新田 圭子 先生
資格:認知症研修認定薬剤師(日本薬局学会)
所属:浅ノ川総合病院
出身地:石川県金沢市
資格取得年:2018年1月
Q.資格取得のきっかけは何でしたか?
平成28年度診療報酬改定にて「認知症ケア加算1・2」※が新設され、当院においては、認知症ケア加算1の算定を取得するため「認知症ケアサポートチーム」が発足しました。自分もそのメンバーに入りましたが、薬剤だけではなく病態についての知識不足を痛感していた頃、同年よりこの認知症研修認定薬剤師制度が創設された事を知り、自分の勉強のために資格取得を目指すこととなりました。
※認知症ケア加算:認知症による行動・心理症状や意思疎通の困難さが見られ、身体疾患の治療への影響が見込まれる患者に対し、病棟の看護師等や専門知識を有した多職種が適切に対応することで認知症症状の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられることを目的とした評価。令和4年診療報酬において、加算1,2,3がある。
Q. この資格のやりがいは何ですか?
認知症ケアサポートチームや担当病棟において、薬物療法を中心に参画し、他職種と連携して対応していき、認知症の人がその人らしく入院生活を送れるようになっていかれた時です。
Q. 普段のお仕事でこの資格はどのように活用されていますか?
特に資格を活用しているとは思っていませんが、薬物療法における問題点の意識付けが高まったように感じています。
Q. 患者さんと接する際に印象的だったエピソードはありますか?
いつも穏やかであった認知症患者が突然不穏状態となり、会話がなりたたなくなった際に、他職種と薬剤や環境についての問題点を話し合い、調整を行い、できるだけ患者さんの話を傾聴していくうちに今まで通りの穏やかな患者さんにもどったことがありました。
周辺症状は、いつまでも続くわけではなく、時期や環境変化により消失することが多いといわれているのを実感した症例でした。
Q. 苦心していること、気を遣うことなどはありますか?
認知症の患者さんは、一般の患者に比べてコミュニケーションが困難な場合が多く、問題点がわかりにくい場合があること、また、全ての患者に同じ薬剤が有効であるわけではないため薬剤選択に苦慮する症例があります。
Q. この資格を目指している後進へ何かアドバイスを!
認知症高齢者はこれから増加する一方であり、認知症対策は国として重要な課題となっており、医療の必要性が大きく求められるようになってきています。その医療に薬物療法を中心に貢献できるような薬剤師を目指してみてはいかがでしょう。
Q. 先輩ママ薬剤師としての追加の質問です(*^^*)
3人のお子さんをご出産、育児休暇を取得して職場復帰されてきたとのこと。産休・育休を取得するとなった際の職場の雰囲気はどのようでしたか?また、病院薬剤師はとても忙しいイメージがありますが、育児休暇をとってでも職場復帰することにこだわった理由や育児、家事、仕事の三立の工夫。また、お子さんが産まれて、ご自身で変わったと思われることは何かありますか?たくさん質問してすみません(>_<)
職場では、初の1年間の育児休暇を取ることになりましたが、快く受け入れてもらい、かつ復帰後も温かく迎えて頂きました。子供達の体調が悪い時が重なったりした時には仕事を続けていくことに悩んだりもしましたが、周りのサポートのおかげで育児、家事もやりくりしてくることができました。職場は仕事内容が自分に合っていたことや身近に同じように育児休暇をとりながら頑張っている同僚がいたので、励ましあってくることができました。
今から振り返るとアッという間でしたが、途中で投げ出さず、仕事に打ち込む自分の姿が、子供たちに何らかの応援になっていくのではないかと思いながら頑張ってきた感じです。1番自分が変わったことといえば、自分自身の健康管理に気を遣うようになったことです。自分が病気になったら仕事はもちろん、家事や育児もできなくなるので、子供が風邪をひいても、私は絶対に罹らないぞっ!と気合で乗り切ってきました(笑)
相川 正則 先生
資格:日本臨床薬理学会認定CRC
勤務先:金沢医科大学病院
出身地:金沢市
資格取得年:2008年1月
Q.資格取得のきっかけは何でしたか?
日本臨床薬理学会の認定CRC※制度が開始された時には、いずれ取得したいと思っていました。2001年からCRC業務を開始し、自分なりに経験を積んだことで身につけた知識とスキルを認めてもらいたかったこと、薬剤部との兼務のため、認定要件(週40時間として2年間に相当する実務経験)をクリアするのに時間を要したことで多種多様なプロトコールの経験を持っていると自負していることから、資格取得に挑戦したいと思いました。
※CRC(Clinical Research Coordinator)臨床研究コーディネーター臨床試験を実施する医師、製薬企業(依頼者)やご協力いただく被験者の支援、医療機関内の多部署との連携など、臨床研究の実施に必要な調整役としての専門職(日本臨床薬理学会HPより)。
Q. この資格のやりがいは何ですか?
新しい薬の開発に薬剤師として関与できるところです。患者さんに臨床試験(治験)の重要性を理解してもらい、その薬が製造販売承認を得てさらに多くの患者さんに使用されるまでの経過を間近で見ることができる点は、薬剤師として最高のやりがいだと感じています。当然、途中で研究を断念し、承認に至らない治験薬も多々あります。その中で自分が関わった治験薬が世に出てくれるというのはとても感慨深いものです。
Q. 普段のお仕事でこの資格はどのように活用されていますか?
正直なところ活用できているという実感はあまりないですが、認定CRCであるということを自覚し、自信を持って業務にあたっています。現在は治験のみならず、医師主導の臨床研究に対してもサポートすることが多く、研究内容の計画時から実施に必要となる項目についてのアドバイスを行うこともあります。また、認定CRCとしての知識や経験を後進の育成に活かすため、本学の医学部生や病院実務実習に来る薬学生に対し、積極的に指導を行っています。
Q. 患者さんと接する際に印象的だったエピソードはありますか?
試験の説明をしたときは、不安な顔をされていた患者さん(参加同意を本人がされていたとしても)が、参加後には「試験に参加して良かった」と伝えてくれたときです。
Q. 苦心していること、気を遣うことなどはありますか?
現場では医師や看護師など、皆さんが非常に忙しく働いている中、どのタイミングで声をかけるべきか、通常業務の邪魔になっていないかということに、常に気を付けています。医療スタッフにとって治験実施が業務負担になってしまっては、リスクにつながってしまうので、如何に負担を感じさせずに協力してもらうかを検討しています。
Q. この資格を目指している後進へ何かアドバイスを!
認定CRCに必要とされる、知識、技術、コミュニケーションはどの職種でも必要ですが、特にCRCは、患者、医師、看護師だけでなく、治験依頼者(モニター)や検査技師等、様々な方と接する機会が多く、そのため、コミュニケーション能力は非常に重要です。普段から笑顔で接し、挨拶や言葉遣いに注意しつつ、相手の行動にも配慮する謙虚さが必要です。また、最近は電子メールでのやり取りも多く、文章一つで相手へ自分の意思を伝える力と常識的なマナーを持ち合わせている必要があります。自分の言動や行動を見直し、上司や先輩を見て、経験を積んでほしいと思います。その中で、薬剤師としての職能を発揮できる知識と技術を磨くよう頑張ってほしいです。
坪内 清貴 先生
資格:日本病院薬剤師会 精神科専門薬剤師
所属:金沢大学附属病院
出身地:石川県金沢市
資格取得年:2016年4月
Q.資格取得のきっかけは何でしたか?
後に師匠となる、ある大先輩のご助言のもとで精神科病棟の担当となった頃、精神科の認定資格の制度ができました。そんなちょうど良いタイミングだったこともあり、諸先輩方に助けて頂きながら論文を書き試験を受け、取得を目指すという流れになりました。
Q. この資格のやりがいは何ですか?
取得者の数は少ないですが、現場では一定のニーズがあるところです。
睡眠障害やせん妄、緩和薬物療法などに関して、精神科以外の一般病棟担当薬剤師からも相談を受けることが多いので、力になれると嬉しいです。
Q. 普段のお仕事でこの資格はどのように活用されていますか?
精神科は心理士や作業療法士、精神保健福祉士や栄養士など、まさにチーム医療の実践が重要な分野です。資格を取得した頃は資格の認知度はまだまだ低かったのですが、時間が経つにつれ、他職種のスタッフからも質問を受ける機会が増えました。有資格であることは、他職種からも信頼される材料のひとつとなっており、こちらの提案を受け入れて頂きやすくなっている気がします。
今後は睡眠薬や抗精神病薬の使用に関する簡単な手引きのようなものを精神科医らと共同で作成できればと考えています。
Q. 患者さんと接する際に印象的だったエピソードはありますか?
精神科の治療は長期に及ぶことも、入院を何度も繰り返すことも少なくありません。そういった中、長い付き合いとなった患者さんで「薬剤師の先生」ではなく「坪内先生」と呼んで下さるようになった方が何名かおられます。外来治療に移行した後も薬剤師との面談を希望されたり、電話での問い合わせを受けたりと、医師とはまた違った薬のプロフェッショナルとして認知され、頼って頂けていることが嬉しいです。当たり前のことかもしれませんが、「この患者さんのためにできる限りのことをさせて頂きたいな」と心の底から思いますし、それが研鑽を積み続けるためのモチベーションになっています。
Q. 苦心していること、気を遣うことなどはありますか?
患者さんが薬物治療に関して混乱しないよう、主治医や他のスタッフと話が食い違うことの無いように注意しています。患者さんからの質問に対する回答に迷った場合、「○○さんからはどのようにアドバイスされましたか?」と確認したり、「私の考えですが」と前置きした上で回答するよう心がけております。
Q. この資格を目指している後進へ何かアドバイスを!
「精神科の薬なんて効果あるの?」「精神疾患はちょっと抵抗あるわ…」と、やや避けられがちなこの分野ですが、眠れなければ睡眠薬が使われますし、せん妄が起きれば抗精神病薬が使われます。がんなど重篤な疾患に罹患することで気持ちが著しく落ち込んでしまうと抗うつ薬や抗不安薬の使用も検討されます。精神科の薬は精神科だけで使用されるものではなく一般科でも知識が必要となるため、まずは少しでも関心を持ってもらえると嬉しいです。
瀧本 真紀 先生
資格:がん薬物療法認定薬剤師
(一般社団法人 日本病院薬剤師会)
所属:公立能登総合病院
出身地:石川県
資格取得年:平成20年
※写真は瀧本先生お手製の招き猫ペーパークラフトです。
Q.資格取得のきっかけは何でしたか?
きっかけは、外来化学療法室へ配属されたことです。配属されたものの、「レジメン※ってなに?」「添付文書の用量と処方が全く違うけどどういう事?」と何が分からないのかも分からないまま、戸惑う毎日でした。そのような時、参加した講演会で偶然に大学の恩師に出会い、大学病院で研修が受けられることを聞きました。「とにかく情報と知識が欲しい」とその研修に参加を希望した所、職場の理解と協力もあり、研修に参加させていただき、資格を取得するに至りました。平成19年から認定開始となった資格で、翌年に取得したのですが、研修施設も限られ今のようなe-Learningでの受講もなかったため、3ヶ月間大学病院近くのアパートを借りて単身赴任しました。当時、子供は2歳でしたので“暴挙” です(笑)。一度決めたらやり通したい私の気持ちを尊重してくれた家族の応援があってのことで感謝しています。
※レジメンとは、薬物治療における薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画のこと。がんの薬物治療では抗がん剤や輸液、また抗がん剤の副作用を抑える支持療法(制吐剤などの投与)の投与量や投与方法、投与順、投与日などがレジメンで細かく決められる。
Q. この資格のやりがいは何ですか?
患者さんとの関わりです。支持療法などの薬に関する関わりはもちろん、不安な気持ちを少しでも和らげるように関わっていくことだと思います。
Q. 普段のお仕事でこの資格はどのように活用されていますか?
がん患者指導管理料を算定できることが最大の利点です。当院は現在、薬剤師11名、日直・当直もこなし、5病棟に薬剤師が出向いています。抗がん剤はすべて化学療法室担当(調剤担当兼務)の薬剤師が調製しています。人的余裕はなく、薬剤師外来などというものも夢のまた夢といった状況です。しかし、「点数は算定できます」という事で、外来化学療法室の担当の日はもちろん、担当ではなく調剤担当の日でも外来の患者さんに指導する時間を取らせて頂いています。
Q. 患者さんと接する際に印象的だったエピソードはありますか?
雑談を含め、まず「話し相手」として認識してもらえるように十分すぎるほどお話を聞き、会話をすることです。地域柄、あまり本心を明らかにせず、辛くてもじっと我慢する方も多いので、「話せる」相手になれるよう努力しています。
Q. この資格を目指している後進へ何かアドバイスを!
やる気があれば何とかなる。無責任な物言いですが、自分が動き出さなければ何も始まりません。自分の置かれた職場、状況が資格に不利な場合でも、上司や仲間、色々な人に相談しては。案外、道は開けているかもしれません。
田畑 寛明 先生
資格:日本服薬支援研究会 簡易懸濁法認定薬剤師
勤務先:国家公務員共済組合連合会 北陸病院
出身地:奈良県
資格取得年:2019年
Q.資格取得のきっかけは何でしたか?
胃瘻(胃に小さな穴をあけお腹に管をとりつけることで、口を介さず直接栄養を摂取する栄養補給方法)や嚥下困難がある患者層が多い職場であり、根拠を持った上で投薬支援を行いたいと思ったことがきっかけです。巷では「なんちゃって簡易懸濁法」が横行しているので、この資格がないとしっかりした本来の正しい服薬支援ができないと知り、早速資格取得に行動を取りました。
※簡易懸濁法とは
錠剤やカプセルなどをつぶさずに、そのまま55℃程度のお湯にいれて懸濁(液体の中におくすりの粒が散らばった状態のこと)したものを、チューブから注入する方法のこと。
Q. この資格のやりがいは何ですか?
薬そのものの特徴・剤形を知る薬剤師ならではの資格です。薬剤学の知識が向上します。
Q. 普段のお仕事でこの資格はどのように活用されていますか?
日常業務で役立っています。薬剤師、看護師、ST(言語聴覚士)、栄養サポートチーム、認知症ケアチームなど多岐に渡って内服困難や嚥下困難に関する相談や情報を得ることが多く、根拠を持って医師に処方提案や投薬支援できます。
Q. 患者さんと接する際に印象的だったエピソードはありますか?
入院中、胃瘻を作成された患者さんのご家族へベッドサイドで実際に薬剤の特徴を説明しながら、注入手技の説明を行い実際に患者さんへ投薬支援したことです。「初めて退院後の投薬イメージができるようになりました。思っていたより簡単ですね」と言って頂いたときはやりがいを感じました。
Q. 苦心していること、気を遣うことなどはありますか?
簡易懸濁法の手技を全てのスタッフで統一すること・粉砕法との違いの説明を頻繁にすることに苦心しています。実際に患者さんが入院されているときに注入方法などを確認するよう心掛けていますが、多忙な現場では如何に簡潔に伝えられるか配慮しています。病棟にて個々の患者背景を考慮した上で実際の処方内容で注意点を示しながら看護師へ投薬の服薬指導を行い、現場(看護師)からの問題提起を一緒に解決していくことに力を入れています。
Q. この資格を目指している後進へ何かアドバイスを!
「ザ・薬剤師」と言ったとても面白い資格だと思います。薬物送達システム(DDS:Drug Delivery System)をはじめとした薬剤そのものを調べて知り、実際に現場へとフィードバックできます。主成分だけではなく添加剤の特徴も知った上での情報発信が求められます。同効薬や類似薬間での違いもはっきりしているケースもあり、医師へ処方提案を行ったり、看護師へ注入方法を示したりと多職種での薬識向上にも繋がるディスカッションもでき、如何なる場面でも役立ちます。簡易懸濁法を利用した嚥下困難がある方への経口投与方法も今の超高齢社会では多いに活躍しています。多職種連携する場面ばかりで日頃の業務のモチベーション向上にも繋がります。