサルタントの三原氏が解説された。急性期医療と慢性期医療の分化、包括医療、チーム医療への移行など、どんどんと変化する医療環境への的確な対処の必要性を熱く語っていただいた。
 ワーキンググループの報告は、昨年より活動を始めた3つのグループの現在の状況をそれぞれの担当チーフより説明があった。外来診療、在宅診療、外来におけるEBMと、専門分化の進んだ現在の学会が手をつけていなくて大切な領域について、家庭医でしか持てない視点から研究されている状況を伝えていただいた。

  ※報告内容は当研究会のホームページでご覧ください。

 一般演題Uでは、東葛病院の下氏の司会で、医学生を福祉系学生を混合したユニークな合同セミナーの試みでそれぞれが患者を違った視点で見ることのできる利点を高屋敷氏が報告された。また、次第に多く採用され始めた医療面接実習の問題点やその展望を、下氏と小豆沢病院の錦織氏が実際に教育されている経験から話してくださった。川崎医大の矢部氏は、延命治療に対する見解の違いを指摘されたが、これから確立して行くべき医療倫理の問題で大切な分野である。
 引き続き会場を移して持たれた懇親会は、この会の雰囲気を表す和やかなものであった。人数が増えてきて、参加者一人一人からの言葉は聞くことができなかったが、初めて参加された医学生や医師、設立当初からの大御所の姿もあり、世代の変化を感じさせるものであった。

【二日目】
 モーニングレクチャーは早朝8時半の始まりであったが、数多くの参加者があった。今回始めての試みであったが、茅ヶ崎徳州会病院の木村氏が良性頭位性めまいの治療法について、短い時間でわかりやすく解説してくださった。日常よく見かける疾患でこのような手技があるとは知らず、「三文の得」をした心境であった。
 一般演題Vは外来でなかなか対処するのに骨が折れるアルコール離脱症の症例を、北病院の山田氏が提示してくださり、早期に対処できる準備の必要性を感じた。北海道家庭医療学センターの白戸氏は、在宅でのターミナルケアの症例から一歩踏み込んだ家庭医ならではのアプローチについて提言された。
 一般演題Wは川崎医大総合診療部の竹中氏が、昨年に引き続き家族へのアプローチについて2題発表してくださった。忙しい外来の中で家族にどこまでアプローチができるのか難しい点が指摘されたが、系統的なアプローチの方法を自分に持っておく必要を感じた。揖斐郡北部地域医療センターの吉村氏は、外来診療で発生する臨床上の疑問を私たちがどれぐらい感じ、どのように解決するかをグループでの研究から話していただいた。しっかりと疑問を感じ血肉になるように解決していきたいものである。藤橋村国保診療所の古賀氏は、骨粗鬆症の診療をEBMを基礎として診療の現場を開設された。将来ありふれた疾患の治療を診療所ベースで研究ができればすばらしい。
 昼食前の総会は、事務局より研究会のこれからの計画や現状の報告があった。詳しくは世話人会の報告を参照いただきたい。
 一般演題Xは、北海道家庭医療センターの水口氏よりまだまだ減らない喫煙者に対して、ニコチンガムを使って禁煙を支えて行く大切さが語られた。さくらいクリニックの桜井氏からは、氏が関わっているカルテ開示の立場から開業医が進んで情報の公開をすべきとの訴えがあった。安田内科医院の安田氏からは、診診連携の現状とそれによってどの様なメリットがあるのかを実際の活動より語っていただいた。
 大会長講演は、内山クリニックの内山氏が、病院での勤務医時代と開業後の働きの中で、主に患者とのかかわりの中から大病院勤務ではわからない事柄、開業してご自身がどのように変わったかを語り、開業がいかに楽しいものであるかを熱心に訴えられた。
 最後のシンポジウムは東町ファミリークリニックの武田氏の司会で、家庭医がどのように開業し、工夫をして家庭医本来の働きを構築すべきかを4人のシンポジストとの話し合いを通して考える時間となった。
 田坂内科医院の田坂氏からは、開業して働いている医師へのアンケートを通して開業前に準備すること、開業してからで間に合うことをまとめていただき、氏が感じている問題点や開業に必要な事柄を語っていただいた。これを補う形で美流渡診療所の楢戸氏に開業のための経済的側面、スタッフの問題、医師会やその他の医療関係者との連携など、本来病院で勤務医として働いている限りではあまり見えてこないポイントを押さえていただいた。
 これからの開業に向けてのスタイルについて、森内科医院の森氏から、氏が名古屋で展開しておられる診療所同士の連携(診診連携)を中心に、連携のメリット、それを成功させるコツについて伺った。日本医大の寺崎氏からは、イギリスで見てこられたグループ診療を中心に、これからの開業を考える場合に、グループで開業することが経済、時間、研修についていかに有利であるかを聞かせていただいた。
 開業は大変で困難なものというイメージから、様々な工夫とやり方によって私たちが将来を考えるときの大きな選択肢の一つになったのではないかと思う。




'99年家庭医療学研究会春のワークショップへのお誘い

春のワークショップのお知らせです。

と き : 1999年3月13日(土) 〜 14日(日)
場 所 : 邦和セミナープラザ(名古屋)
テーマ : 一般外来で見られる精神神経疾患の診方、考え方、診療のポイント
一般外来で見られる神経内科疾患の診方、考え方、診察のポイント

 今年は精神神経疾患、神経内科領域にポイントを絞ってワークショップを企画する予定です。どのようなワークショップになるかワクワクしていますが、日ごろ多用しない神経学所見の取り方をリフレッシュし、うつ症状や神経症、痴呆、頭痛やめまいなど、日常見られる病気や症状を中心にそれぞれの先生方に診療のポイントを伝授していただきたいと思います。
 詳しくは同封の資料を参照して下さい。





当研究会メーリングリスト開設のお知らせ

平成10年11月15日の総会で会員から要望のありましたメーリングリストを開設しました。
メーリングリストへの参加資格 家庭医療学研究会会員に限る。
メーリングリストの目的 メーリングリストは、加入者でディスカッショングループを作り、あるテーマについて議論したり、最新情報を提供したりするためのものです。家庭医療学の発展のために利用していただけたら幸いです。
禁止事項は、個人的な情報をこのリストの中に流さないようにして欲しいことと、ごくプライベートなやりとりを載せないで頂きたいことです。
 入会希望の方は、当研究会のホームページを見て入会手続きを取って下さい。

    以下省略
    こちらをご参照下さい




家庭医療学研究会世話人会議事録 (11/14/98)

出席者 : 武田・津田・伴・前沢・山本・藤崎・内山・木戸・藤沼・葛西(敬称略)

1) 事務局報告
会員数 : 197人
会 計 : 差引残高4,018,2501円(9/30/98現在)
第12回家庭医療学研究会(1997) ; -19,990円←研究会より補填
第6回家庭医の生涯教育のためのワークショップ(1998) ; 143,494円
→ 研究会会計に繰り入れ
第10回家庭医療学夏期セミナー ; 108,430円→研究会会計に繰り入れ

2) 役員人事について
事務局長 ; 伴は退任。当面川崎医科大学総合臨床医学竹中裕昭が代行として就任
事 務 局 ; 引き続き川崎医科大学総合臨床医学教室に置く。

3) 学会誌編集
編集委員交代 : (川崎医科大学)張昌徳→中泉博幹。
1998年度 ; 1998年度中に発行したいが、原著が2編しかない。
来年度は6月頃までに発行したい。
今後大会の抄録集は、学会誌の特別号とする → 長く保存しやすい。

4) 春の『家庭医の生涯教育のためのワークショップ』
日 時 : 3/13, 14
  邦和セミナープラザ(昨年と同じ場所)
  (企画担当 : 武田)→別紙で計画の詳細が示された。
  いままでは持ち出しで準備していたが、次回から準備費用の実費を事務局に請求したい。
参加費 : 12,.000円(会員)、14,000円(非会員)
謝 礼 : 1セッション20,000円+交通費

5) 夏の『学生・研修医のためのセミナー』
日 時 : 8/6-8
場 所 : 大阪か倉敷(津田と藤崎、櫻井、木戸らが検討)

6) 次期大会(会長 : 大滝純司 ; 11/6-7/99) : → 別紙で案が示された。

7) ワーキンググループについて
プリメド社の「ファミリ-・プラクティス・セミナー」シリーズを継続出版を支援する
企画ワーキンググループを発足させる(主任 : 伴 信太郎)

8) その他
『家庭医療学』教科書は医学書院は協力得られず。JIMのシリーズ化ならOK.
→ 検討する。
前沢から総合診療ハンドブック(前沢・津田編)が出されるので協力の要請があった。

9) 次回世話人会
1999年3月13日、14日のいずれかの日(春のワークショップ会場にて)



♪♪♪ お知らせ ♪♪♪

<<会費納入のお願い>>

会員の皆様の中で会費の納入をお忘れになっていらっしゃる方はいませんか。
ご確認の上、未納入の方は同封の振込用紙を利用して早急に納入をお願い致します。
2年間滞納されますと、自動的に退会扱いとなりますのでご注意ください。
ご自分の納入状況を確認したい場合は、事務局までお問い合わせください。

<<入会手続きについて>>

当研究会では会員を募集中です。学生会員も大歓迎です。
入会手続きについては、事務局までお問い合わせください。
会誌にも手続き用紙が入っています。

<<「家庭医療」誌編集委員会より>>

「家庭医療」誌への投稿が少なく、発行に至りません。
みんなで良い機関誌を作って行きたく思いますので、研究などふるってご投稿ください。
投稿の規定については会誌「家庭医療」の2巻1号81頁を御参照ください。

<<会報への投稿のお願い>>

会報への投稿をお願い致します。家庭医療学に関する様々な情報をお待ちしています。
宛先は事務局あるいは担当武田まで

● 事 務 局 : 〒701-0192 岡山県倉敷市松島577
川崎医科大学総合臨床医学教室内 家庭医療学研究会事務局
TEL ; 086-462-1111(3707) FAX ; 086-462-1199
Email ; jafm@med.kawasaki-m.ac.jp
ホームページ : http://www.kawasaki-m.ac.jp/family  (注)現在とは異なります
● 広報(武田) : 〒168-0015 岩見沢市東町1条8丁目932-74
東町ファミリークリニック
TEL ; 0126-24-5771 FAX ; 0126-24-3835
Email ; VZE03666@niftyserve.or.jp  (注)現在とは異なります

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