歯科医師の医科麻酔科研修のガイドラインについて (厚生労働省) |
医政医発第0710001号
医政歯発第0710001号
平成14年7月10日
各都道府県衛生主管部(局)長殿
厚生労働省区政局医事課長
厚生労働省区政局歯科保健課長
歯科医師の医科麻酔科研修のガイドラインについて
歯科医師の医科麻酔科における研修の在り方につきましては,平成13年度の厚生科学特別研究事業において検討されてきたところでありますが,この度,本事業により別添のとおり歯科医師の医科麻酔科研修のガイドラインが取りまとめられました.
つきましては,貴職におかれましても,歯科医師の医科麻酔科研修の重要性にかんがみ,本ガイドラインの趣旨を十分御了知の上,貴管内の関係機関に本ガイドラインを周知するなど歯科医師の歯科麻酔科研修の充実につき御協力をいただきますようお願いいたします.
なお,本日付けで,社団法人日本医師会,社団法人日本歯科医師会及び日本歯科医学会あてに,本通知の写しを送付いたしましたので,念のため申し添えます.
別添
歯科医師の医科麻酔科研修のガイドライン
第1 趣旨
歯科医療の質及び安全性の向上を図るため,歯科医師の麻酔科における研修は重要であるが,研修といえども,診療行為を伴う場合には,法令を遵守しながら適正に行う必要があり,特に歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する行為に関与する場合については,慎重な取扱いを期するべきである.本ガイドラインは,こうした観点から歯科医師の医科麻酔科における研修の在り方に関する基準を定めるものである.
第2 研修実施に当たっての基準
1 研修施設
研修施設は,次の条件を満たす施設であること.
(1) 1人以上の研修指導医がいること.
(2) 研修担当管理責任者(病院長又は麻酔科の管理者等)を定めていること.
2 研修指導医
(1) 研修指導医は,次の条件を満たす医師であること.
社団法人日本麻酔科学会が認定した麻酔指導医
(2) 研修施設の実情に応じて,研修指導医の指導・監督業務を補助する医師(以下「研修指導補助医」という.)を配置する場合,研修指導補助医は,次の条件を満たすこと.
医療法(昭和23年法律第205号)第70条第2項の規定に基づき,麻酔科の標傍を
許可された医師
3 研修を受ける歯科医師
研修を受ける歯科医師(以下「研修歯科医」という.)は,別紙1に定める歯科麻酔
に関する研修を修了した者であること.
4 研修方法
(1) 研修歯科医が歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する行為に関与する場合
については,別紙2に定める水準に従い,研修指導医又は研修指導補助医(以下「研
修指導医等」という.)が必要な指導・監督を行うことにより,適正を期すること.(2)研修実施に当たっては,6に定める事前の知識・技能評価の結果に基づき,必要に
応じて,別紙2に定める水準よりも厳格な指導・監督を行うなど,患者の安全に万全を期すること.
5 事前の知識・技能評価
研修を開始する前に,研修担当管理責任者が研修歯科医の全身管理,麻酔及び救急
処置に関する基本的知識・技能を適切な形で評価し,その結果を,別紙3を参考とし
て記録しておくこと.
6 患者の同意
研修歯科医が歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する行為に関与する場合に
ついては,歯科医師であることを患者に伝えるとともに,原則としてその同意を得る
こと.
(別紙1)
歯科麻酔に関する研修
1. 全身麻酔(気管内麻酔)20例
2. 以下の項目について,全身麻酔研修と同時期に,あるいは全身麻酔行為に伴って研修す
る.
1) 静脈内鎮静法
2) 吸入鎮静法
3) モニタリング
4) 局所麻酔法
5) 気管挿管
6) 静脈路確保
7) 医療面接
8) 麻酔に必要な生理学的知識
9) 麻酔に必要な薬理学的知識
2.に関しては,特に症例数は定めない.
(別紙2)
研 修 水 準
|
研修項目 |
研修水準 |
1.備前管理 |
||
1) |
一般的な備前診察* |
A |
2) |
術前の全身状態評価 |
B |
3) |
麻酔管理方針の決定 |
B |
4) |
インフォームドコンセント |
D |
5) |
術前指示書の記載 |
D |
2.術中管理 |
||
1) |
麻酔器の取扱い |
A |
2) |
麻酔前準備 |
A |
3) |
末梢静脈確保 |
A |
4) |
気道確保(用手又はエアウェーを用いたもの) |
A |
5) |
用手人工換気 |
A |
6) |
気管挿管 |
B |
7) |
気管支ファイバースコープを用いた気管挿管 |
B |
8) |
分離肺換気用気管挿管 |
D |
9) |
手術患者への人工呼吸器の設定 |
B |
10) |
麻酔に必衷な薬剤の投与 |
B |
11) |
基本的なモニタリング機器の装着 |
A |
12) |
動脈カテーテル留置 |
B |
13) |
中心静脈圧カテーテル留置 |
C |
14) |
スワンガンツカテーテル挿入 |
C |
15) |
一般的なモニタリング項目の値の解釈 |
A |
16) |
専門的なモニタリング機器の操作(非侵襲的なもの) |
A |
17) |
専門的なモニタリング機器の操作(侵襲的なもの) |
B |
18) |
専門的なモニタリング機器の値の解釈 |
B |
19) |
麻酔中の全身状態の把握 |
B |
20) |
輸液・輸血の実施 |
B |
21) |
麻酔中の合併症への対応** |
B |
22) |
気管吸引 |
A |
23) |
尿道カテーテル留置 |
B |
3.術後管理 |
||
1) |
麻酔後の全身状態の把握 |
B |
2) |
麻酔後の合併症の診断 |
B |
3) |
術後酸素療法 |
A |
4) |
術後の疼痛管理 |
C |
5) |
その他の術後管理 |
C |
4.局所麻酔 |
||
1) |
硬膜外麻酔 |
C |
2) |
脊椎麻酔 |
C |
5.ペインクリニック |
||
1) |
局所麻酔薬を用いた神経ブロック |
C |
2) |
神経破壊薬を用いた神経ブロック |
C |
6.集中治療 |
||
1) |
ICUなどにおける長期人工呼吸管理 |
C |
2) |
ICU収容患者のその他の管理 |
C |
7.その他 |
||
1) |
循環補助装置の装着 |
D |
2) |
人工心肺装置の装着 |
D |
3) |
開胸心マッサージ |
D |
研修水準
A:研修指導医の指導・監督の下に実施が許容されるもの
B:研修指導医又は研修指導補助医が介助する場合,実施が許容されるもの
C:研修指導医又は研修指導補助医の行為を補助するもの
D:見学にとどめるもの
(注—1)
Bにいう「介助」とは,行為自体に対して行為者(研修歯科医)の判断作用が加わる余地がないとは必ずしも言えない状況の下において,当該行為が実質的に機械的な作業とみなし得る程度まで管理・支配を及ぼすことをいい,常時監視を含む.
Cにいう「補助」とは,判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行うことをいう.
(注一2)
*の項目については,重篤な患者の場合,研修水準をBランクとする.
(注一3)
**の項目については,重篤な患者の場合,研修水準をCランクとする.
(別紙3)
知識・技能評価記録
研修希望者氏名:__________________________
本医療機関で研修を希望する,上記の歯科医師について,知識・技能評価を実施した結果,本医療機関における麻酔科研修に適格であると判断する.
項 目 |
技能・知識 |
全身管理 |
T・U・V |
麻酔 |
T・U・V |
救急処置 |
T・U・V |
T:一定水準に達しているが,研修により更なる知識・技能の向上が期待できるレベル
U:基本的な知識・技能を有しているが,初歩からの研修が望ましいレベル
V:厳格な指導・監督が必要と思われるレベル
評価年月日:平成 年 月 日
研修担当管理責任者氏名:_______________印