1.入院患者への対応
地震の被害により、電気系統と酸素供給が遮断され、人工呼吸器、輸液ポンプなどが停止状態になったが、夜勤の看護スタッフが重症度、緊急度の高い患者に対して優先的に対応することで、結果的には入院患者全員の生命を守ることができた。
2.外来患者への対応
直後にはトリアージ的な行動がとれなかったのが事実である。その原因として次のようなことが考えられる。1)トリアージについての意識が欠けていた、2)仮にトリアージを行おうと思っても、患者の家族が見守る中で、看護婦がこれを行うのは困難であった、3)最重症から軽症まで、同じ場所に患者が停滞した。重症ゾーン、軽症ゾーンを設定し、それぞれ分担する看護スタッフを決めておけば、混乱を防ぐことができたのではないかと反省する。
1.病棟業務
1)入院患者の救護区分の選別
2)ベット配置
3)受け持ち患者の割り当て
4)複数の患者に出された指示の受け方
2.外来勤務
1)救急外来での業務
2)一般外来での業務
重症患者の観察ポイントなどを重点とした講義を救急医から受ける。重症患者の病態を理解することが、災害対応にも役立つと思われる。
2.所属部署のローテーション
外傷の病態や処置についての知識を身につけるため、外科系の病棟にローテーションを行う。
3.シミュレーション訓練
わが国でも大学病院など一部の施設でシミュレーション訓練が行われている。学会などで企画される集団災害机上訓練も、思考力のトレーニングとして有用である。
緊急治療を必要とする重傷患者より先に軽傷患者が多数、近くの医療機関に押しかけて混乱した事実を考えると、災害発生時の搬送時や治療開始時には患者を選別し、優先順位をつけなければならず、仮に上記のような事態が発生しても、医療機関側ではすべての患者を施設内に収容してはならない。このような概念を普及させる必要がある。
一方家族などが同時被災の場合には、軽傷であっても親が子供を先に救助、搬送、治療を受けさせたり、日本人の美徳である謙譲・遠慮が災いして譲り合うことも予想され、情に流されず
、客観的に障害の程度で選別しなければならない。
またトリアージは被災現場からの搬送時のみならず、医療機関到着時や治療開始後にも繰り返し行われるべきである。
平成8年に日本救急医学会や厚生省などの尽力により、諸外国同様に4つのカテゴリーに分類する統一した規格が制定され、その普及が待たれるところである。
トリアージ・タッグで選別されたカテゴリーのうち、黒タッグに分類された場合の対応にも混乱が予想される。阪神・淡路大震災のように極めて甚大な被害があった場合には、患者の家族には通常の高度救命医療を行うことができないことを比較的容易に理解して頂いたが、大規模交通事故などの人為災害などでは医療機関の診療能力には支障がない場合が多く、この場合には黒タッグとはいえども何も治療行為をしなければ家族の納得を得ることが困難であり、その場合にはほかの治療に大きな影響を与えないよう考慮して、短時間で蘇生作業を行わなければならない場合も想定される。
現在、一般への啓蒙はほとんど行われておらず、技術的なものではなくその概念の普及が必要である。
今回の災害に備えるためには継続的な知識の普及を図る必要がある。健康知識や病気に対する情報、救急蘇生における基本的な救急処置法などの知識の伝達を行うことも今後の課題である。もちろん、継続的なマスコミを通じた啓蒙活動なども不可欠である。
1)この計画は、災害対策基本法に基づいて作成されており、まず、国が作成する防災基本計画があり、この計画を受けて、都道府県地域防災会議がつくる都道府県地域防災計画があり、さらにこれを受けて、市町村がつくる市町村地域防災計画がある。また、国の計画に基づいて、国土庁、消防庁、海上保安庁、防衛庁などの国の各機関がつくる災害対応計画が、「防災業務計画」である。
3) 地域防災計画は、予測されるさまざまな災害別に、地域防災計画編を作成している。
4)ほとんどの地域防災計画は、対応の変化によって、事前対策、応急対策、復旧対策、復興対策の4つに分かれている。
その他、都市の防災構造の改善に関する都市計画法や、原子力発電事故予防に関する法律もある。災害応急対策としては、災害が起こった後、いかに早く人命、財産を保護するかという目的の法律もある。たとえば災害救助法など。災害復旧対策としても、激甚災害時の財政特例に関する法令などがある。
災害対策基本法の関係で、計画がどのように作成、実施されているかを図1にしめす。これらの計画をチェックするのは市町村レベルの防災計画は知事であり、都道府県レベルの計画は内閣総理大臣がこれをチェックし、知事に戻すこととなっている。
東海大地震対策の進め方を表3に示す。対策の目標としては、1)の地震の予知が最も重要である。被害の想定としては、どのような災害が起こるかという定性的な想定、次にどのくらいの被害が発生するかの定量的な想定をおこなう。対策の内容では、まず、予知ができた場合と、できなかった場合の2通りのケースを想定して検討する。
しかし、操縦士や整備士を含んだヘリコプターは、都道府県および政令指定
都市が提供し、それに救急隊が乗るという仕組みになる。
出動判断基準については、基本的には119番通報であるが、その出動判断
は市町村単位では非常に困難なため、都道府県で1つ集中指令室のようなもの
をつくりその上で、指導医の制度を導入する。
出動基準としては、山岳救助、高速道路における交通事故ではヘリを出動さ
せる。市街地やその近辺では、救急車の方が迅速である。
重症度としては、出血性ショックを伴う大腿骨の骨折、外傷性クモ膜下出血
のような緊急処置が必要なケースではヘリが出動する。眼球破裂や顔面外傷で
顎骨折のような生命の危険はないが、重大な外傷性の後遺症が残ると考えられ
るケースでもヘリは出動する。このような重症度に対する出動判断の基準を医
療関係者により早期に決定することが必要である。
ヘリコプター搭乗員は、基本的には、医師1人、救急救命士2人、及び操縦
士、副操縦士という形になるが、医師に関しては、少なくとも5年以上の経験
を積んだ救急医か外科医が望ましい。
出動方法については、ヘリポートから出たヘリコプターがどこかの機関病院
のヘリポートで医師をのせ、現地に運ぶという合流方式が現実的に理想である。
その場合の近隣住民に対する騒音対策も必要である。
現地時間28日午後10時、ボゴタに到着した時点でのアルメニアの状況は、死者は約700名、重傷者は周辺都市へ搬送され、災害初期のトリアージは終了していた。軽症者約2400名が残っており、薬剤は十分あるが、今後はデング熱や経口伝染病の流行が懸念され、予防対策を開始したところであり、医療機関としては3つの病院が機能しているとのことであった。
翌29日午前10時、ボゴタ空港から軍用機で出発した。アルメニア空港に到着したが災害対策本部とも連絡が取れず、夕方近くにやっとサン・ファン・デ・ディオス病院内に医療資機材を保管できることになり、翌日から当病院で診療することにした。また、宿泊場所として郊外の農場の別荘が確保できた。そこは水・電気の供給が復旧しており、交渉によって朝食と夕食を賄ってくれることになった。また、青年海外協力隊のコロンビア在住隊員5名(うち2名は看護婦)、コロンビア日本大使館員1名が同行し、通訳、物資調達、輸送手段の確保、診療援助など様々な業務をサポートしてくれることになった。また、赤十字よりコロンビア女性1名、日本で就労経験のあるコロンビア男性1名が通訳のボランティアをしてくれることになった。
31日にアルメニアで最も被害の大きかった(95%倒壊)ブラシリア地区にテント診療所を開設した。しかし、略奪などが行われている危険地域のため診療は9時から14時までで、警察官の常駐、輸送バスの常時待機、診療所以外への立ち入り禁止、貴重品の携行禁止などを遵守することにした。
2月3日にブエノスアイレス地区の小学校の図書室に診療所を開設した。
ブラシリア診療所は2月5日に、ブエノスアイレス診療所は6日にカリー市救助隊に引き継ぎ、災害本部前診療所は6日に撤収した。医薬品・医療器材・大型機材は災害対策本部と病院に寄贈した。
診療した患者総数は1355人で、本部前が338人、ブラシリア診療所が413人、ブエノスアイレス診療所が604人であった。
派遣のタイミングはその派遣の成否を握る大きな鍵であり、そのためにできるだけ多くの正確な情報を収集できる体制を素早く作り上げることが必要である。災害規模が大きいほど早期の援助を求められることが多くなる。しかし、災害早期に何の準備もなく派遣するとそのチームの安全が脅かされる危険がある。今回、医療チームの派遣までの準備期間が非常に短かったため、現地スタッフは過剰な負担になったと思われる。軍隊、アルメニア市民、警察、病院のスタッフ等多くの人々の協力が得られて医療チームは診療活動を行うことができた。今回の派遣で改めて、平時より現地政府関係者、日系企業、青年海外協力隊などとの情報網の整備をしておくこと、また、災害発生時には各国の救援チーム、赤十字などとの綿密な連携・連絡をとることが重要であると感じた。
トリアージは医療サイドのみが知っていて十分か
村山艮雄、エマージェンシー・ナーシング 11: 106-9, 1998災害・災害医療とは
患者の選別:トリアージとは
トリアージの必要性
トリアージ・タッグ
トリアージの概念の普及・啓蒙
地域防災計画・防災関連法
井野盛夫、日本救急医学会災害医療検討委員会・編 大規模災害と医療,東京, 1996, pp 106-17
(野本)
<防災計画の種類と策定義務機関について>
事前対策−訓練や、住民の教育など。
応急対策−災害時に急遽一時的に行う処置や、二次災害予防のための措置。
復旧対策、復興対策−災害の種類や規模によりこの期間が異なってくる。<災害対策に関連する法制度>
<地域防災計画の特徴>
<災害対策の実施>
災害時における消防の役割
猿渡知之、日本救急医学会災害医療検討委員会・編 大規模災害と医療,東京, 1996, pp 138-43
1. 消防の災害応急活動(目標)
救助活動は3日以内に終える。
救急はその後、被災地の医療機関が正常化するまで、1週間程度活動する。2. 大規模災害時における負傷者の広域搬送について(案)
3. 大規模災害時における消防や防災ヘリコプターの運用について(案)
4. 大規模災害時における救急部隊と医療救護班との連携移動について(案)
5. ヘリコプターによる救急搬送システムの構築(試案)
コロンビア共和国震災に対する国際緊急援助隊医療チームの活動について
瀬尾憲正:日本集団災害医学会誌 4: 51-56, 1999災害規模
緊急援助隊医療チームの派遣
診療活動
考 察