第2編 災害応急対策

第1章 総則

第1節 災害に関する情報の収集及び伝達

  1.  非常災害が発生し,又は発生するおそれ がある場合には,連絡調整会議構成員は, 必携に定める連絡網に従い,国土庁等から 得た情報を速やかに厚生省関係部局に伝達 する。

  2.  厚生省関係部局は,非常災害の発生後直 ちに,他からの指示等の有無にかかわら ず,その所掌事務に係る情報の収集及び必 要な措置・対策を開始する。

  3. 厚生省関係部局は,被災都道府県・市町 村からの情報に限らず,ヘリコプター・テ レビ情報,マスコミ情報,被災地又はその 周辺の関係施設への直接電話照会,全国 ネットワークをもつ企業への照会等可能な あらゆる手段により情報を収集し,当該情 報を連絡調整会議事務局に報告する。

  4. 前項により連絡調整会議事務局に報告す る情報を例示すれば,以下のとおりであ る。

    (1)厚生省の所掌に係る施設及び業務の被 害状況

    (2)日本赤十字社の行う救援活動の状況及び同社から収集した現地の状況

    (3)被災地の地方公丈団体,関係団体,その他の関係機関との連絡状況

    (4) その他前項の情報収集により得た重要な情報

  5. 前各項に定めるもののほか,厚生省関係部局は,必要に心じ,非常災害の発災後直 ちに被災地に携帯電話を有する職員を派遣する等により,可能な限りの情報収集に努 めるものとする。

第2節 厚生省災害対策本部の設置等

第1 厚生省災害対策本部の設置

  1. 非常災害が発生し,又は発生するおそれがある場合には,厚生大臣の決裁を得 て,厚生省災害対策本部を設置する。

    (注1)非常災害とは,東京・震度5以上,その他の地域・震度6以上等を目安 とする。

    (注2)厚生省災害対策本部の設置について厚生大臣の決裁を得ることが困難な 場合には,厚生事務次官の決裁により厚生省災害対策本部を設置することができ るものとし,それも困難な場合には,以 下,官房長,大臣官房総務課長,大臣官 房政策課長,大臣官房人事課長を決裁権 者として厚生省災害対策本部の設置を行 うものとする。

  2. 厚生省災吉対策本部の組織は,厚生省 災害対策本部組織規定進則(別紙2)を 参考とし,非常災害の種類,発生した地 域の特性,季節等を勘案し,求められる 災害対策に応じて,適宜定められるもの とする。

第2 自発的参集

災害対策本部構成員等は,非常災害が発 生した場合又は発生するおそれがあること を知った場合には,召集権者の召集を待た ず,直ちに参集する。

第3 厚生省災害対策本部の設置場所等

 厚生省災害対策本部は,厚生省特別第一 会議室(中央合同庁舎第5号館7階)又は 適宜の厚生本省内の会議室に設置する。

第4 厚生省災害対策本部の業務

 厚生省災害対策公部は,次の業務を行う。

  1. 厚生省関係部局からの被災状況等に関する情報の取りまとめ
  2. 災害応急対策の総括及び総合調整
  3. 政府の非常本部等(非常災害対策本部又は緊急災害対策本部をいう。以下同 じ。)及び関係省庁との情報交換及び連絡調整
  4. 政府の非常本部令及び関係省庁から収集した情報の厚生省関係部局への提供
  5. 被災状況及び災害応急対策に関する広報資料の定期的作成等広報活動の総括
  6. 厚生省幹部との連絡
  7. 厚生省現地対策本部を設置した場合にあっては,同本部との連絡調整
  8. その他災害応急対策に関し必要な業務

第5  厚生省災害対策本部を国立病院東京災害医療センター内に設置する場合

  1. 厚生本省を含む地域において非常災害が発生し,又は発生するおそれがあるこ とから,厚生省災害対策本部を厚生本省 に設置することによ災害対策を推進す ることが困難であると認められる場合に は,第3の規定にかかわらず,厚生省災 害対策本部は,立川広域防災基地(東点 都立川市)内の国立病院東京災害医麻セ ンター研修室(同センター4階。地図別 紙5)又は適宜の会議室等に設置する。

  2. 厚生省災害対策本部を厚生本省に設置 するか,又は,国立病院東京災害医療セ ンター内に設置するかの決裁は,以下に 掲げる事項を勘案し,第1に規定する厚 生省災害対策本部の設置の決裁に併せ て,これを行うものとする。

    1)厚生本省及び厚生本省を含む地域の被災状況(非常災害が発牛するおそれ がある場合にあっては,被災状況に係る予想)

    2)政府の非常本部等の立川広域防災基地内災害対策本部予備施設内への設置 の如何

  3. 休日や夜間等の勤務時間外に前項の決裁を行う必要がある場合には,連絡調整 会議構成員は,第1節第3項及び第5項等に掲げるあらゆる手段により可能な限 りの情報を収集し,適切な判断に資するものとする。

第3節 被災地への職員の派遣及び厚生省現地対策本部の設置

第1 職員の派遣

  1. 非常災害が発生した場合には,発災直後,特に次に例示する職員が被災地に赴 き,情報収集,被災都道府県・市町村との連絡調整を行う。

    1)国立病院東京災害医療センター等の災害医療班

    2)災害救助行政の担当職員

    3)水道及び廃棄物の専門職員 等

  2. 前項に規定するもののほか,厚生省災害対策本部は,必要に応じ,第4節の表 「阪神・淡路大震災の経験を踏まえた厚生行政に係る災害応急対策の重点事項」 を参考としつつ,時間の経過とともに変 化する状況に応じた適切な災害心急対策 を行うために必要な職員を被災地に派遣 する。

第2 厚生省現地対策本部の設置

  1. 被災都道府県・市町村の機能が低下 し,被害状況等の情報収集及び災害対策 等の的確な遂行に支障が生ずる恐れのあ る場合その他災害応急対策について万全 の措置を講ずるため必要と認められる場 合には,厚生大臣の決裁を得て,厚生省 現地対策本部を設置する。(注)厚生省 現地対策本部の設置について厚生大臣の 決裁を得ることが困難な場合は,厚生事 務次官の決裁により厚生省現地対策本部 を設置することができるものとし,それ も困難な場合には,以下,官房長,大臣 官房総務課長,大臣官房政策課長,大臣 官房人事課長を決裁権者として厚生省現 地対策本部の設置を行うものとする。

  2. 厚生省現地対策本部の組織は,厚生省 現地対策本部組織規程準則(別紙4)を 参考とし,非常災害の種類,発生した地 域の特性,季節等を勘案し,求められる 災害応急対策に応じて,適宜定められる ものとする。

  3. 厚生省現地対策本部は,被災状況の把 握,被災都道府県・市町村における事務 執行状況の把握,住民ニーズの把握,被 災都道府県・市町村の活動に対する助 言,厚生省災害対策公部等への情報伝達 等を行う。

第4節 非常災害の特性や時間の経過に応じた適 切な災害応急対策の実施

 非常災害が発生した場合の災害応急対策 は,被災状況等を踏まえた迅速かつ適切な 対策が,時間の経過とともに変化する状況 に対応し,継続的に講じられるべきである ことを踏まえ,厚生省災害対策本部及び厚 生省関係部局は,下表を参考にしつつ,発生 した非常災害の特性を応じた適切な災害対策を講ずるものとする。

第5節 非常災害時における広報活動

  1. 厚生省災害対策本部及び厚生省現地対策 本部が設置された場合には,厚生省災害対 策本部事務局は,速やかに記者発表を行う。

  2. 厚生省関係部局は所掌に係る事業及び施 設等の被災状況及びそれに対して講じてい る施策等について,正確かつきめ細かな情 報提供を積極的に行う。

  3. 厚生省人臣官房総務課広報室は,災害に 関し,逐次記者発表が行われるよう,厚生 省関係部局との連絡調整等に留意する。

  4. 厚生省大臣官房統計情報部は,パソコン 通信により,記者発表内容を提供する。


(表)阪神・淡路大震災の経験を踏まえた厚生行政に係る災害応急対策の重点事項

発災後24時間以内

【全般】

【医療】

【避難所等】

【水】

【要援護者】

【遺体】

発災後72時間以内

【全般】

【医療・保健】

【避難所】

【水及びごみ】

【要援護者】

【遣体】

【ボランティア】

発災後1週間以内

【全般】

【医療】

【生活援助】

【避難所等】

【水及びごみ】

【要援護者】


第2章 災害救助法の適用(図1参照)

第1節 災害救助法の迅速な適用

第1 被害状況の把握及び報告

  1.  被災都道府県は,消防部局,警察当 局,管下市町村等と緊密な連携を図り, 速やかに管内の被害状況の把握を行うと ともに,把握した被告状況を厚生省社 会・援護局に報告する。この場合におい て,被害が甚大あるいは夜間等のために 被害が正確に把握できない場合には,概 数により緊急報告を行う。

  2.  また,被災都道府県の機能等に甚大な 被害が発生し,被害状況の報告が一時的 に不可能な場合には,被災市町村は,直 接,厚生省に対して緊急報告を行う。

第2 災害救助法適用の決定等

  1.  被災都道府県は,災害救助法を適用し て応急救助を実施する必要があると認め る災害については,速やかに厚生省社 会・援護局に報告するとともに,災害救 助法の適用手続を進める。この場合にお いて,災害救助法の適用の要件となる被 害の認定は,世帯単位で行われるもので あることに十分留意するとともに,同法 適用後も,厚生省社会・援護局に対し, 刻々と変わる被害状況について報告する。

  2.  厚生省社会・援護局は,被災都道府県 から災害の発生状況及び被害状況の報告 を受けた場合には,災害救助法の適用手 続きを速やかに行うとともに,必要に応 じ,関係省庁に対し,被災状況及び災害 救助法の適用について情報提供を行う。

  3. 厚生省社会・援護局は,災害救助法の 迅速な適用が行われるよう,被災都道府 県に対し,必要な指導・助言その他の支 援を行う。

  4. 厚生省社会・援護局及び都道府県は, 医療その他の関係者を災害救助に関する 業務に従事させ,又は協力させる場合 は,速やかに災害救助法による命令を発 出することにより,医療その他の救助に 関する業務に従事する者が,これがため 負傷し,疾病にかかり,又は死亡した場 合において,扶助金の支給等適切な措置 を講ずる。

第2節 災害救助法による救助の実施

第1 避難所の設置

  1. 被災都道府県(被災市町村が,救助の 実施に関する事務を処理する場合におけ る当該被災市町村を含む。以下この節に おいて同じ。)は,避難所を設置した場 合は,避難者数の確認,避難者名簿の作 成等により,その実態を把握し,テレ ビ,ラジオ,仮設便所等必要な設備・備 品を確保するとともに,避難の長期化に 際しては,必要に応じ,プライバシーの 確保等に配慮する。

  2. 被災都道府県は,避難者守の協力を得 つつ,負傷者,災害による遺児,衰弱し た老人,障害者等の要援護者の所在の把 握に努め,必要な保健福祉サービスが受 けられるための連絡調整寺を行う。

第2 炊出しその他による食品及び飲料水の供与

  1. 被災都道府県は,事業者等の協力を得て,食品及び飲料水の提供に努めるとと もに,直ちに用意できない場合は,差し 当たり,当該都道府県が備蓄している乾 パン,缶語等の食品の供与を速やかに行 う。

  2. 被災都道府県は,食品の必要供給量を 避難所責任者からの情報等により把握 し,公共施設の調理施設を利用すること 等による炊出し,食品流通業者による搬 入等の手配を適切に行う。

  3. 被災都道府県は,学校,社会福祉施設 及び公共施設の調理設備の利用,避難所 への仮設炊事場の設置により,適温食の 確保に努める。

  4. 被災都道府県は,被害の規模等に応じ 必要と認めるときは,被災住民等地域住 民の協力を得る等により,食品の供与の ための体制を緊急整備する。

第3 応急仮設住宅の設置

  1. 被災都道府県は,応急仮設住宅の建設 用地として被災市町村内の公有地の確保 に努めるとともに,災害の規模,態様に 応じ,他の市町村有地,国有地,企業等 の民有地の提供を受けること等により, 必要な用地の確保を行う。

  2. 被災都道府県は,被災者の実態把握に 基づき,速やかに応急仮設住宅の設置計 画を策定する。この場合において,水, ガス,電気等の供給に配慮するととも に,被災者に係る世帯人員数や高齢者・ 障害者等に配慮した仕様及び設計に努め る。

  3. 被災都道府県は,応急仮設住宅を大量 に設置した場合の入居事務については, その事務処理体制の整備,必要な職員の 配置等を図り,被災者の入居が遅滞な く,かつ,公平に行われるよう努める。 この場合において,入居決定に当たって は,被災者の特性や実態に応じた配慮を 行う。

第4 指導・助言その他の支援

 厚生省社会・援護局は,第1から第3に 掲げる措置が適切に行われるよう,必要な 指導・助言その他の支援を行うとともに, 災害救助法に基づく被災都道府県が実施す る被災者の救出や医療の提供並びに死体の 捜索,処理及び埋葬,被災者への生活必需 品や学用品の給付,住宅の応急修理及び障 害物の除去,その他の応急措置が適切に行 われるよう必要な支援を行う。

第3節 実施体制の整備

  1. 被災都道府県は,災害対策本部を設置し て救助の実施に必要な職員の確保を行うな どの体制を整備する。

  2. 被災都道府県の職員のみで確保できない 場合には,必要に応じ,近隣都道府県に応 援を要請し,又は厚生大臣の応援命令の発 出を求める。

  3. 厚生省社会・援護局は,被災都道府県の 要請等を踏まえ,必要な職員の派遣等適切 に応援体制の整備を図る。

  4. 厚生省社会・援護局は,特に必要と認め る場合には,災害救助法第31条の規定に基 づく厚生大臣による被災都道府県以外の都 道府県知事に対する応援命令につき必要な 手続を行う。

第4節 関係省庁との協力

 厚生省社会・援護局は,災害救助法によ る救助の円滑な実施に資するため,食品の 確保,応急仮設住宅の建設に安する資機材 及び建設用地の確保等につき,関係省庁, 関係機関と密接な連絡を図る。

第5節 応急救助の実施に必要な物資の収用等

  1. 厚生省社会・援護局は,応急救助の実施 に当たって,特に必要とされる物資の円滑 な供給を確保することができない場合にお いて,特に必要があると認めるときは,災 害救助法第23条の2の規定に基づく厚生大 臣による関係事業者に対する物資の保管命 令又は物資の収用を行う。

     ただし,この措置は,真にやむを得ない 場合に限り,かつ応急救助の実施のために 必変な最小限度においてのみ行うものと し,できるかぎり関係者の協力を得て必要 物資の確保を図るよう努める。

  2. 厚生省社会・援護局,都道府県・市町村 等は,同法28条の規定に基づき,応急救助 の実施に関し,緊急を要する通信のため, 電気通信設備の優先利用等を行う。

第3章 医療・保健に係る対策

第1節 被災地の状況把握及び初期災害医療班の 派遣

  1. 非常災害時に迅速かつ的確な医療・保健 サービスを提供するためには,情報を迅速 かつ正確に把握することが重要であること から,厚生省健康政策局その他の関係部局 は,被災都道府県・市町村,国立病院,日 本赤十字社,関係省庁,民間医療施設,医 薬品等関係団体羊からの以下の事項につい ての情報収集を行う。

    (1)被災地の衛生行政機能の被害状況

    (2)施設・設備の被害状況

    (3)診療(仮設)機能の稼働状況

    (4)職員の被災状況,稼働状況

    (5)医薬品等及び医療用資器材の需給状況

    (6) 施設への交通状況等

  2. 国立病院東点災害医療センターは初期災 害医療班を派遣し,初期情報の収集を行う とともに,収集した情報については,速や かに厚生省災害対策本部等に連絡する。

第2節 救護班の派遣等

  1. 日本赤十字社は,あらかじめ被災都道府 県と締結した委託契約に基づき,状況によ り,自らの判断に基づき速やかに救護班を 派遣する。

  2. 初期災害医療においては,医療活動に従 事する者による自律的な活動が必要である ことから,国立病院等は,状況により,自 らの判断に基づき速やかに救護班を派遣す る。この場合において,派遣場所及びス タッフの概要等の情報を速やかに被災都道 府県に対し通知することを原則とする。

  3. 救護班は,避難所等に開設する救護所 において救護活動を行う。

  4. 救護班の派遣に係る調整は,以下により 行うことを基本とする。

    (1)被害の規模,状況等を勘案し,被災都 道府県による調整が十分可能であると認 められる場合には,被災都道府県自らが 行うこと。その際,被災地に最も近い保 健医療行政機関である保健所等の活用に 努めること。

    (2)被害の規模,状況が甚大である場合, 被災都道府県の機能等に甚大な被害が発 生している場合等被災都道府県自らが当 該調整を行い得ない場合には,厚生省健 康政策局又は厚生省現地対策本部が,被 災都道府県と協力しつつ,これを行うこ と。

  5. 厚生省健康政策局又は厚生省現地対策本 部は,被災都道府県が,防災基本計画第2 編第2章第3節2(3)に規定するところによ り広域後方医療関係機関[厚生省,文部 省,日本赤十字社]に区域外の医療施設に おける広域的な後方医療活動を要請する必 要がある場合にあっては,被災都道府県以 外の都道府県等と協力し,当該後方医療活 動を行い得る医療施設を紹介し,及び連絡 調整を行う等必要な支援を行う。

第3節 被災地における医療の確保

第1 保健医療活動従事者の確保

  1. 被災都道府県は,救護班の編成等に必 要な医師,歯科医師,薬剤師,保健婦, 看護婦等の保健医療活動従事者の数及び 不足数について迅速な把握に努める。

  2. 被災都道府県は,不足する保健医療活 動従事者の確保のため,災害援助協定等 に基づき,派遣可能な他の都道府県等に 派遣を依頼する。

  3. 被災都道府県は,広域災害及び救急医 療に関する情報システム等により,必要 に応じ,医療ボランティアの活用を図 る。

  4. 厚生省健康政策局又は厚生省現地対策 本部は,被災都道府県の調整機能が失わ れている場合又は被災都道府県からの要 請があった場合には,保健医療活動従事 者の確保のための必要な支援を行う。

第2 救急患者及び医療活動従事者の搬送体制の確保

  1. 厚生省健康政策局,保健医療局国立病 院部,厚生省現地対策本部,厚生省地方 医務(支)局,日本赤十字社,国立病 院・療養所又は被災都道府県・市町村 は,防災基本計画第2編第2章第3節2 (3)等に規定するところにより災害時拠点 医療施設等への救急患者の搬送につい て,必要に応じ,緊急輸送関係省庁に要 請する。

  2. 厚生省健康政策局,保健医療局国立病 院部,厚生省現地対策本部,厚生省地方 医務(支)局,日本赤十字社,国立病 院・療養所又は被災都道府県・市町村 は,防災基本計画第2編第2章第3節2 (3)等に規定するところにより救護班の緊 急輸送について,必要に応じ,緊急輸送 関係省庁に要請する。

第3 医療施設への電気,ガス,水道の確保

  1. 被災都道府県は,医療施設の電気,ガ ス,水道等のライフラインの復旧につい て,優先的な対応が行われるように事業 者へ要請する。

  2. 被災都道府県は,ライフラインの復旧 までの間,医療施設への水の供給及び白 家発電用の燃料の確保を図るための必要 な措置を講ずる。

  3. 厚生省健康政策局は,前2項の措置に 関し,必要に応じ,関係省庁との調整等 必要な支援を行う。

  4. 厚生省生活衛生局水道環境部は,医療 施設への給水の確保のために必要な調整 を行う。

第4 救護所及び避難所救護センターの設置

  1. 被災都道府県・市町村は,被災状況等 を勘案し,適時適切な場所に救護所を設 置し,運営する。

  2. 被災都道府県・市町村は,避難所の設 置が長時間と見込まれる場合には,以下 の点に留意し,避難所に併設して被災者 に医療を提供する施設(以下「避難所救 護センター」という。)の設置運営を行 う。

    (1) 設置に当たっては,被災地における 医療施設の稼働状況や復旧状況を勘案 すること。

    (2)避難所救護センターに配置する医師 については,当初は内科系を中心とし た編成に努め,その後精神科医を含め た編成に切り替える等,避難所及び周 辺地域の状況に合わせ,適時適切な対 応を行うこと。

    (3)必要に応じ,歯科巡回診療車,携帯 用歯科診療機器の確保等を行うこと。

  3. 厚生省健康政策局又は厚生省現地対策 本部は,被災都道府県・市町村による救 護所及び避難所救護センターの設置運営 について,必要に応じ,指導・助言その 他の支援を行う。

第5 医療機器の修理及び交換

  1. 被災都道府県は,必要に応じ,被災地 内の病院等に設置されている医療機器の 修理・交換を医療機器関係団体等に要請 する等の支援を行う。

  2. 厚生省薬務局は,医療機器の修理・交 換について,必要に応じ,被災都道府県 に対し,指導・助言その他の支援を行 う。

第4節 保健婦等による健康管理

  1. 被災都道府県・市町村は,以下により被 災者等の健康管理を行う。

    (1)保健婦等により,被災者のニーズ等に 的確に対応した健康管理(保健指導及び 栄養指導等をいう。以下同じ。)を行う こと。

    (2)被害が長期化する場合,避難所が多数 設置されている場合等,被災者等の健康 管理を組織的に行うことが必要と見込ま れる場合には,被災者等の健康管理のた めの実施計画を策定すること等により, 計画的な対応を行うこと。

    (3)被災者等及び救護活動に従事している 者の精神不安定に対応するため,精神保 健センター等においてメンタルヘルスケ アを実施すること。

  2. 被災都道府県は,被災者等の健康管理に 際し,管下の保健婦等のみによる対応が困 難であると認めるときは,必要に応じ,厚 生省健康政策局に保健婦等の派遣を要請す る。

  3. 厚生省健康政策局は,被災都道府県から の保健婦等の派遣要請数を確認し,被災都 道府県以外の都道府県との調整を行うほ か,被災都道府県・市町村の行う被災者等 の健康管理に関し,必要な支援を行う。

    第5節 医薬品等の供給

    第1 被災地の状況把握(図2参照)

    1. 被災都道府県は,被災地内の医薬品卸 協同組合,日本赤十字社等を通じ,医薬 品等の在庫,需給状況を把握する。

    2. 厚生省薬務局は,必要な医薬品等の供 給に支障を来さないよう,被災都道府 県,医薬品等関係団体,日本赤十字社等 から医薬品等の需給状況についての情報 収集を行う。

    第2 医薬品等の確保及び供給(図3参照)

    1. 被災都道府県は,災害用の備蓄医薬品 等の活用や医薬品卸協同組合,日本赤十 字社等への協力要請等により,必要な医 薬品等の供給を確保するとともに,被災 地内で医薬品等の不足を生じることが予 想される場合には,速やかに厚生省薬務 局に報告する。

       また,被災地内の交通が混乱している ような場合には,自転車,自動二輪車を 含めた搬送手段を確保する。

    2. 厚生省薬務局は,被災地で医薬品等 (輸血用血液製剤及びガスえそウマ抗毒 素を除く。)の不足を生じることが予想 され,広域的な対応が必要と判断した場 合には,医薬品等関係団体等に医薬品 の供給について協力を要請する。

       また,被災地内の医薬品等の供給に当 たっては,医薬品等集積所等に対する仕 分け・管理を谷易にするため,種類別の 梱包の実施等の工夫を行うよう要請す る。

    3. 厚生省薬務局は,被災地で輸血用血液 製剤の不足を生じることが予想され, 地域的な対応が必要と判断した場合には 日本赤十字社に輸血用血液製剤の供給に ついて協力を要請する。

    4. 厚生省薬務局は,被災地域でガスえそ ウマ抗毒素の不足を生じることが予想さ れ,広域的な対応が必要と判断した場合 には,国家買上げ分を供出する。

    5. 厚生省薬務局は,緊急輸送関係省庁と 調整を行い,輸送ルートを確保し,医薬 品等関係団体,日本赤十字社等による被 災地への医薬品等の供給を支援する。

    第3 医薬品の仕分け及び管理

    1. 被災都道府県は,医薬品等集積所,避 難所等における医薬品等の仕分け・管理 及び服薬指導等の実施について,都道府 県薬剤師会に要請し,医薬品等の迅速な 供給及び適正使用を図る。

    2. 厚生省薬務局は,被災地内での医薬品 等の仕分け・管理及び服薬指導等の実施 について,広域的な対応が必要と判断し た場合には,社団法人日本薬剤師会等に 要請する。

    第6節 医療に関する外国からの支援 厚生省健康政策局及び薬務局は,医療に 関する外国からの支援に関し,発災後可能 な限り早期に次の考え力に基づく援助の要 否に関する方針を明確にする。

     厚生省災害対策本部等は,防災基本計画 第2編第2章第12節第3項に規定するとこ ろにより,政府の非常本部等を通じ,その 受入れの可否を関係国に連絡する。

    1. 医療スタッフについては,被災者との日 本語による意思疎通が困難である等の問題 があるため,国内の他の地域からの派遣に より対応することを基本とするが,災害の 規模が著しく大規模である場合,治療につ いて外国にしかない特殊な知見を必要とす る場合等には,必要に応じ,自己完結的に 活動できる外国からの医療スタッフを受入 れるものとする。

    2. 医薬品について,日本語による表示等の 問題があるため国内で確保できるものは国 内で確保することを基本とするが,外国に しかない医薬品を使用する必要がある場合 等には,国内に受け入れるものとする。

    第7節 防疫対策

    1. 被災都道府県・市町村は,災害防疫実施 要綱(昭和40年5月10日衛発第302号各都 道府県知事・各指定都市市長あて厚生省公 衆衛生局長通知)により策定された防疫計 画に基づき,以下の点に留意しつつ,災害 防疫活動を実施する。

      (1)被災都道府県は,災害発生時の生活環 境の悪化,被災者の病原体に対する抵抗 力の低下等の悪条件下に備え,管内市町 村に対する迅速かつ強力な指導を徹底 し,伝染病流行の未然防止に万全を努め ること。

      (2)夏場に災害が発生した場合や大雨や台 風による河川の増水により洪水の発生が 想定される場合には,衛生状態の悪化や 汚染地域の拡大により,防疫に必要な器 具機材等が不足することも想定されるた め,被災都道府県は,近隣都道府県に対 する応援要請を検討し,必要に応じ,速 やかな応援要請を行うこと。

      (3)避難所は,臨時に多数の避難者を収容 するため,衛生状態が悪化し,伝染病発 生の原因となる可能性があることから, 簡易トイレ等の消毒を重点的に強化し, 防疫員の指導のもとに防疫活動を実施す ること。

       また,施設の管理者を通じて衛生に関 する自主的組織を編成するなど,その協 力を得て防疫に努めること。

    2. 厚生省保健医療局は,前項に掲げる措置 に関し,必要な指導・助言その他の支援を 行う。

    第8節 個別疾患対策

    第1 人工透析(図4参照)

    1. 人工透析については,慢性腎障害患者 に対し,災害時においても継続して提供 する必要があるほか,クラッシュシンド ロームによる急性腎障害患者に対して提 供することも必要であり,また,透析医 療の実施に当たっては,水・医薬品等の 確保が重要であることから,次の方法に より,人工透析の供給体制を確保する。

      (1)情報収集及び連絡

       社団法人日本透析医会が,被災都道 府県に伝達する被災地及び近隣におけ る人工透析患者の受療状況及び透析医 療機関の稼働状況に係る情報に基づ き,被災都道府県・市町村は,広報 紙,報道機関等を通じて,透析患者や 患者団体等へ的確な情報を提供し,受 療の確保を図ること。

      (2)水及び医薬品等の確保

       被災都道府県は,社団法人日本透析 医会が提供する透析医療機関における 水・医薬品等の確保状況に関する情報 に基づき,必要な措置を講ずること。

    2. 厚生省保健医療局は,前項に掲げる措 置に関し,必要な指導・助言その他の支 援を行う。

    第2 難病等(図5参照)

    1. 難病患者への医療を確保するために は,医薬品等(例:ALS等の在宅人工 呼吸器用酸素,クローン病の成分栄養, 勝原病のステロイド系薬品)の確保が必 要であることから,次の方法により,難 病等に係る医療の供給体制を確保する。

      (1)情報収集及び連絡

      1. 被災都道府県は,被災地及び近隣 における難病患者等の受療状況及び 主な医療機関の稼働状況を把握し, 広報紙,報道機関等を通じて難病患 者や患者団体等へ的確な情報を提供 し,受療の確保を図ること。

      2. 厚生省保健医療局は,特定疾患調 査研究班員を通じて把握した被災地 及び近隣における特定疾患患者の受 療状況及び主な医療機関の稼働状況 について,被災都道府県へ提供する こと。

      (2)医薬品等の確保

       被災都道府県は,把握した医療機関 における医薬品等の確保状況に基づき 必要な措置を講ずること。

    2. 厚生省保健医療局及び薬務局は,前項 に掲げる措置に関し,必要な指導・助言 その他の支援を行う。

    第9節 公費負担医療に係る対応

     厚生省公費負担医療関係部局は,公費負 担医療制度対象者の医療を確保する観点か ら,患者票等を現に所持していない場合等 における公費負担医療事務の円滑な実施に ついて,被災都道府県・市町村等に対し, 必要な指導等を行う。

    第4章 福祉に係る対策

    第1節 市町村民生部局の体制(図6参照)

    1. 非常災害の発生に際しては,発災直後の遺体の取扱い,避難所の設置管理,食事・ 物資の提供等の災害救助関係業務のほか, 被災市町村の民生関係業務として,生活福 祉資金の貸付,応急仮設住宅等における衛 生部局と連携をとった保健福祉サービスの 実施,り災証明の発行等,非常災害の発生 により新たに発生する業務を含め,膨大な 種類と量の業務が発生することから,被災 市町村においては,災害の規模及び被災市 町村における行政機能状況等を勘案し,以 下の点に留意しながら,福祉に係る災害応 急対策を実施する。

      (1)災害発生により新たに発生する食事・ 物資の分配業務,遺体の取扱業務等の災 害救助関係業務と並行して,障害者及び 高齢者に対する福祉サービス等の福祉関 係業務の増大にも対応できるよう,業務 処理体制の確保に努めること。

      (2)近隣市町村民生部局と災害援助協定を 締結している場合にあっては,速やかに 応援を要請すること。

      (3)被災都道府県を通じ,厚生省社会・援 護局に対し,他都道府県の市町村民生部 局職員の応援を要請すること。

      (4)応急仮設住宅における保健福祉サービ スの実施に代表されるように,災害発 生後一定の期間経過後に開始されるべき 業務が数多く存在することから,時間の経 過とともに変化する状況に対応した組織 と人員の投入に留意しつつ,対策を講 ずること。

    2. 被災都道府県及び厚生省社会・援護局、 老人保健福祉局,児童家庭局その他の関係 部局は,被災市町村が実施する前項の措置 に関し,他の都道府県・市町村への協力要 請等必要な援助を行う。

    第2節 要援護者に係る対策

    1. 非常災害の発生に際しては,平常時より 在宅保健福祉サービス等の提供を受けてい る者に加え,災害を契機に新たに要援護者 となる者が発生することから,これら要援 護者に対し,時間の経過に沿って,各段階 におけるニーズに合わせ,的確なサービス の提供等を行っていくことが重要であるこ とに鑑み,被災市町村は,以下の点に留意 しながら,要援護者対策を実施する。

      (1)在宅保健福祉サービス利用者,独り暮 らし老人,障害者,難病患者等の名簿を 利用する等により,居宅に取り残された 要援護者の迅速な発見に努めること。

      (2)要援護者を発見した場合には,当該要 援護者の同意を得て,必要に応じ,以下 の措置を採ること。

      1. 避難所へ移動すること。

      2. 社会福祉施設等への緊急入所を行う こと。

      3. 居宅における生活が可能な場合に あっては,在宅保健福祉ニーズの把握 を行うこと。

      (3)要援護者に対する保健福祉サービスの 提供を,遅くとも発災1週間を目途に組 織的・継続的に開始できるようにするた め,発災後2〜3日目から,すべての避 難所を対象として,要援護者の把握調査 を開始すること。

    2. 被災都道府県及び厚生省社会・援護局, 老人保健福祉局,児童家庭局その他の関係 部局は,被災市町村が実施する前項の措置 に関し,他の都道府県・市町村への協力要 請等必要な支援を行う。

      第3節 社会福祉施設等に係る対策

      1. 被災社会福祉施設等は,あらかじめ定め た避難誘導方法等に従い,速やかに入所者 の安全を確保する。

      2. 被災地に隣接する地域の社会福祉施設等 は,施設機能を低下させない範囲内で援護 の必要性の高い被災者を優先し,施設への 受入れに努める。

      3. 被災社会福祉施設等は,水,食料品等の 日常生活用品及びマンパワーの不足数につ いて把握し,近隣施設,都道府県・市町村 等に支援を要請する。

      4. 被災都道府県・市町村は,以下の互に重 点を置いて社会福祉施設等の支援を行う。

        (1)ライフラインの復旧について,優先的 な対応が行われるように事業者へ要請す ること。

        (2)復旧までの間水,食料品等の必須の 日常生活用品の確保のための措置を講ず ること。

        (3)ボランティアへの情報提供などを含め マンパワーを確保すること。

      5. 厚生省社会・援護局その他の関係部局 は,物資及びマンパワーの広域的支援に関 し,他の都道府県等からの応援体制の確保 等の支援を行うほか,措置決定を弾力的に 行うことなどを指導することを含め,上記 対策全般について,被災都道府県等の支援 を行う。

        第4節 障害者及び高齢者に係る対策

        1. 被災都道府県・市町村は,避難所や在宅 における一般の要援護者対策に加え,以下 の点に留意しながら障害者及び高齢者に係 る対策を実施する。

          (1)被災した障害者及び高齢者の迅速な把 握に努めること。

          (2)掲示板,広報誌,パソコン,ファクシ ミリ等を活用し,また,報道機関との協 力のもとに,新聞,ラジオ,文字放送, 手話つきテレビ放送等を利用することに より,被災した障害者および高齢者に対 して,生活必需品や利用可能な施設及び サービスに関する情報等の提供を行うこ と。

          (3)避難所等において,被災した障害者及 び高齢者の生活に必要な車椅子,障害者 要携帯便器,おむつ等の物資やガイドヘ ルパー,手話通訳者等のニーズを把握す るため相談体制を整備すること。

          (4)被災した障害者及び高齢者の生活確保 に必要な車椅子,障害者要携帯便器,お むつ等の物資やガイドヘルパー,手話通 訳者等の人材について迅速に調達を行う こと。

          (5)関係業界,関係団体,関係施設を通 じ,供出への協力要請を行う等当該物資 の確保を図ること。

          (6)避難所や在宅における障害者及び高齢 者に対するニーズ調査を行い,ホームヘ ルパーの派遣や施設への緊急入所等必要 な措置を講ずること。

        2. 厚生省社会・援護局,老人保健福祉局及 び児童家庭局は,前項に掲げる措置に関 し,他の都道府県・市町村への協力要請, 関係団体との調整等必要な支援を行う。

        第5節 児童に係る対策

        第1 要保護児童の把握等

        1. 被災都道府県・市町村は,次の方法等 により,被災による孤児,遺児等の安保 護児童の発兄,把握及び援護を行う。

          (1)避難所の責任者等を通じ,避難所に おける児童福祉施設からの避難児童, 保護者の疾患等により発生する要保護 児童の実態を把握し,被災都道府県・ 市町村に対し,通報がなされる措置を 講ずること。

          (2)住宅基本台帳による犠牲者の確認, 災害による死亡者に係る義援金の受給 著名簿及び住民からの通報等を活用 し,孤児,遺児を速やかに発見すると ともに,その実態把握を行うこと。

          (3)被災都道府県・市町村民生部局は, 避難児童及び孤児,遺児等の要保護児 童の実態を把握し,その情報を親族等 に提供すること。

          (4)孤児,遺児等保護を必要とする児童 を発見した場合には,親族による受入 れの可能性を探るとともに,養護施設 への受入れや里親への委託等の保護を 行うこと。また,孤児,遺児について は,被災都道府県における母子福祉資 金の貸付,社会保険事務所における遺 族年金の早期支給手続を行うなど,社 会生活を営む上での経営的支援を行う こと。

        2. 厚生省児童家庭局は,社会保険庁と連 携を図りつつ,前項に掲げる措置に関 し,他の都道府県・市町村への協力変 請,関係団体への調整等必要な支援を竹 う。

        第2  育児用品の確保

         厚生省児童家庭局は,関係団体を通じ て,同乳ピン,粉ミルク,ポット,ベ ビーベッド,紙おむつ,幼児用肌着等の 育児用品を確保するとともに,関係省庁 との連携の下に関係業界に対し,供出を 要請する。

        第3 児童メンタルヘルスの確保

        1. 被災都道府県は,被災児童の精神不安 定に対応するため,児童相談所におい て,メンタルヘルスケアを実施する。

        2. 厚生省児童家庭局は,被災都道府県の メンタルヘルスケアの実施に際し,全国 の児童相談所への協力要請等必要な支援 を行う。

        第4 児童の保護等のための情報伝達

         厚生省児童家庭局,被災都道府県・市 町村等は,被災者に対し,掲示板,広報 誌筈の活用,報道機関の協力,パソコン ネットワーク・サービスの活用により, 要保護児童を発見した際の保護及び児童 相談所等に対する通報への協力を呼びか けるとともに,育児関連用品の供給状 況,利用可能な児童福祉サービスの状 況,児童福祉施設の被災状況及び復旧状 況等について的確な情報提供を行う。

        第6節 ボランティア活動の支援

        第1 ボランティア活動に関する情報提供

        1. 被災都道府県・市町村は,被災者の 様々なニーズの把握に努めるとともに, 近隣都道府県・市町村や報道機関を通じ て,求められるボランティア活動の内 容,必要人員,活動拠点等について情報 提供を行う。

        2. 厚生省社会・援護局は,ボランティア 活動が円滑に行われるよう,必要な 導・助言その他の支援を行う。

        第2 被災地におけるボランティア支援体制の確立

        1. 被災地の都道府県・市町村,社会福祉 協議会,全国社会福祉協議会,日本赤十 字社等は,速やかに現地本部及び救援本 部を設置し,行政機関等閑係団体との連携 を密にしながら,以下により,ボラン ティアによる支援体制を確立する。

          (1)現地本部における対応

           被災地の社会福祉協議会は,ボラン ティア活動の第一線の拠点として現地 本部を設置し,被災者ニーズの把握, 具体的活動内容の指示,活動に必要な 物資の提供等を行うこと。

          (2)救援本部における対応

          被災地周辺であって通信・交通アク セスが良い等適切な地域の社会福祉協 議会等は,救援本部を設置し,ボラン ティアの登録,派遣等のコーディネー ト,物資の調達等を行い現地本部を支 援すること。

        2. 厚生省社会・援護局は,全国社会福祉 協議会,日本赤十字社等閑係団体と必要 な調整を行う。

        第7節 救援物資及び義援金の受入れ

        1. 被災都道府県・市町村は,国民,企業か らの救援物資について,被災者が必要とす る物資の内容を把握し,報道機関等を通じ て迅速に公表すること等により受入れの調 整に努める。

        2. 被災都道府県・市町村は,義援金につい て,支援関係団体で構成する募集(配分) 委員会を組織し,義援金総額,被災状況等 を考慮した分配基準を定めるとともに,報 道機関等の協力を得て,適切かつ速やかな 配分を行う。

        3. 厚生省社会・援護局は,義援金の募集・ 配分に関し,助言等必要な支援を行う。

        第5章 生活衛生に係る対策

        第1節 遺体の火葬等(図7参照)

        第1 広域的な火葬に関する計画の実施への支援

        1. 厚生省生活衛生局は,遺体の搬送及び 火葬の支援について,必要に応じ,被災 地の近隣都道府県に対し,被災都道府県 への協力を要請する。また,大規模搬送 が必要な場合には,被災都道府県と連携 を図りつつ,関係省庁に対し協力要請す る。

        2. 厚生省生活衛生局は,被災市町村によ る迅速な火葬許可事務の実施が困難であ ると認められる場合には,戸籍確認の事 後の実施等実態に応じた事務処理を行う よう,市町村及び関係機関に周知する。 3被災都道府県は,あらかじめ整備され た広域的な火葬に関する計画に基づき, 被災市町村と連携して,広域的な火葬の 実施を支援する。

        3. 被災都道府県等は,多数の遺体の搬送 を円滑に行うため,葬祭業者との連携に よる霊枢車等の確保,関係省庁等の協力 によるヘリコプターの活用等の措置を講 ずる。

        4. 被災都道府県等は,遺体の保存及び円 滑な火葬の実施のため,民間事業者の協 力のもと十分な量のドライアイス,柩, 骨壷等を確保する。

        5. 被災地の近隣都道府県は,被災都道府 県の広域的な火葬に関する計画の実施に 協力する。

        第2  火葬データベースの活用

        1. 厚生省生活衛生局は,被災都道府県, 社団法人日本環境斎苑協会等の協力を得 て,死亡者数,火葬場の被災状況,火葬 場の利用状況その他の広域的な火葬に必 要な最新の情報を収集し,火葬データ ベースを通じて被災都道府県等に情報提 供を行う。

        2. 被災都道府県は,広域的な観点から遺 体の円滑な火葬を支援するため,前項の 火葬データベースを活用する。

        3. 被災地の近隣都道府県は,被災都道府 県に協力するに当たり,第1項の火葬 データベースを活用する。

        第3 火葬相談窓口の設置

         被災市町村等は,速やかな火葬を要望 する遺族のため,必要に応じ,火葬相談 窓口を設置し,火葬場,遺体の搬送体制 等に関する適切な情報を提供することに より,円滑な火葬の実施を支援する。

        第2節 飲料水の確保

        第1 被災地の状況把握

         厚生省生活衛生局水道環境部は,発災 直後から,都道府県を通じて,水道施設 の被災状況,断水状況等について定期的 に情報収集を行う。

        第2 応急給水及び応急復旧

        1. 被災水道事業者等は,地域防災計画及 びあらかじめ定めた行動指針に基づき, 応急給水及び応急復旧を実施する。

        2. 被災水道事業者等は,応急給水及び応 急復旧の実施に必要な人員・資機材が不 足する場合には,相互応援協定等に基づ き,都道府県を通じて,他の水道事業者 等に支援を要請する。

        3. 被災都道府県は,地域防災計画及びあ らかじめ定めた行動指針に基づき,都道 府県内の水道事業者等及び関係団体に対 して,広域的な支援を要請し,支援活動 の調整を行う。

        4. 厚生省生活衛生局水道環境部は,被災 都道府県からの要請があった場合又は被 災状況から判断して必要と認める場合に は,都道府県を通じて全国の水道事業者 に対し支援を要請し,調整等を行うとと もに,現地に対策拠点を設置する。

        5. 厚生省生活衛生局水道環境部は,防災 基本計画第2編第3章第2節第1項等の 規定に基づく水道施設の復旧に係る作業 許可手続の簡素化について,必要に応 じ,関係省庁に要請する。

        第3 被災者への情報伝達

         厚生省生活衛生局水道環境部,都道府 県及び水道事業者等は,被災者に対し, 掲示板,広報誌等の活用,報道機関の協 力,パソコンネットワーク・サービスの 活用により,水道施設の被災状況,二次 災害の危険性,応急給水及び応急復旧状 況,復旧予定時期,飲料水に関して保健 衛生上留意すべき項目等について的確な 情報提供を行う。

        第3節 廃棄物の処理

        第1 被災地の状況把握

         厚生省生活衛生局水道環境部は,発災 直後から,都道府県を通じて,施設の被 害状況,仮設便所の必要数,生活ごみの 発生量見込み,建物被害とがれきの発生 見込み等について情報収集を行う。

        第2 災害による廃棄物の処理

        1. 被災市町村は,地域防災計画に基づ き,災害により生じた廃棄物の処理を適 正に行う。

        2. 被災市町村は,廃棄物の収集・処理に 必要な人員・収集運搬車両が不足する場 合には,被災都道府県に対して支援を要 請する。

        3. 被災都道府県は,都道府県内の市町村 及び関係団体に対して,広域的な支援を 要請し,支援活動の調整を行う。

        4. 厚生省生活衛生局水道環境部は,被災 都道府県からの要請があった場合又は被 災状況から判断して必要と認める場合に は,全国的な支援の要請等を行い,派遣 可能な人員・機材のりストを都道府県に 提供する。

           また,被災都道府県が他の都道府県に 対して支援を要請する場合には,必要な 調整を行う。

        第3  仮設便所等のし尿処理

        1. 被災市町村は,被災者の生活に支障が 生じることのないよう,し尿のくみ取り を速やかに行うとともに,仮設便所の設 置をできる限り早期に完了する。なお, 仮設便所の設置に当たっては,障害者へ の配慮を行う。

        2. 被災市町村は,水道や下水道の復旧に 伴い水洗便所が使用可能になった場合に は,仮設便所の撤去を速やかに進め,避 難所の衛生向上を図る。

        第4 生活ごみの処理

         被災市町村は,発災後の道路交通の 況などを勘案しつつ,遅くとも発災数 後には収集を開始し,一時的に大量に 生した生活ごみを早期に処理するよう める。

        第5 がれきの処理

        1. 被災市町村は,危険なもの,通行上の 支障のあるもの等を優先的に収集・運搬 する。また,選別・保管・焼却のできる 仮置場の十分な確保を図るとともに,大 量のがれきの最終処分までの処理ルート の確保を図る。

        2. 応急活動後は,処理・処分の進歩状況 を踏まえ,がれきの破砕・分別を徹底 し,木材やコンクリート等のリサイクル を図る。また,アスベスト等の有害な廃 棄物は,廃棄物の処理及び清掃に関する 法律(昭和45年法律第137号)等の規定 に従い,適正な処理を進める。

        第4節 食品衛生の確保

        第1 食中毒の未然防止

        1. 被災都道府県(政令市及び特別区を含 む。次項及び第3項において同じ。) は,食品衛生監視員を食品の流通拠点に 派遣し,食品の配送等における衛生確保 の状況を監視させ,必要に応じ指導を行 わせる。

        2. 被災都道府県は,食品衛生監視員を避 難所筆に派遣し,食品の衛生的取扱い, 加熱調理,食用不適な食品の廃棄,器 具・容器等の消毒等について必要に応じ 指導を行わせる。

        3. 被災都道府県は,食品関係営業施設の 実態調査を実施し,施設の構造,食品取 扱設備,給水等の点で衛生上著しく劣る 場合には,改善を指導する。

        4. 被災地の食品衛生協会は,被災都道府 県(指定都市を含む。)と協力し,食品 関係営業施設に対し,加熱調理等,食品 の衛生的取扱いについて相談に応じ,指 導を行う。

        5. 厚生省生活衛生局は,被災都道府県 (指定都市及び中核市を含む。)との連絡 体制を確保し,必要に応じ,近隣都道府 県等に対し衛生確保のための支援要請を 行う等必要な支援を行う。

        第2 食中毒発生時の役割分担

        1. 食中毒患者が発生した場合,被災都道 府県(政令市及び特別区含む。)は,食 品衛生監視員に所要の検査等を行わせる とともに,食中毒の原因食品,原因施設 を調査して,被害の拡大防止に努める。 また,政令市(指定都市及び中核市を除 く。)及び特別区にあっては,調査結果 につき,被災都道府県に報告する。

        2. 被災都道府県(指定都市及び中核市を 含む。3において同じ。)は,食中毒被 害が拡大する懸念のある場合について は,厚生省生活衛生局に報告する。

        3. 厚生省生活衛生局は,食中毒の被害が 甚大で,被災都道府県のみでの処理が困 難であると認められる場合には,被災都 道府県の要請に基づき,近隣都道府県等 に支援要請を行う等被害拡大防止のため の必要な支援を行う。

        第6章 社会保険に係る対策

        第1節 災害対策本部及び災害対策支部の設置

        1. 被害状況に応じて,必要と認められる場 合には,可及的速やかに社会保険庁に社会 保険災害対策本部を設置する。

        2. 被災都道府県の保険主管課及び国民年金 主管課は,都道府県が定める防災計画等に 沿った対応を行うとともに,これと十分な 連携を図り,社会保険災害対策支部を設置 する。社会保険災害対策本部及び支部は, 相互に緊密な連携を図りながら,社会保険 業務の機能回復のための対策を実施する。

        第2節 緊急業務処理体制の整備

        1. 社会保険災害対策本部は,社会保険業務 を円滑に実施するため,具体的な情報を収 集するとともに継続的に情報収集を行う。

        2. 社会保険災害対策支部は,速やかに社会 保険業務復旧のため,庁舎及び職員の確保 を図る等の緊急業務処理体制を整備する。

        3. 社会保険災害対策本部及び支部は,関係 機関との充分な連携を図り,被保険者証を 紛失した場合の保険医療機関への受診,支 払通知書等を紛失した場合の年金受給方法 等円滑な社会保険業務の実施に努める。

        4. 厚生省保険局は,社会保険災害対策本部 及び被災都道府県とともに,健康保険組合 等の保険者,社会保険診療報酬支払基金及 び国民健康保険団体連合会と充分な連携を 図り,円滑な審査・支払体制の確保に努め る。

        第3節 行政サービスの確保

        社会保険災害対策本部及び支部は,被災 地の被保険者及び年金受給者等に対して, できる限りの行政サービスを確保するた め,災害復旧対策として次に掲げる事項に ついて,必要に応じて,弾力的かつ機動的 な対応を行う。

         厚生省保険局は,国民健康保険及び組合 健康保険について,同様の措置を採ること ができるよう,被災都道府県・市町村に対 し,指導・助言等を行う。

        1. 医療保険関係

           医療保険における健康保険被保険者証再 交付業務などを迅速に処理するほか必要に 応じ,健康保険被保険者証の提示の手続き の簡素化,一部負担金等の支払に係る特例 措置等について,厚生省保険局とともに, 関係団体への速やかな協力要請を行うなど 迅速に対応する。

        2. 年金関係

           郵政省及び金融機関等と調整を行い,被 災地の年金受給者が確実に年金を受給でき るように努める。

        3. 船員保険関係

           船舶所有者の事業所等が被災したことに より,休業し,報酬を受けることができな い被保険者について,失業保険金の支給の 特例等の立法措置が行われる場合には厚生 省保険局とともに,運輸省との連絡調整を 図りつつ,必要な運用方針を疋める。

        4. 保険料関係

           保険料に係る納期限の延長や,免除につ いて,必要に応じ,措置を講ずる。

           なお,健康保険等の保険料の免除につい て,立法措置が行われる場合は,厚生省保 険局,年金局及び児童家庭局とともに速や かに運用方針を定める。

        5. その他

          (1)各種届書の添付書類の簡素化を図るな ど弾力的な運用に努める。

          (2)社会保険事務所が被災により機能が麻痺した場合においても,被保険者等への 迅速な対応が図られるよう,必要な職員 の派遣,社会保険事務所の機能を代行す る等の対応に努める。

          (3)災害による特例措置の実施等につい て,チラシ,ポスターの作成,政府広報 の活用,フリーダイヤルを設置するなど により,被災地の被保険者及び年金受給 者に対し,的確な情報を提供する等サー ビスの向上を図る。


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