2) 病院…エレベータ11台中3台のみ復旧、電気設備は停電1分後に非常用発電機が起動したが、40分後に冷却水断水のため過熱停止。40分間の停電の後復旧した予備線により電気系統が復旧。いずれも完全復旧に20日程度かかった。
2) 救急外来…医師、看護婦、レントゲン技師らが自発的に参集し、病床の確保、第2救急外来の設置(整形外科外来を利用)、遺体安置所などの準備。最初の負傷者は地震発生20分後に徒歩で来院、1時間後に自家用車による重傷者の来院が始まった。19日までの3日間に60+α名(うち死亡者3名、入院31名)が受診。
3) 入院患者…水と食料の確保が困難なため、一時的に退院・転院。10日後には1/3(300名台)に減少。0床となった病棟も。
4) 職員…地震当日、出勤したのは1/2以下。重篤な負傷者や死亡者はなかった。
5) 救護活動…震災7日目に、西宮市の避難所へ救護活動を展開する旨の院長通達。全講座より65ヶ所へ派遣し、常設あるいは巡回による診療を行った。約50日間にのべ3787名を診療、関わったのは医師1043名、看護婦624名。
2) 給食…飲料水はペットボトル。入院患者の食事は、当日は備蓄非常食の3000食から充てた。翌日は職員が電気炊飯器を持ち寄りおにぎり、缶詰、サラダを配食。19日は大阪の業者からパン、ご飯の入荷。20日にガスカセットコンロ、大阪市立大学付属病院より大型電気レンジが搬入。完全復旧に1ヶ月を要した。
3) 暖房…電気ストーブがメイン。
4) 下水…吸水車からくみ上げ、大型ポリバケツをトイレに設置し使用。
5) 手術室、滅菌材料…緊急手術用に500mlボトルの滅菌蒸留水、器具の消毒は大阪方面の関連病院へ依頼。2月末までに5症例の緊急手術が行われたが、暖房装置が機能せず、患者の体温保持やスタッフの活動性に問題が生じた。
6) 薬剤…救急外来や入院患者が少なかった事もあり、品切れになることはなかった。
2) 被害の概要…備品被害は棚の消毒薬瓶が数個墜落し破損した程度。配管酸素は無事。職員の人身被害はなかったが、被災した医師が自宅で3日間登院できず、また帰宅手段がなくなった医師が病院で滞在し診療にあたった。
3) 診療への対応…震災後3日間は3医師がICU業務を遂行。5症例を収容したが、手術部に滅菌物品の不足などの理由で京都や大阪の病院へ転送。
4) 救護活動…4日目に人的余裕ができ、神戸市内の関連病院へ派遣。避難所への救護活動にも参加。
2) ライフラインの途絶(ライフラインが一系統で供給されていることの脆弱さ、危険性)
大切な事は、平時から水源の一部を淡水化装置、河川水などで補うなど、これらを実際に使うこと。
3) 情報、連絡の遮断→停電しても使える電話、携帯電話、携帯無線機、衛星中継など、多種類の連絡方法を日常的に利用。しかし、非常時には道路が大混乱するため、情報の収集、伝達方法には自転車やオートバイが最も早く機動的であった。鐘楼のカネ、狼煙のような単純な方法も見直すべき
4) 病院の孤立(スタッフ派遣や生活物資の入手困難)→災害相互援助協定を結ぶ姉妹病院(複数)があれば、信頼できる病院から必要なだけの供給がなされ、備蓄の節約と確実な復旧が見通せる。
5) その他…災害医療計画の内容、立案についても早急に検討が必要
阪神・淡路島大震災から4年が過ぎ、その復興ぶりには目を見張るものがあるが、完全復興までには、まだ年月と資材が費やされる必要がある。この災害を契機に様々な観点からの災害対策が検討されているが、日本ME学会でも医療災害対策検討委員会を設置し災害に強い医療機器・設備・システムのあり方を検討してきた。
災害に強い機器・設備とは以下のような特性を持っていると言えよう。
1.完全稼働する(壊れない)もの
基本的には頑丈にするということであるが重要部分を二重化することも効果がある。
2.主要部分は稼働するもの
基本的な設計思想として、故障時の基本機能の確保、すなわち故障時には高度機能は切り捨て、基本機能だけでも残す設計が好ましい。
駆動エネルギーが遮断されることを織り込んだ用手法との共存を基本設計に取り入れる必要がある。
3.駆動エネルギーの確保
災害時、外部からのエネルギー供給は途絶することを念頭に置き、内部電池や人力の効率的な利用、エネルギー貯蔵、復帰が早いもの(ユニット化・易保守性・異常報知機能)などを検討する必要がある。
また、災害時のみに利用可能な機構ではなく、災害時対策機構が平常時にも役立つ機構であれば安全性と経済性の両立が成り立つであろう、また、災害時の機能を普段例用する事で災害時の操作にも慣れることができるであろう。
また、これらの機器のみだけでなく、機器を支える設備を設備自身の問題としてとらえる必要があろう。まず、非常電源の確保とその信頼性を向上させる必要があり、このために耐震・耐火・耐水設計が必要である。設置場所、特に重量機器は床の補強、天井吊り機器の取り付け補強などが必要である。医療ガス設備の確保と信頼性の向上、病院の強度に関する規制が必要である。さらに施設別(手術室、救急救命室など)の強度基準が必要となる。
これらを検討した医用機器や病院施設の規格(JISや法律など)に取り込む必要がある。
機器・設備破壊時の安全確保には安全:人体被害と保安:秘密の漏洩の観点からの検討が必要である。これらの対策は医療機器のみならず電気設備や上下水道、建物などのすべてにわたって検討する必要がある。安全対策としては飛散物、噴出物対策や機密(ハード・ソフト)の保持、とくに患者の個人情報に関するものが盗まれないような対策をする必要がある。
これらは実現されなければ意味がないものだが、どれも努力と相当な費用が必要である。この対策がもたらす利益と不利益とのバランスを常に考えて対策を実施しなければならないだろう。
援助機関と援助の受益者との関係は変わりつつある。現在では、質の確保と国際的に認められた基準に準拠することが、より重視されている。
福祉サービスは、かつては国家の義務であるとみなされていたが、現在では自動車生産と同じように市場の影響を受けるようになった。一部の国は、この変化に何とか対処してきたが、大失敗を犯した国もある。人道援助機関にとっては、これらの変化によって次のような3つの重大な結果が生じた。
人道援助機関も、国家と同様、これらの変化に抗しきれず、特に援助対象国や国際的な活動に関して競合するために、今後は今まで以上に規制の影響を受けるようになると思われる。援助機関は、認定された基準に従って行動することを求められ、援助の資源を提供する人々のみならず、活動する上での規制的枠組を設定する人々やサービスを受ける人々に対しても説明責任を負うようになる。
人道援助における最低限の基準を設定するためのプロジェクトは、スフィアと呼ばれている。各援助機関を結ぶこの国際的プロジェクトは、協調的かつ協力的なプロセスを通じて、災害被災者のための人道憲章を開発するとともに、水と衛生、栄養と食糧の確保、避難所および避難地域管理、保健医療という4つの基本分野における最低基準を設定することを目指している。
基準を現場で有効に実施するためには、採択、研修、説明責任の3つの行動が必要となる。採択とは、これらの基準が世界中の活動機関によって採択されなくてはならないことで、研修とは、国際基準と基準に関する最善の実施方法、最高実施手順、ならびに実施戦略に関する研修を受けたスタッフの存在が必要ということである。説明責任とは、人道援助機関が、その受益者、全員、寄付者に対する説明責任を負っていることである。
皮肉なことに、より多くの説明責任を果たし、より高い基準を求める諸機関の努力の結果として、人道的問題に対する解決策がこれらの諸機関の業務そのものに見出されるという事情が示された。そこで、高い基準を求める諸団体は、内部的な改善を実施するとともに、危機の政治的、経済的原因を解決する責務を果たすよう各国政府に継続的圧力をかけるという二重の課題に直面している。
阪神・淡路大震災から4年半がたちわたしたちの記憶からも過去のものとなりつつあるが、震災時の経験を著者である訪問看護婦がふりかえり、その時の在宅療養患者の状況、著者の行動を通して災害時の在宅医療の体制の確立を提言している。
当日、著者の勤める日本赤十字神戸訪問看護ステーション(神戸赤十字病院内)では外傷や骨折の患者さんでいっぱいになり、救急受け入れ体制づくりから始まった。それは診察室のなかも物品で損壊し、水もガスも電話も使えない状態で建物自体もかなりの損壊を受けており、過酷なものであった。と同時に、70名の在宅療養者の安否確認と訪問可能な患者の訪問看護を行った。
ある76歳の女性は、脳梗塞による右半身不随で、一人暮らしであり、住居は半壊していた。身寄りもなく3日目になってようやく本人からステーションに「水が出ない。どうしよう」という連絡があり、訪れたところ、すでに冷蔵庫はからっぽで配水車が来ても貰いにゆけず、不安と脱水状態で尿量も減少していた。
これらの症例より災害時における在宅ケアをめぐる諸問題として、初動時の安否確認の困難さ、ライフラインが切断されたときの対応の限界、他のステーションとの情報の共有化、在宅療養者の在宅医療体制の確立、在宅主治医との密な情報交換の必要性、あるいは在宅機器使用者への非常時に備えての指導などがあげられた。著者はこの経験を通して訪問看護婦は健康に障害のある人々へのケアを、医療を中心とした活動としてばかりでなく、生活者としての場面を持つ人々であることを考えて広く提供しており、災害時の救助はその命と暮らしを守ることであると痛感させられていた。
災害時の医療を考えた際に、この経験からもわかるように町は一変してパニック状態に陥り、医療関係者も被災者に、病院も被災地になり、その状況下で救急活動を行わなければならない。まず重要なことは災害時における医療スタッフや訪問看護婦、ヘルパーなどが一体となったネットワークづくりであると思う。この震災を教訓にして、現在の救急医療体制も見直していく必要性があるのではないかと実感した(担当学生の感想)。
〔安全の1、2、3〕
危険の確認
4つの主項目
※もし番号が繰り返されれば、その危険性は増幅されるという意味である。例えば、
以下の通りである。
現場での医療上の責任
病院での医療上の責務
被害者への対応の仕方
援助を最初に求める場所
病院の放射能評価チームが果たすべき責務
大事故災害の基本的な考え方は「大多数に最良の処置をする」ことである。
多くの病院へ負傷者を波状的に送ることは、一つの熱傷ユニットを患者で溢れさせないようにするための最良の方法である。
熱傷評価班 Burns Assessment Team(BAT)は現場で間違ってトリアージされた患者を再評価する。熱傷面積と被災者の年齢の総和(熱傷インデックス)が100を越えていれば、救命率は0に近づく。また、熱傷時の呼吸器の問題は予後を左右する。以下は15歳以上の負傷者に体する、現場でのトリアージ担当官への助言である。
スタジアムは毎週末の数時間しか使わないため、結果として災害が起こる可能性が認識されない。このことが、大事故災害の詳細な策定ができないこと、定期的な訓練がなされないこと、さらには予算が少ないことに関係してくる。
効果的な大事故災害計画はその場所の詳細な知識に基づき、内部と外部の位置関係、潜在的に問題となる場所、周辺道路や鉄道の全ての点の隅々に至るまで配慮がなされるべきである。また、その地域の病院の一般病床、特別病床に関する知識も必要である。さらには、救急車の駐車スペースや出入り口の確保、負傷者のsmoothな搬送を
想定すべきである。
そして、警察、消防、救急隊との綿密な連絡、セントジョンズや赤十字が大事故災害計画においてどのような役割が果たせるか計画の段階で発表すべきである。
大事故災害計画において医療奉仕に加わるスタッフはそれぞれ異なった経験をもっている。安全、誘導、トリアージの訓練は必須である。災害対策機器・システム・設備のあり方に関する提言
小野哲章、医器学 67: 77-81, 1997援助の質:第5章 変化する危機世界において基準を設定する
国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 1998年版、54-65
今後直面するさらに基本的な問題は、最も援助を必要とする人々、すなわち援助要求者に効果的に対応し得るメカニズムを構築する一方で、北側先進諸国ベースの諸機関やそのドナーから説明責任と基準にかかわる主導権を引き出し、それを国際人道活動への関与を益々増大させつつある南側機関に移行させることである。震災時の在宅療養者への援助―訪問看護ステーションからの報告
武市和子、看護 47: 71-7, 1995特別な事故災害
小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.175-81I. 化学物質の流出
まず自分自身の安全、次に現場に近づいていこうとする人の安全、全ての負傷者の安全
33 高度引火性液体
333 自然引火性液体
333X 水と激しく反応する自然引火性液体
放射性物質の汚染
多数の熱傷被害者
年齢+熱傷面積 移送先 <35
35〜50
>100
地区の総合病院
地域の熱傷ユニット
地区の総合病院
大観衆事故災害