Q.炎症性腸疾患に関節炎が合併する頻度は?
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末梢関節炎は2〜24%で合併し、非対称性で下肢に好発する。原病が活動性であると、関節症状も増悪する。発症年齢のピークは25〜44才ぐらいだと言われている。一方、脊椎炎は4〜6%で合併すると言われており、仙腸関節炎は対称性である。原病の活動性とは相関しない。
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Q.腸炎関連関節炎における初期の臨床症状は?
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本症例でも、腰痛、左臀部痛が関節についての初発症状であったが、腰背部に関する訴えが初期の臨床症状として多いようだ。その発症は通常突然で、鈍痛であり局在性でないことを特徴とする。臀部あるいは仙腸領域の深部に痛みを感じ、一定の姿勢保持が困難と訴え、睡眠障害も所見のひとつである。また、発熱を伴う症例がしばしば見られるようだ。
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Q.HLA-B27が脊椎炎を引き起こす機序は?
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病因は解明されていないが、最近では、クレブシエラ菌との関連も報告されている。Klebsiella pneumoniaeのもつニトロゲナーゼリダクターゼとHLA-B27とが一連のアミノ酸配列を共有するとして、両者に脊椎炎発病への関与が考えられている。しかし、発症の本体はいまだ不明である。
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Q.HLA-B27が潰瘍性大腸炎を引き起こす機序は?
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HLA-B27トランスジェニックラットを用いた研究がある。このラットは、生後5週頃から自然に潰瘍性大腸炎が発症する。一方、無菌飼育下では発症しないことから、潰瘍性大腸炎には腸内細菌の存在が重要と考えられる。すなわち、HLA-B27ラットにおいて、腸内細菌などの免疫刺激に対して、一旦惹起された免疫応答が、その増強方向のみに回転し、免疫寛容が破綻していることが示唆されている。このような免疫制御機構の異常が、結果として潰瘍性大腸炎を発症させていると考えられている。
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Q.X線検査で診断がつくのではないか?
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強直性脊椎炎患者に対する臨床的な診断は容易であるが、脊椎炎の病初期、とくに思春期の患者の病初期では、通常の骨盤X線検査では仙腸関節の変化をとらえることは困難である。HLA-B27を明らかにすることは、診断の不確実さを最小にするうえで有用だと考えられる。
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Q.腸疾患関連関節炎の治療法は?
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関節炎に対しては、基本的にNSAIDsを使用する。末梢関節炎は、原病である炎症性腸疾患の活動性と相関するので、この沈静化が有効である。一方、脊椎炎には、炎症性腸疾患の活動性と相関がないが、サラゾピリンの投与が試みられている。サラゾピリンは、炎症性腸疾患にも有効であることから、本症例ではとくに有用であると考えられた。重症の強直性関節炎には、経口メトトレキサート療法が効果的なときもあるとされている。
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Q.仙腸関節炎はもともとあったのではないか?
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もともと仙腸関節炎が無症候性に存在していた可能性はある。これが、炎症性腸炎を契機に症状が悪化したと言えるかもしれない。実際、血清反応陰性脊椎関節症で、出産後に関節炎が悪化したという報告がいくつかある。これは、プロラクチンに強力な免疫刺激作用があるからだと考えられている。
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