災害医学論文集(災害事例別) スマトラ島地震津波災害(2004) |
目次: Internal Medicine、International Medical Journal、Japan Medical Association Journal、医学のあゆみ、看護、看護技術、看護実践の科学、看護展望、感染・炎症・免疫、感染症、呼吸器科、最新医学、自衛隊札幌病院研究年報、社会医学研究、小児科、整形外科と災害外科、精神医学、精神神経学雑誌、聖母大学紀要、電子情報通信学会技術研究報告、東京医科大学雑誌、長崎医学会雑誌、日本災害看護学会誌、日本社会精神医学会雑誌、日本集団災害医学会誌、日本赤十字豊田看護大学紀要、日本病院薬剤師会雑誌、日本旅行医学会学会誌、兵庫県立大学地域ケア開発研究所研究活動報告集、防衛衛生、琉球医学会誌、
■Internal Medicine
■International Medical Journal
■Japan Medical Association Journal
■医学のあゆみ
■看護
■看護技術
■看護実践の科学
■看護展望
■感染・炎症・免疫
■感染症
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■自衛隊札幌病院研究年報
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■日本災害看護学会誌
■日本集団災害医学会誌
■日本社会精神医学会雑誌
■日本赤十字豊田看護大学紀要
■日本病院薬剤師会雑誌
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■兵庫県立大学地域ケア開発研究所研究活動報告集
■防衛衛生
■琉球医学会誌
Abstract:2005年3月18〜20日にスリランカの3ヶ所の津波災害避難キャンプ内で国内難民324名から鼻咽頭スワブ(NP)を採取しMIC、β-ラクタマーゼ産物、血清型、PCR、パルスフィールドゲル電気泳動等の分析を行った。難民の多くが呼吸器症状を有し、各キャンプの咳・痰の有病率は各々84%、70.5%、64.7%で、20名からH.influenzae 21株、22名からS.pneumoniae 25株が検出された。インフルエンザ菌は全て型別不能で5株がβ-ラクタマーゼ産生型、肺炎球菌は17株がペニシリンG感受性、3株が完全抵抗性であった。難民キャンプ内では様々な型の肺炎球菌やインフルエンザ菌による急性気道感染の流行が認められ、そのうちのいくつかは人から人へ伝染する可能性が示された。
特集【災害医療 呼吸器科医への提言】
Abstract:2005年1月23日〜2月26日に,バンダアチェ市バンダラヤ郡ラマラ地区に開設した診療所においてインドネシア国際緊急医療援助隊(本隊)の自衛隊医官が診療した現地患者のうち,診療記録で確認できた延べ3855名に対する本隊の診療活動について分析した.受診患者数は1日あたり平均165名(うち初診126名),そのうち応急医療チームでは平均123名,本隊合流後は平均180名であった.性別は男58%,女42%,平均年齢は34.6歳,受診回数は平均1.3回で,1回と2回で受診患者全体の95%を占めた.津波被害を直接受けた人は,初診患者では24%,再診を含む延べ患者では32%を占めた.居住スタイルは,自宅が47%,親戚の家が36%,キャンプが14%であった.受診患者の居住地域の分布は,ラマラ地区の属するバンダラヤ郡が42%,市外が30%を占め,その他の郡は各々7%以下であった.
特集【災害精神医学の10年 経験から学ぶ】
Abstract:2004年は中越大震災やインド洋大津波などの大規模な自然災害に見舞われた年であった.ただ新潟県においては6400名の死者を出した1966年の阪神淡路大震災の教訓を生かせたために,地震の二次被害も少なく,死者が46名に止まったことは不幸中の幸いであった.しかし筆者の避難所救護活動の経験からも,ライフラインの廃絶した孤立都市での医療安全に関しては,ハード・ソフトともにこの10年ほとんど改善が見られなかったと言わざるを得ない.本研究では大災害時における病院・診療所・避難所などにおける医療活動が必要最低限確保できるための医療安全システムに要求されるスペックを考察するとともに,抗堪性の高い医療機器を作り上げるための基礎研究を行うとともに,バイタルサイン計測装置・避難所救急医療電子カルテ装置・診療情報伝送システムなどを開発することを目的とした.本研究はさらには最低限の供給が望まれるessential drugとその常備方法などのハード面および,緊急時医療福祉通信システムや災害時の高齢者福祉システム・医療従事者リクルーティングシステムや緊急時食料・備品の配布システムなどのソフト面に到るまで総合的な大災害時医療安全システムについての調査検討と行政と市民に対する提案に繋がるものである.
Abstract:看護大学生への国際緊急援助活動を含む災害医療の教育は,極めて重要であり,国際的な医療救援活動に参加する人材の育成は,必要不可欠である.しかし,わが国においては大学における災害医療の教育体系は,いまだ確立していないのが現状である.著者らは,医学部看護学科4年生の学生55名に対して,2004年12月26日に実際に発生したインド洋津波災害をモデルに,国際緊急医療援助活動のシミュレーション実習を実施した.教育や状況の付与は,実際に国際緊急援助活動の経験のある教官が担当し,実習前に,インド洋津波災害の救援医療活動に国際緊急援助隊・医療チームの一員としてスリランカに派遣された医師による講義を実施した.被災後6日目の2005年1月1日に,日本を出発する国際緊急援助隊の医療チームとして派遣されるという想定の下で,情報収集,現地での医療活動計画の立案,個人携行品の準備,梱包までの実習を行った.教育後の学生の評価では,98.2%の学生が,この実習が実践的・教育的で役立つと考えており,92.6%の学生が面白くて興味が持てたと解答した.一方,情報収集を含む準備期間として,平均9.2日の時間的余裕が要望され,計画立案のための討議の時間も平均3.2時間が必要とされた.このような実際に発生した大災害をモデルとしてのシミュレーション実習は,国際緊急医療援助活動の学生教育に有用であり,教育的,効果的であることが実証された.
Abstract:私たちはスマトラ沖大地震及びインド洋津波によって被害を受けたスリランカで、蚊帳を配布し設置するボランティア活動を行った。被災後3ヵ月経ったカルモナイで、12の病院を訪問し、約200個の蚊帳を寄付し、約50個を天井から吊るした。また災害の実態を知るため被災地の病院、被災者キャンプ、JICAの事務所を訪問した。
Abstract:2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震津波は、インド洋の国々を襲い死者22万人、被災者200万人の未曾有の被害をもたらした。この被災者の医療救援活動を行うため、日赤は最も被害の大きかったスマトラ島アチェ州に発災3日目から約4ヵ月間、計6班77名の医療救援チームを派遣した。この救援活動を通して多くの教訓を学ぶことができた。この災害で被害が甚大となった背景に住民の津波災害に関する知識の欠如があり、津波災害の正しい知識の修得が重要であった。災害の権威Pan American Health Organizationは、過去の多くの災害の経験から災害と災害医療に関する迷信と現実を提唱しているが、この災害でも、伝染病流行の危険性の有無、有意義な救援活動に他組織との連携が重要、Securityの重要性などを実体験できた。今回得られた教訓は今後のわが国の災害対策を考える上で重要な意義があった。
Abstract:本研究の目的は,国際緊急支援における精神保健の特徴と今後の課題を明らかにすることである.その目的を達成するために,まず,日本と海外で実施された災害時の国内での精神保健支援事業の方針や活動内容を整理し,総括した.次に,2004年12月に起きたスマトラ島沖地震・津波被害に対するWHOの支援を事例として,国際緊急支援の方針や活動内容を明らかにした.そして最終的には,国内支援と国際支援の活動内容の比較をし,そこから国際支援の特徴は, 1)被災者や救援者に対する直接的な支援が少ないこと, 2)被災地域社会・避難民全体の支援を積極的に実施しようとしていること, 3)政策やシステム構築に多くの支援がされていることであるとした.さらに,今後の国際支援における精神保健分野の課題や方向性を,被災者,救援者,保健省や他の精神病院等,対策・システム,調査・研究という5つの視点から述べた.
Abstract:大規模災害発生時,薬剤師は医薬品を迅速,かつ的確に確保・補給する任務を担っている.そのためには必要医薬品とその数量を検討しておかなければならない.そこで,2004年に発生した新潟県中越地震とインドネシア・スマトラ沖地震において用いた診療記録より疾患と処方された医薬品を調査した.今回経験した災害は地震と津波の二次災害であり,被災地が国内と国外で異なっていたが内科的疾患は共通しており,感冒症状,不安・不眠,消化器症状が活動したどの地域においても多かった.また,必要とされた医薬品も大きな違いは認められなかった.この結果を踏まえ,初期先遣隊が被災地へ赴く際に持参すべき医薬品と具体的な数量を検討し,災害初期治療における基本医薬品リストを作成した.
Abstract:スリランカ津波被災地の飲用水と汚物の処理等衛生状況について調査した.スリランカ南部の津波被災地であるAmbalangoda,Galle,Mataraの給水タンク水と井戸水の水質検査およびトイレの設置・管理状況等衛生調査を行った.給水タンクの水は,塩素消毒がなされ概ね細菌学的には良好であった.井戸水は細菌学的汚染と塩分化を認めた.トイレは比較的衛生的に管理されていた.スリランカ政府は適切かつ迅速に安全な飲用水と衛生的なトイレの供給を行った.被災後の下痢症を中心とした急性感染症流行の抑制には,消毒された飲用水および衛生的な住環境の供給が,基本かつ重要であることが示唆された.
Abstract:インド洋・スマトラ沖地震津波災害1年後のスリランカにおいて、3日間にわたって実施した現地調査(スリランカ南西部のコロンボ、ボナツワ、ヒッカドウワ、ゴール)について報告した。衛生状態の悪い仮設住宅における住民の健康状態の悪化が懸念されるほか、要人を多く輩出している南部と西部との被災者への支援格差などが明らかになった。また、津波災害は今回が初めてというスリランカにおける、住民への今後の減災教育の重要性が示唆された。
Abstract:スマトラ沖大地震およびインド洋津波の被災地に派遣された580例を対象とし,IES-R(出来事インパクトスケール改訂版)を用いたアンケート調査と個人面接を行った.IES-Rの平均値は,自殺事故に対するアフターケア活動における平均値より有意に高かった.2ヵ月後の個人面接においてストレス症状は概ね軽減もしくは消失した.遺体を目撃した隊員の方が目撃しなかった隊員よりもIES-Rの値が有意に高く,高得点者の割合も高かった.従事した業務内容の区分からは,遺体収容および遺体処理にあたった隊員のIES-Rの値は遺体に直接関わらなかった隊員よりも有意に高く,高得点者の割合も高かった.しかし,直接遺体に関わっていない隊員の一部も一時的にストレス症状を呈した.
Abstract:2004.12.26インドネシアスマトラ島沖で発生した地震・津波災害に対する自衛隊の国際緊急援助活動中、バンダアチェ市内の単一診療所で行われた医療支援結果を報告し、今後の国際緊急援助活動の参考に資する。結果として1)地震・津波災害に直接起因する疾患は、被災から約1ヵ月で5%程度に収束する。2)被災後亜急性期は衛生状態の悪化に伴う呼吸器疾患、皮膚科疾患の割合が50%と高く、疾患の割合も期間中一定した。3)災害1ヵ月以降、被災に起因する主なものは精神症状であり、受診者の3%前後を占めた。また今後、自衛隊の国際緊急医療援助活動が災害亜急性期に開始せざるを得ないとすれば、それに適化した医薬品を準備しておく必要があると考えられた。