がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクトfacebook

2-2.在宅での療養について考える

2-2-1.最期のときを過ごす「ところ」を考える

イラスト人生の最終段階の時期を過ごす場所として安心でき、落ち着いて過ごせるところは、どこでしょうか。それは各家庭の事情や、本人と家族の気持ちによって異なります。

住み慣れた自宅、療養型の介護福祉施設*1、そして専門医療を提供している病院を比べたとき、医療やケアの内容について、必ずしも病院のほうがほかの場所よりよいとは限りません。受けられる医療やケアの選択肢に、あまり差はないのが実情です。一方、「生活する」という視点でみた場合には、治療を行う施設として設備やスタッフが整備されている病院にはない環境が、在宅では得られることがあります。

確かに、病院は機器や設備が整い、スタッフの配置も比較的充実しているので安心されるかもしれません。一方で、必要とされる医療や介護の内容は、痛みやつらさなどの苦痛を取り除くことや日常生活のケアが中心です。それらは在宅でも十分できます。むしろ、住み慣れた自宅、生活環境の充実した療養施設で過ごしたほうが、本人も家族もリラックスできるかもしれません。家に帰って一時的に食欲が回復したり、体が動かせるようになったりすることも珍しくないようです。


QOL(生活の質)や自分らしい過ごし方などを、第一に考えるのであれば、在宅の環境のほうが、よりよい療養場所となる可能性が高いともいえます。

とはいえ、環境の制約や家族の介護力などイラスト家庭によっていろいろな事情もあると思います。最も優先すべきは、本人と家族の気持ちです。まずは本人の希望や意向をよく聴いてみましょう。

*1:療養型の介護福祉施設
「療養型の介護福祉施設」とは、介護を必要とする状態になった場合であっても、なるべく住み慣れた家庭や地域において生活を営むことができるよう、サービスが提供されている施設のことです。

2-2-2.満足できる在宅での生活を送るために

現在、地域の医療施設や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などが連携し、在宅で療養する患者さんや家族を支える仕組みが各地でつくられつつあります。

急性期の医療を提供する医療機関(病院など)から、治療が一段落したところで、療養型の施設や在宅で過ごすこと、そして、住み慣れた環境での看取りは今後、徐々に一般的になってくると思われます。

その一方で、そのような時代の流れのなか、本人や家族の希望や意向を十分に確認しないまま、退院、および在宅での療養を勧められる場合もないとはいえない実態もあります。

在宅での療養においては、本人や家族が前向きに考えて受け入れられるか、納得して準備をすることができるかどうかで、その後の療養生活の質が変わってきます。

病院の担当医に今後の見通しについて十分説明を受けるほか、療養については病院の患者相談窓口、がん相談支援センター*2 や地域医療連携室などから情報を収集し、在宅での療養の利点や、家に帰って心配なこと、今後解決すべき課題を整理していくことから始めてみましょう。

*2:がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院に設置されている「がんの相談窓口」です。患者さんや家族あるいは地域の方々に、がんに関する情報を提供したり、相談にお応えしたりしています。がん専門相談員としての研修を受けたスタッフが、信頼できる情報に基づいて、がんの治療や療養生活全般の質問や相談をお受けしています。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも気軽に相談することができます。

2-2-3.在宅で最期を迎え、看取るということ

在宅での療養は、介護する家族にとって必ずしも容易なものではありません。あらかじめ心の準備と、生活の場づくり・体制づくりも必要です。

では、苦労ばかりなのかというとそうではありません。大切なひとの人生の総仕上げの時期に、その人と一緒に暮らしてきた場所でじっくり向き合うという経験は、病院のなかでは得られない思い出や充足感を、本人と家族にもたらすこともあります。

在宅療養を選んだ家族はみな「ずっと自宅で」と最初から強い決意をもって取り組んでいる方ばかりではありません。最初は「イメージできない」「自信がない」という家族の方も結構いらっしゃいます。始めてみて、「やっぱり病院で」と揺れ動いたり、迷ったりイラストすることもあります。でもいざやってみると、本人が見せる笑顔や安心した表情に励まされ、在宅でのケアを続けていく気持ちになる家族も多いようです。そのような本人と家族を支援していくのが、在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーなどで構成される在宅支援チームです。

在宅での療養は、「家族だけで頑張り続けなければならない」というものではありません。穏やかな最期を望む本人を中心にして、家族、在宅支援チームが一緒になって歩くイメージでとらえていただければと思います。

掲載日:2015年12月21日
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