【一日目】
会場は札幌の中央を流れる豊平川のほとりのNTT北海道セミナーセンタで、静かな環境でおいしい食事をいただける会場でした。
アイスブレークは北大総合診療部の大滝氏の司会で短い時間でゲームを取り入れながらお互いを知り合う時間を過ごしました。
基調講演は、北大総合診療部の前沢氏より「日本の医療改革と家庭医の将来」と題して、日本の医療の現状と将来の方向性、それを踏まえて家庭医がどの様な役割を担って行くのか、どうして必要なのかを語っていただきました。介護保険を間近に控えて激動する医療事情を解りやすく説明してくださいました。
基調講演の二人目は、アメリカのミネソタ州バファローで家庭医としてグループで開業されている佐野氏が「米国の家庭医療」と題してアメリカの家庭医療の現状を刺激的に語ってくださいました。アメリカと米国の医療事情の違いや研修、医局制度などから医療の原点が家庭医療にあることを強調され、学生や若い医師からは活発な質問がなされました。
懇親会前のワークショップは北大総合診療部の黒川氏の司会で、Family-Oriented Careについての学びの時を持ちました。二つの症例が提示され、そのfamily genogramを作ることから見えてくる患者と患者を取り巻く人間関係について考えました。北海道家庭医療学センターの葛西氏と東町ファミリークリニックの武田氏がコメンテーターとなり、参加者の活発な意見が出されました。まとめとして葛西氏の家庭医として患者を診る視点「DR.FAMILY」の説明を聞きました。
懇親会は札幌歓楽街ススキノの南にあるキリンビール園で、うまいビールと北海道ならではのジンギス汗100分間飲み放題食べ放題を満喫しました。最初から飲み食いのピッチが上がり、潤滑剤が行き届いたところで恒例になった参加者全員による「自己紹介言いたい放題」で盛り上がりました。いつもこの時間は家庭医の勢いを感じます。
懇親会の後も2次会でススキノに繰り出したグループもあったようです。
【二日目】
朝食の後、いくつかのグループに分かれ見学・診療実習をしました。
見学実習は汽車や車を使って、室蘭の日鋼記念病院北海道家庭医療学センター、美流渡診療所・東町ファミリークリニック、豊平デイクリニック、もえれのお家の4つのコースに分かれ、各施設の見学やそこでの実習、実際にそこで働いておられる先生方との貴重な時間を過ごしました。実際の現場で大学では学べない体験をすることができたようです。
診療実習は、川崎医大総合診療部の津田氏、奈良県立医大衛生学教室の藤崎氏担当の医療面接実習、川崎医大総合診療部の伴氏と佐賀医大の大西氏の身体診察実習、北大総合診療部の大滝氏の豚足を使った小外科実習の3コースを順番にまわる盛りだくさんの実習でした。医師として基本となることですが、大学ではあまり教えてもらえない実習で、多くのことを学ぶことができたことと思います。
夕方に各実習が終了し、おいしい夕飯を終えた後に北大総合診療部の瀬畠氏の司会で、見学・診療実習報告・討論会の時間を持ちました。3グループに分かれ、それぞれの報告と家庭医に必要な条件十箇条、家庭医のキャッチフレーズという奇抜なテーマを中心にまとめられ、笑いを交えた楽しい一時でした。実習の収穫を確認して二日目を終えました。
【三日目】
京大総合診療部の山本氏によるEvidence-Based medicineによる診断・治療についての問題志向型学習のワークショップでした。症例の問診から診断を推定し、特定の検査をすることで診断の確からしさを曖昧な言葉ではなく数字で表す学びで、数字と格闘をしながらも山本氏の熱心な解説でワークショップが進みました。内容がしっかり理解されたかどうかは解りませんが、経験として曖昧な言葉で表現されてきた医学判断を数字を使って理論的に表して行くことの面白さの一端を体験できたものと思います。
最後に北大総合診療部の前沢氏によってセミナー全体の総括がなされ、三日間にわたるセミナーが閉じられました。
数年前から活性化してきたこのセミナーの流れは、今年も続いてたくさんの方々の参加がありました。今回は特に研修医の先生の参加が多く見られ、学生の活気と合わせて家庭医療の将来に明るさを感じました。医療改革が進行中で、家庭医療の重要性がますます明確になってくるものと思われます。参加された若い方々が受けた思いを実現していっていただきたいと強く感じました。
準備に当たり、縁の下の力持ちとして裏で支えてくださった北大総合診療部の皆様、ボランティアの学生たち、手弁当で御協力いただいた先生方、お疲れさまでした。 |