2.医療活動および関連活動
医療活動は、BGH(ハギオジェネラルホスピタル)の外来診療部門の援助が主体で、外傷を含む約100名の診療を行った。
3.その他の活動
一日遅れで現地入りしたJDR(Japan Disaster Relief)とともに総合チームとして、\組織的な災害援助活動を行った。
4.隊員の現地生活
全隊員は、日本人経営のホテルに宿泊した。出発まで時間が少なかった大阪からの隊\員は、身の回りの準備が乏しく、医療活動にも支障を来した。
5.活動全般について
今回の出動は例がないほど迅速であった。しかし、現地での調達された部分に負うと\ころが大であった。特に、現地日本人企業の強力な援助で、移動、連絡、通訳などを依\存した。
2.医療器材:薬品名は日本名を使わず、原薬名を添付した。
3.環境と安全:夜盗と直下型地震の余震が恐ろしい。アルコールは慎む。
4.情報:情報がオーバーであるために、浪費を食う場面もしばしば合った。正確な情報\が望まれる。
5.撤収のタイミング:外来患者数の減少と倒壊ビル生存者の救出断念が目安。
2.機動性についての注文 器材が二分されて到着したため、本格的な診療開始がおくれ\た。マニラであらかじめ飛行機などのチャーターしておくべきである。
3.医療拠点の設営について:中型テントが、小回りがきき役立つ。
4.気軽な緊急出動を可能にする。JMTDR登録者による、普段からの準備が迅速な現地到着が必要条件である。
5.まとめ:現地到着に時間を費やすと、援助の意義が半減してしまう。そのため、機動性の開発がポイントであり、諸外国のノウハウをもっと、調査する必要がある。
トリアージを行う際の重症度診断の手段としてスコア化が長年試みられてきた。確かに損傷のスコア化は個々の重傷度評価においては有用であるが大災害など多数の負傷者を扱うための評価としてはあまり役に立たない。それはトリアージを行う際に種々の因子の影響を受けるからである。その為、スコアに記載されたバイタルサインの数値はトリアージに必要な情報を十分には含んでいない。バイタルサインをトリアージに有用なパラメーターとするには通常のバイタルサインとは異なる評価をしなくてはならない。つまり血圧については、数値だけにとらわれず、様々な生理学的なパラメーターを重要視する。脈拍については多くの被災者は頻脈となりあまり重要ではないが、脈の幅や緊張を触診してデータを加えることにより意味を持つようになる。また脈拍数についてはさまざまなので、あまり気をとられると判断を誤る危険がある。呼吸については、重大な損傷やショックの初期の患者以外には呼吸困難は生じず、ほぼ健康な人と同じように平静である。逆に言えば患者の呼吸を視認できる場合には代償性ショックのもっとも早期のサインとしてとらえることができる。これらに加えて災害の際のバイタルサインとして精神状態も重要となる。不安、不穏は微妙な脳の低酸素を表し、心臓、脳、肺への循環血液がぎりぎり保てるだけの拍動量しかない場合には重要な意味をもつことになる。
以上述べてきた『トリアージ』について養われた経験により近年災害医学の方法論は進歩してきた。しかし、これまでの方法論では精神神経系の被災者についてはあまり注目されてなかった。そのため従来のトリアージ分類においては精神神経系の被災者が含まれてなかった。これは外傷患者は時間単位でみることができたのだが、精神衛生の問題は月、年単位かかるためである。しかし実際には多くの精神神経系の被災者がいるので、そういう人たちをも認識するトリアージ・カテゴリーが必要となってきており、実際従来のトリアージ・カテゴリーを補う精神神経面でのアルゴリズムも作られている。また重傷者、小児、老人などハイリスクグループについても、トリアージカテゴリーのためのアルゴリズムも作られている。
人が危機対応を落ち着いて行うために大事な条件は、次の4つである。
・経験を積んでおり、心理的見通しがしっかりしていること。それが、たとえ単なる知識や形式的訓練だとしても重要である。
・非常事態になすべきこと、やらねばならないことを持っているということである。そうすれば、恐怖や不安、そしてあわてふためくことから自由になれる。
・機先を制しての「落ち着け」という掛け声である。一度暴走した人々を止めることは困難だからである。そして、その次に出てこなければならないのが「見通し」であり、「何をなすべきなのか」の具体的指 示である。そうでなければ、「落ち着いてどうしろというのか。落ち着いて死ねとでもいうのか」と思う人が出てきてしまい、「落ち着け」という掛け声が何の意味も持たなくなってしまうからである。
・信頼のおけるリ−ダ−の存在、果たすべき役割である。人々は動揺する状況のなかにあって、荒波のなかでも岩にしっかりアンカ−を打ち込んでいる船のように、アンカ−を打ち込むべきところを求めているのである。