災害医学・抄読会 2002/12/13

心的外傷後ストレス障害と境界性人格障害

(村林信行ほか:現代のエスプリ1996年2月別冊、p.22-30)


 PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、身体的、精神的に極度のストレスにあったあとに、その苦痛が再体験され続け たり、そのストレスの原因となった出来事を避けたり、不安・不眠・易刺激性などの覚醒常 態が1ヶ月以上持続した状態の精神疾患である。BPD(境界性人格障害)は、対人関係・自己評価・感情などが不 安定で衝動的なことが特徴の人格障害である。そのBPDの成因として幼少期の心的外傷が重視 されるようになったため、PTSDとBPDの共通点と相違点に関する研究が盛んになった。

 これまでの研究で、BPDの患者のうち小児期に外傷体験のあるものは55~81%といわれ、BPD の3分の1はPTSDの診断基準を満たす。

 PTSDとBPDに共通する症状は、1)感情の調節機能の障害(緊張・抑うつになりやすい)、2)衝 動コントロールの障害(怒り易い・刺激されやすい)、3)現実的検討力の障害・対人関係の障 害・自己アイデンティティー確立の障害などである。それに対しBPDは「状態の不安定さ」 (自殺、そのそぶり、脅し、自傷行為、感情不安定、ストレスに関連した一過性の妄想様観 念や重篤な解離性の症状など)また、両者とも外傷的な出来事を「再体験」することが特徴 的だが、BPDではその再体験が、依存的かつマゾヒスティックな対人関係、慢性的な抑うつ、 解離症状として現れることが多く、逆にこのような症状が再体験の際にみられるときはBPDが うたがわれる。

 また両者は、過去からの病歴を聞くことである程度鑑別できる。典型的なPTSDは成人に なってから、戦争・レイプなど第三者から見ても侵襲度の比較的大きな体験によって発症す ることが多く、発症前の対人関係や社会適応も良好である。対して典型的なBPDは他人に親切 にされることに飢えており、古くから対人関係で失敗を繰り返し、環境が変わった時にもこ れらが認められる。解離症状・妄想知覚・幻視など通常ではみられない異常知覚は、PTSDで は外傷体験に直接関連して起こるのに対し、BPDではより一過性で対人関係と関連して起こ る。

 PTSDのリスクファクターは、女性・幼児期の分離体験・家族に反社会的行動の既往歴など で、BPDは小児期の頻回の分離体験をしている者が多く、女性が75%を占め、一親等に反社会 的行動をもつ者が多い。つまりBPDは、PTSDのリスクファクターにもなっている。BPDの患者 のストレス対処法が未熟で現実のストレスが解決せず、いつPTSDになってもおかしくない状 況にあるためである。

 小児期・思春期は人格形成の途上にあり、個人の人格に与える影響は最も大きい。小児期 には身体や精神への侵襲的な体験(陽性の外傷)だけではなく、親との死別・別離による養 育欠損や養育放棄、家庭内の混乱など本来期待できる環境が整備されてない状態(陰性の外 傷)も心的外傷として大きな影響をあたえる。小児期の心的外傷と関連が深い精神障害とし て、解離性障害(意識・記憶・同一性の機能の破綻)、自傷傾向などがある。BPDの多くは幼 少期の虐待を体験しているが、他の疾患とも関連しているため、BPDの発生に関して虐待の影 響は非特異的と考えられる。

 災害後の被災者に対して、心的外傷が人格形成に与える影響を考慮しながら長期にわたる ケアが必要と考えられる。


4.トリアージ教育の評価

(近藤久禎、山本保博ほか監修:トリアージ その意義と実際、荘道社、東京、1999、p.91- 96)


【トリアージの概念】

 限られた人的・物的資源の状況下で、最大多数の傷病者に最善の医療を施すため、傷病者の 緊急度と重症度により治療優先度を決めること。

【健康教育としての災害医療・トリアージ教育の評価】

 災害医療・トリアージ教育も、意識の変容、行動の変容を促すための教育であるため。健康 教育の1つと考えることができる。

【健康教育における評価について】

1.「評価」とは

 「関心のある事柄」」、「基準」、「比較」の3つを明確にする。

2.評価目的

「指導目的」・・・教育プログラム自体の質の向上を目的とする。
「学習目的」・・・健康教育プログラムの対象者自身で評価し自己改善を行わせる。
「管理目的」・・・初期の目的に達したかどうかに強い関心をもつ。
「研究目的」・・・一般化できるかどうかに関心をもつ。

3.健康教育のステージ別の評価

 健康教育は「企画」、「実施」、「評価」の段階に沿って行われる。 各段階において評価をする。(すべてのプログラムが終了してから行うのではない)

評価の流れ

 「評価の目的」、「対象」、「指標」、「基準」、「デザイン」、「データ収集」、「担当者」、「スケ ジュール」、「予算」などについて決めなければならない。(後図参照)

 評価を妨げる因子として「指標の定めかたが不明瞭」ということがある。そこで老人保健医療 の評価を参考にし、健康教育、災害医療教育の評価の指標に応用。
(参考)老人保健医療の評価・・・「質の測定」、「量の測定」、「効果の測定」

 災害・トリアージ教育を考えるうえでの企画評価で長期にわたる評価計画を立て、能力の変 化をモニターしていくことは、その教育において必要不可欠なことである。しかし、長期に わたる企画を評価計画も含めて立てることは非常に困難である。

(理由)「一度に教育できる人数に限界がある」、「そこで得た知識や経験を実際に生かす場所が 非常に少ない」

「企画評価」

 訓練時には毎回その評価をしてそれを次の年へとつなげ質の向上を図る評価計画を立てる。
  ↓
 地域においては県全体の災害対応の質の向上を目指す戦略、及びその評価法を確立。
  ↓
 地域から全国へ

「実施評価」


核テロリズムの脅威が増加している

(Mongan PD, et al. 臨床麻酔 26: 1553-7, 2002)


 9/11事件以降、米国情報機関はテロリストたちが新たなテロ計画を検討していると警告して いる。さらに原子力発電所やエネルギー省の核開発施設に対する爆破、航空機による体当た り攻撃によって大災害を引き起こす、あるいは危険な核反応生成物を飛散させる計画も立証 されている。これらの攻撃は放射能兵器と呼ばれ、放射性物質を意図的に用いて障害および 殺戮を目的とするものである。残念なことに放射性物質およびその取り扱い技術が拡散した ことによって電離性放射線を入手し、テロ活動に使用することはこれまでになく容易になっ ている。

 現在、核テロリズムとして3つのシナリオが想定される。第1のシナリオとして、最も可能 性が高いのは放射性物質の撒き散らしである。この方法は放射性物質を入手し、通常の爆弾 を用いて放射性物質が目標の地域に撒き散らされる。被災者の規模は爆弾の破壊力と周囲の 人口に依存するが、多数の死亡者数と数千例の放射線障害が引き起こされる可能性がある。 第2のシナリオとしては民間航空機、爆発物および内部のサボタージュによる原子力発電所へ のテロ攻撃が考えられる。この場合の効果は原子爆弾に相当し、第1のシナリオよりも大きな 影響を及ぼし得る。第3のシナリオは、テロ組織が核爆弾を入手するあるいは核爆弾製造技術 と製造に必要な量の核物質を入手することで、最も危惧すべきである。この場合、テロ組織 による核攻撃が行われれば多数の犠牲者と周囲における受傷者が発生する。同時に発生する 電磁波によって通信、経済が大きな障害を受ける。膨大な死者および被災者数、心理的影 響、長期間に及ぶ放射線の影響によって対応する医療機関は大きな負担を強いられる。ただ し可能性は低い。

 放射線障害の被災者の治療に関して最も重要な点は放射線被爆の原因と影響を評価すること にある。爆発時の放射線および爆発後にも残存している放射性粒子から発散するものは外部 被爆の原因であり、中性子線、gamma線、alpha線、beta線が障害の原因となりうる。開放創 から侵入および吸入、経口摂取によって体内に入った放射性物質から放出される放射能は内 部被爆の原因である。

 被爆後の放射能による影響は急性および慢性効果に分けられ、それぞれ吸収した線量に依存 する。最も初期に生じる放射線障害は大量被爆時にearly transient incapacitation (ETI) あるいはより軽度の被爆による嘔気嘔吐である。数日から数週間後に発生する特異的な影響 は、1)皮膚、粘膜に対する熱傷様の障害、2)胃腸炎、3)骨髄抑制、免疫不全および二次感 染、4)血小板減少症に伴う出血傾向である。

 放射線障害に対する治療は汚染除去、診断および放射線障害、合併外傷の治療に関する普遍 的なガイドラインが存在する。外部被爆を除去する場合、外傷を伴わない被災者に対する汚 染除去の原則は普遍的な予防策および衣服の除去であり、脱衣はplastic bagに入れ、汚染区 域の安全な場所に保管するべきである。皮膚および頭髪の洗浄液は回収して、適切な方法で 廃棄することが望ましい。放射線障害と外傷の両方がある場合には積極的な治療が必要であ る。緊急性の高い外傷の治療は放射線障害の治療より先行し、重傷者に対して通常の外傷プ ロトコールに準じた治療を行うべきである。低血圧を認めた場合には放射線障害の影響より も循環血液量不足を疑うべきである。また、創は致命的な感染源になる可能性があることか ら、可能な限りすべての創を洗浄縫合するべきである。

 内部被爆の除法はキレート剤投与によって行われる。放射線安全管理あるいは放射線会に推 奨される方法を問い合わせること。

 中程度、重度の被爆による放射線障害患者に対する初期治療には感染症の予防に関する配慮 が必要である。これには低細菌食、滅菌水の使用、手洗いおよび空気洗浄が含まれる。腸管 の免疫を含む生理学的機能を維持するには経静脈栄養よりも経腸栄養のほうが望ましい。

 放射線障害による好中球減少期には感染症の予防および対策が治療の中心となる。各施設に おける感染起因菌の特徴および薬物耐性に合わせた抗生物質の投与を行う。さらに filgrastim, G-CSF, GM-CSFなどは強力な造血促進因子を投与する。

 テロ組織が放射性物質あるいは核爆弾の使用を検討していることは明白で、これらによる攻 撃がなされた場合には中程度の被爆でも重症の骨髄抑制をきたすため医療機関の負担は大変 大きなものとなる。しかし、幸いなことに発症までに時間がかかること、医療技術の進歩に よって被災者の生存率は目覚しく向上している。


C 高速道路事故

(滝口雅博、山本保博ほか・監修:災害医学、南山堂、東京、2002、pp.117-24)


 高速道路での事故の原因としてスピードの出しすぎ、居眠り運転がある。冬型の高速道路 の事故として、雪道でのアイスバーンやブラックアイスバーン(日陰や橋の上を中心に、見た 目にはぬれただけの路面だが、実際はアスファルトの表面が凍りついている道路)によるス リップ事故、雪煙・吹雪による前方の視界不良による車の玉突き事故がある。

a.災害に伴う疾病の特徴

 高速道路事故は、スピードを出している場合が多いため、通常の交通事故より重症な例が 多い。現在、シートベルト着用義務やエアバック使用が勧められており、車外に飛び出した り、顔面のフロントガラスへの激突、さらにハンドルによる胸部外傷などが減少することが 期待されている。

b.化学災害

 爆発・火災の危険がある物質や毒物・劇物類を積んだトラックなどが、現在は日常的に高 速道路上を走行している。高速道路上の化学災害発生時には事故関係者以外に、救助関係者 や付近の住民などに影響を及ぼすため、化学物質に対する積極的な情報提供、その伝達が大 切である。

c.事例

1)千歳高速道路多重玉突き事故

 1992年3月17日(火)午前8時45分ごろ(推定)、札幌市と千歳市を結ぶ北海道縦貫自動車道(北海 道自動車道:道央自動車道)で車両186台が巻き込まれたわが国最大の玉突き多重衝突事故が発 生した。道央自動車道上り線、長都川橋上で、観光バスを追い越そうとしたライトバンが、 そのバスの後部に接触、観光バスは200~300m減速進行し路肩に停止したが、ライトバンはそ のまま走り去った。その後方で、3台の車による追突・衝突事故が発生。さらに後続車がス リップし、長都川橋のほぼ中央でタンクローリー車と大型バスが横向きになり道路を遮断 し、次々に後続車が突っ込み、大破・スクラップ状態となった車も少なくなかった。死者2 人、重軽傷者108人であった。これだけの大事故で死者が2人と少なかったのは、タンクロー リーなどによる火災が発生しなかったことも幸いした。

2)神戸市高速道路

 2002年5月29日15:45頃、乗用車単独事故。事故の約20分後に阪神高速北神戸線下り線の路 側帯に機長判断で着陸している。

3)首都高速道路タンクローリー横転事故

 1999年10月29日18:25頃、東京都首都高速道路2号上り線でタンクローリーが走行中、過酸 化水素の液体を積んだタンクが爆発している。タンクローリーは外壁に衝突し、外壁が約8.5 m下に落下した。タンクローリーの運転手、後続のドライバー、通行人ら計20名が重軽傷を 負った。また、積荷の過酸化水素約700リットルが現場に流出した。

d.インターネットにて検索した高速道路事故(毎日新聞)

1999年5月-2000年4月までの高速道路事故

e.対策

 地域単位で災害時に使う医療機関などを含めた緊急マニュアルなどの作成、高速道路での 事故を想定した関係機関合同の防災訓練の実施、ドクターカー、ドクターヘリなどの積極的 活用。気象や路面、混雑予測を含めた道路情報提示。

f.今後の展望

 ドクターヘリ調査検討委員会は高速道路における緊急離着陸について以下のように提言して いる。
  1. 離着陸可能なサービスエリア、パーキングエリアを選定し、離着陸訓練を行うこととす る。
  2. 都道府県単位で離着陸可能な本線部分、サービスエリア、パーキングエリアなどを調査 し、緊急離着陸可能な部分を確定しておく
  3. 十分な着陸スペースが確保されない場合の対応として、二次災害を防止するための交通規 制G実施されたときにはホイストを用いて現場への降下や患者の収容を行うことも検討す る。

 わが国の高速道路はアメリカなどに比し、道路幅が狭いが、今回の2例の事例にみられるごと く着陸可能である。高速道路へのヘリコプター搬送は総論賛成、各論反対の傾向にあったが 次第に理解されつつある。今後、高速道路事故の現場よりのヘリ搬送事例が増え、高速道路 事故に対する救命率上昇が切に望まれる。


巨大地震発生

(小川和久:ロスアンゼルス危機管理マニュアル、集英社、東京、1995、35-48)


 ノースリッジ地震と阪神大震災と、この2つの巨大地震災害で明暗を分ける原因は何であろう か、複雑な問題かもしれないが危機管理という視点から原因を考察してみる。

1、カリフォルニア工科大学地震速報システム
(CUBE:Caltech USGS Broadcast of earthquakes program)

 CUBEは、カリフォルニア工科大学地震研究所と連邦地質調査質がLA市と共同で開発した地震 情報通信システムの略称。5年間の歳月と75万ドルの費用をかけて1990年に活動を開始し た。LA市の関連部門や鉄道会社など23の会社組織と直結されている。

 カリフォルニア州内の350ヶ所に地震計をセットしてあり、地震発生から2分半で地震地とマ グニチュードを報せる仕組みで、地震情報は、会社組織のパソコンと担当者が携帯するペイ ジャー(ポケットベル)に表示される。

 日本でも、テレビの地震情報は震源地と震度をリアルタイムで伝えてくれるが関係機関ごと に震源地周辺の施設の情報などが盛り込まれていないことにはCUBEのような活用はできな い。

 CUBEシステムの年間維持費は110万ドルであるが、これを連邦、大学と会員組織が分担してい る。費用効果から考えると驚くほど値打ちのある防災システムと言えるのではないか、日本 でも大都市周辺にCUBEシステムが張り巡らされていたら、阪神大震災でも首都官邸の認識が 甘くなることはなかっただろうし、迅速に対応できたことは間違いない。

2、空中損傷評価手続き/ロサンゼルス市警
(ADAP/LAPD:Air-borne Damage Assessment Procedures/Los Angels Polise Dept)

 ノースリッジと阪神大震災の二つの大震災で決定的に明暗を分けたのは、先に紹介したCOBE による地震情報だけではなかった。情報収集でCUBEよりもなお大きな働きをしたと評価され ているのは、LAが保有するヘリコプターに存在である。まさに、「ヘリがLAを救った」と表 現してもかまわないほどの活躍ぶりを見せた。現在では災害など大都市における非常事態に 当たって、情報収集ばかりでなく、ヘリ抜きには指揮命令も、消火、救急活動も成り立たな い現実が証明されたといってよいだろう。

 LAが保有するヘリは合計32機。日本の自治体では、想像できない機数の多さで、その内訳 は、ロス市警20機、消防局6機、市全体の業務を行うジェネラルサービス局6機となってい る。当然ながら、ノースリッジ地震で最初に被害状況を報告したのはLAPDのヘリだった。地 震発生から2分後三機のヘリに対してADAPに基づいて被害状況をチェックするように指示が出 され、LAPDの3機は、直ちに約100ヶ所チェックにかかり、約20分で終了した。パトカーを使 えば1日がかりになる作業だという。もちろん、LAPDのヘリは地震でたたき起こされて慌てて テイクオフしたのではなく3機のヘリはすでに飛行中であった。LAPDは1日のうち20時間、同 時に3機のヘリを飛ばして市内を空からパトロールしている。これらのヘリは夜間用の装備も サーチライトだけではなく、半数ほどのヘリが赤外線暗視装置を備えている。しかし、ノー スリッジ地震で情報収集に活躍したのは警察のヘリだけではなく、CUBEの地震情報を受け て、LAFDの3機も情報収集に発進した。さらにジェネラルサービスのヘリも日常的に見回って いる送電線やフリーウェイ、水道、ガスなどライフライン関係の被害状況の点検にあたっ た。

 アメリカの危機管理は核戦争を前提に考えられてきた。そこで想定される非常事態に当たっ て、LAのヘリは、いわば緊急対策本部の眼となり足となり滑動するような仕組みになってい る。

 「とにかく、優先順位の第1位は情報である。これがないと、指揮官は的確な指示を出せない のだから。」(LAPD)と主張する人もいる。つまり、ノースリッジ地震と阪神大震災と、この2つの巨大地震災害で明暗を分けた原因の大 きな一つは情報だったのではないか。

 情報の不在により、日本では最終的責任のある首相官邸の決断を遅らせる結果となった。 それに対して、LAでは市長が地震発生からわずか4分後に緊急対策本部の開設を指示、その6 分後には、緊急対策本部は可動状態に入っていた。このような早業を可能にしたのは、地震 情報システムとヘリコプターを駆使した空腸損害評価手続きによる情報収集システムの存在 があり、そこでは、ジャイロカメラ(ウェスカムとして知られる、最も強力な36Dシリーズ だと、最高倍率220倍である)による映像生中継が威力を発揮した。

 以上のように、災害では正確な情報を如何に早く入手するかがその後の的確な対策を行うた めの最も重要なものの一つであることは間違いないだろう。


災害対策:1.Preparedness and Planning2

(坂野晶司、山本保博ほか・監修:災害医学、南山堂、東京、2002、pp.141-9)


 災害などの緊急事態管理は通常4つのフェーズに分けて考えられる。それは、準備、被害軽 減、対応、回復(復興)である。

  1. 準備:ハザードへの備え一般を意味している。計画を立案して、訓練・演習により、あら ゆるハザードに対して効果的に準備し、被害を軽減し、反応し、回復するといった、緊急事 態に対応できる専門家を養成すること。この準備には、物的な準備と人的(制度的な)準備 があり、これらをバランスよく行うことが重要。

  2. 被害軽減:ハザードおよびその影響から、人や財産に対する長期リスクを減少または消失 させるため、持続して行動をとることが含まれる。

  3. 対応:人命救助や財産保全のための緊急行動をとること。

  4. 回復/復興:個人、事業者、行政府が、自力で機能でき、正常な生活に戻り、将来のハ ザードを防止できるようなコミュニティーを再建することが含まれる。

 このうち、「準備」のフェーズは緊急事態に対して備え、準備を行い、将来発生するであろ う緊急自体において人的・物的な損害を最小にするために重要なフェーズである。よって、 「準備」についてさらに詳しく検討する。

a.物的な準備

1)医薬品・医療資材

2)インフラストラクチャ(電気・ガス・水道・鉄道・道路などの)生活の基礎となる 設備)

b.人的な準備?災害マニュアルの策定と災害訓練

1) 災害マニュアルの策定

 災害マニュアルは国レベル、都道府県レベル、市町村レベル、医師会レベル、医療機関レ ベルと種々のレベルのものが存在する。

3)人的な準備:災害訓練と体制の準備

 ものの準備などのハード面だけでなく、人材の育成や体制・マニュアルの整備などソフト面をバランスよく整備することが肝要である。


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